勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2021年03月

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    文大統領は、内外の政策で完全に袋小路へ入り込んだ。文氏が政治生命を懸けた南北交流は、米国バイデン大統領が金正恩と面会しない方針で宙に舞うことになった。文氏の大統領在任期間は、あと13ヶ月を残すのみである。国内では、次期大統領選の候補者選びが始まる。文氏のレームダックは確実だ。文氏は、内外で何も業績を残せなかった大統領になろう。

     

    『中央日報』(3月31日付)は、「金正恩に会うことはない、これがバイデンスタイル…韓国の『トップダウン推進』立場を事実上拒否」と題する記事を掲載した。

     

    北朝鮮へのアプローチをめぐる韓国と米国の隔たりが克明に表れた。韓国は北朝鮮非核化のために米朝の首脳が直接会うトップダウン方式を好むが、米国は米朝の首脳が会うことはないという点を明確にした。北朝鮮は弾道ミサイル発射試験に続き、30日には金与正(キム・ヨジョン)労働党宣伝扇動部副部長の談話で文在寅(ムン・ジェイン)大統領に向けて「米国産オウム」「厚顔無恥」などと暴言を浴びせ、文政権が推進する南北協力に呼応する考えがないことを表した。米国とは隔たりが浮き彫りになり、北朝鮮には拒否され、文政権の北朝鮮政策は「総体的難局」に直面している。



    (1)「米ホワイトハウスは29日(現地時間)、バイデン米大統領は北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長と会う考えはない、と明らかにした。サキ報道官はこの日の定例記者会見で、「大統領は北朝鮮と一定形式の外交をする準備ができていると話したが、金委員長と向き合って座ることも含まれるのか」という質問を受けると、「彼(バイデン大統領)の接近方式はかなり異なると考える。それは彼の意図ではない」と答えた。ホワイトハウスと米国務省はバイデン政権の発足直後から北朝鮮に対する「新しい接近法」を予告してきたが、首脳会談の可能性を一蹴したのは異例だ」

     

    文氏は、大統領在任中になんとしてもあと一回、金正恩氏と会談したい。これによって、南北交流を軌道に乗せたいとしているが、不可能になってきた。7月の東京五輪で、日米韓朝4ヶ国首脳会談を開きたいという夢物語は完全に消えた。

     

    (2)「文在寅政権はバイデン政権にシンガポール式の米朝首脳会談を提案するなど、トランプ式の北朝鮮政策の延長線で政策を推進すべきだという立場を伝えたが、結局、拒否されたのだ。ブリンケン国務長官は国連体制内で同盟と共に北朝鮮の核問題を扱うと強調した。ブリンケン長官はこの日、ニューヨークの海外メディア向けプレスセンターで記者会見し、「(北朝鮮の)弾道ミサイル発射は国連安保理決議を違反し、地域と国際社会を脅かすため、我々そして国連体制を含む同盟とパートナーの糾弾対象だ」と明らかにした。これに先立ちバイデン大統領は25日、「ミサイル発射は国連安保理決議1718号違反」と宣言し、米国は直ちに安保理傘下の北朝鮮制裁委員会を招集した」

     

    米国は、トランプ大統領時代の米朝トップ会談で問題解決する方式を捨てた。全て、国連や同盟国と一致した行動によって、北朝鮮へ圧力を掛ける方式へ戻る。文大統領が、単騎で動いてもどうにもならない状況になっている。

     

    (3)「トランプ政権の北朝鮮政策がトランプ-金正恩間の首脳外交に焦点を合わせたのに対し、バイデン政権は韓日米3カ国の連携や中国など周辺国の関与を強調した。ブリンケン国務長官は「我々は北朝鮮問題に関しては米韓日間の調整がどれほど重要であるかを知っている」とし「3カ国は北朝鮮の挑発に対抗して朝鮮半島非核化を進展させるという約束の前で団結している」と評価した。

    米国は、先ず日米韓3ヶ国で北朝鮮の徴発に対抗する姿勢である。韓国だけの動きを封じている。

     


    (4)「ブリンケン長官は最近、韓国と日本を訪問した当時、北朝鮮核問題を主な議題とし、アラスカ州アンカレジで中国側とも議論したと伝え、「中国と意見がある程度一致する分野の一つだと考える」と述べた。北朝鮮の同盟であり経済的な命綱である中国までも引き込んで北朝鮮を圧迫するという米国の意志を表している」

     

    米国は、中国とのアラスカ会談において北朝鮮問題で歩み寄りの可能性がある、と見ている。中国は、北朝鮮問題で米国へ歩みよらざるを得ない事態を抱えているようだ。その中身は不明である。

     

    (5)「米軍は30日、米陸軍ホームページで、在韓米軍をはじめとするインド太平洋地域の米軍が今月初めから12日までミサイル防衛合同訓練をしたと、今になって公開した。太平洋地域駐留米軍のミサイル防衛部隊が合同訓練に同時に参加したのは初めてだ。訓練に参加した米軍部隊の配置地域を見ると、北朝鮮の弾道ミサイル攻撃を想定している可能性が高い。今回の訓練を自衛隊は参観した可能性が高いが、韓国軍は参加しなかった。軍関係者は「米軍は韓国軍に参加を要請しなかった」と話した」

    下線部のように、米国は韓国と一線を引いている。韓国とは、「腹を割った話合い」を避けているようにも見える。韓国を信頼しきれないという面があるのだろう。

     

    ムシトリナデシコ
       

    韓国の一部公務員が、政府の内部情報を利用して公共事業用地を先買い、大儲けしたことで非難が殺到している。文政権は、この非難を交わすべく新たに公務員130万人の財産を登録させると発表した。これに対して、公共事業と無縁の職場の公務員からは、逆に政府非難が出るなど蜂の巣を突いたような騒ぎである。

     

    政府は、4月7日のソウル・釜山の両市長選が与党候補不利であることから、選挙対策上「一芝居」打っている感じが強い。ここまで真剣に不動産対策を行っている、というポーズなのだ。

     

    『中央日報』(3月30日付)は、「韓国、9級末端公務員まで財産登録 100万人に青天の霹靂」と題する記事を掲載した。

     

    韓国政府と与党が公職者の不動産投機根絶に向け、公職者の財産登録範囲を9級下位職の公務員まで拡大する案を出したことを受け公務員らが反発している。


    (1)「洪楠基(ホン・ナムギ)副首相兼企画財政部長官は29日に不動産投機根絶と再発防止対策に関する会見を開き、「不動産投機根絶と再発防止対策をまとめ、政府は法・制度・文化・行動などを原点から点検した。原則的にすべての公職者に財産を登録させる」と明らかにした。「特に予防対策に重点を置いた」とした。前日「共に民主党」と政府が韓国土地住宅公社(LH)事態の再発防止対策高位協議会を開いて導出した結果だ」

     

    政府は、130万公務員の財産を登録させると言うが、公共事業と無関係な職場に勤務する公務員まで調査するのは非現実的である。「土地情報」に関係する職場だけ調査すれば済む話であろう。政府は、これまでの「土地無策」を全公務員調査で隠す、あくどいやり方である。

     

    (2)「洪副首相の言葉通りならば、現在4級以上の公務員を基準としている公職者財産義務登録範囲が5~9級まで拡大する。昨年出された行政安全部の「2020行政安全統計年報」が集計した2019年12月基準の全国の公務員数は110万4000人だ。政府はすべての公務員と公共機関職員まで加えれば財産登録義務化対象は130万人程度になると推定した。現在財産登録対象の高位公務員は約23万人だ。新政策が施行されれば100万人以上が追加で登録対象になる」

     

    現在、財産登録対象の高位公務員は、約23万人である。新政策が施行されれば、さらに100万人以上が追加で登録対象になる。一口に100万人というが、膨大な事務量の増加で、ほとんど意味をなさない業務であろう。土地情報の管理を徹底化し、当該地の土地登記簿を集中的に調査すれば犯罪の有無は判明するはずなのだ。

     


    (3)「これに対し、「すべての公務員を潜在的犯罪者とみているということなのか」という反発が出ている。大邱(テグ)公務員労働組合はこの日声明を通じ「(すべての公職者財産登録義務化は)ニューフェース公務員に犯罪集団のくびきをかけるもの。公務員という理由で親の財産まで公開しなければならないいまの大韓民国の現実はあまりにみじめだ」と明らかにした。その上で「財産登録義務化を即時中断し、1日も早く実効性ある政策をまとめるよう厳重に要求する」と強調した」

     

    一般公務員の反発は大きいであろう。土地と無関係な職場に勤務する公務員には、不愉快千万であろう。実効性ある政策は、前のパラグラフで私が提案したように、土地情報の管理を徹底化し、当該地の土地登記簿を集中的に調査すれば公務員の投機行為が把握可能である。

     

    (4)「一部では、4月の補欠選挙を控え怒った世論をなだめるための方便にすぎないと解釈した。これに先立ち全国公務員労働組合は23日に声明を出し、「選挙を控えて危機を回避するためのアピール式展示行政を中断すべき。下位職公務員は土地投機危機から目をそらすためのスケープゴートではない」と強調した。全教組出身である大田(テジョン)地域の小学校教師は「政権が公職社会の票をすべてあきらめたようだ」と声を高めた」

     

    目前に迫ったソウル・釜山の市長選対策である。政府は、不動産対策を真剣に行なっているというポーズを見せたいだけである。

     


    (5)「
    実効性に対する疑問も提起された。大邱公務員労働組合は「(財産登録義務化が)もっともらしい対策のように見えるが実効性も効果もない制度」と主張した。同組合は「自治体9級から7級公務員はほとんどが住民自治センターや事業所で請願業務を処理している。彼らは(LH事態を呼んだ不動産関連の)『特定情報』に対する接近は不可能だ」と説明した」

    自治体9級から7級公務員は、全く政策立案とその実行を担う職場と無縁である。「市民窓口」へ勤務する公務員の財産登録は、無意味で事務煩雑になろう。プライバシーの侵害にも当るのだ。

     

    次の記事もご参考に。

    2021-03-29

    韓国、「選挙対策」ソウル・釜山市長選で与党不利 全公務員の財産調査し土地投機封じ「

     

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    アップルが開発中である夢の自動EV(電気自動車)は、まだ受託生産先が決まらず交渉中という。韓国の現代自動車や同傘下の気亜が一時、有力な受託生産先と報じられ、株価が急騰する場面もあった。また、日産自動車も「交渉中」と噂されたが、空振りに終わった。その後は、すっかりアップルカーの話題が消えたが、新たに鴻海(ホンハイ)が受託生産先に浮上している。

     

    『ブルームバーグ』(3月30日付)は、「アップルカー iPhoneで培った手法で開発か 自動車会社と協議難航」と題する記事を掲載した。

     

    アップルには新製品の投入に向けお決まりのやり方がある。自社で設計、独自の部品を調達し、外部のメーカーに組み立てを委託し協力していくというものだ。

     

    (1)「自動車市場への参入を目指すアップルだが、一部の大手自動車メーカーとの協議は行き詰まっている。そのため「iPhone(アイフォーン)」などで培ってきた手法を採用し、製造を請け負う比較的知名度の低い企業と手を組む可能性がある。自動車の製造でアップルには主に3つの選択肢がある。既存の自動車メーカーとの提携、独自の製造施設建設、台湾の鴻海精密工業(フォックスコン)やカナダのマグナ・インターナショナルなど受託生産事業者との協力だ」

     


    かねてから、自動車の開発・生産受託の世界大手であるマグナ・シュタイヤー(オーストリア)の存在が注目されてきた。同社のフランク・クライン社長は日本経済新聞の取材に「マグナは車業界のフォックスコン(台湾・鴻海=ホンハイ=精密工業傘下)になりつつある」と述べたことがある。

     

    マグナはこれまでに10社、30モデル、累計370万台の車を生産した。独メルセデス・ベンツの高級多目的スポーツ車(SUV)「Gクラス」、独BMWのセダン「5シリーズ」、トヨタ自動車のスポーツ車「GRスープラ」などだ。ソニーのコンセプトEV「VISION-S(ビジョンS)」の製造を受託し、最近は、アップルが参入を検討しているEVの提携先の候補として取り沙汰されたこともある。

     

    (2)「アップルは韓国の現代自動車など複数の自動車メーカーと接触したが、協議は難航。このシナリオでは、アップルが自動運転システム、内外装および車載技術を開発し、最終的な生産を自動車メーカーに委託する。これは実質的には既存の自動車会社に対し、自社ブランドを捨て、新たなライバルの製造を引き受けるよう依頼するようなものだ」

     

    既存自動車メーカーにとっては、受託生産によって固定費は引下げられるメリットがある。ただ、アップルカーの「下請け」というイメージは、「社格」に傷をつけるというマイナス面も考慮しなければならない。

     

    (3)「アップルは機能の仕方や形など自動車の仕組みそのものの前提に挑もうとしているが、従来からの自動車メーカーは、そうした現行の価値基準を打ち砕くライバルとなる可能性を秘めた企業の支援には消極的だ。アップル、テスラ両社で長くマネジャーを務めた関係者は匿名を条件にこう指摘する」

     

    アップルが、既存の自動車の枠を飛び出たEVとなれば、受託生産先の自動車メーカーには、自らライバルを育てることに協力するような矛楯を背負うことになる。こうなると、「アップル」というブランドに飛びつく危険性が高くなるのだ。

     

    (4)「アップルと自動車業界の交渉はここ数カ月で立ち消え状態となっている。現代自と傘下の起亜自動車は電気自動車の開発に関する協議を確認していたが、その直後に協議を行っていないと説明。アップルの自動運転車チームは昨年、フェラーリの担当者と会ったものの進展はなかったと、事情に詳しい1人の関係者が明らかにした。日産自動車は今年2月、アップルと協議していないことを確認した」

     

    現代自と傘下の起亜は、韓国株式市場が「好材料」と飛びついただけで終わった。アップルは、なぜか交渉をひた隠しするクセがある。株式市場で話題になれば、それだけで交渉を打ち切るという「高飛車」な態度だ。交渉過程を伏せておいて、「アッ」と驚かす手法を狙っているのかも知れない。

     

    (5)「こうした事情を背景に、鴻海精密とマグナがアップルの自動車事業を巡る提携で有力候補に浮上していると、複数の業界関係者が明らかにした。鴻海精密はiPhone組み立てでアップルに最も頼られているほか、自動車事業にも進出。マグナも約5年前にアップルと自動車製造を巡り協議していた経緯がある」

     

    アップルの「iPhone(アイフォーン)」の受託生産で密接な関係にある鴻海が、アップルカーの受託生産先に取沙汰されている。鴻海は3月25日、EV事業参入を発表した。同社への協力を表明したサプライヤーが1200社超に達したと明らかにした。ソフトウエアや自動車部品の世界大手が名を連ね、日本からは日本電産などが参加する。

     

    鴻海によれば、2023年に量産を始め「25~27年にEV市場で世界シェア10%を獲得する」のが当面の目標としている。鴻海自身がEVの8割を設計して無料提供し、新規EV参加企業に割安EV生産を実現させるという企業モデルを考案した。生産は、鴻海が担当するもの。この鴻海EVモデルとアップルカーがどのように組み合わせるのか。鴻海は、独自モデルとアップルカーモデルの「二本立て」になるのだろう。

     

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    中国国家主席の習近平(1953年生まれ)氏は、米国が弱体化し中国が繁栄に向かっていると心から信じている。この「火元」は、中国中央政治局常務委員の王滬寧(1955年生まれ)氏である。党内序列は5位だ。江沢民氏や胡錦濤氏の懐刀として活躍し、ついに習近平氏の側近として中央政治局常務委員にまで上り詰めてきた人物である。

     

    王氏は、民族主義者である。米国へ留学したが、学問の研鑽を積まず、もっぱら政治的視点で米国の弱点を研究したという異色の学者である。この彼が、習近平氏に米国は衰亡して中国が発展するという「命題」を授けたと見られている。習氏と年齢は2歳ちがい。習氏に長期政権を担わせれば、王氏も共に顕職に留まれるという計算をしていることは疑いない。この個人的野望が、中国の運命はもちろんのこと、世界の運命まで狂わせようとしている。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(3月30日付)は、「バイデン氏の対中戦略・『米国弱体化』認識に対抗」と題する記事を掲載した。

     

    米中関係は、爆発しかねない危険な問題が埋め込まれた地雷原のようだ。しかし、その中でも最大のリスクは、気付きにくい内容である。それは、中国が米国の力の衰退を過信し、その認識に従って行動することだ。

     

    (1)「中国が、米国と西側諸国のリベラルな秩序全体が長期的衰退の初期段階にあると確信した場合、自信過剰になった中国の指導部が一線を越えて余りにも挑発的になり、米国に強硬な反応を強いる恐れがある。中国のこうした認識は、同国の代表者やメディア組織によって表明されている。南シナ海、通商、とりわけ香港と台湾など、多くの地域や分野でそのリスクが表面化している。バイデン政権の戦略は、中国政府との本格交渉に臨む前に、米国の経済・外交・軍事面の底力を明確に示そうと努めることで、米国が政治的に分断され衰退しつつあるとの中国の主張に対抗するというものである。そのメッセージは「米国の力を見くびるな」という単純明快なものだ」

     

    客観的に見て、米国が衰退し中国が発展するという根拠はゼロである。潜在成長力は、人口動態によって正確に予測可能だ。私が一貫して指摘しているように、生産年齢人口(15~64歳)は、中国の急減と米国の微増という形ではっきりしている。この人口統計こそ、米中経済の将来を適確に推測させる唯一の経済データである。これに、科学技術発展力などを加味すれば、中国の敗北は決定的である。早く、中国の妄想に水をかけて冷やしてやらねばならない。

     


    (2)「バイデン大統領は、米国が新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)を克服し、経済を完全復活させ、経済インフラ投資計画の法制化の取り組みを開始したことを中国側にまず示したいと考えている。こうした段階を踏むことで、バイデン政権がより強い立場から交渉を開始できることが期待される。米通商代表部(USTR)の代表になったばかりのキャサリン・タイ氏が、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューで「交渉で有利な立場を放棄する者はいないだろう」と指摘。これら関税をすぐに撤廃するつもりがないことを明確にしたのは、まさにそのためだ」

     

    米国バイデン政権は、中国の妄念を醒まさせるために、米国の強さを彼らにはっきりと見せつけて、間違った開戦の引き金を引かないように思い止まらせなければならない。それには、同盟国の力と米国のイノベーション(革新)能力の健在ぶりを示す必要がある。米国が、中国をはるかに上回る実力を蓄えていることを認識させることである。

     

    (3)「それと同時にバイデン政権は、いわゆる「航行の自由作戦」で南シナ海に米海軍の船舶を派遣するというトランプチームの慣行を続けている。これには、同地域における中国の領有権に関する主張を米国が受け入れないことを示す意図に加え、米国が同地域で軍事プレゼンスを維持する意向を示して同盟国を安心させる意図がある。これは恐らく最も重要な点だが、米国が継続して影響力を示そうとする努力は、バイデン政権がこれまでになく「クアッド」を重要視していることから確認できる。クアッドは、米国、オーストラリア、日本とインドの4カ国による非公式の連携枠組みだ」

     

    米国は、クアッド(日米豪印)の結束によって、中国への対峙を示さなければならない。これが、中国の暴走を食止める一つのくさびになる。また、英国、ドイツ、フランスが海軍をアジアへ派遣することも防波堤になる。ともかく、中国の抱く「中国過信」を打ち砕かなければ、暴走を止められないのである。

     


    (4)「米国の弱体化という認識に対抗することは、自国の分離した省にすぎないと中国が考える台湾をめぐる深刻な問題において、最も重要なものかもしれない。中国の習近平氏が、必要であれば軍事力を行使しても中国との統一を台湾に受け入れさせる方向に進み始めている可能性があることを、米当局者らは懸念している。香港の民主主義を粉砕しようとする動きは、その予行演習かもしれない。もしそうであれば、習氏にそれを思いとどませる最良の方法は、そうした行動をとれば、弱体化も衰退もしていない強力で国際的な影響力のある米国による対抗措置を懸念しなければならないことを、現時点で同氏に認識させることかもしれない

     

    下線のように、習近平氏が台湾侵攻を謀れば、米国など同盟国が食止める姿勢をはっきりと打ち出すことが必要である。4月9日に予定されている日米首脳会談は、尖閣諸島と台湾の防衛が前面に出てくる可能性が強まった。これは、中国の過信を食止める一つの手段であることを示すものである。インド太平洋戦略は、アジアの平和を維持する上で大きな役割を担っている。

     

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    甲子園の高校野球は、昔も今もドラマを生んでいる。今日も熱戦が繰り広げてられているが、韓国系である京都国際高校が出場した。韓国では、韓国語の校歌が日本全国に響くと大興奮。韓国人記者が、甲子園で取材した後日談が報じられた。その舞台裏では、一般の日本人も知らない崇高な場面があり、改めて高校野球の精神性を見る思いがした。一言で言えば、武士道精神が生きているということに尽きるのである。

     

    『朝鮮日報』(3月30日付)は、勝者は気品があり、敗者は毅然としていた」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙の東京特派員である李河遠(イ・ハウォン)記者。

     

    先週、韓国系である京都国際高校の選抜高校野球での試合を2回、現地取材した。初めて行った甲子園球場で印象的だったのは、勝敗が確定した後、3分間の節度ある動きだった。

     

    「3月24日、京都国際高校が54で勝利した時だ。甲子園で初勝利を挙げたが、同校の選手たちが過度に勝利に酔うことはなかった。歓喜に満ちた顔で手を高く上げたのがすべてだった。試合終了のサイレンに合わせ、勝利した京都国際高校の選手たちは伝統に基づいて、電光掲示板の方を見つめる形でホームプレート付近に一列に並んだ。すると、韓国語の校歌が鳴り響いた。敗れた柴田高校と選手たちは一塁側に不動の姿勢で立ち、京都国際高校の校歌を聞いた。勝者は過度に喜ばせず、敗者は毅然(きぜん)と相手に敬意を表するのが目についた」

     

    「同様の場面を27日、京都国際高校の2回戦で再び目撃した。京都国際高校は9回まで42で勝っていたが、東海大菅生高校に54で逆転負けした。しかも、9回裏の2アウト、2ストライクから逆転打を浴びた。ストライクがもう1つ入ってさえいればベスト8に上がることができた。そのような状況で敗れたのは残念で、悔しかったことだろう。それでも京都国際高校の選手たちはその感情を抑えた。今度は自分たちが三塁側に並び、相手チームの校歌を聞くことによってその勝利を祝った。退場する時は帽子を脱ぎ、大会関係者にあいさつして退いた」

     


    「若い選手たちの儀式からは荘厳さが感じられた。家族を亡くしてもおえつすら漏らさない日本の文化がオーバーラップした。米国で知ったスポーツの格言を思い出した。 「気品を持って勝ち、負ける時は栄誉を持って負ける(win with class, lose with honor)」という言葉だ」

     

    「京都国際高校の朴慶洙(パク・ギョンス)校長は、「勝ったからと言って相手チームを刺激せず、負けたからと言って悔しさを表に出さないのが甲子園の伝統であり、教育」と説明した。勝利の後、過度にその気持ちを表に出したチームが警告を受けた事例もあるという。勝敗が決まると、未練なく結果に承服する日本の文化は球場の外でも見られた。朴校長は27日の2回戦に先立ち、京都国際高校に惜しくも負けた柴田高校の校長から電話をもらった。柴田高校の校長は「今日、一生懸命に京都国際高校の選手たちを応援します。頑張ってください」と激励した」


     

    「この日、京都国際高校が惜敗した後、在日僑胞(韓国人・韓国系在住者)応援団が駐車場で、相手チームの選手たちに会った。ほとんどが日本生まれの僑胞たちは彼らに「おめでとう」と手を振った。東海大菅生高校の選手たちは深く頭を下げて感謝の意を表した」

     

    「甲子園で気品を守り、節度を持って動くのは選手たちだけではなかった。全国から集まる応援団は厳しい規制の下で動いた。応援団のバスは甲子園球場のすぐ前に停車したり、駐車したりすることができなかった。約1キロメートル離れた駐車場に応援団員を全員降ろさなければならなかった。ここでは団体バスがバラバラに入場することも禁止されていた。同じ学校のバスは必ず列をなして一度に入場することが規定だった。甲子園球場周辺の混雑を防ぐのはもちろん、複数の大型バスが行き来して交通事故の危険性が高まるのを防ぐためだ」

     


    「応援団員たちは甲子園球場にそれぞれバラバラに入場することができなかった。案内員の旗の下、2列になって入っていかなければならなかった。1000人に達する応援団員が数百メートルの列になって移動する様子は、海外旅行時に遭遇した日本人の姿そのものだった。行列が移動する間、近所のボランティアたちと見られる人々が厳しく規制した。「住民に迷惑をかけないように列を乱さないでください」という言葉を何度も聞いた。自転車に乗った住民たちが来ると、必ずその住民たちを先に行かせるよう配慮した」

     

    「日本人が宗教のように考える甲子園は、日本社会の縮図だった。韓国社会が「全体主義的だ」「後進的だ」と無視する日本の伝統と秩序は、甲子園を通じても再生産されていた」

     

    以上の記事の中に、日本人の特性が良く表われている。それは同時に、韓国社会との違いであることだ。

     

    日本人は勝敗の結果を潔く受入れる。これは、武士道精神の顕われであろう。日本が敗戦の結果を受入れ、占領軍に対して組織的な反抗をしなかったことに良く現れている。「敵将」であるマッカーサー元帥が帰国する際、羽田空港への道筋に日本人が並んで見送った話は有名だ。国会では感謝状を贈った。戦後の食糧不足を米国からの援助で救ってくれたことへの気持ちである。甲子園でのやり取りに良く似ているのだ。これが、古き日本の礼儀である。

     

    翻って考えるに、韓国は法的に決着のついた問題を蒸し返してくる。旧徴用工や旧慰安婦の賠償と謝罪の要求である。日本人の感覚からは絶対に行なわないし、また受入れられる問題でない。やはり、日韓の文化には水と油の違いがあるようだ。

     

    次の記事もご参考に。

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    メルマガ232号 不可能な「日韓和解」 恥の文化がない韓国と日本は「水と油」

     

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