韓国は、主権国家として持つべき自衛権を中国に預けているような振舞をしている。米韓同盟という後ろ盾を得ながら、中国の脅迫に怯えている姿は滑稽ですらある。
日米豪印4ヶ国が結成する、インド太平洋戦略対話の「クアッド」へ全面参加を渋っている。ただ、ワーキング・グループのコロナ・ワクチンや気象変動、それに半導体などの新技術には参加する意思を固めた。ご飯は食べないが、おかずだけ食べるという妙な「食事会」メンバーになろうというのだ。
『朝鮮日報』(4月30日付)は、「米国のクアッド参加要求に韓国は片足だけ」と題する記事を掲載した。
文在寅(ムン・ジェイン)大統領は5月下旬(注:5月21日に決定)に予定されている韓米首脳会談において、これまで米国が要求してきたクアッド(米国、日本、オーストラリア、インドの4カ国による安全保障の枠組み)に参加するのではなく、コロナや気候変動など分科ごとの議論に一部参加することを逆提案する予定であることがわかった。青瓦台(韓国大統領府)と米ホワイトハウスは韓米首脳会談の議題としてこの問題を取り扱うことにしている。
(1)「米朝対話やワクチン確保などの問題で米国の協力を得るために、韓国政府がクアッドへの「部分参加」という折衷案を提示した形だ。しかし韓国政府が中国の反発を意識し今も曖昧な態度をとり続けていることについては、「米中双方から批判を受ける状況を自ら招きかねない」という懸念も出ている。ある韓国政府関係者は29日「クアッドへの正式参加は先送りするが、コロナ・ワクチン、気候変動、新技術協力などの分科に部分参加するという方針は決まりそうだ」「文大統領とバイデン大統領が韓米首脳会談でこのような内容で合意し発表する可能性が高い」と伝えた」
米国にとって、韓国ほど頼りにならない同盟国はないだろう。「自国を守って欲しいが、米国には協力できない」と言っているに等しいからだ。ちょうど日本に対して、「謝罪した上に通貨スワップ協定を結んでくれ」と同じである。身勝手な韓国である。
(2)「米国主導の対中けん制を目的とする安全保障の枠組み「クアッド」は、最近になって「コロナ・ワクチンの提供」「半導体を中心とするサプライチェーンの構築」など、様々な分野へと協力を拡大している。米国は同盟国の韓国をはじめ英国、ベトナム、フィリピンなどを念頭に参加国を拡大する「クアッド・プラス」を形成する考えで、実際に韓国政府にも様々なルートを通じてクアッドへの参加を求めてきた。しかし現時点で韓国政府は「米国からの正式な要請はなかった」と説明している。韓国外交部(省に相当)の鄭義溶(チョン・ウィヨン)長官も先日、韓米首脳会談でバイデン大統領がクアッドへの参加を要求してくる可能性について「そのような状況にはならないだろう」と述べた」
クアッドに英国が参加すれば、韓国の米同盟国の地位は最下位になるだろう。自衛権という国権の最高位置にある固有の権利が、中国の顔色によって左右される同盟国は、足手まといになるからだ。
(3)「韓米首脳会談を前に、韓米双方はこの問題を含む様々な議題についてすでに協議を進めているという。ある与党関係者は「米国がクアッド・プラスへの参加を求めているのは事実」と認めた上で「韓国は自分たちが貢献でき、なおかつ中心的な役割を果たせる分野において、クアッド参加国と分野ごとの協力を模索できるという立場だ」と説明した。韓国政府は中国の顔色をうかがいながら「クアッドに片足だけをかける立場を選んだ」と言えそうだ」
韓国は、西側諸国では最も肩身の狭い国になるであろう。限りなく中朝に接近している国、という評価になって不思議でない。ベトナムは、韓国と同じ地理的条件であるが、中国の顔色を覗っていないのだ。
(4)「中国は、これまでクアッドについて「徒党を組んでいる」「冷戦時代の思考」などとしてクアッド参加国を強く非難してきた。中国は、韓米首脳会談を前に最近になって韓国に「クアッドに参加するのか」と複数回にわたり圧力を加えてきたという。米中の戦略的な競争が本格化する中、専門家は文在寅政権が今後も「戦略的にあいまいな態度」「バランス外交」などを強調し続けるようでは、「どちらからも信頼を得られなくなる」と指摘する」
韓国は、すでに日米の信頼を失っている。日韓外相会談どころか、電話会談すら行われないのは、日本の韓国への信頼が消えた証拠である。
(5)「バイデン政権はクアッドを重要な外交政策の一つとしており、また韓国政府には韓米日による協力と協調を強く求めている。しかし韓国与党は「米中対立の中でどちらかに立つことは非常に危険」とする慎重論が今も根強い。実際に青瓦台のある関係者は「クアッドは5年前に韓中関係を揺るがしたTHAAD(在韓米軍の高高度ミサイル防衛システム)と同じくらい敏感な問題になりかねない」「米国と中国の2つのうち1つを選択すべき必要はない」と断言した。文大統領は今月21日に報じられた米ニューヨーク・タイムズとのインタビューでも「米国は、北朝鮮問題や気候変動を含むその他の世界的な関心事について、中国と協力すべきだ」との考えを示した」
文大統領は、北朝鮮に対して「原則放棄」でただ会えば、それで関係改善という認識である。南北首脳は、これまで3回の会談を重ねた。だが、北朝鮮は韓国を罵倒し続けている。闇雲に会談しても、約束を守れなければ反感を強めるだけである。南北和解は、米中関係の安定が前提になるのだ。現状は、それとほど遠い状況である。韓国は米国へ協力することで、南北関係改善が進むはずである。文政権には、この外交回路が理解不能だ。