勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2021年02月

    a0070_000030_m
       


    文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、言葉巧みに相手に取り入ることの天才である。孔子は、こういう人間を「巧言令色、鮮(すくな)し仁」と喝破した。文氏は、その場限りの発言が多く、この「ラブコール」は時間が経てば、噓か誠かが自然に明らかになる。今年1月以来の言葉が今、試されようとしている。

     

    『日本経済新聞 電子版』(2月26日付)は、「言葉のみか実行か 日韓占う3つのリトマス試験紙」と題する記事を掲載した。筆者は、編集委員の峯岸博氏である。

     

    「マルロマン」。韓国語で「言葉だけ」「口先ばかり」を意味する。韓国の保守層が文在寅(ムン・ジェイン)大統領を批判する言葉で、最近の対日外交を評するときにも使われる。新年の記者会見で、日本企業や日本政府に賠償を命じた判決や裁判の手続きに懸念を示し日韓関係修復への意欲を力説してから40日近くたつが、目に見える新たな動きはない。迫り来る3つの関門が、文氏の覚悟を占うリトマス試験紙になる。

     

    (1)「19日、ソウルの青瓦台(韓国大統領府)で珍しい出来事があった。韓国メディアによると、文大統領は李洛淵(イ・ナギョン)代表ら革新系与党「共に民主党」指導部と懇談した席上、旧日本軍による従軍慰安婦問題について「当事者の意見を排除し、政府同士で合意するには困難がある」と述べ、「日本による心からの謝罪にかかっている」との認識を示した。これは、1月の新年会見で述べた「政府の公式合意」「合意を土台に韓日間で解決策を協議したい」という文氏の発言から外れている」

     

    文在寅なる人物は、「情緒人」である。そのときのムードに流されるタイプだ。冷徹であるべき政治家向きではない。悲しい映画を見ると、感情が昂ぶって泣き崩れるというのである。そういう「感性豊かな」人物が、慰安婦問題について理性的発言を貫くことは難しい。

     

    (2)「この話には続きがある。与党指導部との懇談会から何時間もたたずに大統領府の報道官が「韓日関係正常化の努力が発言の趣旨だった」と文氏の〝真意〟をメディア側に追加説明したという。青瓦台が「日本は心から謝罪すべきだ」から一転、「韓日関係は重要」に変わった背景について、複数の外交専門家は「対日外交のスタンスを整理できず、混乱している」「内政の課題に追われ、検討が後回しになっている」と話す」

     

    大統領府は、文氏の旧慰安婦寄り発言を訂正して、「韓日関係が重要」という、とってつけたような発表をした。文氏の心は、千々に乱れているのだろう。

     


    (3)「漂流する文政権のリトマス試験紙がまず31日に控える。日本統治下の1919年に起きた最大の抗日独立運動「三・一運動」記念式典での演説だ。
    文氏がそこでも「心からの謝罪」を日本に求めるようなら元の木阿弥になる。意外なようだが、歴代大統領のこの日の演説は「未来」に重点を置く内容も少なくなかった。しかし、金泳三(キム・ヨンサム)、盧武鉉(ノ・ムヒョン)、李明博(イ・ミョンバク)各大統領のように、良好な滑り出しだった対日外交が次第に先鋭化していくパターンが繰り返された」

     

    第1のカードは、31日にやってくる。その日は、日本統治下の1919年に起きた最大の抗日独立運動「三・一運動」記念式典日である。ここで何を演説するか。もし、「反日演説」すれば、ラブコールは噓であったことになる。

     


    (4)「18日、ソウル中央地裁が日本政府に元慰安婦の女性12人への慰謝料支払いを命じた判決後、別の元慰安婦20人が日本政府に損害賠償を求めている訴訟の判決日程が1月13日から突如、延期された。その公判が3月24日、同じソウル中央地裁で弁論から再開する。これが2つ目のリトマス試験紙だ。今度こそは、主権国家は外国の裁判権に服さないとする「主権免除」の原則が認められるかが注目される。原告の主張を全面的に認める判決が続き、文氏がそれを黙認するようなことになれば、「文政権下での関係改善はもはや無理」とのムードが日本を覆うのは避けられない」

     

    第2のカードは、3月24日から再開される別の慰安婦訴訟である。前回同様に、日本政府へ賠償を求める判決であり、文氏がそれについて沈黙していれば万事休すである。文政権下での関係改善は期待できないことになろう。

     


    (5)「3つ目のリトマス試験紙は、与野党が激突する47日投開票のソウル、釜山両市長の補欠選挙だ。前評判ではソウルは接戦、釜山は保守系野党がややリードだが、首都決戦を革新系与党が制すれば、文氏の政権運営に弾みがつく。逆に2連敗するようなら文氏のレームダックが始まるというのが韓国政界の共通した見立てだ。気がかりなのは、釜山市長選で保守系野党が公約に掲げた、韓国と日本の九州を結ぶ海底トンネル構想を与党が「日本の利益になる利敵行為」と批判し、保守陣営に「親日派」のイメージをかぶせていることだ。韓国内では1990年代から検討されながらも、日本の政界ではほとんど話題になっていないにもかかわらず、だ」

     

    第3のカードは、4月のソウル・釜山の市長選挙で与党が敗北すれば、文大統領のレームダック化が不可避となる。これによって、徴用工と慰安婦の賠償問題を解決する韓国案の審議は不可能になる。つまり、文政権は日韓関係改善を進める推進力を失うのだ。こうなれば、文氏は万事休すとなろう。

     

    次の記事もご参考に。

    2021-02-15

    メルマガ232号 不可能な「日韓和解」 恥の文化がない韓国と日本は「水と油」

    2021-02-22

    メルマガ234号 文在寅、日韓関係改善を「断念」 次期政権へ放り出す無責任「米が反日

     

     

    a0001_000268_m
       

    中国経済が、のたうち回っている感じだ。米国から半導体とソフトの輸出禁止措置を受け、中国トップのICT(情報通信技術)企業ファーウェイが迷走している。高級半導体の供給を絶たれて、高級スマホの生産継続が不可能であるからだ。その穴を埋めるべく最近、畑違いの養豚事業への進出を発表した。これに次いで、今度はEV(電気自動車)への進出が報じられている。

     中国は、改めて技術基盤の薄さを自覚させられている。中国の王志剛・科学技術相は26日の記者会見で、米国が対中包囲網を進める半導体分野について「外国企業との協力継続を希望している。対中投資の環境を積極的に改善し、外資との連携強化を奨励する」と述べるほど。ひたすら、米国に対して恭順の意を表わした形である。



    『ロイター』(2月26日付)は、「ファーウェイ、自社ブランドのEV発売を計画=関係筋」と題する記事を掲載した。

     

    関係筋によると、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)は、自社ブランドの電気自動車(EV)の開発を計画しており、年内に一部のモデルを発売する可能性がある。同社は米国の制裁対象となっており、事業戦略の変更を模索している。

     

    (1)「関係筋によると、ファーウェイは、自動車メーカーの工場で自社ブランドのEVを生産するため、国有自動車大手の重慶長安汽車や北京汽車集団傘下のBAICブルーパーク・ニュー・エナジー・テクノロジーと協議を進めている。ファーウェイは、米国の制裁で主要なサプライチェーンが断たれ、一部のスマートフォン事業の売却を余儀なくされた。ファーウェイの広報担当は、EVを開発する計画や自社ブランドの自動車を生産する計画はないとコメント。「当社は自動車メーカーではない。ただ、情報通信技術を通じて、デジタル自動車向けの新たな部品を供給することを目指している」と述べた」

     

    EVは、まさに時代の寵児になった感すらある。内燃機関(エンジン)は、精密技術であるので簡単に参入できないが、EVは電子部品さえ集めれば素人にもできそうである。EVの部品点数は、内燃機関に比べ3分の1で済むと言う。こういう「安直さ」が受けて続々と新規参入が始まっている。台湾のスマホメーカー鴻海(ホンハイ)もその一社である。

     

    『ロイター』(2月25日付)は、「台湾鴻海『米フィスカーとEV生産で提携』23

    年から年25万台超」と題する記事を掲載した。

     

    米電気自動車(EV)メーカーのフィスカーは、台湾の鴻海精密工業(フォックスコン)と提携し、2023年終盤から年間25万台超のEVを生産すると発表した。北米、欧州、中国、インドなど世界各地の市場を視野に入れているとした。フィスカーのヘンリック・フィスカー最高経営責任者(CEO)はロイターとのインタビューで、今回の合意でフォックスコンは生産を受託するだけでなく、EVを共同開発すると述べた。合意手続きは第2・四半期に完了し、約7年間維持されるとの見方を示した。合意の具体的な条件は公表されていない。

     

    (2)「フィスカー氏は、フォックスコンとのEVについて、「未来的」で従来と「全く異なる」と同時に、「手頃」な価格になると述べた。23年第4・四半期に投入する計画という。フォックスコンが生産を行う場所はまだ決まっていないとした。フォックスコンはここ1年ほどでEVへの関心を強めており、中国の拝騰(バイトン)や浙江吉利控股集団との提携を発表したほか、ステランティスのフィアット・クライスラー部門とも提携協議を進めている」

     

    EVとはいえ、安全性・乗り心地・耐久性などが問われる。新興企業が、伝統自動車企業を相手にどこまで戦えるのか興味深い。

     

    (3)「米アップルが2024年の自動車生産開始を目指しているとの報道もあり、伝統的な大手自動車メーカーにとって、アップルなどのIT(情報技術)企業や新興プレーヤーが受託生産企業を活用して自動車市場に参入すれば大きな脅威となる。CFRAリサーチのアナリスト、ギャレット・ネルソン氏は「多くの自動車部品メーカーや製造業者が、世界のEV市場で今後期待される急成長の恩恵を受けようと狙っている」と述べた」

     

    米アップルが、2024年の自動車生産開始を目指しているとも報じられている。受託自動車企業は未定である。アップルカーが登場すれば、アッと驚くような新機軸が盛り込まれているのであろう。そういう新機能で新興企業はどこまで勝負できるのか。

    あじさいのたまご
       

    韓国は、何かにつけて日本と比較したがる習性を持っている。日常の記事でも、「日本は?」といった調子である。一人の女性が生涯で何人出産するかという「合計特殊出生率」で、韓国は世界一の低記録を更新し続けている。日本よりもはるかに悪化しているのだ。

     

    出生率の低下は、一国経済の将来に大きな影響を与える。社会保障費の負担が課題になるからだ。韓国は、2034年に人口は4000万人台を落込む見通しである。「失われた20年」は不可避になった。次に、日韓における最近の合計特殊出生率の推移を比較したい。

     

           韓国   日本

    2015年 1.24  1.45

      16年 1.17  1.44

      17年 1.05  1.43

      18年 0.98  1.42

      19年 0.92  1.36

      20年 0.84  未発表

     


    韓国で文政権が登場したのは、2017年5月である。18年以降、合計特殊出生率低下が著しいのだ。昨年、人口は自然減(死亡者数が出生数を上回る)の状態を迎えている。日本の人口自然減は2011年である。これまで韓国の経済統計は、日本よりもおおよそ20年の「ラグ」(遅れ)があった。人口減少では、これが10年と短縮している。

     

    文政権になってから合計特殊出生率低下が著しいのは、就職難が最大要因である。就職難は、結婚難に結びつく。こうして、出生率低下はスパイラル的落込みになっている。

     

    『中央日報』(2月25日付)は、「韓国、225兆ウォン投じても惨事…『このままであれば13年後に最悪の状況が来る』」と題する記事を掲載した。

     

    「予想はしたが、はるかに深刻だ」。2月24日韓国統計庁がまとめた「2020年出生・死亡統計」を見て専門家たちが出した評価だ。昨年出生率、出生数などの指標は、2019年統計庁が予想した数値よりも著しく低かったためだ。このような速度であれば総人口が4000万人台に減る時点も当初の予想(2044年)より10年程度早まる恐れがあるという。学齢人口の減少にともなう教師就職難の深化、労働力の高齢化による経済生産性の低下など「人口リスク」も大きくなるだろうという声が高まっている。

     


    (1)「少子化の速度が速くなると、統計庁も見通しを大きく修正した。2017年発表した将来人口推計(中尉秋期基準)では昨年合計特殊出産率を1.24人と提示したが、2019年推計では0.90人に下方修正した。問題は、これさえも楽観的な展望になってしまったという点だ。蓋を開けると、昨年合計特殊出生率は0.84人にとどまった。0.9人割れとなったわけだ」

    少子化の速度が上がっているので、人口ピークの時期が繰り上がる。それは、韓国の社会保障を破綻させるリスクを高める。韓国銀行(中央銀行)は、「ポストコロナ時代における人口構造の変化状況の点検」という報告書において、「新型コロナウイルスが出産に及ぼす影響は、少なくとも2022年までは続く」と予想しており、「2022年の合計特殊出生率は、統計庁の推定する0.72人を下回る可能性もある」と指摘する。

     

    (2)「統計庁の中位推計上では、内国人と3カ月以上国内滞留外国人を合わせた総人口は2039年減少し始め、2044年(4987万人)には5000万人割れとなる。だが、低位推計では10年早い2034年(4993万人)に4000万人台に減少する。このような最悪のシナリオが現実になる可能性が大きくなった」

     

    韓国の人口は、2034年に4000万人台へ落込む見込みが強くなっている。日本も人口減社会だが、もともと人口規模が異なるだけに、韓国の人口減のほうがイメージ的なダメージが強くなろう。文大統領という「奇想天外」な人物がもたらした悲劇である。



    (3)「専門家たちは人口がこのように早く減少すれば、消費の停滞、デフレーション、求人難など副作用が大きくなり、低成長が固定化するだろうと警告している。一例として、消費者物価上昇率はすでに2019年(0.4%)に0%台に落ち、デフレーション現実化に対する懸念の声が上がる。昨年も0.5%にとどまった。総人口が今より1000万人以上減少すれば産業現場で「人手が足りない」という声が高まるものとみられる」

    下線の見方は間違いである。人口減少は、潜在成長率を引き下げるので、人手不足は起こらない。むしろ、景気刺激策を取らなければ失業者を増やすのだ。日本は、経済政策が成功しているから、失業率が下がっている。この関係を誤解するととんだことが起こる。

     

    (4)「順天郷(スンチョンヒャン)大学IT金融経営学科のキム・ヨンハ教授は「さらに大きな問題は労働力が高齢化し、経済生産性が大きく低下するという点」としながら「若年層はなく、中高年層だけが多い企業では革新が発生し難い」と指摘した。1990年代から始まった日本の長期不況、いわゆる「失われた20年」も根本的な原因は労働力の高齢化にともなう経済躍動性の低下という指摘が多い」

     

    下線は、事実である。これまで韓国は、日本の「失われた20年」について手を叩いて嗤ってきたが、いよいよ韓国もその局面になった。韓国は、もはや「反日」をやれる精神的なゆとりを失ってくるだろう。

    次の記事もご参考に。

    2021-02-22

    メルマガ234号 文在寅、日韓関係改善を「断念」 次期政権へ放り出す無責任「米が反

    2021-02-15

    メルマガ232号 不可能な「日韓和解」 恥の文化がない韓国と日本は「水と油」

     

     

    a1320_000160_m
       


    米国バイデン大統領が、半導体やレアアースなど4品目で中国に依存しない調達体制を築くと大統領令に署名した。今後、100日以内に具体的計画を立てるという。準戦時並み切迫感を打ち出している。

     

    これによって、グローバル経済は事実上の終焉を迎える。グローバル経済によって発展してきた中国にとって、基幹産業で大きな壁がつくられることになる。その打撃のほどが窺えよう。しかも、米国は同盟国を巻き込んでの「鉄のカーテン」をつくる。安全保障という体制安保を目的にした戦いである。それだけに結束するほかない。

     


    『日本経済新聞 電子版』(2月26日付)は、「
    米が基幹産業で脱中国、半導体など 同盟国と連携模索」と題する記事を掲載した。

     

    バイデン米政権が基幹産業を支える重要部材のサプライチェーン(供給網)見直しに乗り出した。半導体やレアアースなど4品目で中国に依存しない調達体制を築く。100日以内に具体策を打ち出す構えで、日豪など同盟国の企業との連携も模索する。電池のように中国が高い競争力を持つ分野もあり、実効性には課題も残る。

     

    (1)「バイデン大統領は24日、半導体高容量電池医薬品重要鉱物――について供給網の問題点と対応策を検討するよう求める大統領令に署名した。重点的に取り組む4品目は「米国の競争力を維持・強化するのに必要不可欠だ」と指摘した。念頭に置くのは中国だ。バイデン氏は大統領令の署名に先立ち「米国の国益や価値観を共有しない外国に依存できない」と強調した。バイデン政権もトランプ前政権と同様に中国に厳しい姿勢を貫く」

     

    下線のように、「米国の国益と価値観を共有しない」という前提に立っていることに注目すべきだ。まさに「体制安保」の強化である。国家の運命を賭けて、この計画を実現するという意思を示している。準戦時並み切迫感が滲み出ている。

     

    (2)「ボストン・コンサルティング・グループによると、米国は設計ソフトや製造装置でそれぞれ85%、50%と高いシェアを握るが、生産は12%にとどまる。インテルやクアルコムなど世界的に有力な国内企業を抱える一方、生産では台湾積体電路製造(TSMC)や韓国サムスン電子など海外勢に頼る。半導体を中核産業と位置づける中国は巨額の補助金で追い上げる。今後10年間の世界の増産投資のうち34割は中国が占める見通し。中国の世界生産シェアは20年の15%から30年に24%に高まり、台湾を抜いて世界最大になる可能性がある」

     

    米国は、半導体の設計ソフトや製造装置で圧倒的なシェアを持っているが、生産シェアでは12%と低い。だが、これは潜在的な米国の強みを表わしている。設計ソフトや製造装置を禁輸対象にすれば、中国は干上がるという意味である。中国の世界生産シェアは、20年の15%から30年に24%に高まるとしているが、それには疑問符がつく。半導体生産は、微妙な製造ノウハウの取得が前提であるからだ。

     


    (3)「対抗策として米国は、中国勢の抑え込みと自国への工場誘致を並行して進めている。中国の半導体受託生産大手、中芯国際集成電路製造(SMIC)に対しては制裁を科して先端半導体の生産に歯止めをかけた。一方でTSMCのアリゾナ州への工場誘致に成功した」

     

    米国は、友好国(事実上は同盟国)の台湾企業TSMCによる米国での工場建設が始まる。日本とTSMCが協力して、筑波に研究所と工場建設案が浮上している。中国のSMICには制裁を科して技術移転を止めた。

     

    (4)「レアアースも中国頼みだ。米地質調査所(USGS)によると、世界生産の58%が中国で、米国の輸入相手の80%を占める。習近平(シー・ジンピン)指導部は戦略資源と位置づける。レアアースの用途は広い。電気自動車(EV)や風力発電といった環境分野のほか、戦闘機や対ミサイル防衛システムなど軍事品、石油の精製にも不可欠だ。米商務省は19年の報告書で「中国やロシアが米国や同盟国へのレアアース輸出を止めれば、供給網に深刻な衝撃を与える」と警鐘を鳴らす」

     

    レアアースの資源は、世界中に賦存している。だが、中国は政府の補助金支給で低価格で輸出し、世界のライバル企業を駆逐した背景がある。もう一つ、レアアース生産過程では環境破壊を起こすという問題点がある。中国は、これを無視して強引に生産を続けてきた結果にすぎない。要するに、米豪が協力して開発すれば、レアアース問題は解決可能である。中国が、日本に対してレアアース輸出規制をして失敗したのも、同じ理由である。

     


    (5)「難題は、日本など同盟国にも突きつけられる。米政府高官は中国依存を下げるため「輸入制限も選択肢」と指摘した。外国企業は米国への輸出を続けるために「中国製部材を使わない」など、中国と距離を置くよう迫られる展開もあり得る」

     

    下線部は、米国の得意の手である。外国企業は、米国への輸出を続けるために「中国製部材を使わない」という網を掛ければ、中国製部材を排除できる。米国は、世界一のマーケットだけに、その強みを発揮すれば中国製部材を「淘汰」できるのだ。

     

    次の記事もご参考に。

    2021-02-01

    メルマガ228号 「暴走中国」 安保と経済で落とし穴に嵌まり 自ら危険信号発す

    2021-01-18

    メルマガ224号 西側の技術封鎖! 中国は間違いなく「巣ごもり破綻」

     

    a0960_006624_m
       


    過去の日本は、韓国が歴史問題を持ち出せば、経済問題で譲歩するパターンが多かった。これに味をしめて、際限なく歴史問題を持ち出してきたが、それも限界にぶつかっている。日韓関係悪化には、こういう背景がある。

     

    韓国は、もともと契約概念のない社会である。国家間で結ばれた、条約や協定を守るという認識に欠けるのだ。その意味では、前近代的な「殻」を身につけたままと言うべきであろう。この韓国が、日本へ解決済みの歴史問題を蒸し返している。さすがの米国も呆れており、日韓の間に立って仲裁しようという動きもない。当り前である。これに困り果てているのが韓国である。

     


    『レコードチャイナ』(2月24日付)は、「対日関係改善に乗り出した文在寅大統領だが、もう『手遅れ』かもしれない―中国メディア」と題する記事を掲載した。

     

    『東方網』(2月23日付)は、冷え込んでいる日韓関係について、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の在任中に好転させることは難しいとする評論記事を掲載した。以下はその概要。

     

    (1)「日韓両国の関係は複雑に錯綜しており、歴史的な問題とともに、現実的な問題も存在する。特に、歴史が残した問題による対立の溝を埋めることは難しい。両国は1965年に財産請求権関連問題の解決と経済協力に関する協定を結び、これが戦後の日韓関係の共通認識となっており、日本側は歴史問題を解決済みとする立場を取っているが、韓国国内ではこの協定に対する国民の同意が著しく不足している」

     

    外交関係で、歴史問題を持ちだしたら険悪になるのが普通である。それゆえ、出来るだけ過去に触れず、未来志向で交流する。これが、外交の定石とされている。文政権は、これと逆の方向を選んだのである。日韓関係が、悪化して当然なのだ。日本が禁じ手の「政経不分離」で対抗したのは、堪忍袋の緒が切れた証拠である。歴史問題には、経済問題で対抗するという、「最後通告」をしたのである。

     


    (2)「文大統領は就任以降、外交開拓を執政における重点中の重点に据え、外交の開拓による韓国経済の急速な発展、技術革新を期してきた。それ故に「南向き政策」「北向き政策」を相次いで打ち出し、協力拡大、市場拡張を進めてきたのだ。文大統領による積極的な外交や経済協力への取り組みは多くの成果を生んだ。しかし、実質的、戦略的なブレイクスルーという点では、期待通りにはならなかった」

     

    文氏は、南北交流を第一番に取り挙げてきた。北朝鮮の金正恩氏と首脳会談を重ねたが、結果的に約束したことは一つも実行できずにいる。それどころか、米朝ベトナム会談では北側へ間違った情報を提供し、米朝決裂をもたらす大失敗をした。これ以降、南北関係も悪化したままである。

     

    (3)「特に日本との関係は、就任以降改善しないどころか後退してしまった。両国の政治、外交上の関係は急速に悪化し、それが経済、貿易などの協力関係、サプライチェーンの寸断まで引き起こした。日韓関係の悪化により経済的に大きな損失が発生したことで、国内世論の不満も高まってしまった。さらには、日米韓の安全保障協力体制にまで影響を及ぼすことになり、日本、米国双方に不満を抱かせる結果になったのだ」

     

    文氏は、反日運動を国内保守派退治に利用する「悪手」を使った。保守派は、親日派という前提であり、韓国国内を二分する騒ぎを起こした。これによる国内分裂は深刻である。大統領として果たすべき「国内統合」を放棄し、分裂させた罪は重い。

     


    (4)「韓国は、経済、貿易、科学技術の分野において著しく日本に依存している。繊維製品の対日輸入依存度は99.6%、化学工業や関連工業製品の対日依存度は98.4%、自動車、飛行機、船舶などの部品における対日依存度は97.7%という状況だ。また、韓国の支柱産業である半導体などのハイテク製品に欠かせない新しい材料も、日本からの直接的な制約を受けている」

     

    ここに上げられているデータは、出所の明示もなく信憑性に欠ける。ただ、日本から中間財を輸入して加工し輸出するパターンが定着している。このため、対日貿易収支は万年赤字である。これこそ、韓国産業構造の脆弱性を如実に示している。韓国経済は、日本の技術と資本で発展したことを、このパラグラフが指摘している。

     


    (5)「こういった状況であるが故に、文大統領は近ごろ進んで日韓関係を改善せざるを得なくなっているが、おそらく「時すでに遅し」である。文大統領の任期が残り少なくなる中、日本側が態度を軟化させることはあり得ないし、文大統領の任期中に日韓関係が改善されることにもはや期待をしていないだろう」

     

    文大統領は、弁護士出身である。国際法には不案内と見えて、韓国司法による徴用工や慰安婦の判決が、いずれも国際法に違反していることに気付かなかった。こういう致命的な失敗により、日韓関係をどん底に突き落とす結果になった。優秀なブレーンがいなかったのだろう。今さら悔いてもどうにもならない。日本から見れば、「反日大統領」という烙印が押されたままである。

     

    次の記事もご参考に。

    2021-02-15

    メルマガ232号 不可能な「日韓和解」 恥の文化がない韓国と日本は「水と油」

    2021-02-25

    メルマガ235号 バイデンから引導渡された韓国、日米へ協力せず同盟国の「外様」へ格下げ

     

    このページのトップヘ