中国が、発展途上国へ融資する際、金利は商業ベースである。厳格な貸付条件もつけている。返済不能になれば、担保を差し押さえるという高利貸し稼業に徹しているのだ。こういう融資の実態が、米国の大学調査によって明らかになった。
それによると、中国から借入れた国は中国に対して不利益な行為をしないという一札を取られている。不利益という内容は不明だが、そういう行為をしたと中国が認めれば、一括返済させると脅迫している。この中国が、世界に仲間をつくれるはずがない。危ない橋を渡っている。
『日本経済新聞 電子版』(4月1日付)は、「中国『債務のわな』、途上国に足かせ 米大学報告」と題する記事を掲載した。
中国の政府系金融機関が途上国向けに融資する際、他国の債権者よりも優位に立つための「秘密条項」が多用されていることが、米大学の報告書で明らかとなった。中国の国益と反する行為をした場合には即時返済を求めるケースもあった。米国の敷く対中包囲網に対抗して中国は国際協調を前面に打ち出すが、不平等ともいえる融資契約による「債務のわな」が自陣営拡大に向けて障害となる可能性もある。
米ウィリアム・アンド・メアリー大学に拠点を置く研究機関エイドデータが3月31日、「中国の融資のやり方」と題する報告書を公開した。過去約20年間に24カ国に向けて実施した100件の融資、のべ約366億ドル(約4兆円)分の融資契約書を入手して分析した。分析対象には2020年に債務不履行(デフォルト)に陥ったアルゼンチンやエクアドル向けの融資も含んでいる。
(1)「中国は広域経済圏「一帯一路」の構想のもと、投融資をセットにしたインフラ開発を進めている。報告書によると、中国国家開発銀行や中国輸出入銀行などによる2015年以降の融資はすべて秘密条項が付いていた。中国からの融資状況をほかの債権者に秘匿することを求めていた。中国から借りた「隠れ債務」の存在を知らないまま、他国は途上国に融資していたことになり、報告書は「(中国以外の)貸し手と借り手双方の国民は、隠れ債務について政府に説明を求められない」ことを意味すると指摘している。約4分の3の契約には中国からの融資が、先進国で構成するパリクラブ(主要債権国会議)が主導する債務再編には含まれないとも明記している」
中国のあくどいやり方は、表現のしようもないほどである。中国が歴史的に採用してきたものであろう。借入れ国を徹底的にしゃぶるのは、今日の国際機関の常識から見れば、想像もできない「弱者弾圧」手法である。新疆ウイグル族弾圧も、こういう無慈悲な精神で行なわれていると考えれば身震いするほどの嫌悪を覚える。
(2)「中国からの隠れ負債の問題は、実際に債務再編交渉の妨げとなっている。英紙『フィナンシャル・タイムズ』(FT)によると昨年に債務不履行に陥ったザンビアを巡っては、同国が中国向け返済を優先した疑いがあるとしてザンビア国債の保有者が利払いの減免を拒否している。中国に敵対的な行為をしない旨を融資契約に盛り込む事例も判明した。中国国家開発銀行がエクアドルと10年に交わした10億ドルの融資契約では、「エクアドルのいかなる政府機関が中国の不利益になる行為」をした場合に、債務不履行とみなして貸し手が全額返済を求められると規定していた。何が中国の不利益にあたるかは明確に定義されておらず、借り手側の幅広い行為を制約する効果を持っていた」
中国は、金の力によって貸付先を政治的に縛り付け、従属させる手法を押し付けている。中国の魔手に縛り付けられたら、再起不能の事態も覚悟しなければなさそうだ。
(3)「対中債務の返済に窮したスリランカは17年、南部ハンバントタ港の運営権を99年にわたり中国側に貸与することを余儀なくされた。中国が融資を外交ツールの一つとして用いて途上国を影響下におく「債務のわな」に世界は警戒する。今回判明した異例ともいえる融資契約を通じて、中国が借り手への強制力を高めようとしているのは明らかだ」
中国は、これはと見込んだ担保物件があれば、過剰貸付をして「債務のワナ」にはめ込んで身動きできないようにしている。蜘蛛が巣を張って獲物を捕るようなものだ。米国は、英国と協力して、中国の「一帯一路」の向こうを張る低利融資を検討すると発表した。こうした対策を取らない限り、中国の犠牲国はなくならないであろう。
(4)「新型コロナウイルス感染拡大による経済打撃で、途上国の債務問題は悪化している。中国を含む主要20カ国(G20)はパリクラブや国際通貨基金(IMF)などと連携して債務問題に取り組むと昨年合意したばかりだ。合意の趣旨に反するような融資契約を中国が今後も続けるか注目される」
中国に、国際的な協定を守る意思はない。絶えず抜け駆けを狙っている。こういう中国を懲らしめるには、民主国が協力する以外、道はなさそうだ。
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