文政権は、世論調査によって思いの外弱体化していることが判明した。首都ソウル市長選(4月7日投票)は、野党候補が47.3%の支持を集め、与党候補に16.7ポイントもの大差をつけていることが分かった。
ソウル市長は、「小統領」とも称されるように、「大統領」への椅子が最も近いポストとされている。閣僚級の待遇を受ける唯一の広域自治体首長である。政府の閣僚会議に参加する資格を与えられているのだ。
このソウル市長選で、野党候補が当選すればどういうことになるか。閣僚会議に野党出身者が席を持つのである。文政権のレームダックを象徴するような話になろう。
『聯合ニュース』(3月29日付)は、「ソウル市長選の支持率 野党候補47.3%で与党を16.7Pリード」と題する記事を掲載した。
(1)「韓国の世論調査会社、エムブレインパブリックが29日に発表した調査結果によると、ソウル市長選(4月7日投開票)の野党陣営の統一候補、保守系最大野党「国民の力」の(オ・セフン)元ソウル市長の支持率は47.3%。革新系与党「共に民主党」候補の朴映宣(パク・ヨンソン)前中小ベンチャー企業部長官(30.6%)を16.7ポイントリードした。調査は26~27日、ソウル市内に住む18歳以上の800人を対象に行われた。野党候補の呉氏は年齢、地域、職業を問わず支持を集めた」
野党候補(呉氏) 47.3%
与党候補(朴氏) 30.6%
支持率でこれだけの差がついたのは、野党候補が一本化した結果だ。野党は、「政権交代」を訴えており、来年3月の大統領選勝利を目指している。朴槿惠・前大統領は、国政壟断によって弾劾辞任という不名誉な結果だった。現在の野党(前与党)は、苦しい立場に追込まれていた。それが、文政権の「オウンゴール」によって、復活の糸口を掴んだ形になった。
与党は、余りにも無策の上に与党の利益を露骨に追い求めてきた。これが、世論の反発を受けて、与野党が逆転する事態を迎えようとしている。
(2)「与党の支持層が強いとされる40代では、呉氏の支持率は与党候補の朴氏(39.4%)をわずかに上回る41.3%にとどまった。中道層では呉氏が51.6%で、朴氏(26.6%)に2倍近い差をつけた。「現政権をけん制するため野党候補が当選すべきだ」と答えたのは55.6%、「現政権を支援するため与党候補が当選すべきだ」としたのは29.2%だった」
選挙に大きな影響を及ぼすのは、中道派の動きである。野党候補の呉氏が、中道層の51.6%の支持を集め、与党候補の朴氏(26.6%)に「ダブルスコア」に近い差をつけている。
現政権をけん制するため野党候補が当選すべき 55.6%
現政権を支援するため与党候補が当選すべき 29.2%
文在寅政権は、朴槿惠政権の二の舞いに陥っている。文氏は、「積弊一掃」という合い言葉で、反日=反保守を一括りにして、進歩派による長期政権を目指す布陣を優先した。政策実現よりも、政権の長期化という「独裁政治」と同じ軌道を歩み始めていたのだ。これが、世論のしっぺ返しを受けた最大の理由であろう。
文政権は、巻き返しを計っている。不動産投機を行なった公職者を徹底的に摘発するというのだ。
『聯合ニュース』(3月29日付)は、「地位・政治利益問わず不正投機追及を 文大統領」と題する記事を掲載した。
韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は29日に開かれた「公正社会反腐敗政策協議会」で、「都市開発過程であった公職者らの投機行為について所属と地位を問わず、厳しく処分しなければならない」として、「国の行政力と捜査力を総動員してほしい」と指示した。
(3)「また、「政治的な有利不利を問わず、最後まで追及してほしい」として、「違法行為は断固として処罰し、不当利益を徹底的に回収しなければならない」と強調した。宅地開発などを手がける公共機関、韓国土地住宅公社(LH)の職員らが新都市に指定される前の地域の土地を投機目的で不正に購入した疑惑の徹底究明を強調したのに続き、不正投機の根絶に向けた強い意志を示した発言とみられる」
与党議員はこれまで、自ら不動産投機に手を染めたケースが相次いだ。政府与党は、それに対して厳しく対応することもなかった。そういう甘い処理が、公務員の規律弛緩を招いたと言えよう。
さらに、文氏の「綱紀粛正」命令に水をさす事件が持ち上がった。
大統領府で経済政策を担当する金尚祖(キム・サンジョ)政策室長(閣僚級)は29日、不動産がらみの不祥事で更迭された。文政権の不動産腐敗構造が、もはや止まらない状態であることが明らかになった。
金氏は不動産価格の高騰を受け、住宅賃貸料の値上げ幅を従来の賃貸料の5%以内に定めた住宅賃貸借保護法の改正案が施行される2日前の昨年7月29日、自身が保有していたソウル市内マンションの「伝貰」(家賃の代わりに入居時に高額を預ける賃貸方式)の保証金を8億5000万ウォン(約8200万円)から9億7000万ウォンに14.1%引き上げ、賃借人と契約を更新したことが判明したのである。「どいつもこいつも」不動産投機ボケ状態である。政府高官としての矜恃がないのだ。