4月23日の本欄で、昨年の中国人口は瀋陽市を初めとする大都市において「人口減」に突入したと報じた。中小都市に続き、中国の一部の主要大都市でも本格的な「人口マイナス成長」時代になった。中国全体の人口減が明らかになったのは、今回のニュースが初めてである。
中国は世界覇権を狙うと豪語してきたが、覇権狙いどころか足元のふらつく経済へ落込むことになった。一方の米国では、メキシコ国境に何十万という移民予備軍が殺到している。米国はその気になれば、いつでも人口調整できる恵まれた条件下にある。人口動態だけ見ても、中国は米国を凌駕できる状況でないことを証明した。中国の敗北である。
『フィナンシャル・タイムズ 電子版』(4月28日付)は、「中国、人口減少発表へ 大躍進政策以来初めて」と題する記事を掲載した。
中国では2020年12月に最新の国勢調査が完了しているが、結果はまだ発表されていない。調査について知る関係者らによると、中国の総人口は14億人弱と発表される見込みだ。19年時点での中国の人口は14億人を突破したと発表されていた。関係者らによると、極めて慎重に扱う必要のある数字とみなされているため、データとその意味合いについて政府の関係各部局の見解が一致するまでは公表されないという。
(1)「中国政府は国勢調査結果を4月初旬に発表する予定だった。中国国家統計局の劉愛華報道官は16日、公表前に「さらなる準備」が必要になったことが遅れの一因だと述べた。遅れはソーシャルメディア上で広く批判されている。地方の当局者も発表を前に備えを固めている。安徽省統計局の副局長は4月の会議で、当局者は国勢調査結果を解釈するために「議題を設定する」とともに、「世論の反応を注視すべきだ」と主張している」
中国政府は、ストレートに人口減の現実を発表できないで悩んでいる。
(2)「中国の人口が減少すれば、現時点で推計13億8000万人のインドが早々に人口世界一となる可能性があるとアナリストらはみている。人口の減少は消費から高齢者介護まで、アジア最大の経済大国に広範な影響を及ぼしそうだ。黄研究員は「中国の人口動態上の危機は予想以上のペースと規模になっている」と説明する。その上で「国に破壊的な影響をもたらす恐れがある」と語る」
国連推計では、2027年に中国人口はインドに世界1位を譲ることになっていた。中国が昨年、人口減になったのであれば、中国の1位陥没は早まる。日本がその例であるが、人口減は、社会保障費負担に大きな影響が出てくる。国防費に湯水のように金を使えなくなるはずだ。習近平氏にとっては、悪夢が始まるはずである。
(3)「中国では15年に政府が数十年来の家族計画政策を緩和し、全てのカップルが1人ではなく2人の子どもを持てるようにした後も出生率が低下している。中国の人口は1970年代末に「一人っ子政策」が導入されてからも、共産主義革命後の若年世代の膨張と長寿化の影響で増加していた。公式統計によると、中国の出生数は2016年に増加した後、3年連続で減少した。当局者はこの減少について、若年女性人口の減少と子育て費用の増大が原因だとしている」
下線部だけが理由ではない。女性の価値観が変わったのである。最早、専制主義で中国を統制できる時代が終わったことを意味している。監視カメラで四六時中、監視されている中国社会が、若い女性から忌避されていることに気付くべきだった。
(4)「実態はさらに悪化している可能性がある。中国人民銀行(中央銀行)は先週公表した報告書で、中国の合計特殊出生率(1人の女性が生涯のうちに産む子供の数)は1.5を割り込んだと推計している。公式の推計値は1.8だ。「中国が出生率を過大に推計しているのはほぼ事実だ」と人民銀は指摘している。「中国の人口動態がもたらす問題は(予想以上に)大きくなる恐れがある」という」
合計特殊出生率は、2015年以降ずっと水増しされている。2015年で、1.05であったはずである。それが、噓に噓を重ねてきた。現在、1を割っているはずだ。
『ロイター』(4月28日付)は、「中国の人口が50年ぶりに減少―FT紙」と題する記事を掲載した。
(5)「中国は出生数の増加に向け、いわゆる「一人っ子政策」を16年に廃止し、代わりに「二人っ子政策」を導入した。当時は、10年時点で13億4000万の人口を2020年までに14億2000万程度とすることを目標にしていたが、その後出生率は低下が続いている。出生率の低下と急速な高齢化は現役世代に圧力をかけ、生産性を低下させる」
2010年当時、2020年の人口は14億2000万人を目標にしたが、14億人を割ったことになる。経済的には、住宅バブルが崩壊するだろう。住宅の先高期待で投機をしてきた人たちが、人口減に直面して住宅を売りに出すであろう。これは、大きな影響を与えるであろう。
(6)「キャピタル・エコノミクスは28日付のリポートで「国勢調査前の数値を用いたわれわれの予測によると、労働人口は2030年まで毎年0.5%ずつ減少する。国内総生産(GDP)にも同様の影響が出る」と指摘した。「成長が鈍化すれば(中国経済が)米国に追いつくことは一段と困難になる。世界における中国の地位にも影響が生じる可能性がある」と分析した。中国人民銀行(中央銀行)は人口動態が変化したことを認識する必要があるとし「教育と技術の進歩で人口の減少を補うことはできない」と警告した」
労働人口は、2030年まで毎年0.5%ずつ減少する。GDPにも同様の影響が出ると予測されるに至った。中国経済の敗北は、確定的である。世界覇権への挑戦などと言っていられる状況でない。
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