勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2021年02月

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    中国習近平氏の強硬策は、先進国の反発と警戒心を一斉に高めている。中国に対して「寛容」な国はなくなった。唯一、ドイツのメルケル首相は中国へ親近感を持っているが、今秋に引退予定である。こうなると、もはや一国も中国を受入れる国はなくなる。

     

    NATO(北大西洋条約機構)は2月17日、バイデン米政権の発足後、NATOとして初の閣僚会合となる国防相理事会を開いた。この席で、米欧同盟の修復へ2030年に向けた新しい改革構想の検討に入った。年内に開く首脳会議で採択をめざすという。主要課題のひとつが欧州やサイバー空間、北極圏でも存在感を増す中国との対峙である。

     

    NATOは1949年、欧州防衛が目的で結成された。主として、旧ソ連の進出を警戒した軍事同盟である。だが、中国の軍事進出という新たな危機を迎えて、全世界的な警戒網設立へ動き出しそうだ。中国にとって、まさかNATOまで敵に回すとは想像外の事態だろう。

     


    『日本経済新聞 電子版』(2月18日付)は、「NATO、中国の『脅威』対抗 2030年へ新構想」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「NATO理事会では、ストルテンベルグ事務総長が「NATO2030イニシアチブ」と題した30年までの改革構想を加盟国の国防相に提案した。米新政権の発足を機に新たなNATO像をまとめ、トランプ前政権時代に深まった同盟の亀裂修復につなげたい考えだ。「欧州と北米の関係の新しい章を開くまたとない機会だ」。ストルテンベルグ氏は17日、理事会初日の協議終了後の記者会見で力を込めた。欧州防衛を軽視するかのような言動を繰り返したトランプ前政権時代に冷え切った米欧関係の改善に期待を寄せた」。

     

    NATOは2030年までに、「NATO2030イニシアチブ」をまとめることになった。新たな脅威となった中国へのNATO戦略構想をまとめる。NATOにとっても中国の軍事進出が、ついに脅威として受け取られることになった。

     


    (2)「ストルテンベルグ氏は理事会で、20年12月に公表した専門家グループの報告書に基づき、加盟国の国防相にNATOが対処すべき課題と、対応の方向性を提示した。ロシアと並列する形で中国の脅威への対抗を前面に打ち出したのが特徴だ。17日の記者会見では「世界中の民主主義の同志国との協力強化」で「ロシアや中国のように価値を共有できない国々に傷つけられているルールに基づく秩序を守ることができる」と強調。具体的な提案内容は説明しなかったが、報告書が提言した日本やオーストラリアとの連携強化などが盛り込まれたもようだ

     

    NATOは、日本や豪州との連携強化を視野に入れているという。北大西洋条約機構理事会はすでに2018年7月、ブリュッセルの在ベルギー日本大使館へ、「NATO日本政府代表部」を開設すること認め、開設済みであるという手際の良さだ。日本政府が、安全保障政策で万全の構えをしていることについて、それなりの評価をすべきだろう。

     


    「NATO2030イニシアチブ」では、日本やオーストラリアとの連携強化が盛り込まれる方向のようだ。米国は、「クワッド」(日米豪印)プラスαで「アジア版NATO」を模索している。NATOが、このアジア版NATO結成に協力することになれば、アジア各国も参加するだろう。とりわけ、南シナ海で中国に島嶼を奪われたフィリピン、ベトナムなども有力候補に挙がってくる。

     

    そういう事態になれば、中国は一挙に劣勢に追込まれる。中国は、莫大な軍事費を投入して周辺国を威嚇してきたが、もはやその効果がないと分かった時、国内はどういう状況になるだろうか。現在は、「中華再興」と国威発揚に燃えているが、急速な高齢化と社会福祉費増大の中で、軍事負担に耐えられないことを認識したとき、中国は「第二のソ連化」する可能性がある。

     

    『ロイター』(2月20日付)は、「中国台頭は『決定的問題』、NATO事務総長が危機感」と題する記事を掲載した。

     

    (3)「北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は19日に開かれたミュンヘン安全保障会議で、欧州や米国、カナダに対し国際的ルールに基づく秩序の維持を訴え、中国の台頭はNATOにとって問題だという認識を表明した。「中国とロシアは自らの利益のためにルールを書き換えようとしている」とした上で、「中国の台頭は大西洋を挟む社会にとって決定的な問題であり、われわれの安全保障、繁栄、生活に影響をもたらす可能性がある」と述べた。NATOは依然としてロシアを主な敵国と見なしているが、中国の軍事的影響力拡大に対応するため、同盟の主要方針である「戦略概念」に中国を含めることを検討している

     

    下線部分は、極めて重要である。中国をNATOの「戦略概念」に含めることを検討しているとした。これは、ロシアと並んで新たに中国を自由と民主主義の「敵」と位置づけることだ。私はこれまで本欄で、アジアの安全保障政策としてNATOとの協力が不可欠と主張してきた。これが現実化すれば、世界の安全保障体制は大きく変わるだろう。

     

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    韓国の文政権は、北朝鮮の「チュチェ思想」に心酔しているため、米国の自由主義・民主主義の政策と歩調を合せることができず、浮き上がった存在になっている。「チュチェ思想」とは、民族主義(反日米思想)である。民族主義で朝鮮半島を統一しよう、という野望に燃えているのだ。

     

    文政権は、統一できるならば韓国を北朝鮮化しても良いというほど、極端な傾向を見せている。これでは米国と歩調が合うはずがなく、米国を悩ませている理由だ。米国バイデン政権は、北朝鮮問題について、日米韓三ヶ国で協議するという、これまでにない体制を取り始めた。韓国を日米で引っ張るという構図を見せ始めているのだ。これでは、韓国の身勝手な主張は不可能になる。韓国は、「禁治産者」扱いに見えるのだ。

     

    『ハンギョレ新聞』(2月20日付)は、「バイデン政権発足後初の韓米日3カ国協議、トランプ時代より日本の影響大きく」と題する記事を掲載した。

     

    韓国と米国、日本が北朝鮮核問題と北朝鮮問題に関する3カ国協議を開き、朝鮮半島の完全な非核化に向けて緊密に協力することで合意した。米国でバイデン政権が発足してから韓米日3カ国協議が開かれたのは今回が初めて。

     

    (1)「外交部は19日午前、外交部のノ・ギュドク朝鮮半島平和交渉本部長と米国務省のソン・キム次官補(東アジア・太平洋担当)代行、日本外務省の船越健裕アジア大洋州局長がテレビ会議に出席し、「北朝鮮核問題と北朝鮮問題関連」(懸案)について協議したと明らかにした。外交部は同日、報道資料を発表し、「韓米日は最近の朝鮮半島状況に対する見解を共有し、朝鮮半島の完全な非核化と恒久的な平和定着を達成するため、3カ国が緊密に協力していくことで合意した」と伝えた。また3カ国が「朝鮮半島と北東アジア地域の平和と安定における3カ国協力の有用性を評価し、適切な時点に後続協議を開催することにした」と付け加えた」

     

    文政権は、発足当初からことさら日韓が同盟でないと敵対視してきた。だが、バイデン政権が、巧妙にもそういう韓国の「排日」を取り払ってしまった感じだ。米国が、北朝鮮問題を日米韓三ヶ国の問題として仕切り直したからである。米韓だけで北朝鮮問題を議論せず、日本も一枚加えて3ヶ国にしたのは、韓国の感情的北朝鮮接近論を封じる目的であろう。

     


    (2)「同日の協議が注目を集めているのは、韓米日協力を強調してきたバイデン政権が「北朝鮮核問題・北朝鮮問題」を初の3カ国協議のテーマにしたためだ。これに先立ち、バイデン政権は「米国の北朝鮮政策を見直し、同盟国の意見を反映する」と繰り返し強調した。米国が北朝鮮政策を検討する過程に関与する余地があるという面では、韓国にとって肯定的なシグナルだったが、日本が米国の「緊密な協議」の対象の主要軸に含まれていることが懸念を呼んでいる。北朝鮮核問題と北朝鮮問題に対する日本の立場は「先に核を放棄してから一括妥結」に近く、朝鮮半島非核化と平和構築の同時的・段階的アプローチの必要性を強調する韓国政府とは対照的だからだ

     

    日韓では、北朝鮮の核放棄に対する姿勢が根本的に異なっている。日本の立場は、「先に核を放棄してから一括妥結」に近い。韓国は、朝鮮半島非核化と平和構築の同時的・段階的アプローチである。過去の北朝鮮核放棄では、いずれも失敗してきた。それは、「同時的・段階的」で北朝鮮に騙されてきたからだ。こういう不信感がある場合、どのようにこれを克服するのか。公正な検証手段がない限り、日本案の「先に核を放棄してから一括妥結」が現実味を帯びる。

     


    (3)「米国務省が会議後に出した資料を見てみると、米国側の立場と意図がより明確にうかがえる。米国務省は「バイデン政権は米国の同盟関係、特に北東アジアの重要な同盟である日本と韓国との同盟関係の強化に努めている」とし、「こうした努力の一環として行われているバイデン政権の北朝鮮政策の見直しを背景に、米国、日本、韓国の代表たちと北朝鮮関連の共同の課題に対する認識を共有するため、バイデン政権発足後初の3カ国会議を開催した」と説明した」

     

    バイデン政権の狙いは、日韓連帯強化にありそうだ。在韓米軍の後方基地(海軍・空軍・海兵隊)は全て日本にある。この現実を見れば、日本が北朝鮮問題について発言する権利があるのは確かだ。韓国はそれをあえて無視してきた。

     

    (4)「国務省はまた、「(3カ国が)進めている米国の北朝鮮政策の検討について意見を交わし、持続的かつ緊密な協力と調整の重要性を強調した」とし、「それぞれ北朝鮮の現在の状況に対する評価を共有し、非核化と朝鮮半島の平和と安定の維持に対する持続的な意志を表明した」と付け加えた。韓日米の三角協力の枠組みを重視するというバイデン政権の政策的方向性が明確に表れている」

     

    文政権は、これまで「反日」を叫んできた。だが、北朝鮮問題では日米韓が共同歩調となると今後、反日で気勢を上げられなくなるという側面を計算しているに違いない。バイデン政権の深慮遠謀であろう。

     

    (5)「韓国外交部は、同日の報道資料で「3カ国協力の有用性を評価した」と発表したが、北朝鮮問題と北朝鮮核問題をめぐり日本という変数が浮上した状況は必ずしも歓迎すべきものではないと見られる。なかなか改善の糸口が見つからない韓日関係も負担として働く見通しだ」

     

    韓国外交部は、北朝鮮問題について日本が協議に加わってきたことで、複雑な思いを抱いているだろう。今後、日米韓三ヶ国の協議が定例化されると、韓国の反日言動はかなりの制約を受けよう。米国は、韓国を「禁治産者」扱いにし始めたようにも見えるのだ。

     

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    2021-02-17

    韓国、「やっぱり!」日韓関係改善、米国から強い圧力かかり南北対話の前に解決「迫られる」

    2021-02-15

    メルマガ232号 不可能な「日韓和解」 恥の文化がない韓国と日本は「水と油」

     

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    米国が、日韓関係の悪化に頭を悩ませていることは周知のことだ。この原因について「日本悪者説」が登場した。このほか、日本がミャンマーの軍事クーデターで、米国の主張する強硬策に賛成しないとして、日本を責める論評をしているのだ。この記事は、いったいどこまで、ことの本質を取材しているか疑問だらけである。あえて、俎上に上げてみた。

     

    『東洋経済オンライン』(2月20日付)は、「アメリカを悩ませる日本が抱える2つの大問題」と題する記事を掲載した。筆者は、ダニエル・スナイダー氏である。スタンフォード大学講師だが、ジャーナリズム出身である。

     

    (1)「アメリカでバイデン政権が発足してから数週間、かねての懸案事項に対して、日米で歩調をあわせた対応が取れるよう、舞台裏でさまざま模索が行われた。 大統領本人を含め、バイデン政権の高官は、日本との同盟関係が、中国の挑戦に対応するための広範な戦略の中心にあることを明らかにしている。バイデン政権側は、双方の度重なる議論の結果として、特に日本側からの要請が強い尖閣諸島から核抑止力に至るまで、アメリカが提供する安全保障の要請に応えるとともに、日本側が好むアイデアである「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)の創設にも応じてきた

     

    下線部の認識が間違っている。米国は、対中戦略の要として日本に依存している。インド太平洋戦略は、米中覇権争いの天王山に位置するもの。こういう地政学的重要性は、日米ともに共有している点だ。米国は、日本の要請でインド太平洋戦略に乗った形だが、これによって日米豪印の結節点ができたのである。米国は、むしろ日本に感謝すべき立場であろう。

     


    (2)「水面下では、ホワイトハウスの日本に対する不満が高まっている。重要な問題に亀裂が生じる中、今後数週間から数カ月の間にそれが拡大する可能性が出てきた。舞台裏では、ミャンマーの軍事クーデターへの対応や、泥沼化している日韓関係への対応について食い違いが生じている。そして、両問題の背後にあるのが、やはり中国である。同盟国としてどのように対応していくべきかという、より大きな問題に結びついている」

     

    下線部も間違っている。米中覇権争いで、米国は日本の協力を必要とする立場である。その米国が、日本が意のままに動かぬと言って不満を持つはずがない。バイデン大統領は、同盟国の意識統一を優先するとしている。意識の違いを調整することに不満を持っていたら同盟の結束など空念仏である。バイデン氏とトランプ氏の違いは、ここにあるはずだ。

     

    ミャンマー軍事政権は、米国が強硬策を取れば確実に、中国へなびくであろう。これは、愚策である。『ウォール・ストリート・ジャーナル』も、この点を最も懸念している。ここは、日本流の「根回し」に任せるべきだ。インドは、ミャンマーと深い関係がある。インドは、ミャンマーが中国へなびくことを最も警戒している国の一つである。

     


    (3)「バイデン政権は発足後数日の内に、日韓の両同盟国に、こじれた関係を修復するために迅速に動くよう、穏やかではあるが明確なメッセージを送っている。先ごろの茂木外相との電話会談では、ブリンケン国務長官は「日米韓3国間の調整や、日米豪印戦略対話(Quad)を通じた更なる地域協力を歓迎する」と述べた。これだけ熱心に関係改善を呼びかける背後には、日韓関係の悪化が、日米豪印戦略対話を含む地域の安全保障ネットワークを強化しようとするバイデン大統領の計画に大きな戦略的な齟齬となるのではないかという懸念が、ワシントンで高まっていることがある」

     

    下線部も事実に反する単なる憶測である。米国は、韓国へ「クワッド+α」として参加するように呼び掛けたが、結果は芳しくなかった。この結果、英国をクアッドへ参加させる検討を始めているのだ。英国もその意向を固めており、近くインドと話合う予定とされている。こうして、韓国はクアッドに参加しなければ「流浪の民」となりかねない状況である。困るのは韓国なのだ。

     

    (4)「日韓関係は、「ここ数十年でもっとも最悪な状態にある」と、アメリカ議会調査局が最近発表した日米関係の報告書は結論づけている。菅義偉政権は3国間の安全保障での協力には賛成する一方で、特に戦時中の歴史問題をめぐる問題となると、韓国との関係改善を求めるアメリカの圧力に抵抗を示している。菅首相はバイデン大統領に対し、韓国側が日韓2カ国関係の正常化に関する1965年の条約を事実上破っていると述べ、「彼らはまずその過ちを正さなければならない」と話した」

     

    日韓関係の最大の争点は、韓国が国際法違反の判決を連発しており、すでに解決済みの問題を蒸し返していることだ。米国は、国際法遵守の立場から中国と対立している。この原則から言えば、韓国に対して国際法を守れという立場のはずだ。現に、韓国メディアはこういう視点からの報道である。つまり、日韓関係悪化の原因は韓国がつくったという判断に傾いているのである。

     


    (5)「文大統領と彼の顧問等はまた、バイデン新政権が日本との関係を改善するよう圧力をかけてくることを予想しており、先手を打ってバイデン政権に協力の意思を示したいと考えていることもある。「文政権は、バイデン大統領が介入する前に、日韓関係を改善するためのイニシアチブを示す必要があった」と関係改善の提唱者は話す。文大統領自身の人気が低下し、反日ナショナリズムを利用した支持率向上策も、最近では効果が薄れてきていることもある。「韓国の現在の状況は、日本を非難することが、もはや文大統領と与党にとって政治的な支持率向上施策とはなっていない」と、前記の提唱者は主張する」。

     

    韓国は、すでに米国から圧力を受けている。「日韓問題を解決してから、南北問題を議論しよう」とまで言われているのだ。この点も、韓国では報道済みである。日韓問題の解決の鍵は、韓国が握っている。だが、韓国政府は具体案を出す気配がないのだ。時間稼ぎをしていれば、米国が仲介してくれるという人任せの姿勢である。日本が、こういう韓国政府の動きを見て、真面目に取り合わないのは当然である。

     

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    『朝鮮日報』(2月20日付)は、「日本は米国とさらに密着、クアッド事務局の役割を果たし影響力強化に乗り出す」と題する記事を掲載した。

    (1)「米国での政権交代から1カ月で日本はバイデン政権における最も重要な同盟国として浮上している。バイデン政権が米国、日本、オーストラリア、インドの4カ国による安保協力体「クアッド」を東アジア政策の重要な手段として活用する意向を明確にしたことで、日本の影響力がさらに拡大しそうな雰囲気だ。日本は最近になって事実上のクアッド事務局のような役割を担当しており、インド・太平洋地域における対中戦線の構築にも積極的に乗り出している」

     

    インド太平洋戦略は、もともとの発想は安倍首相(当時)である。安倍首相が、豪州やインドを仲間に入れたもので、これに米国トランプ大統領(当時)が乗ったという経緯である。日本がクアッド(日米豪印)4ヶ国の事務局代わりになって推進するのは当然である。

     

    日本が、このようにインド太平洋戦略に力を入れるのは、中国の尖閣諸島への領海侵犯が頻発していることへの危機感による。さらに、南シナ海の島嶼占領という違法行為を食い止めなければ、アジアは大変な事態になるという世界戦略論が働いた結果だ。

     


    (2)「
    バイデン政権は日本の安倍晋三・前首相が提唱した「自由で開かれたインド・太平洋(FOIP)」というスローガンをそのまま使用することで日本に力を与えている。ミャンマーで軍事クーデターが起こった際にも、アジア諸国の中で最初に日本とこの問題について意見を交換した。茂木敏充外相は先日からインドに対し、より積極的に中国に対抗するよう説得を続けているという」

     

    ミャンマーは、古くから日本と深い関係にある。同時に、印度も自国の中古潜水艦をミャンマーへ供与するなど関係を深めている。となると、日本・印度・米国が連携を深めてミャンマー・クーデターに対処するほかない。無闇に強固策を取れば、ミャンマーを中国へ接近させるという配慮が日本にあるのだろう。

     

    (3)「日本は米日同盟の基盤の上に欧州の主要国をインド・太平洋地域に引き入れる役割も果たしている。日本は今月はじめに開催された英国との外相・国防相会議(2プラス2)を通じ、英国が今年インド・太平洋地域に空母クイーン・エリザベス艦隊を派遣することと、米国と共に3カ国共同の軍事訓練を行うことで合意した。フランスも近くインド・太平洋地域に艦隊を派遣し、3カ国による演習を実施した後に長崎県の佐世保港に入港する予定だ」

     

    日本は、欧州とも深いつながりを持っている。英国は、かつての日英同盟(1902~23年)の相手国である。日本の政治制度は、英国の議員内閣制を取り入れたものだ。こういう関係から言って、日本が欧州主要国と防衛面で協力関係を築けるのは自然な話であろう。

     


    (4)「米日同盟がバイデン政権発足によって一段階アップグレードするような雰囲気も見受けられる。米国は新政権発足からわずか1週間で大統領、国務長官、ホワイトハウス国家安保補佐官が相次いで日中が領有権を主張している尖閣諸島(中国名、釣魚島)防衛の意向を明確にしたが、これは過去にはなかったことだ」

     

    米国は、大統領、国務長官、ホワイトハウス国家安保補佐官が相次いで、尖閣諸島防衛は日米安保条約の適用範囲であると発言した。これは、日本側が要請したものでない。米国が、先に日本を頼りにするというメッセージを発したものである。米国にとって、中国問題が最大の安保問題になっていることを示している。

     

    (5)「菅義偉首相は、アジア諸国の首脳としてはじめてバイデン大統領と電話会談を行ったのに続き、防衛費分担金問題を同盟国の中で最初に妥結したこともこのような流れに乗ったものと考えられる。米日両国は先日、在韓米軍駐留経費の分担金を事実上現行レベルで1年間凍結するという異例の決定を行い、両国の対立要因を最小限に抑えることで対中戦線において足並みをそろえることにした。東京のある有力な消息筋は「昨年までは『トランプ・リスク』によって日米関係が緊張することもあったが、バイデン大統領就任後はそのような問題はなくなった」「中国牽制を目指して両国は今後も一層密着する可能性が高い」と伝えた」

     

    日米関係では、トラブルになるような問題は一切取り除こうという合意ができているようである。雑音を減らして、対中国戦略で足並みを揃えるということだ。

     


    韓国は、こういう日米関係に比べて米国との間の溝が埋まっていない。韓国が目指す南北対話は、日米韓三ヶ国の協力体制が整った後のこと。米国は、こういう姿勢で韓国に臨んでいる。そのためには、日韓関係を解決せよと韓国に迫っているのである。日米関係が深まれば深まるほど、米韓関係の溝が深まるという皮肉な事態を招いているのだ。

     

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    中国は、香港へ「国家安全法」を導入して、英国へ大きな代償を払わされる様相が濃くなってきた。習近平氏は2015年、英国訪問を果たし「英中蜜月」と騒がれた。それも、今は昔話となった。英国の中国嫌いが徹底してきたのである。

     

    『日本経済新聞 電子版』(2月19日付)は、英中『黄金時代』に幕、香港住民は英移住ビザに殺到」と題する記事を掲載した。

     

    英中関係の悪化に歯止めがかからない。中国が香港への統制を強めたのをきっかけに、香港の旧宗主国の英国が反発。英国が始めた香港住民の移住支援策には申請が殺到している。中国のウイグル族の人権問題では、中国が英BBCの放送を禁じた。「黄金時代」とうたわれた蜜月関係は終わりを迎えている。

     

    (1)「英中関係は、最近まで「黄金時代」と称されていた。英国は2015年に中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)に主要7カ国(G7)で最初に参加した。中国企業による英国内の原子力発電所への出資や鉄鋼大手の買収など基幹産業での結びつきも強まった。だが、中国国内の新型コロナウイルス対策の初動への疑念などから、英国内で対中懐疑論が台頭し始めた。20年6月末に習近平(シー・ジンピン)指導部が香港で統制を強める香港国安法を制定すると、英中関係の悪化は決定的になった」

     

    中国は、英中で取り決められた「一国二制度」を、香港への「国家安全法」導入で破棄した。これが、中国への不信感を強め、怒りへとなっている。かつての「大英帝国」である。その沽券に傷をつけられたのである。中英関係が、急速に冷却化するのは当然であろう。

     

    (2)「中国の放送当局は21年2月11日、英BBCワールドニュースの放送を禁止した。BBCはウイグル族の「再教育施設」について、人権迫害や集団の性的暴行があったと報じ、中国が抗議していた。これに先立つ4日、英当局は中国国際テレビ(CGTN)の番組の最終的な編集権を中国共産党が握っているとして、放送免許を取り消した。英紙デーリー・テレグラフによると、中国人3人が中国の別々の報道機関への勤務を装って英国に入国していた。英当局が身元を突き止めスパイ容疑で中国に送還したという」

     

    英国は、諜報機関が世界で1、2位を争う実績を持っている。その嗅覚の裏をかこうとした中国人スパイ3人が身分を突き止められ、強制送還されたという。中英関係は、ここまで冷却化している

     


    (3)「英政府は、春以降に最新鋭空母クイーン・エリザベスをインド太平洋地域に派遣する際、日本の自衛隊と共同訓練する方針を固めている。中国の海洋進出をにらんだもので、東シナ海・南シナ海情勢を巡り一方的な現状変更の試みに反対するための連携強化だ」

     

    英国は、最新鋭空母「クイーン・エリザベス」をインド太平洋に長期派遣する。日本が母港になる見通しである。これは、英国が日米主導の「インド太平洋戦略」の「クアッド」(日米豪印)へ参加する可能性を高めるものだ。米国は、すでに英国をクアッドの一員に加える意向と伝えられている。これが実現すれば、中国にとって極めて由々しき事態を招く。英国は、NATO(北大西洋条約機構)加盟国である。このことから、「クアッド」参加国は「アジア版NATO」の一員になる可能性が高まる。

     

    NATOは、2030年を目標に対中国戦略を決定する予定だ。中国の存在がNATOにも脅威という認識である。それまでに、アジア版NATOが結成されれば、この双方に包囲される事態になろう。この意味で、英中対立は中国の将来に大きな影を落としそうだ。

     


    (4)「
    英国が強硬路線にカジを切るのは、ジョンソン政権を支える与党・保守党内の対中懐疑派が勢いを増している点が大きい。特に伝統的に人権を重んじる保守派にとっては、香港の自治の侵害やウイグル族の強制労働が疑われる問題は容認できない。英議会では政府提出の貿易法案に、特定民族の破壊行為があると認定された国との貿易や投資の協定を結びにくくする修正を加えようとする動きが活発化している

     

    下線部分は、中国を想定している。英国議会は、政府に対して中国と将来、貿易協定を結ばせないように「ブレーキ」を掛けようとしている。

     

    (5)「上院は、2月上旬の貿易法案の審議で「英国の高等裁判所に、民族破壊行為があったかを判断する役割を与え、『あった』と認定された場合、議会で当該国との通商政策について議論する」という趣旨の修正を加えた。議会が既存の自由貿易協定(FTA)を停止したり、進行中の交渉を止めたりできるようにする狙いだ。修正案が下院に戻ると、政府は上院の修正案を拒否する代わりに、「議会の委員会に民族破壊行為について調査する役割を与える」という妥協案を示した」

     

    貿易法案は、高等裁判所が民族破壊行為のあったと判断した国に対して、議会が既存の自由貿易協定(FTA)を停止したり、進行中の交渉を止めたりできるようにする狙いである。これは、中国による新疆ウイグル自治区での民族弾圧を想定した法案である。英国は、この中国と自由貿易協定を結ばないし、貿易交渉を中断させるという内容だ。

     


    (6)「2月9日、この案が賛成多数で可決された。与党・保守党から上院の修正案に賛同する議員約30人の造反が出た結果だ。上院は再び、同様の修正を追加して下院に差し戻す見通し。もし、法案の賛同者が増えて可決されれば、英国の参加後に中国が環太平洋経済連携協定(TPP)に入る際の大きな障壁になる可能性もある

     

    英国は、今年中にTPPへ加盟が決まる見通しである。仮に将来、中国がTPPへ加盟申請しても、英議会がその交渉を打ち切らせる、つまり英国は中国加盟を阻止するとしている。TPPへの新規加入は、全加盟国の賛成が条件である。英国が一国でも反対すれば、中国加盟を阻止できる「縛り」を生かすのだ。さすがは、「大英帝国」である。その誇りにかけても、新興国・中国を甘やかさないという毅然とした姿勢である。

     

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