勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2021年04月

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    中国は、米国の大学・大学院へ若い学生を10年以上も送り込む。その間に、同僚らの研究成果をできる限り窃取して帰国させる「泥棒行為」をさせてきた。これが、現在の中国研究のかなりに部分を占めている。米国も、ようやくこの窃盗行為に気づき、遅まきながら厳罰処分を下している。

     

    米国は現在、中国による研究の「ただ乗り」を防止すべく、米国立衛生研究所(NIH)だけで200以上の研究機関に関わる500人以上の研究員が問題を持つ可能性のあることがわかったという。そのうち100人以上の研究者は、すでに辞任、解雇、早期退職などの形でNIHのシステムから排除されたという。中国が、コロナ・ワクチンをつくったと自慢しているが、こういう「泥棒研究」が多大の貢献をしたのであろう。

     

    『大紀元』(4月27日付)は、「米NIH、外国との関係開示しない100人以上の学者を排除」と題する記事を掲載した。

     

    米国立衛生研究所(NIH)の責任者は22日、連邦議会で「これまでに問題を持つ可能性のある研究者を500人以上特定し、すでに100人以上の研究者を排除した」と証言した。同責任者は中国共産党の人材招致計画「千人計画」を非難した。

     

    (1)「NIHの外部研究責任者のマイケル ・ラウアー氏は22日、米上院で開かれた「米国の研究員を外国からの不当な影響から守る方法」に関する公聴会で、「NIHの調査は現在も進行中であり、これまでに200以上の研究機関に関わる500人以上の研究員が問題を持つ可能性のあることがわかった」「すでに100人以上の研究者は辞任、解雇、早期退職などの形でNIHのシステムから排除した」と証言した。同氏はまた、「そのうち34人が衛生局の観察総監室に引き渡され、起訴や民事和解に至ったケースもあった」と付け加えた」

     

    実に、大量の「泥棒研究者」が入り込んでいたことが分かる。過去、米国政府はそれに気付かず、「研究は自由」と鷹揚に構えていたのだ。

     

    (2)「ラウアー氏は聴聞会上では調査および解雇された研究者の民族的背景を明らかにしなかった。しかし、同氏は昨年、上級諮問委員会への内部報告会で、「調査した87機関の189人の科学者のうち、82%がアジア系だった」「彼らは中国の人材招致プログラムに狙われていたからだ」と明かしていた」

     

    問題を起こした研究者の8割が中国人であった。

     

    (3)「中国は、機密技術を盗むために2008年から海外のハイレベル研究者を招致する「千人計画」を始めた。米研究者は厚遇の見返りとして、機密情報を盗み出し、知的財産権を取得して中国に渡していた。そうして中国は米学術界への浸透を図り、米国の研究結果を複製しようとしている。ワシントンは、北京がこれらの研究者を通じて、米国の科学研究の成果、企業機密、知的財産などを盗み出し、それを経済、軍事、技術の面で米国を追い越そうとする中国の戦略に利用することを懸念している。NIHの調査もその対抗措置の1つとみられる」

     

    中国は、2008年から「千人計画」によって、中国人研究者を中心に囲い込みを始めた。これまで12年以上も経過している。「千人計画」では、米国人学者でノーベル賞候補学者まで中国に引っかかり、法廷に立たされたハーバード大学学部長経験者もいる。いかに、大掛かりであるかが分かるであろう。

     


    (4)「ノースカロライナ州選出のリチャード・バー共和党上院議員は22日の公聴会で、「中国から来た人たちは組織的な取り組みを行っている。彼らは中国政府からの支援を得て、米国で教育を受けた。そして米国で10年間働き、学べるだけ学んだ後、入手可能な、盗める限りの全てを中国政府のために持ち帰っている」と指摘した。同氏はさらに、「中国政府は海外の中国人や外国籍の研究者の採用にも努めている。これらの人々は、中国政府が提示する好条件に惹かれる可能性がある」と述べた」

     

    米国は、この技術窃取に気付いて中国人の理系留学生に厳しいチェックをしている。昨年はほとんど留学できないほど厳しくしており、中国外交部が抗議声明を発表したほど。自ら悪事を働きながら、表面的に抗議するという「芝居」を打っている。

     

    (5)「NIHの諮問委員会が2018年12月に発表した報告書によると、米国内の一部の外国人研究者が米政府からの資金を受け取りながら、米国の知的財産を海外に移転している。そのため、米各地の学術機関が被害を被っていると指摘した。同報告書では、海外から優秀な人材を集める中国の国家プロジェクト「千人計画」に注目した。米国防総省は以前、「千人計画」を中国が米国の技術、知的財産および独自技術を取得するための手段と見なした。同報告書の共同著者でNIH諮問委員会のM.ロイ・ウィルソンは「千人計画に選ばれるための重要な条件は、知的財産にアクセスできることだ」と述べた」

     

    中国の「千人計画」は、研究泥棒の計画書である。国家としてこれほど体面を汚す話もないが、中国では恥と思っていないのだろう。世界覇権を握るため、必要不可欠な「過程」と割り切っているに違いない。

    テイカカズラ
       


    韓国は、悪質である。福島原発トリチウムを「汚水放出」として世界中へ悪宣伝を始めた。その第一歩として、事情を知らない中南米を取り込もうとしている。トリチウムという科学問題を、感情論に訴えるという点で慰安婦「少女像」と同じ手口である。

     

    『中央日報』(4月26日付)は、「『地球で最も大きな井戸を汚染させる』 日本の海洋放出に対抗して韓・中南米が世論戦」と題する記事を掲載した。

     

    韓国外交部が福島汚染水海洋放出に対抗して太平洋沿岸の中南米国家との共同対応を急いでいる。崔鍾建(チェ・ジョンゴン)外交部第1次官は今月18日からコロンビア・コスタリカ・メキシコなど中南米3国を歴訪して汚染水放出に関連した懸念を共有した。汚染水放出は地球で最も大きな井戸である太平洋を汚染させる行為という「井戸汚染論」を繰り広げるための外交戦に出たといえる。

     

    (1)「崔次官の中南米3国歴訪は当初新型コロナウイルス感染症(新型肺炎)関連の協力および外交多角化次元で計画されていた。だが、歴訪開始を控えた13日、日本政府が汚染水放出を決めたことから自然に歴訪過程の核心議題に浮上した。崔次官は各国カウンターパートとの会談で汚染水放出に対する懸念を共有する一方、国際社会次元の共同対応の必要性を強調した」

     

    韓国は、トリチウムという科学の問題を韓国特有の「風水」(占い)意識で騒ぎ中南米まで出かけている。日本は、こういう感情国家の韓国とどのように対処すべきか。日本政府は、これまで100回もトリチウムの海洋放水の説明をしてきた。それにも関わらず、韓国国民が騒げば説明せずに、政府も一緒に騒ぎまくる。もう、どうにもならない国である。

     


    (2)「中南米3国も韓国政府の立場に共感を表して連帯を約束した。メキシコのカルメン・モレノ・トスカーノ外交次官は「海洋汚染によって影響を受ける領域内のすべての国家の声に耳を傾けることが重要だ。この問題を鋭意注視し、必要な措置を検討していく」という立場を明らかにした。崔次官は22日、コスタリカで開催された中米統合機構(SICA)加盟8カ国との外交次官会議でも、汚染水放出に対するリスクを再確認する共同声明採択を主導した。汚染水放出は隣接国だけではなく、全世界の海洋エコシステムに対する被害を誘発する可能性があるとし、未来世代に対する責任を放棄する決定だというのが趣旨だ」

     

    韓国外交部は、中南米へ行ってトリチウム問題で反対の火を焚きつけて歩いている。こういう態度を改めない限り、日本は韓国外交部と接触しないで「罰」を与えるしかないであろう。説明をしても聞こうとしない相手には、「無視」することだ。

     


    (3)「これに関連し、外交部は「周辺国家との協議のない一方的な海洋汚染行為に対し、太平洋という共同の海を共有する非アジア圏国家が即座に同じ声を出したという意味がある」と評価した。韓国政府が汚染水放出に対して中南米国家を含めた国際社会共助に注力するのは、現在としては法や手続き的な側面から日本側の責任を問うことは難しいという点を勘案した措置だ。日本は汚染水を放出する多核種除去設備(ALPS)を通じて飲料水水準まで浄化する立場であることに加え、このような過程を検証する権限も韓国をはじめとする周辺国ではなく国際原子力機関(IAEA)が持っている

     

    下線部は、韓国が感情論で日本を困らせろという認識であることを示している。トリチウムは科学の問題である。韓国は、これを感情論で対処しようとしていることが間違いなのだ。韓国も外交部が前面に出るのでなく、科学担当部署が乗出せば理解が早いだろう。

     


    (4)「国際的世論を形成するのに先立ち、汚染水放出に対処するために原則を用意し、国内世論を整えることが優先だという指摘も出ている。鄭義溶(チョン・ウィヨン)外交部長官が19日、国会の対政府質問で「日本がIAEAの基準に合う手続きに従うなら、あえて反対するべきことはない」という立場を明らかにするなど、汚染水放出に対処する原則と基準で統一が図られていない様子を垣間見せた」

     

    このパラグラフは、矛楯に満ちた記事である。科学的に無害であると証明されているものをどうして放出阻止できるのか。この根底には、日本を困らせてやれという根深い「嫉妬」が感じられる。

     

    (5)「鄭長官は翌日、「日本が行動したら何が何でも反対するのではないかという指摘があったので『そうではない』という趣旨で話したこと」と説明した。ただし、2023年に日本が放出予定の汚染水の有害性を評価するにあたり、政府が「国民不安」という抽象的な基準以外にどのような方針を持っているのかについて疑問の声が上がっている」

     

    韓国は、風評被害をまき散らして自分自身がその虜になっている。実に、滑稽な話である。幽霊の存在を信じて、幽霊の出現に怯えるのと同じことである。風水意識に悩んでいるのだ。

     


    (6)「汚染水放出に関連し、米国が日本と密着している局面も韓国政府が解決しなければならない課題だ。米国の後ろ盾なくして汚染水放出と関連した国際社会世論を形成することには限界がある。これに先立って、米国のジョン・ケリー大統領特使(気候変動問題担当)は18日の記者懇談会で、汚染水放出に対する韓国側の懸念に関連し、「日本がIAEAとしっかり協力していくものと信じている」という立場を明らかにした」。

     

    IAEAが、この問題の世界最高の機関である。そこが、科学的に無害であると太鼓判を押しているのに対して、素人の韓国外交部がどのように反論できるのか。実に、面倒な韓国が隣国になったものである。

     

    (7)「外交消息筋は、「日本がIAEAの基準を厳格に守って汚染水を放出すると強調している状況で、韓国政府が何の原則や基準もなく『絶対不可』の立場だけを繰り返すのは、一歩間違えれば国際社会に『ゴリ押し』と認識される恐れがある」とし、「政府が強調する『国民不安』を解消するために、汚染水がどんな浄化基準をクリアしているべきなのか等に対する深度のある悩みが必要だ」と話した」

     

    韓国政府のやっていることは、紛れもなく「ゴリ押し」であり、日本を困らせてやれという魂胆にほかならない。韓国国民が不安であるならば、韓国でIAEAの専門官に説明して貰う以外、方法はないだろう。

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    韓国は、世界で唯一「日本をバカにできる国」と妙な自慢をしてきた。その日本が、日米同盟強化を背景にして、英語圏諸国で「兄弟」扱いされていることに嘆息している。米国からワクチンの「増配」も受けているほかに、米英らで構成する情報機関「ファイブ・アイズ」(米国・英国・カナダ・豪州・ニュージーランド)へ日本が参加するとしている。

     

    韓国は、米国からワクチンの「増配」を受けられるかどうか、分からないだけに日本羨望は強まるばかりである。

     

    『中央日報』(4月25日付)は、「ワクチン確保した日本、ついでに英語圏同盟『ファイブ・アイズ』に加入するか」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「山上信吾駐オーストラリア日本大使が21日、「日本の『ファイブ・アイズ』加入が進展している。私は近い将来について非常に楽観的だ」と、オーストラリアメディア『シドニー・モーニング・ヘラルド』とのインタビューで話した。オーストラリア国立大学国家安全保障カレッジのロリー・メドカルフ学長も、「中国に対し細かく理解している国があるならばそれは日本。(反中戦線に対する)関心度と能力を考慮すれば日本が最善のファイブ・アイズ候補」と話した。最近、米国と英国が反中戦線を構築し日本とさらに密着する中で登場した「日本加入説」は、70年ぶりに出てきた最も有力な話という」

     


    「ファイブ・アイズ」への日本加入説は昨年、英国が旗振り役になった。河野防衛相(当時)が、「ありがたい話である」と答えている。日本政府は、参加する意思を固めているのであろう。


    (2)「これに先立ちニュージーランドは異例にもこうした流れに反対する立場を表明した。ニュージーランドのマフタ外相は19日、「ファイブ・アイズの役割拡大は不快だ。ニュージーランドは中国に対する立場を自ら決めるだろう」と発表した。ファイブ・アイズでやりとりされる機密情報を反中戦線の先頭に立つ国と共有しようとする米国の動きに反対する意思を明らかにした。ニュージーランドの立場にこたえるように中国国営メディアのグローバルタイムズは20日、「ニュージーランドは実用的で問題に対し明確な知識を持っている国であり、日本はファイブ・アイズに加入したいだろうが容易ではないだろう」という内容の専門家の寄稿を載せた」

    最近のニュージーランドは、豪州と中国が反目している機会に、中国輸出を増やすなど「中国」傾斜を強めている。対中輸出が伸びているので、中国から日本を「ファイブ・アイズ」へ参加させるなと言わされているのだろう。

     

    (3)「『シドニー・モーニング・ヘラルド』は、「オーストラリア政界では(ニュージーランドを除いた)『フォー・アイズ』に関するジョークがこの数カ月間で生まれている。2週間後にオーストラリアのモリソン首相がニュージーランドのアーダーン首相に会う席でファイブ・アイズの未来に対し議論する見通しだ」と伝えた」

     

    ニュージーランド経済は、小規模ゆえに豪州からは「フォー・アイズ」と揶揄されている。

     

    (4)「ファイブ・アイズの拡張は、オーストラリアより先に米国の政策専門家らを中心に言及されてきた。15日にはハドソン研究所アジア太平洋安全保障部長のパトリック・クローニン氏が「日本はファイブ・アイズの事実上6番目の会員入りが近づいており、バイデン政権はこれを奨励しなければならない」という内容の寄稿を政治専門メディア「ザ・ヒル」に寄せた。昨年米戦略国際問題研究所(CSIS)は「解決策:日本はファイブ・アイズに加入する準備ができた」という題名の第5次アーミテージ年次報告書を発表した」

     

    ファイブ・アイズは、ニュージーランドを除けば、全ての国が「日本賛成」の立場だ。

     

    (5)「米中競争が深まるほど、日本の位置づけが重要になり、可能性は排除できないという評価も出ている。峨山(アサン)政策研究院のジェームズ・キム研究委員は「ファイブ・アイズは信頼に基づいた同盟で非常に障壁が高い。米中競争の深化という情勢が日本の加入の可能性を大きくしている」と説明した」

     

    韓国でも、日本が米中競争の中で占める役割が大きくなっていると認める。それだけに、日本が「ファイブ・アイズ」に参加するのはごく自然と見ている。日本は戦前から、中国以上に中国を研究してきた実績がある。例えば、社会学で中国農村研究を行い、素晴らしい結果を残している。中国社会の基底が掴めるのだ。旧満鉄が、行なったものでその蓄積は大きい。

     

    (6)「日本は最近では菅義偉首相が訪米し、日米首脳会談を契機にファイザーのワクチンまで確保した。首脳会談とワクチン確保は表面的には別々の問題だったが、外交界では事実上、米国の暗黙的支援があったため菅首相がファイザー製ワクチンを確保できたものとみている。日本は軍事的側面でも米国から「信任」を得ている。ジェームズ・キム研究委員は「日本の軍事力増強の動きがある。(米国の東アジア戦力配備戦略において)韓国にある戦力を減らし日本に配備させようという話も出ている」と話した」

     

    日本が、ワクチン「増配」を受けたのは、日本の信頼度上昇の結果と言える。

     


    (7)「専門家らは英語圏でない日本にもし扉が開かれれば次の加入国はフランスになると予想する。メドカルフ学長は「理想的な未来計画は日本とフランスのような国が徐々に情報共有計画に参加するファイブ・アイズ・プラス形態だろう」と話した。国立外交院のチョン・ヘウォン教授は、英国の欧州連合(EU)離脱後に欧州でもファイブ・アイズ拡大の必要性ができたと説明した。「英国のEU離脱前は英国がファイブ・アイズから出た情報のうち一部をEUと共有したが、英国のEU離脱後はこうした情報伝達ルートが途絶えたため」という説明だ。フランスは、米英と中ロが鋭く向き合う国連安全保障理事会5カ国のうち残る1国でもある。米国と英国がフランスを確実に引き入れる必要があるということだ」

    日本の次は、フランスが「ファイブ・アイズ」参加候補という。国連の常任理事国5ヶ国のうち、米英仏がファイブ・アイズで席を一緒にすれば万事、好都合という判断である。




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    文政権は、「平等・公正・公平」を合い言葉にしているが、実態は真逆である。「不平等・不公正・不公平」である。その最たるケースが、ソウル市のマンション高騰である。文政権になって4年間でマンション価格は8割高である。完全なバブルである。4月の二大市長選(ソウル・釜山)で、与党候補が大敗したのは当然であろう。これだけ無策で国民生活を圧迫してきた与党が勝てるはずがない。

     

    国民は、韓国を見限って先進国へ移住している人たちが、朴槿恵(パク・クネ)政権時よりも急増している。文在寅政権発足後の2017年6月から2020年12月までに2510人が海外移住のために出国したと集計された。朴政権時代である2013~16年の海外移住者が1267人だったのに比べ98.1%も増加した。集計期間は、現政権が6カ月短いものの、海外移住申告者数はほぼ2倍に増えた。文政権に責任は明白だ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(4月25日付)は、「韓国不動産高騰、ソウル4年で8割高 政権に高まる不満」と題する記事を掲載した。

     

    韓国で不動産価格の上昇が止まらない。文在寅(ムン・ジェイン)政権発足後の4年足らずで、ソウルのマンション価格は8割も上昇。政府は価格抑制策の実施を急いでいるが、歯止めがかからない状態だ。首都圏では家賃高騰で退去を迫られる「マンション難民」も社会問題となっており、2022年大統領選での争点になるのは必至だ。

     

    (1)「ソウル市龍山(ヨンサン)区のマンションに家族4人で住む男性会社員(43)は3月、「5月から80万ウォン(約8万円)家賃を上げさせてもらいます」と、家主に突然告げられた。現在の家賃は月額280万ウォンで3割近い値上げとなる。男性は近場で引っ越し先を探すが「家族向けの物件はほとんどない。郊外で探し始めた」と話す」

     

    突然、3割近い家賃引上げとは暴力的である。これが、進歩派政権の下で行なわれている。

     


    (2)「韓国KB国民銀行の調査によると、3月のソウルのマンション売買平均価格(新築と中古の合計)は坪単価で4272万ウォン(約415万円)だった。東京23区の平均価格390万円(新築のみ、不動産経済研究所調べ)と比べても高い。人気の高い江南(カンナム)区では6292万ウォンと、地価の高さで知られる東京都港区の平均値とほぼ同水準。一等地では100平方メートルの3LDKマンションで3億円超えが相場になっている」

     

    億ションどころか、「3億円超」マンションの出現である。韓国の所得水準から言えば、確実なバブルといってよい。いずれは破裂するが、被害者も出る。

     

    (3)「驚くべきはその上昇率だ。3月にはソウル市と全国平均がともに前年同月比で22%も上昇した。文政権が発足した17年5月と比べるとソウルは83%、全国平均でも48%上昇した。朴槿恵前政権の4年間での上昇幅(ソウル18%、全国平均17%)と比べても高騰ぶりが際立つ」

     

    文政権は、住宅価格暴騰だけで選挙に敗北して当然の構造である。文政権登場以来、ソウルで83%もの上昇である。前政権では同18%であった。文政権が、これだけの暴騰を許したのは、供給増を図らず需要引締めに掛かった結果、先高観を煽ってしまったもの。経済知識がなかった結果である。痛ましいほどの事態を招いた。

     


    (4)「文政権も住宅政策を重要課題に掲げてきた。不動産価格の高騰は悪質な民間業者の投機が原因と判断。ソウル市中心部などでは価格高騰につながる再開発認可を制限して投機熱を冷まそうとする対策を進めた。これに加えて地方経済の落ち込みで地方の申請件数が減ったこともあり、全国の住宅建設の認可数は朴前政権時の15年の約76万5000件から20年には約4割減の約45万7000件に落ち込んだ。供給が減ったことで逆に不動産価格の上昇圧力は強まった。コロナ禍の経済対策として韓国銀行(中央銀行)が政策金利を歴代最低の0.%に引き下げ、投資マネーが増えたことも不動産投資の拡大につながった」

     

    全国の住宅建設の認可数は、朴前政権時の15年で約76万5000件。それが文政権の20年には約4割減の約45万7000件に落ち込んだ。4割も供給件数が減る一方、金利は引下げられたので、価格が高騰して当然だ。この需要と供給の関係が理解できなかったのは致命傷である。

     


    (5)「文政権はマンション供給を増やすために緑地の再開発を推進すると発表。高層マンション建設のために容積率を緩和するなどの政策も打ち出したが、焼け石に水の状態が続いている。日本のようなバブル崩壊を韓国市民は体験しておらず、「安全資産」として不動産投資が過熱している面もある」

     

    金融資産の蓄積が少ないことが、貯蓄を住宅投資へ向けるマイナス現象が起こった。現在の中国と似通った状態である。いずれ、バブルは破裂する。国民は、二重の打撃を受けるはずだ。

     

    (6)「一方で、市民の所得はそこまで増えていない。最新の政府統計によると、韓国の給与所得者の19年の平均所得は年3708万ウォン(約360万円)と前年比4%上昇にとどまった。ソウルの平均マンション価格10億9993万ウォンは、平均所得のおよそ30年分に相当する。普通の労働者には全く手の届かない水準だ」

     

    マンション価格は、平均所得のおよそ30年分に相当するほど上昇している。文政権は、大変な置き土産を置くことになった。国民から怨嗟の声が出て当然だ。

     

     

    あじさいのたまご
       

    国際法に疎かった正義の士

    感激居士が落し穴へはまる

    盧武鉉の遺書で判断を誤る

    バイデンが試す国際的感覚

     

    文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、残り任期がほぼ1年を残すのみである。日韓関係は最悪事態に陥っており、これにさらなる重石が加わった。4月21日、ソウル中央地裁は、元慰安婦第二次訴訟に対して、「却下」の判決を下したからだ。理由は、韓国が他国政府を罰せられないとする国際法における「主権免除論」に則ったものである。

     

    前記の判決では、韓国憲法が国際法遵守を謳っているとおり、「主権免除論」に従い、旧慰安婦賠償問題は、外交ないし国内政治で解決すべきとした。

     

    この判決は、文大統領の脳天に一撃加えたとも言えるほど、大きな意味を持っている。2015年12月、安倍首相と朴槿惠(パク・クネ)大統領が交わした「日韓慰安婦合意」が、最も法的に適った解決法であったことを追認したのである。文大統領は、それにも関わらず、当事者の意見を十分に聞いていないことを口実にして事実上、破棄するという暴挙に出たのだ。

     


    国際法に疎かった正義の士

    文大統領は、弁護士出身である。法律を一通り学んでいるはずだが、国際法に疎かったのであろう。文氏は、人権派弁護士として名を売った。だが、弁護士稼業は相手の法的弱点を突けば、それで勝訴できるケースが大半に違いない。国際法は、そういう簡単なものでないはずだ。法理と外交の関係を両睨みするバランス論であろう。文氏は、韓国の立場が「絶対優位」と錯覚し、日本へ超強気に出て失敗したのだ。

     

    政治家の業績を分析するには、「政治心理学」という分野がある。文在寅大統領が、日韓外交だけでなく、韓国の国内問題でことごとく失敗した理由について、この「政治心理学」という面から追って見たい。別段、堅苦しい話をする訳でない。文在寅なる人物の「経歴」が、彼の政治歴にどのように反映したかを確かめるだけだ。経歴は、『ウィキペディア』から引用した。

     


    文在寅氏は1年浪人後の1972年に、4年間全額奨学金のあった
    慶煕大学校法科大学(法学部)法学科に首席で合格した。慶煕大学は、韓国の有名私大に数えられている。この間、兵役をはさんで1980年に卒業したあと、合格率2.9%と言われた第22回司法試験に合格した。文氏が現在、韓国政治を牛耳る「86世代」(1960年代生まれで80年代に学生生活を送る)とほぼ同じ政治感覚で、世代的に「親中朝・反日米」観を共有していることが推測できる。

     

    金正淑と司法修習中の1981年に結婚した。慶煕大学の1年後輩に当る。文在寅本人が語ったところによると、プロポーズは金からだという。文が友達と一緒にいたところに金が来て、突然「在寅、あなたは私と結婚するの?しないの?早く答えて!」と言われ、びっくりして「わかった」と答えたという。このシーンから想像できるのは、文氏の性格が「受け身」ということだ。結婚問題を女性から切り出させるとは、「リーダーシップ」の欠如を表わしている。これが、政治歴にもよく現れている。大勢に流されるタイプなのだ。

     

    同じ弁護士事務所のパートナーである盧武鉉(ノ・ムヒョン)が2003年、大統領に当選すると文氏も大統領府民情首席に就任した。本人が望んだことでなく、やむを得ないことと受け止めたものだった。嫌々な仕事であったので、就任1年で辞任した。人間関係に嫌気が差したとされる。辞任後、なんとヒマラヤへトレッキングに出かけた辺りに、文氏の性格がよく表われている。だが、2004年3月、盧大統領が国会で弾劾訴追されたことを知り帰国して、再び大統領府の市民社会首席として復帰した。

     

    文氏は、政界での駆け引きを嫌っていた。「一本気」なところがあるのだ。盧大統領は、こういう文氏の性格を知り抜いていたので、「絶対に政治家になるな」と忠告していた。そういう文氏が、なぜ大統領を志したのか。

     

    それは盧武鉉の死後、金大中(元大統領)が死去直前の約2か月前、文在寅氏らに後事を託したからである。こうして、文氏は政界入りを決意した。文氏はそのときの心境を、「あなた(盧武鉉)はもう運命から解き放たれましたが、私はあなたが残した宿題に縛られることになりました」と語っている。文氏は、盧路線の未完成部分を引継ぐ決意を固めたのである。それが、なんと「反日」であったのだ。

     

    盧武鉉は、文民政権の正当性を確立するために歴史の清算にこだわった。盧は軍司令官が出席する長官会談で、米国に対して日本を共通の仮想敵国に規定しようと提案し、米国を非常に当惑させたという。このニュースは、韓国や日本では報道されなかった。盧武鉉は2005年3月の「三一節」(対日独立運動記念日)の演説で、日本に植民地支配への明確な謝罪と反省、賠償を要求した。ついに、対日強硬政策へと舵を大きく切ったのである。

     

    文大統領は、この盧氏の対日強硬政策を受け継ぎ就任以来、狂ったように「反日」「積弊一掃」に走り出した。これが、現在の日韓関係破綻に至るまでの「前奏曲」である。

    (つづく)

     

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