勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2021年02月

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    米バイデン政権の対中国経済戦略は、トランプ前政権が行った高関税率を維持しつつ、米中生産デカップリング(分断)に向けて拍車を掛けている。バイデン大統領が、先端技術分野から中国を排除する産業供給網構築のため、行政命令に近く署名する見通しだ。

     

    『日本経済新聞』(2月24日付)は、「米、同盟国と供給網整備 半導体やEV電池 中国に対抗」と題する記事を掲載した。

     

    バイデン米政権は半導体や電池など重要部材のサプライチェーン(供給網)づくりで同盟国や地域と連携する。この動きを加速させる大統領令に月内にも署名する。日本などアジア各国・地域との協力を念頭に、安定して調達できる体制を整備する。対立する中国に依存する供給網からの脱却を目指すものだ。

     

    (1)「バイデン大統領は供給網の国家戦略をつくるよう命じる大統領令に署名する。日本経済新聞が入手した原案によると、半導体のほか、電気自動車(EV)用の電池、レアアース(希土類)、医療品を中心に、供給網の強化策づくりに乗り出す。大統領令は「同盟国との協力が強靱な供給網につながる」と指摘。敵対国の制裁や災害など有事に影響を受けにくい体制を築くよう命じる見通しだ。半導体は友好関係にある台湾をはじめ、日本や韓国と連携するとみられる。レアアースでは有力企業を持つオーストラリアなど、アジア各国・地域との協力を視野に入れる」

     

    米国バイデン大統領は、供給網の国家戦略をつくるよう命じる大統領令に署名する。大統領令は、「連邦政府の運営を管理するための命令」である。米議会の承認を経ずに行える点が特色だ。政策効果の浸透上において、スピードを上げられる。半導体のほか、電気自動車(EV)用の電池、レアアース(希土類)、医療品を中心に、供給網の強化策づくりに乗り出す。

     


    これには同盟国・地域の協力がなければ不可能である。米国は昨秋から台湾や日本、オーストラリアなど特に技術や資源に強い国・地域に対し、中国に依存しない供給網の構築を連携してつくるよう呼び掛けてきた。特に米台間の動きは早く、すでに昨年11月、ワシントンで高官協議を行い、半導体や高速通信規格「5G」など7項目の技術連携で覚書(MOU)を結び、脱・中国を志向した新たな供給網の早期構築で一致したほど。
     

    日本側も米台連携の動きに同調し、昨年から経済産業省が主導する形で米国と同様に、台湾積体電路製造(TSMC)の誘致に力を注いできた。誘致に成功すれば「日米台」でより強固な供給網ができ、日本も将来にわたって先端の半導体を確保しやすくなる。そのためすでに総額2000億円の予算を設け、日本企業との連携を視野にしたTSMCの受け入れ準備を着々と整えている。

     

    このように、中国に依存しないで戦略品の製造体制を固めようというもの。こうなると、米国は「TPP」(環太平洋経済連携協定)へ復帰すべきだろう。戦略品だけでなく一般品でも、米国の巨大な市場を同盟国に提供するべく、TPP復帰を真剣に検討する時期である。同盟国に、こういう経済的な恩典を与えれば、戦略品の製造も順調に進むはずだ。

     


    (2)「具体的には、重要製品の供給網に関する情報を同盟国と共有する。生産品目で互いに補完するほか、非常時に速やかに融通し合える仕組みを検討する。余剰能力や備蓄品の確保も協議する。中国との取引を減らすよう要請する可能性もある。年明けから表面化した半導体不足は米自動車メーカーなどを直撃し、供給網の見直しは、その意味でも急務だ。ボストン・コンサルティング・グループによると、半導体工場立地別の2020年の生産能力シェアは米国が12%。世界最大の22%を占める台湾に増産を求めたが、フル稼働中だ。短期的には打つ手が乏しい」

     

    米国は、同盟国企業に対して中国との取引を減らすよう要請する可能性もある。具体的には、半導体禁輸であろう。バイデン米大統領は2月16日、米国中西部ウィスコンシン州で開いた市民集会で中国の人権侵害を批判した。「中国は報いを受ける」と強調したのである。対中国政策で、人権を重視する立場を改めて鮮明にした発言だ。デカップリングは、中国の違法行為への「報い」という位置づけである。

     

    (3)「中国の半導体の生産能力は30年に24%と世界最大になる可能性がある。供給網で中国に依存すれば、貿易規制を通じて圧力をかけられる恐れがある。中国は過去、尖閣諸島を巡り対立した日本へのレアアース輸出を規制したことがある。実際、米国はレアアースの約80%を中国から輸入している。医療品も最大9割を対中輸入に頼っており、予断は許さない。特に半導体の有力メーカーは世界でも限られ、米国と歩調を合わせるかは企業の判断による。米国と足並みをそろえるには各国政府の協力も不可欠だ。新たな供給網構築は今後、多くの時間を要する可能性も高い。

     

    中国の半導体の生産能力は、30年に世界シェア24%と最大になるという。これは、汎用品半導体である。だが、TSMCが日本や米国で本格的な増産に入れば中国が世界シェアの4分の1を占めることは不可能であろう。

     

    韓国は、半導体でどういう立場に立つのか。中国からは輸出継続を懇請されている。韓国政府にまで手を回していることは疑いない。こういう事情を察知している米国は、先手を打って中国への輸出禁止要請を出ないとも限らないのだ。こうなると、韓国の中国への二股外交は破綻する。韓国は、経済を理由に二股外交を正統化してきたが、その逃げ道を封じられる可能性が出てきたのだ。

     

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    文政権は、北朝鮮を「主敵」の地位から外した。これが、韓国軍の士気低下を招いている。38度線の向こうに、韓国を侵略した北朝鮮軍が大量の武器で今なお存在しながら、これを主敵と見ないと言うのだ。こういう「言い逃れ」が、韓国軍の北朝鮮軍への警戒心を弛緩させている。

     

    具体的には、従来になく脱北者が38度線を簡単に越えていることだ。脱北者が、北朝鮮軍であったならば、ゾッとする思いであろう。韓国軍の士気低下が著しく進んでいる証拠であろう。文大統領は就任後、国民に対して良いことを何もしない大統領である。

     

    『朝鮮日報』(2月24日付)は、「現在韓国軍は内部崩壊の状態にある」と題する社説を掲載した。

     

    今月16日にある北朝鮮男性が東海岸を通じて帰順したが、これはほぼ崩壊状態にある韓国軍の実情を赤裸々に示す出来事だった。韓国軍合同参謀本部が23日に発表した内容によると、この北朝鮮男性が韓国側の海岸を歩いて南に移動する際、監視カメラに10回も撮影されていたが、韓国軍はその8回目まで事態を全く把握できていなかった。前方の監視カメラでは2回にわたり警告灯と警告音が作動したが、監視兵は特に理由もなく風が原因の誤作動と勝手に判断してこれを無視した。幹部は電話中だった。最初から警戒をしていなかったのだ。任務を遂行しない部隊はここだけだろうか。決してそんなことはないだろう。

     


    問題の北朝鮮男性は5~6キロの距離を3時間以上かけて歩き、民間人統制ライン付近まで南下したが、最初に識別されてから師団長に報告されるまで34分もかかった。武装した敵軍が侵入していればどうなっていただろう。北朝鮮男性は海岸に設置されている鉄柵下の排水路に入り込んだ。ところが現場の部隊はこの排水路の存在そのものをこれまで知らなかったという。

     

    (1)「地形や地雷の危険性などから把握が難しかったと言い訳している。兵士が自ら担当する地域の中で、「行きにくくて危険」という理由で行ったことがない場所があるというのだ。昨年7月にはある脱北民が西海の鉄柵下にある排水路を通って越北したが、この時も合同参謀本部は現場の部隊全体に排水路の確認を指示した。ところが今回問題となった師団は問題の排水路を確認もせず、「問題なし」と報告していた。合同参謀本部の命令さえ聞き流しているのだ。これではもはや軍隊とは言えない」

     

    このパラグラフで印されている事実は、韓国軍がサラリーマン化している証拠である。文政権は、北朝鮮が主敵でないと宣言している以上、敵でない北朝鮮へ鋭敏に対応するはずがない。問題の根源は、文政権にある。

     

    (2)「合同参謀本部は「事態を深刻に認識している」とした上で「根本的な対策にあたる」と約束した。古いレコードが回っているような感覚だ。昨年の脱北民越北事件でも合同参謀本部議長は国会で「事態を深刻に認識している」として「根本的な対策にあたる」と誓った。「厳正な対処」「厳しい調査」「責任を痛感」などの言葉も、問題が発生するたびにオウムのように繰り返されているが、これらがわずか1回でも守られたことはない。今やこの種の言葉を聞くと国民はもちろん、兵士たちでさえ内心苦笑いをしていることだろう」

     

    北朝鮮軍が主敵でない以上、警戒心が弛緩するのは当然のこと。間違いの元は、北朝鮮に対する主敵の看板を降ろしたことにある。

     

    (3)「このように初歩的な警戒さえできない軍隊が、戦時作戦統制権(注:統帥権)の移管を急いでいる。核兵器を保有する北朝鮮と全面戦争が起こった場合、核抑止力を全く持たない韓国軍が核抑止力を持つ米軍を指揮するというのだ。これに米国が同意するだろうか。このようなナンセンスについては驚くべきことに韓国軍が先頭に立っている。軍人でありながら国を守ることをせず、国内の政治宣伝に没頭する大統領にこびを売っているのだ」

     

    精神的に言えば、韓国軍は北朝鮮軍に対して「腑抜け」状態になっている。こういう軍隊は、「インド太平洋戦略」のクアッド(日米豪印)に加えても、足手まといになるだけだろう。在韓米軍が韓国軍に統帥権を与えても、機能しないことは明白である。むしろ、弊害だけが出てきて、北朝鮮軍に敗北する最悪状態を招くに違いない。

     


    (4)「最も重要な韓米合同軍事演習は、すでにコンピュータ・ゲームのように変わってしまった。政権が行う南北ショーと平和ショーにより、韓国軍は事実上、精神的な武装解除に向かっており、今では「軍事力ではなく対話で国を守る」「韓米訓練については北と協議する」とまで言い出した。元在韓米軍司令官は現状について「このままでは北朝鮮に服属する」と指摘したが、この警告を誰が聞き流せるだろうか」

     

    文政権の国防意識は、ゼロ以下であろう。「軍事力ではなく対話で国を守る」などという話は、童話の世界である。自衛権は、国家存立の基本概念である。それさえ捨てて、北朝鮮と統一したいという文政権の存在に嘆息するほかない。

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    文政権は二枚舌である。日本に対して人権論を振りかざしてきた。慰安婦や徴用工は人権問題であり、「永遠に時効はない」と大見得を切っている。だが、中朝の人権弾圧に対しては完全沈黙である。二刀流を使い分けている韓国に、恥はないのだろうか。

     

    韓国は、国連人権委員会へ外交部長官を出席させず、次官が代役を務める。外交部長官が交代直後で、業務に精通していないというのが理由だ。本音は、中国や北朝鮮の人権問題に触れたくないためと指摘されている。過去の人権問題には張り切るが、現在進行形の人権問題には頬被りという二枚舌である。これでは、米国バイデン政権の心証が悪いはず。文政権は、信用できないのだ。

     


    『中央日報』(2月23日付)は、「外交部『業務熟知が必要』…韓国外交部長官、国連人権理事会不参加」と題する記事を掲載した。

     

    韓国政府が北朝鮮の人権問題などを扱う国連人権理事会ハイレベルセグメントに前年とは異なり、外交部長官ではなく次官を出席させることにした。

    (1)「第46回国連人権理事会ハイレベルセグメントは22日(スイス・ジュネーブ現地時間)に始まり、24日まで行われる。新型コロナウイルス感染症(新型肺炎)の状況を考慮し、今回の会議はオンラインで行われる。ハイレベルセグメントには、文字通り各国の高官が出席し、基調演説を通じて自国の人権基調と哲学を発表する。人権理事会が公示した日程と演説者を見ると、韓国の参加者は鄭義溶(チョン・ウィヨン)外交部長官ではなく崔鍾文(チェ・ジョンムン)第2次官になっている」

     

    バイデン米国政権登場で、人権や民主主義の価値観が自由主義陣営の前面に出て来た。韓国は、その人権擁護論に背を向けている。反日では、慰安婦や徴用工の人権を訴えるが、中朝の問題になると沈黙である。二枚舌である。

     

    (2)「ハイレベルセグメント参加者の職位は、各国の事情に応じて変わる。しかし、普遍的価値である人権を議論するための最も権威のある国際的舞台という点を考慮し、主に外交当局の首長が参加する場合が多い。鄭長官の前任者の康京和(カン・ギョンファ)前長官も2017年6月に就任した後、2018・2019・2020年のいずれも自身がジュネーブで開催される人権理事会で演説した。主要国からも長官が出席する。王毅中国外交部長はすでに22日に演説した。茂木敏充外相は23日、トニー・ブリンケン米国務長官は24日に演説する」

     

    鄭外交部長官は、現役官僚時代にジュネーブに駐在した経験もあり、人権問題と無縁であったわけでない。

     

    (3)「他の外交日程があって時間が合わない場合ならまだしも、今回の会合は対面でもなくオンライン会議だ。事前に録画した動画を各国の順序に合わせて上映する形で行われている。あえて鄭長官が直接出ずに、崔次官が演説者として出るのはなぜかという質問につながる。これについて外交部は、今月初めに就任した鄭長官はまだ業務熟知が更に必要だという趣旨で説明した。しかし、鄭長官のわずか半月前に就任したブリンケン長官は、今回の人権理事会高官会期に参加する

     

    事前に録画して、演説するスタイルである。米国のブリンケン国務長官も就任間もなく米国外交を引っ張っている。鄭氏の「逃亡」は、中朝への配慮によることは間違いない。

     

    (4)「特に鄭長官は現役官僚官時代、人権理事会が開催されるジュネーブで代表部大使まで務め(2001~2003年)、外交部入りしてから50年になる熟練の外交官だ。鄭長官は、先に青瓦台(チョンワデ、韓国大統領府)国家安全保障室長を務め、外交安保統一分野を総括した。もちろん、国連人権理事会自体は鄭長官が駐ジュネーブ大使を務めた直後の2006年に始まったが、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は1990年代に既に創設されていた。業務熟知が更に必要だという外交部の説明に多くの外交関係者が首を傾げる理由だ」

     

    米国は、韓国の逃げ腰を見逃さないであろう。人権という崇高な理念説明で逃げ回る韓国に警戒感を強めて当然である。バイデン政権が、日米韓三ヶ国会議で北朝鮮問題を議論するスキームをつくり上げ、第一回会合を終えた。これは、韓国の逃げ腰を押し止めるための方策であることが明確である。

     

    (5)「22日(現地時間)に同じくオンラインで行われた国連軍縮会議(CD)でブリンケン米国務長官は、「米国は、北朝鮮の非核化に今も集中しており、平壌(ピョンヤン)の違法な大量破壊兵器(WMD)と弾道ミサイルプログラムに対応するために同盟、パートナーと緊密に協力する」と述べた。ブリンケン長官が「韓半島(朝鮮半島)の非核化」ではなく「北朝鮮の非核化」と表現したのは就任後初めてのことだ。バイデン政権の焦点は、北朝鮮の核プログラムの除去および廃棄にあることを示している

    米国と韓国の北朝鮮問題(非核化)への認識は、かなり食い違っている。米韓は、この溝を埋めるためにも、北朝鮮に対して共通認識を持たねばならない。韓国外交部長官は、米国と同席すべきであろう。同じ会合の空気を知ることは、米韓相互理解に良いチャンスである。それを、みすみす逃すのだ。意図的である。

     

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    2021-02-08

    メルマガ230号 米のインド太平洋戦略から韓国脱落、文在寅「空想外交」の破綻

     

     

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    旧徴用工・旧慰安婦に関わる賠償金問題で、韓国政府が先に支払う「代位弁済案」を日本政府に提示した模様だ。この解決案は、旧徴用工について2019年末、当時の文国会議長によって議会へ提案されたが、韓国の旧慰安婦支援団体による強烈な反対運動に遭遇した。大統領府と与党も、「被害者意識の尊重」という原則に引きずられた結果、廃案になったという経緯がある。

     

    韓国大統領府も与党も、先見の明がなかったことは確かだ。米国の仲介を期待していたが、バイデン政権は日本側の立場を支持していると言われ、韓国政府の要請に応じなかったようである。米国からは、北朝鮮問題の前に日韓問題を解決せよと迫られ、韓国政府もついに決断したのかも知れない。

     


    『東亜日報』(2月23日付)は、「元慰安婦と徴用工への賠償金は韓国政府が先に支給、日本が韓国側案を前向きに検討」と題する記事を掲載した。

     

    韓国政府が最近、日本と実務陣接触を増やすなど積極的に韓日関係の修復を図っていることが分かった。日本政府は、元徴用工、慰安婦被害者に対する賠償金を韓国政府が先に支給するいわゆる「代位弁済案」を受け入れることができるという立場を韓国政府に伝えたという。代位弁済とは、第三者が代わって弁済し債権債務関係が消えること。

    (1)「韓日関係に精通した外交筋は22日、「外交部が最近、日本側と積極的に接触し、関係改善案を協議している」とし、「日本政府は、韓国が被害者に賠償金を先に支給する『代位弁済案』を検討してみることができると」と明らかにした。日本政府内では、韓国の韓日関係修復の動きについて、「最近、韓国政府の態度が変わった」という評価が出ているという」

     

    代位弁済案は一度、旧徴用工賠償法案として韓国議会に提案されたものだ。日韓の民間が寄付金を募って基金をつくり、韓国政府も関与するというものだった。日本側からは、寄付社名を出さないなど要請され、かなり煮詰まっていた。それを壊したのは、反日の元慰安婦支援団体である。日韓問題が解決すると、反日募金ができなくなるという私利私欲から出た我が儘だ。それを額面どおり受入れた、文政権に責任がある。

     

    韓国が、こういう点での条件整備が出来てきた結果かも知れない。元慰安婦支援団体が募金を横領するなど事件化されている。その面での反対運動は弱まっている。

     


    (2)「先月8日、元慰安婦女性の勝訴判決に対して、外交部が、「2015年の慰安婦合意が韓日間の公式合意」と確認したのに続き、文在寅(ムン・ジェイン)大統領も、「(慰安婦判決は)正直に言って少し困惑している」と述べた後、韓国政府が関係改善に積極的に乗り出しているということだ」

     

    旧慰安婦問題は、2015年の日韓慰安婦合意で解決済みの問題である。それを骨抜きにしたのは文政権である。自らの責任で解決すべきなのだ。慰安婦について、日本は募金に応じるはずがない。すでに、10億円を拠出した。

     

    (3)「これを受け、日本政府がこれまで韓日の外交関係者の間で議論された「代位弁済案」を受け入れる可能性を取り上げたという。日本政府が取り上げた代位弁済案は、ひとまず韓国政府が被害者に賠償金を支給することが基本骨子だ。賠償金のための基金をどのように、誰が参加して作るのか、今後、日本に求償権を請求することができるようにするのかなど、様々な派生案が出てくる可能性がある

     

    日本に対する韓国の求償権が生じるような解決案は、日本が受入れるはずがない。法的には、解決済みであるからだ。

     


    (4)「これは、日本企業の資産を強制的に売却しないという点で、日本が主張してきたマジノ線を越えない可能性がある。しかし、日本の直接賠償を望む被害者が多いだけでなく、文政府が強調してきた被害者中心主義を実現した解決策としては不十分だという声が出ている。このため、韓国政府が日本政府にこのような方式の代位弁済案を提示することができるかは未知数だ」

     

    問題は、韓国の政治情勢がこういう解決案を議会へ提案できるかどうかだ。4月は、ソウル・釜山の両市長選。5月以降は、来年の大統領選を目指す候補者選びなど選挙戦一色になる。日韓問題が提案されれば、与党は反日感情に飲み込まれる。結局、解決は次期政権となろう。それまでは、「交渉中」という進行形で、日韓関係のさらなる悪化を防ぐ程度だ。

     

    (5)「日本の謝罪と反省をどのように引き出すかも問題だ。2019年の「文喜相(ムン・ヒサン)案」は記憶人権財団を作って代位弁済するという案だったが、被害者の反発で失敗に終わった。外交部は、様々な可能性を開いて案を検討している。日本政府は依然として、日本側にとって受け入れ可能な解決策を示すよう強硬な態度を維持しているという」

     

    下線のような問題が出れば、即時に交渉は決裂するであろう。日本としては、解決済みの問題に対して、さらなる謝罪をするはずがない。韓国は、こういう微妙な問題に踏み込んで来たらアウトを覚悟すべきだ。

     

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    各国が威信を賭けて、コロナワクチン生産に取り組んでいる。ソフトパワーによる影響力を拡大するためだ。コロナワクチンが、世界的に重要な外交上の「通貨」となりつつある。

     

    中国とロシアは、欧米の製薬会社に伍して国産ワクチンを売り込んでいる。その中で、彗星のように登場したのがインドである。もともと、インドは世界のワクチン生産の約6割を生産する医薬品大国だ。そのワクチン製造企業名は、インド血清研究所(SII)である。公的機関のような印象を受けるが、純然たる個人所有の企業である。創業者の信仰心が厚く、コロナワクチン収束に向け世界に寄与すると抱負を語る。

     

    SIIは、1966年に個人が設立した企業である。2年間の研究・開発の末、破傷風を治療する血清を製造し、すぐに破傷風予防ワクチンを発売して参入した。SIIが現在、生産するワクチンは、ポリオ、ジフテリア、破傷風、百日咳、肝炎、BCG、ヘモフィルスB型、麻疹など多様である。

     

    世界中の子供の65%は、SIIが生産したワクチンを少なくとも1回は接種していると推定されている。同社が製造したワクチンは、世界保健機関(WHO)の認定を受け、世界170カ国に輸出されている。SIIは、自社が製造したワクチンが、各国のワクチンプログラムを通じて接種され、これまで世界中で数百万人の命を救ったと自負する。現在、容量基準で世界最大のワクチン製造会社へと発展した。『中央日報』(2月23日付)が報じた。

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2月15日付)は、「ワクチン外交にインドも参戦、先行する中国と火花」と題する記事を掲載した。

     

    インド洋に浮かぶ島国セーシェルに1月、インド海軍の飛行機が降り立つと、駐機場で外相ら閣僚がその貴重な貨物を出迎えた。インドで製造された英製薬大手アストラゼネカの新型コロナウイルスワクチン5万回分だ。その2週間前には、中国で製造された中国医薬集団(シノファーム)のコロナワクチン5万回分が人口9万8000人のセーシェルに届いていた。中国は戦略的な観点から、長らくインドの影響下にあるとみられていたこれらの地域に進出することを狙っている。

     

    (1)「インドはコロナ禍以前から世界のワクチン生産の約6割を握る医薬品大国だ。隣国との関係強化や影響力の拡大を目指し、ここにきて「ワクチン外交」の動きに加わった。中国当局は長年、セーシェルに前哨基地を構築しようとするインドの取り組みを妨害してきた。インドにとっては、セーシェルに前哨基地を建設できれば、周辺海域の中国海軍の艦艇や民間船舶の動きを監視できる。またインドはこれまで、中国の侵入を食い止めようと抵抗しており、沿岸一帯のレーダー基地網の建設を支援した。その結果、中印両国からのワクチン外交攻勢を受けた小国セーシェルが、大量のワクチンを確保するという異例の状況となった。ワクチン接種率で、セーシェルはイスラエル、アラブ首長国連邦(UAE)に続き世界3位だ」

     

    インドは、ワクチンだけでなく医薬品でも大生産国である。インドは、来たるべき経済大国として発展するため、中国の存在に焦点を合わせている。人口では、2027年に中国を抜いて世界一になる。コロナ外交でも、中国にひけをとらないように、という配慮がありありと見える。

     


    (2)「SIIは、アストラゼネカと英オックスフォード大が共同開発したコロナワクチンを1日に数百万回分の単位で生産している。また今年、米バイオ医薬品会社ノババックスが開発したワクチンを最大10億回分生産することを確約している。インドはワクチン輸出を開始した先月以降、2300万回分のワクチンを出荷。このうち650万回分は、インド政府がセーシェルやアフガニスタン、バングラデシュ、カンボジアなど隣国に加え、カリブ海のドミニカ共和国やバルバドスなどに無償提供したものだ」

     

    SIIは、アストラゼネカと英オックスフォード大が共同開発に対して、資金提供と生産面で協力した貴重な存在である。SIIが存在しなかったら、アストラゼネカのワクチンが日の目を浴びなかったかも知れないとされている。

     

    (3)「インド製造のアストラゼネカワクチンは、世界保健機関(WHO)が主導する世界ワクチン配布計画「コバックス」の大半を占める見通しで、今年1~6月期に2億4000万回分の出荷が見込まれている。これにはインドのライバル、パキスタン向けの1700万回分も含まれる。インド外務省の政策顧問アショク・マリク氏は、「多くの国がワクチンと言えば、インドを思い浮かべる」と話す」

     

    SIIが、WHOの世界ワクチン配布計画「コバックス」生産の大半を占める見通である。インド外務省は、「ワクチン外交」で中国を上回るはずと胸を張る。

     


    (4)「マリク氏によると、ニューデリーで省庁横断の特別委員会が毎週開催され、インド国内のワクチン接種計画をどの程度進めることができるか議論し、残りのワクチン輸出を承認する。インドは、これまで国民向けに供給したワクチンの3倍余りを外国に輸出している。これに対し、中国のワクチンメーカーは、国内で新たな感染者が出ていることを受け、海外向けの出荷を遅らせている

     

    インドは、国内向け供給の3倍余を輸出に向ける。自国の感染者増加にも関わらず、世界への義務を果たすというのである。中国は、国内優先供給方針に切り変えている。

     

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