勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2021年04月

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    韓国は、主権国家として持つべき自衛権を中国に預けているような振舞をしている。米韓同盟という後ろ盾を得ながら、中国の脅迫に怯えている姿は滑稽ですらある。

     

    日米豪印4ヶ国が結成する、インド太平洋戦略対話の「クアッド」へ全面参加を渋っている。ただ、ワーキング・グループのコロナ・ワクチンや気象変動、それに半導体などの新技術には参加する意思を固めた。ご飯は食べないが、おかずだけ食べるという妙な「食事会」メンバーになろうというのだ。

     

    『朝鮮日報』(4月30日付)は、「米国のクアッド参加要求に韓国は片足だけ」と題する記事を掲載した。

     

    文在寅(ムン・ジェイン)大統領は5月下旬(注:5月21日に決定)に予定されている韓米首脳会談において、これまで米国が要求してきたクアッド(米国、日本、オーストラリア、インドの4カ国による安全保障の枠組み)に参加するのではなく、コロナや気候変動など分科ごとの議論に一部参加することを逆提案する予定であることがわかった。青瓦台(韓国大統領府)と米ホワイトハウスは韓米首脳会談の議題としてこの問題を取り扱うことにしている。

     


    (1)「米朝対話やワクチン確保などの問題で米国の協力を得るために、韓国政府がクアッドへの「部分参加」という折衷案を提示した形だ。しかし韓国政府が中国の反発を意識し今も曖昧な態度をとり続けていることについては、「米中双方から批判を受ける状況を自ら招きかねない」という懸念も出ている。ある韓国政府関係者は29日「クアッドへの正式参加は先送りするが、コロナ・ワクチン、気候変動、新技術協力などの分科に部分参加するという方針は決まりそうだ」「文大統領とバイデン大統領が韓米首脳会談でこのような内容で合意し発表する可能性が高い」と伝えた」

     

    米国にとって、韓国ほど頼りにならない同盟国はないだろう。「自国を守って欲しいが、米国には協力できない」と言っているに等しいからだ。ちょうど日本に対して、「謝罪した上に通貨スワップ協定を結んでくれ」と同じである。身勝手な韓国である。

     


    (2)「米国主導の対中けん制を目的とする安全保障の枠組み「クアッド」は、最近になって「コロナ・ワクチンの提供」「半導体を中心とするサプライチェーンの構築」など、様々な分野へと協力を拡大している。米国は同盟国の韓国をはじめ英国、ベトナム、フィリピンなどを念頭に参加国を拡大する「クアッド・プラス」を形成する考えで、実際に韓国政府にも様々なルートを通じてクアッドへの参加を求めてきた。しかし現時点で韓国政府は「米国からの正式な要請はなかった」と説明している。韓国外交部(省に相当)の鄭義溶(チョン・ウィヨン)長官も先日、韓米首脳会談でバイデン大統領がクアッドへの参加を要求してくる可能性について「そのような状況にはならないだろう」と述べた」

     

    クアッドに英国が参加すれば、韓国の米同盟国の地位は最下位になるだろう。自衛権という国権の最高位置にある固有の権利が、中国の顔色によって左右される同盟国は、足手まといになるからだ。

     


    (3)「
    韓米首脳会談を前に、韓米双方はこの問題を含む様々な議題についてすでに協議を進めているという。ある与党関係者は「米国がクアッド・プラスへの参加を求めているのは事実」と認めた上で「韓国は自分たちが貢献でき、なおかつ中心的な役割を果たせる分野において、クアッド参加国と分野ごとの協力を模索できるという立場だ」と説明した。韓国政府は中国の顔色をうかがいながら「クアッドに片足だけをかける立場を選んだ」と言えそうだ」

     

    韓国は、西側諸国では最も肩身の狭い国になるであろう。限りなく中朝に接近している国、という評価になって不思議でない。ベトナムは、韓国と同じ地理的条件であるが、中国の顔色を覗っていないのだ。

     

    (4)「中国は、これまでクアッドについて「徒党を組んでいる」「冷戦時代の思考」などとしてクアッド参加国を強く非難してきた。中国は、韓米首脳会談を前に最近になって韓国に「クアッドに参加するのか」と複数回にわたり圧力を加えてきたという。米中の戦略的な競争が本格化する中、専門家は文在寅政権が今後も「戦略的にあいまいな態度」「バランス外交」などを強調し続けるようでは、「どちらからも信頼を得られなくなる」と指摘する」

     

    韓国は、すでに日米の信頼を失っている。日韓外相会談どころか、電話会談すら行われないのは、日本の韓国への信頼が消えた証拠である。

     


    (5)「バイデン政権はクアッドを重要な外交政策の一つとしており、また韓国政府には韓米日による協力と協調を強く求めている。しかし韓国与党は「米中対立の中でどちらかに立つことは非常に危険」とする慎重論が今も根強い。実際に青瓦台のある関係者は「クアッドは5年前に韓中関係を揺るがしたTHAAD(在韓米軍の高高度ミサイル防衛システム)と同じくらい敏感な問題になりかねない」「米国と中国の2つのうち1つを選択すべき必要はない」と断言した。文大統領は今月21日に報じられた米ニューヨーク・タイムズとのインタビューでも「米国は、北朝鮮問題や気候変動を含むその他の世界的な関心事について、中国と協力すべきだ」との考えを示した」

     

    文大統領は、北朝鮮に対して「原則放棄」でただ会えば、それで関係改善という認識である。南北首脳は、これまで3回の会談を重ねた。だが、北朝鮮は韓国を罵倒し続けている。闇雲に会談しても、約束を守れなければ反感を強めるだけである。南北和解は、米中関係の安定が前提になるのだ。現状は、それとほど遠い状況である。韓国は米国へ協力することで、南北関係改善が進むはずである。文政権には、この外交回路が理解不能だ。

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    韓国は、中国との地理的条件から政治的に対立できない宿命にある、と元統一相が発言した。韓国と中国の地理的条件は、米国とカナダが国境を接しているようなものだというのだ。しかし、米国とカナダは同じ価値観で結ばれている。政治的に立場が異なることはあっても、決別するような事態にならない。話合えば、同じ価値観ゆえに相互理解へ達することが可能である。

     

    中国と韓国は、価値観が異なる国である。中国は、覇権主義で周辺国を支配屈服させる政治システムである。朝鮮は本来、中国を宗主国として敬ってきた歴史を持っている。これが、現代語では「地理的に接している」という言い訳になっている。

     


    ベトナムは中国と隣接しているが、その歴史は中国との闘争史であった。韓国とベトナムは中国に対して、従属(韓国)と反骨(ベトナム)の全く異なる歴史を持っている。北欧とロシアの歴史も闘争の歴史である。北欧とロシアは、価値観が異なっているのだ。北欧は、決してロシアに同調することがなかった。

     

    韓国は、中国と政治体制=価値観が異なっていても、心底深いところで繋がっているに違いない。中国からどれだけ圧迫されても、韓国は付いていくからおかしいのだ。中国へは反骨心がない反面、日本へは狂犬のように飛びかかってくる。この違いは何か。

     


    『日本経済新聞 電子版』(4月29日付)は、「韓国は中国と対立できず」と題する記事を掲載した。筆者は、李鍾奭(イ・ジョンソク)韓国元統一相である。

     

    (1)「日米首脳会談の共同声明は、中国の核心的利益である台湾海峡や香港に触れた。中国を圧迫する米国の政策に賛同した日本は、冒険的な選択に踏み込んだ印象だ。日本は日米同盟を基盤とする外交で東アジアの安定を率いている。一方で経済の側面で中国との協力が不可欠だ。日米の共同声明が、東アジアに対立の秩序をもたらさないか懸念している。5月に韓米首脳会談があるが、韓国は日本より慎重にならざるをえない」

     

    韓国は、台湾海峡や香港を中国の核心的利益として恐れている。台湾が、中国の独裁下に入っても容認する立場を、図らずも言ったに等しいことだ。先ず、この点で韓国は西側の自由と民主主義の価値観に心から同調していないことを暴露している。これでは、中国の「脅し」に簡単に屈するはずだ。ベトナムや北欧に見られる「抵抗の魂」が存在しない。

     


    豪州は、輸出依存度トップの中国に対して、敢然とその不条理な制裁に戦いを挑んでいる。韓国の言分では、「金のためなら心を売る」と言っているに等しいこと。中国の行動に対して、韓国は何らの疑念も抵抗心も示さないのである。

     

    (2)「文在寅(ムン・ジェイン)政権は韓米同盟の強化を軸に、中国を含む多国間協力を追求する姿勢をとる。金大中、盧武鉉(ノ・ムヒョン)両政権から続く革新政権の伝統的な考え方だ。もちろん、いかなる場合も韓米同盟が基礎であるのに変わりはない。同時に現実の外交は国益の観点から同盟と多国間協力のバランスが必要になる。韓中関係は例えればカナダと米国の関係に似ている。対立できない地理的な宿命だといえる」

     

    韓国は、二股外交を正当化しているが、今後の米中対立の激化でそれが不可能になろう。「二者択一」の時期は、必ず来るに違いない。

     


    (3)「日米の共同声明は、半導体などサプライチェーン(供給網)を巡る協力も打ち出した。韓国には「安米経中」という言葉がある。安保は米国、経済は中国とそれぞれ協力するという意味だが、現実的には切り離せない。歴史を顧みれば戦争は古今東西、経済的利益を守ったり奪い合ったりする争いだった。経済的利益が集中するところは安保的な利害も生じる。中国と経済の安定を保つには一定の安保協力も必要になる」

     

    米ソの冷戦は、植民地戦争という経済的利益の分捕り合戦が動機でなかった。思想上の争いである。米中の「冷戦」は、中国による米国覇権への挑戦である。専制主義が、民主主義へ争いを挑んでいる構図である。米中が、経済的利益を争っているのではない。

     

    韓国は、価値観という極めて重要な尺度をないがしろにして、ただ、中国に背くことが恐ろしいと言っているに過ぎない。今後、中国の経済力が下り坂になると共に、韓国はどう対応するのか。そのときになって初めて、ベトナム的に一線を画すのか。

     


    (4)「日本が中国と対立する道を選べば、経済への影響は小さくない。韓国は国内総生産(GDP)の4割を輸出に頼る。貿易の4分の1を中国が占めており、打撃はさらに大きくなる。日米にオーストラリアとインドを加えた4カ国(クアッド)の枠組みに、韓国の参加を促す声がある。中国をけん制したいインドはクアッドに加わったが積極的といえない。インドでさえそうなのに、中国との協力が必要な韓国が加わるのは簡単でない。バイデン米政権は韓国にクアッド参加を一度も求めていない」

     

    米国が、TPP(環太平洋経済連携協定)に復帰すれば、中国の対米輸出による経済的利益は大幅ダウンである。韓国の対中輸出もこれに見合って激減する。韓国の対中輸出は、最終的に中国の対米輸出になっているのだ。中国が、TPPによって米国市場へのアクセスを遮断されれば、韓国の対中輸出は一瞬にして吹き飛ぶ。こういう循環構造になっていることを冷静に理解することだ。

     

    米国が、韓国へ「クアッド」参加を求めていないというのは大嘘である。中国の手前、そう言って取り繕っているだけである。この大嘘が、米国から不信を買っている理由である。

     

    (5)「日米の共同声明は、北朝鮮の非核化にも言及した。日本側はCVID(完全で検証可能かつ不可逆的な非核化)を主張したが、声明には盛り込まれなかった。バイデン政権は過去の政権と比べて柔軟な対北朝鮮政策を用意するのではないか。金正恩(キム・ジョンウン)総書記は対話の扉を閉じていない。米朝対話が見通せるかどうかは、5月の韓米首脳会談の結果とも関わる」

     

    下線分は、全く状況を見誤っている。日々のニュースを正確に把握しているとは思えない。これが、元統一相とは恐れ入る。大甘の情勢判断である。バイデン政権は、厳しい北朝鮮政策を打ち出すであろう。

     

     

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    文政権は、中国の鼻息を恐れている。だが、国民の反中意識は燃えさかっている。こちらは、中国が無遠慮に韓国文化の源流を中国と宣伝することへの反発が原因だ。反日とは違った意味で、「嫌中」が盛んである。

     

    『大紀元』(4月29日付)は、「韓国江原道、『中国文化タウン』建設計画が中止へ 反対署名60万超え」と題する記事を掲載した。

     

    韓国・江原道(カンウォンド)で建設予定の「中国文化タウン」の開発業者は27日、住民の強い反対を受け、プロジェクトの中止を発表した。韓国市民が、中国共産党による浸透工作に警戒を強めている、と一部の公民権活動家は分析した。

     


    (1)「4月18日現在、「青瓦台の国民直接請願サイト」に建設中止を求める署名は60万筆を超えた。『ラジオ・フリー・アジア』の報道によると、同プロジェクトの費用は10億ドル(約1087億円)にのぼる。開発企業のコロン・グローバルは「莫大な損失を被るが、同プロジェクトを進めることができないことを理解している」とコメントした。韓国系米国人の公民権活動家である金世訓氏は、親中派の文在寅政権は韓国人、特に若者の間での支持率が低いことに加え、キムチや韓服などの文化的起源をめぐる韓中間の論争が市民の反中感情の高まりにつながっていると分析した」

     

    韓国世論では、8割が親米派である。中国と日本へ親しみを持つのは、せいぜい数%に過ぎない。だが、文政権は「親中朝」路線である。学生運動時代に「親中朝・反日米」を叫んでいた延長線上にある。国民世論に沿った「親米路線」とは反対方向に進んでいる。

     

    国民は、朝鮮戦争で中朝軍に痛めつけられた苦しみを忘れずにいる。だから、大規模な「チャイナ文化タウン」構想に反対を叫ぶのであろう。

     

    (2)「金氏はまた、「この中国文化タウンのプロジェクトは、対中宥和政策の1つと見なされている。多くの韓国人は、同プロジェクトが中国共産党の影響力拡大の足掛かりになると考えている」と指摘した。同氏はさらに、韓国メディアが香港での抗議運動を大きく報道したため、韓国市民の多くが中国共産党による人権抑圧に嫌悪感を抱いていると説明した。「中国共産党の『一帯一路』は常に文化交流を口実に、地域の政治や経済に影響を与えようとしている。韓国人はこれには本当にうんざりしている」と指摘した。反対署名の発起人は「中国文化タウンの建設は、江原道・首府の春川巿內にある遺跡を破壊してしまう恐れがあるからだ」と反対の理由を述べた」

     

    春川巿は、あの「冬のソナタ」の舞台になった風景のきれいな街である。計画されていた「チャイナ文化タウン」は、その遺跡が破壊される恐れもあって、反対運動が盛り上がった。参考までに書くと、「冬のソナタ」主人公、カン・ジュンサンの自宅一帯が、高層ビル建設予定地になるという。これまで、カン・ジュンサンの自宅は日本人観光客で賑わったが、次第に参観者も減ってきたので、建物の一部を保存して移転するという。

     

    (3)「観光名所でもある江原道と中国人民網は2019年、春川市と洪川市に「中国文化タウン」を建設する協定に署名した。江原道の崔文洵知事はかねてから、同プロジェクトは民間企業が投資する観光建設プロジェクトであり、中国人が集団で暮らす「チャイナタウン」の建設ではないと主張している。しかし、国民は納得しなかった。同プロジェクトの面積は約120万平方メートルで、仁川の「チャイナタウン」の10倍規模と予定されていた。崔文洵知事は当時、プロジェクトの発足式で、これを「文化の一帯一路」と呼んでいた」

     

    韓国特有の景色である春川市に、チャイナ文化センターは想像しただけで不釣り合いである。原色のけばけばしい色彩で、あの景色を台無しにされるのは我慢できなかったのであろう。かく言う私は、春川市へ行った経験はない。ただ、「冬のソナタ」の景色(特に川沿いの晩秋)が幻想的であったので記憶している。

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    最近、中国をめぐる暗いニュースが流れている。昨年の人口が減少したことに続いて、国民に向かって「食べ残し禁止法」を成立させるというニュースまで現れた。元来、中国では食卓に食べ切れないほどの料理を並べるのが豊かさの象徴とされてきた。今後、これを行なうと罰するという「非常時」認識が要求されることになった。

     

    「大食い禁止法」が登場した背景には、食糧自給率が70%台へ落ちたという厳しい現実がある。大豆やトウモロコシが、輸入に依存する状態だ。日本では、あってはならないコメを輸入するような状況である。食糧安保上も、極めて危険な状況になっている。

     

    この段階で「大食い禁止令」が出たのは、米中対立の激化が背景にある。大豆もトウモロコシも米国が主産地である。米国と覇権争いをしようという中国が、主要食糧を輸入に依存するのでは、とても覇権争いする気迫を奪われる。戦時中の日本では、「米国から石油を輸入しながら米国と戦争できない」と山本五十六が指摘した。同様に、中国が米国から大豆などを輸入しながら米国と覇権争いするのでは、理屈に合わない話になるのだ。

     


    『日本経済新聞 電子版』(4月29日付)は、「中国『食べ残し禁止』法可決。浪費ならごみ処理費負担も」と題する記事を掲載した。

     

    中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会は29日、食品の浪費を禁じる法律を可決した。飲食店は、大量に食べ残すなどした客からごみ処理の費用を徴収できる。暴飲暴食をあおる大食いを売りにした番組や動画の放送、配信も禁じ、違反者には罰金も科す。

     

    (1)「近く公布し施行する。草案によると、大食い番組にかかわったテレビ局や動画配信業者に最大10万元(約160万円)の罰金を科す。飲食店が客に過剰な注文を促すことも禁止し、是正の警告を無視した違反者には最大1万元(約16万円)の罰金を科す。中国には宴会の主催者が自らのメンツのために多めに注文する習慣がある。飲食店のほか、食堂を持つ政府機関や学校、出前アプリを展開するネット企業にも食品の無駄が生じないような対策を要求した。スーパーには賞味期限切れが近い商品の管理を徹底し、まとめて売り出すよう求めた」

     

    中国では、市場機構を使って需給バランスをとるよりも、罰則をもって直接に需給バランスを取る短兵急な方法を用いている。権力メカニズムが、需給バランスのバロメーターになっているのだ。国民が、これに不満を持っても権力が押し潰してしまう形である。

     

    (2)「法律に事細かい要求や禁止を並べたのは、習近平(シー・ジンピン)国家主席が昨年8月「食糧安全保障には常に危機意識を持たなければならない」と強調したことがきっかけだ。大豆やトウモロコシを輸入する米国との対立が長引くことも視野に、飲食時の浪費を戒める指示を出した」

     

    飲食時の浪費を防ぐには、食料品価格を上げれば、自然に需要が減って供給とのバランスが取れるはずである。こうした、市場機構利用という発想がない。大食い防止法では、必ず密告制度がつきまとうはず。監視カメラが、密告制度を代替するのであろう。刑務所か留置場で、食事している感じであろう。

     

    (3)「食べ残しを禁じる法律とは別に、「食糧安全保障法案」も2021年中に審議する方針だ。政府系シンクタンク、中国社会科学院などの調査では、中国都市部の飲食店で年間1700万~1800万トンの残飯が発生している。3000万~5000万人が1年間に食べる量に相当するという。一方、就農人口の減少で25年に約1億3000万トンの食糧不足に直面しうるとの試算もある

     

    中国は、米国に比べて食糧生産の面でも格段、不利な条件に置かれている。それでも、米国覇権に挑戦したいというのは、習近平個人の野望であろう。心から、米国に勝てると思っているわけでなく、それを利用して自らの地位保全を狙っているのだ。迷惑なこと、この上ない話である。

     

     

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    最近の中国は、熱病に冒されている。米国と対等になったので、恐れることはないという認識が強まっているのだ。これは、中国の開戦リスクを高めるので、こうした「症状」は早く直さなければ危険である。それには、中国の経済活動に枠をはめるのが最善の策である。

     

    具体的には、中国に米国市場を利用させないことである。米国がTPP(環太平洋経済連携協定)へ復帰すれば、TPPへ加入不可能な中国は、関税面で米国への輸出が大幅に制限されるのだ。中国が仕掛ける戦争を未然に防ぐには、こうした荒療治が不可欠になってきた。

     

    『ハンギョレ新聞』(4月29日付)は、「米中対立で『米国のCPTPP早期加盟が実現する可能性も』」と題する記事を掲載した。

     

    米国と中国の間の対立が続く場合、米国が「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)」への早期加盟を進める可能性があるという米専門家の見通しが示された。バイデン政権が2022年の中間選挙まではCPTPPへの加盟を推進しないだろうという一般的な見方と異なるもので注目される。

     

    (1)「大韓商工会議所と金・張法律事務所が4月28日、共同開催した「通商フォーラム」で発表を行った米ピーターソン国際経済研究所(PIIE)のジェフリー・ショート先任研究委員は「中国の経済的、安保的挑発のため、米国は主要な同盟国と結んでいる関係をさらに強固にする必要性を感じるだろう」とし、「それに対する対応の一環としてCPTPPへの加盟の再交渉およびアジア太平洋地域協定の刷新(リブランディング)を進める可能性も考えられる」と述べた」

     


    米バイデン政権は、米国経済の強さを中国に最認識させることが、中国の開戦リスクを低減させると考えている。それは、中国の経済力を弱めることでも実現可能である。TPPの発想原点は、米国オバマ政権にあった。米国は、中国をTPPから外し、経済力を弱める目的であったのである。バイデン政権もこのオバマ構想をそのまま受け継げばよい。

     

    (2)「ショート委員は、「域内包括的経済連携協定(RCEP)および二国間自由貿易協定のようなアジア太平洋地域の協定は米国の競争力に否定的に働くため、米国の改定されたCPTPPへの加盟は、米国の貿易と投資に“公平な競争の場”を形成するだろう」と予想した。また、「バイデン政権はCPTPPを拒否しなかっただけでなく、改善し、より強力な協定にしなければならないと考えている」と述べた」

     

    RCEPとTPPは、質的レベルが異なる。TPPは中国を除外しており、米国を始めとして各国が中国の経済支配に対抗する道を作ったことにある。RCEPは中国、ASEANの加盟が多く、アジア中心の貿易協定の色合いが濃い。TPPのような厳しい労働・環境基準を設けておらず、そのカバー範囲が広いことに特徴がある。バイデン政権は、オバマ政権と同じ流れである以上、TPPを受け継ぐのは当然である。

     


    (3)「CPTPPは2018年12月発効され、加盟国は日本やオーストラリア、カナダ、メキシコなど11カ国だ。同協定は、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)に基づいている。米国が2017年末にTPPから脱退した後、日本主導に変わり、TPPの名前もCPTPPに変更された。韓国はまだCPTPPに加盟していない。昨年11月に発足したRCEPには、ASEAN10カ国に韓国、中国、日本、オーストラリア、ニュージーランドを合わせて15カ国が加盟している」

     

    今年中に、TPPへ英国が正式加盟予定である。目下、審査中だ。韓国は、TPP加盟意思を固めたが、国内法の整備もあって準備に数年を要する見込みである。それだけ、法整備が遅れていることの証明だ。

     

    (4)「金・張法律事務所のシン・ジョンフン弁護士は、「CPTPPでは文案協定が進められることなく、既存の加盟国が合意した協定文案をそのまま受け入れることになっている」とし、「事前に協定文案の意味を明確に把握しなければならない」と述べた。シン弁護士は特に「国営企業チャプター(分野)が公共機関の運営にどのような影響を与えるのかを綿密に検討しなければならない」と付け加えた」

     

    韓国は、国営企業への補助金が問題になるだろう。実は、中国もこの点でハードルが高くなっている。TPPに既加入のベトナムは、国有企業のハードルを越えている。韓国や中国は、経済体質面でベトナムに劣っていると言える。

     


    (5)「製造業分野について発表行ったキム・バウ産業研究院専門研究員は「CPTPPはRCEPより早く、幅広い市場開放が求められるため、得失を計算してみなければならない」とし、「韓国がCPTPPに加盟した場合、日本に対する市場開放の効果に対する分析と検討が必要だ」と指摘した。会議を主催したウ・テヒ大韓商工会議所常勤副会頭は「CPTPPは貿易協定の中で最も高い水準の自由化の範囲とルールを求めている」とし、「細部の検討と事前対応が重要だ」と述べた」

     

    韓国が、TPPへ即刻加入を渋っている理由の一つは、日本の製造業と直接競争になることだ。特に、自動車輸入が急増することを危惧している。もう一つ、日本の海産物輸入である。いわれなき「放射能問題」で東北など8県の海産物を輸入禁止である。TPPに加盟すれば、こういう不埒な振舞は許されなくなる。

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