勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2021年04月

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    米国バイデン大統領が、中国に対して厳しい発言をしているのに対して、中国は控えめな発言だ。「世界覇権は狙っていない」などと、米国の怒りを鎮める政略的発言を繰返し、やり過ごそうとしている。

     

    この中国発言の裏には、中国と運命を共にしてよいという同盟国が存在しないことが影響している。ロシアは一見、同盟国のような素振りを見せているが表面的なもの。旧ソ連崩壊の原因をつくったのは中国であるからだ。毛沢東が、米国へ接近してソ連を軍事的に劣勢に持込み、ソ連は米国と和解させざるを得なくなった。

     

    この中国の裏切りに対して、プーチン・ロシア大統領が淡々と機会を見て「報復」を狙っていると見て間違いないだろう。先ごろバイデン氏がプーチン氏と電話会談で、米ロ首脳会談を呼びかけた。プーチン氏は、これだけでウクライナから空挺部隊を引き揚げさせ、「ウクライナ緊張」解決に向かわせたのである。

     


    プーチン氏が、このように素早い動きに出ているのは、ロシア経済の疲弊に原因がある。米国の経済制裁で、国内物価が上昇しており金利引上げを決定するほどだ。ロシア中央銀行は4月23日、金融政策決定会合を開き、主要な政策金利を年4.50%から5.%に引き上げると決定した。利上げは3月に続いて2会合連続で、通貨ルーブルの下落などによる物価上昇圧力への警戒を強めた結果だ。

     

    ロシアは、米欧諸国との関係悪化でルーブルが対ドルや対ユーロで下落し、食料品を中心に価格上昇が目立っている。ロシア中銀は、次回以降の金融政策決定会合でも、利上げを検討する姿勢を示した。こうした状況で、バイデン氏がプーチン氏へ会談を申し込んだのである。絶妙なタイミングである。習近平氏としては、気になる米ロの動きのはずだ。

     


    『大紀元』(4月24日付)は、「
    『国際社会で孤立深める中国』、原因は共産党自身―トランプ前政権顧問マイルズ・ユー氏」と題する記事を掲載した。

     

    トランプ前政権の対中強硬政策を踏襲した米国のバイデン政権は、対中包囲網を広げるために欧州やアジア太平洋地域の同盟国との連携を強めている。中国当局は、米国が他国を抱き込み「利益集団を作っている」と批判した。ポンペオ前国務長官の中国政策首席顧問を務めた余茂春(マイルズ・ユー)氏は、中国共産党の行動こそ、自国の国際社会での孤立を招いた原因だと指摘した。

     

    (1)「米国、欧州連合(EU)、英国とカナダは3月、ウイグル人住民の人権を侵害したとして、相次いで中国当局者らに制裁を科した。3月31日、日米英など13カ国は共同声明を発表し、中国共産党が世界保健機関(WHO)の中共ウイルス(新型コロナウイルス)の発生源をめぐる中国武漢市での現地調査を妨害したと糾弾した。また、ドイツ、イギリス、オランダ、カナダ、フランスはこのほど、南シナ海における中国の支配権強化に対応して、同海域に軍艦を派遣する意向を表明した」

     

    中国が南シナ海での支配を強めると共に、ドイツ、イギリス、オランダ、カナダ、フランスが軍艦を派遣すると発表している。日米以外にも、これだけの国々が中国の横暴阻止に向けて動き出している。

     


    (2)「余氏は、大紀元の取材に対して、欧米各国の対中政策はイデオロギーと関係なく、「国際ルールと価値観に基づくものだ」と述べた。「米政府の対中戦略は中国の行動、中国共産党の本質に応じて策定された」という。「各国の対中政策はそれぞれ違っているが、中国と長く付き合うなか、意見は図らずも一致するようになった。「例えば、中国による技術窃盗の問題。これは米国だけが直面している課題ではなく、英国やドイツなども対応を迫られている。中国当局の言動や政策が原因で、中国は国際社会で孤立している。各国は今、中国当局の挑発行為に対抗せざるを得なくなったのだ」

     

    欧米諸国が、中国への警戒感を一段と強めているのは軍事面の進出だけでなく、技術窃取行為への怒りである。こうして中国の挑発に対して共同して対抗せざるを得なくなっている。

     


    『大紀元』(2020年9月27日付)は、「
    『中国に真の同盟国はない』米政権の対中政策ブレーン余茂春氏、習氏の多国間主義主張を否定」と題する記事を掲載した。

     

    米国のマイク・ポンペオ国務長官の中国政策首席顧問で、中国安徽省出身の余茂春(Miles Yu、マイルズ・ユー)博士は9月22日、珍しく公のイベントに出席し、国連総会で習近平国家主席が提唱した「多国間主義」を否定した。

     

    (3)「中国の国営メディアが、近代史における中国民族の最大の反逆者と呼んでいる余茂春氏は、習主席の発言は「自己認識の欠如」から来ていると述べた。同氏は、中国を統制している中国共産党は北朝鮮、そして「その気がないふり」をしているロシアを除けば、真の同盟国はなく、「孤立している」と話した。また、香港における中国共産党の「残忍で半ファシスト的な」行動が示すように、中国共産党の信頼性の欠如についても言及した」

     

    中国は、北朝鮮とロシアを除けば世界で孤立している。そのロシアもただ、表面的に振る舞っているだけであろう。米ロが首脳会談を開けば、中国の立場はどうなるか。これから中国は、どのように行動するか興味深くなってきた。

     

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    中国の3月工業生産は、前年比で14.1%増に止まった。2月が同35.1%増であったことから見て、異常な鈍化である。実需の落込みが原因のはず。だが、表向きの理由は、鉄鋼産業のCO2(二酸化炭素)排出削減で、大幅減産を実施しているという説明である。

     

    世界は、中国が実需減少をCO2削減にすり替え、カムフラージュしていることに関心を持つべきだろう。中国政府が、経済=雇用を無視して率先してCO2削減に踏み切る訳がないからだ。

     

    ゴールドマンのエコノミストらは、ロックダウン(都市封鎖)があった昨年のGDP急減に伴うゆがみを回避するため、2019年と比較した。それによると、輸出と不動産販売は明らかに好調だが、住宅着工と製造業投資は低迷していると説明している。こうしたパフォーマンスの格差は今後ある程度、収束するかもしれないが、景気回復のペースは鈍いとしている。以上は、『ブルームバーグ』(4月20日付)が伝えた。

     

    前記の記事で、住宅着工と製造業投資が低迷していると指摘している。これは、鉄鋼需要の減少に繋がっているはずである。中国経済に占める鉄鋼需要は、依然として大きなバロメーターである。鉄鋼需要の不振は、病める中国経済の実態を余すところなく示しているものだ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(4月23日付)は、「中国鉄鋼大手『減産急ぐ』製造業のコスト増にも」と題する記事を掲載した。

     

    中国の鉄鋼大手が大幅な減産を余儀なくされている。地方政府の指令で業界2位の河鋼集団などが高炉閉鎖や生産量の削減を急ぐ。背景には中央政府が掲げる2060年に二酸化炭素(CO2)排出量実質ゼロの目標がある。中央の意をくんだ地方は排出量の多い鉄鋼業界を標的にするが、鋼材価格は足元で急上昇し、製造業のコスト負担が増す可能性がある。「同僚はみんな仕事を失い途方に暮れている」。4月中旬、中国最大の生産地、河北省唐山市にある河鋼集団傘下の唐銀鋼鉄の製鉄所を訪れると、一時解雇(レイオフ)の対象となった男性従業員は天を仰いだ。普段は出入りの激しかった表門は静寂に包まれていた。

     


    (1)「この製鉄所3基の高炉を備え、一時はここで4000人以上の従業員が働いていた。大気汚染などの環境対策が不十分な製鉄所だとし、20年12月に当局の指導で閉鎖された。環境対策を施した最新鋭の製鉄所を市内の沿岸部に新たに建設する予定を打ち出しているが、具体的な稼働時期はまだ公表されていない。唐山市は3月19日、一部の企業を除き市内の全ての鉄鋼メーカーに対して年末まで生産量の3~5割削減を求める異例の通達を出した。唐山市の20年の粗鋼生産量は1億4000万トンに上り、中国の生産量の1割強を占める。仮に4割程度の削減が実現すれば、日本製鉄の19年通年の生産量に匹敵する規模となる」

     

    3基の高炉を備え、一時はここで4000人以上の従業員の働いていた製鉄所が閉鎖だという。日本では考えられない「荒業」である。新製鉄所が建設されるというが稼働時期は未定である。これだけの大規模減産に踏み切るのは、実需が消えてしまった結果の苦肉の策であろう。在庫をつくるより、減産した方が有利という計算である。

     

    (2)「唐山市は今月3日に会議を開き、鉄鋼メーカーに対して減産とともに、環境対策の徹底を求める方針を示した。全ての製鉄所で監視カメラの設置を強化し、オンラインでCO2などの排出量を監視する厳しい内容だ。鉄鋼業が街を支える唐山市だが、地方政府は有無を言わさぬ大幅な減産を突き付けた。唐銀鋼鉄以外の大手メーカーも環境対策のため、相次ぎ老朽化した製鉄所の閉鎖に追い込まれており、雇用の悪化に直結している」

     

    習政権は、2060年に二酸化炭素(CO2)排出量実質ゼロを目標にしている。今から39年先の話である。それにも関わらず、唐山市の20年粗鋼生産量1億4000万トン(中国生産量の1割強)を約4割も削減して、中国経済が回るだろうか。これは、将来の鉄鋼需要が大幅に減少することを見越した結果である。

     

    私は、高度経済成長時代に鉄鋼担当記者であった。鉄鋼需要は、マクロ経済の動きと一致しており、需要予測がしやすい産業である。こういう鉄鋼産業の特性を考えれば、中国政府の命じる大幅減産は、暗い将来予測に立って結果であろう。

     

    (3)「鉄鋼大手が大幅な減産を迫られる背景には、習近平(シー・ジンピン)国家主席が20年9月、国連総会の一般討論演説で掲げた「60年のCO2排出量実質ゼロ」がある。環境問題に強い関心を持つ欧州などに秋波を送るほか、対立の続くバイデン米政権との対話の糸口にしたい狙いが透ける。中国で鉄鋼は年間のCO2総排出量の12割を占めるとみられ、電力業界に次ぐ規模となっている。鉄鋼業界での排出削減は実質ゼロに向けた重要な要素で、各社は対応を迫られている」

     

    鉄鋼生産において最終的なCO2排出ゼロ達成には、「水素製鉄所」の建設以外に道はない。それまでの繋ぎに新設備をつくってもいずれは、廃棄の運命である。となれば、こうした技術革新の構想を先ず示すべきである。日本ではすでに始まっている。結局、鉄鋼需要不足をカムフラージュした「偽装減産」と言えよう。 

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    米韓首脳会談は、5月下旬開催予定と発表されたが、詳細な日程もテーマも発表されないままである。韓国メディアは、延期説を流しており大統領府が慌てて打ち消す、笑うに笑えない事態を招いている。

     

    韓国は、コロナワクチン入手を会談目的に上げているが、それは首脳会談にふさわしくないテーマだ。両国首脳が直接面談する以上、安全保障が主テーマになるはずである。日米首脳会談が、そのひな形を示している。韓国は、「クアッド加入」について依然、曖昧戦術にしておきたいようである。米国は、それを受入れない姿勢だ。ならば、ワクチンも格別の配慮をしないだろうと予測されている。

     

    『中央日報』(4月24日付)は、「文大統領は声を高めたが、『ワクチン武器化』懸念される韓米首脳会談」と題する記事を掲載した。

     

    韓国政府が「5月後半にワシントンで開催される」と発表した韓米首脳会談を控え、両国の外交当局間に緊張感が形成されている。韓国が「新型コロナワクチン確保」に向けた死活的状況に置かれている中、今回の会談が開催されるという点のためだ。

     


    (1)「文在寅(ムン・ジェイン)大統領は19日の青瓦台(チョンワデ、韓国大統領府)首席秘書官・補佐官会議で「ワクチン協力など両国間の懸案について緊密に協調する」とし「ワクチン需給問題を首脳会談で扱う」と述べた。バイデン米大統領との談判を通じて、ワクチン供給問題に活路を開くという意味として受け止められた。しかし16日未明に韓米政府が「文大統領がバイデン大統領の招請で5月後半にワシントンで首脳会談を開催する」と明らかにしてから1週間が経過したが、会談開催日はまだ決まっていない」

     

    米国は、米韓首脳会談についてなしのつぶてである。無言のうちに、韓国を試しているのだろう。

     

    (2)「ワクチン提供問題に関連した米国政府と現地の雰囲気は、韓国政府の期待とは異なる方向に流れている。バイデン大統領は21日(現地時間)、「海外への支援を確信できるほど十分なワクチンを保有していないが、(今後)可能になることを期待する」と述べた。バイデン大統領は国境を挟むカナダのトルドー首相と電話会談をしたことを公開し、「中米などは我々が支援できると確信する国々」と話した。米国務省は「カナダやメキシコをはじめ、クアッド(日米豪印)と需給関連の協議をした」と明らかにした」

    米国は、ワクチンを優先配分する国として、カナダ・メキシコをはじめ、クアッド(日豪印)を上げた。韓国は、入っていないのだ。

     

    (3)「鄭義溶(チョン・ウィヨン)外交部長官は韓米政権間で「ワクチンスワップ」が推進中であることを公開し、21日の寛勲(クァンフン)クラブ討論会では「困っている時の友人が本当の友人」と言って求愛した。しかしこれに対する米国側の反応は冷静だ。米国側の公式反応は「韓国または他国との非公開の外交的対話には言及しない。現在の焦点は米国内でのワクチン接種努力」(国務省のプライス報道官)だった」

     

    困っているときに助け合うのが同盟とすれば、韓国がクアッドに加わって民主主義防衛に立ち上がるという選択をすべきであろう。韓国は、それを忌避しているのだ。


    (4)「外交関係者の間では、「米国がワクチンを外交的な武器とする『ワクチン国際政治』をするかもしれない」という見方が出ている。実際、米国が一部の国を除いてワクチン輸出を禁止する可能性もあるという声が出ているが、韓国政府は「そのようなことはない」という立場を繰り返している。丁世均(チョン・セギュン)前首相はこの日、あるラジオ番組で「米国が禁輸措置を取れば、それはチンピラがするようなことだ」という発言をした」

     

    前韓国首相が、米国を「チンピラ扱い」する発言をするほど、韓国が困惑している実態を表わしている。

     

    (5)「韓国が米国のワクチン優先協力対象から外れたのは、文在寅政権の4年間に後退した韓米関係の影響だという指摘が、外交専門家らから提起されている。千英宇(チョン・ヨンウ)元青瓦台外交安保首席秘書官は、中央日報との電話で「米国は絶えず中国に対抗する米国側に立ってほしいと要請してきたが、政府は毎回拒否してきた」とし「米国の要求には背を向けながら、突然『同盟にワクチンを支援すべき』という要求をして、米国が受け入れるのか」と話した。続いて「特に文在寅政権のクアッド加入拒否は、結果的にワクチンの代わりに中国を選択するという失策になった」と強調した」

     

    韓国が、中国を怖がるのは異常である。怖い相手の中国だから、クアッドに加入して安全保障の傘に入る。これを逃げ回っている。中国から事前に、相当な脅しを掛けられているのだ。これまで、米国にも適当な返事をしてきて、のっぴきならぬ事態を迎えていると言えよう。二股外交の落し穴である。



    (6)「延世大統一研究院のボン・ヨンシク研究委員は、
    「米国は3月のクアッド首脳会議でワクチンに関連して『クアッドの力量を結合する』という共同声明を出し、クアッドを中心にしたワクチン供給計画を明らかにした」とし、「国務・国防長官の訪韓は最後のクアッド加入要請と見なければいけない」と主張した。続いて「最近の日米首脳会談の後、クアッドの日本に対してはワクチン追加供給が決定した半面、韓国とは首脳会談の日程調整まで難航するような姿が演出されていて、『コリアパッシング』のシグナルという懸念もある」と話した」

     

    米国の「コリアパッシング」が、始まっているという憶測も出始めた。韓国には、「米中バランス外交」という学生の唱える外交論が存在する。現実に、大国が押し合う外交戦の中で、そのような夢を実現させるには、スイスのように「永世中立」を宣言して、承認される以外にない。その覚悟なしに、「バランス外交」は不可能である。非同盟主義のインドも中国の圧迫に対抗して、「クアッド」へ加入した。

     

     

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    一帯一路は、2013年に習近平政権が世界覇権の一環として始めた。当時の中国は、国際収支の膨大な経常黒字を抱えていた。2014年の経常黒字は2360億ドル、15年は3041億ドルにも達した。これをファンドにして、中国マネーで発展途上国を支配しようという隠れた意図を持っていたのである。

     

    中国は、いわゆる「債務漬け」を始めた。融資先国の有力担保を取り上げる「国際高利貸し」になって、大きな批判を浴びることになった。先進国は、こうした弊害を目の当たりにして、反「一帯一路」の動きが強まっている。

     


    『フィナンシャル・タイムズ』(4月22日付)は、「EU・インド、インフラ投資で連携 一帯一路に対抗」と題する記事を掲載した。

     

    EU(欧州連合)とインドが世界各地のインフラ整備で協力する方向で交渉を進めている。中国が主導する広域経済圏構想「一帯一路」に対抗する狙いがある。

     

    EUとインドは昨年7月、「インド太平洋地域などで第三国との連携構築に向けて協力し相乗効果を探る」独自の計画を模索することで合意した。EUは19年に日本とも同様のパートナーシップを結び、当時の安倍首相が「インド太平洋から西バルカン、アフリカに至るまで、持続可能で偏りのない、ルールに基づいた連携をつくれる」 と表明した。

     

    (1)「複数の外交筋によると、この計画はエネルギー、デジタル、運輸セクターなどにおける「コネクティビティー(連携)」パートナーシップとうたわれている。中国政府が進める一帯一路では、受入国にとって法的保護が不十分で融資の返済条件が不利だが、EUとインドの計画ではこの点を改善する考えのようだ」

     

    EUは、一帯一路が発足した際、米国の警告にも関わらず大挙して参加した。先進国では日米二ヶ国だけが参加しなかった。いかがわしさを感じ取っていたからだ。EUは、一帯一路の恩恵を期待したが、結果は全て中国企業のみ。EUは、この実態を知って手を引くことになった。

     

    (2)「インドとEUは58日に開くオンライン首脳会議でこの計画を発表する意向だ。米国も中国の影響力拡大に対抗するため、同様の計画を進める機会を模索している。EUとインドは中国の動きに反対する陣営と名乗るわけではない。しかし、欧州、アフリカ、アジア向けの構想として、一帯一路に代わる選択肢になりうるかどうかが注目される。インフラ整備の資金は官民両セクターから調達する計画だが、資金源などのプロジェクトの詳細はまだ最終決定には至っていない」

     

    インドが、EUと組んで発展途上国のインフラ投資へ参加するのは、中国の勢力拡大を阻止するという狙いであろう。

     


    (3)「あるEU外交官は、「中国が提供するよりも魅力的で、パートナーシップに基づいてグローバル化を推進できる機会がこれから開けてくる」と述べた。さらに、「EUと同盟国にとっては、中国の投資が世界各国で支配力を強めるのではなく、一帯一路に代わる選択肢を提供することが共通の利益だ」という。外交筋によると、インドとEUのインフラ投資構想の焦点は、それぞれの地域における共同プロジェクト、第三国における計画推進、金融安定や法基準などの分野の標準策定だという。研究開発や技術開発での協力改善にも力を入れる」

     

    EUの欧州委員会(執行機関)は4月13日、ヨーロッパ南東部にあるモンテネグロ共和国が、対中債務の支援として10億ユーロ(約1300億円)超える要請を拒否した。中国の「一帯一路」による高速道路建設プロジェクトの支払いが滞っているためだ。中国はこのプロジェクトを通じて、同国が位置する西バルカン半島で影響力を発揮しているという。モンテネグロ共和国が、中国の「餌食」にされているだけに、深刻な問題になっている。EUの欧州委員会が支援要請を拒否したのは、最初からこのプロジェクトの不採算性を理由に挙げていた。

     

    (4)「アジアでは、巨額のインフラ投資が必要とされている。EUは、アジアとの連携強化に向けて数百億ユーロを投資する計画を大筋で発表していた 。インドも国際的プロジェクトに多額を投じる計画を表明していた。だが、ある外交筋によると、EU大使が幅広い戦略を練るために21日に開いた非公開会合で議論が2時間近くに及び、この分野を強化していかなければならないと「警鐘」が鳴らされたという。EUは中国の影響力拡大に対抗しようとする一方で、20年12月には中国と投資協定を結ぶことで大筋合意するなど、中国との経済関係を強化しようとしている」

     

    EUは、モンテネグロ共和国が一帯一路によって犠牲を強いられているので、インドと協力して新たな犠牲国を出さない努力を始めることになった。EUとインドが共同で構想を進めるなか、米バイデン政権も中国の影響力拡大の抑止策として、民主主義国家との同盟構築を目指している。バイデン米大統領は3月、そうした国家によりインフラ整備で連携し、一帯一路に対抗する構想をジョンソン英首相に提案した。この構想は、6月にジョンソン首相が議長を務める主要7カ国首脳会議(G7サミット)で議論されよう。

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    旧慰安婦問題に対して、韓国地裁はようやく正常な判断のひな形を示した。ソウル中央地裁が慰安婦損害賠償訴訟2次訴訟に対して「却下」判決をしたからだ。1月に「日本政府が原告に1億ウォン(約970万円)ずつ支払うべき」という同じ裁判所の別の判決とも相反する結論だった。

     

    今回の「却下」判決が、異色なのは旧慰安婦の救済方法まで指し示していることである。国際法によって、日本政府から賠償金を取り立てることは不可能なこと。それゆえ、韓国政府が責任をもって賠償せよということだ。これは、文大統領に向かって下した判決でもある。弁護士出身の文在寅氏にとって、実に恥ずかしい判決である。

     

    2015年の日韓慰安婦合意で、日韓は和解したはずである。文大統領が、政権が変わったから責任はないと破棄同然の扱いをして、混乱の種を自ら蒔いたのだ。今回の判決は、文氏の蒙昧を開いたと言える。

     


    『中央日報』(4月24日付)は、「慰安婦2次訴訟『却下』の真意は…『天動説→地動説に戻った』」と題する記事を掲載した。


    2018年10~11月に大法院(最高裁)全員合議体の強制徴用被害者勝訴判決をはじめ、司法府は過去の問題に関連する訴訟で原告に有利な判決を相次いで出した。こうした流れにブレーキがかかったのはわずか数週間前だ。2次訴訟の結果に先立ち3月29日、ソウル中央地裁民事34部は前任裁判部が原告勝訴で確定した1次訴訟の結果に対し、「日本政府に強制執行をするのは国際法違反」という決定を追加で出した。

    司法府内外では連日驚くという反応が出ている。正義記憶連帯(旧韓国挺身隊問題対策協議会)は23日、「原告の被害当事者は絶望している」とし「大韓民国の歴史だけでなく世界人権史に大きな汚点として記憶されるだろう」と強く反発した。では2次訴訟裁判部はなぜ、どのような論理で原告敗訴決定をしたのだろうか。一種の「判決解説書」を問答形式で整理した。



    (1)「慰安婦問題は国家免除に該当する事案なのか=「そうだ」
    慰安婦訴訟が強制徴用訴訟と決定的に異なるのは、日本政府を相手にした損害賠償訴訟だったという点だ。2次訴訟の裁判部は、韓国政府が日本の裁判所の民事・刑事上の判決に従う義務がないように、日本政府に対しても韓国の司法府は判断できないという「国家免除」原則に基づくべきだと見なした。訴訟の敷居(要件)を越えることができなかったため、慰安婦被害の不法性(本案判断)の有無も問いただすことができず却下したのだ」

    国際法では、他国の裁判所の判決に従う義務から免除されている。この原則を曲げることは、国際社会に大きな波紋を与える。

     

    (2)「慰安婦に関しては「武力は国家が最も強い形態で主権を表現する方式」であり「国家による公権力の行使が残酷な方式だからといって主権的行為としての性格が消えるのではない」と明らかにした。一見、不合理に見えるが、こうした事案の性格のため国家免除を適用すべきだというのが現時点の国際秩序ということだ。

    慰安婦問題といえども、「国家免除」の原則を曲げることは不可能である。

     


    (3)「国際法の判例を変えてはいけないのか=「まだいけない」
    国際慣習法や判例も変わる可能性はある。原告の弁護人が「国際判例は形成していくこともできる」とし「とうてい納得できない」と反発する背景だ。実際、1月の原告勝訴判決を出した1次訴訟の裁判部は「主権的行為でも重大な人権侵害は国際法上強行規範違反と見なし、国家免除から除外し、賠償責任を問うべき」という結論を出した。裁判部の結論は「これら事例で国家免除を認めず『賠償すべき』と判決したのはイタリアと韓国の1月の1次訴訟事例しかなかった」ということだ」

    国家免除の判決を出したのは、過去にイタリアと韓国の1月の1次訴訟事例しかない。イタリアの判決は、国際司法裁判所で敗訴した。よって、国際法の「国家免除」に反する判決は韓国しかない。

     

    (4)「2次訴訟の裁判部は「ある国が国際的に確立された規範を単独で抜け出すには、変化に相応する『一般的な国家の慣行』『法的確信』などの要件がなければならないが、今回の事案はそれに該当しない」とした。さらに「我々の憲法が定めた国際法尊重主義という憲法上の価値にも合う」と明らかにした。

    韓国の憲法は、国際法尊重主義を謳っている。この建前から言えば、「国家免除」を受入れるほかない。

     

    (5)「慰安婦被害者の損害賠償請求権は消滅したのか=「そうではない」
    原告代理人団は「慰安婦被害者はすでに米国・日本の裁判所で敗訴したため、韓国の裁判所が最後の救済手段」という点を強調してきた。2次訴訟の裁判部はこれについて「慰安婦被害者は幼い時期に被告により多くの苦痛を受け、長い法的争訟過程も順調でなかった」としながらも「国際法上、国内の裁判で問題を解決する権利は制限される」という結論を出した」

     

    韓国の裁判所が、他国で発生した事案を裁く権利はない。これが、国際法の原点である。

     

    (6)「これに関連し「訴訟で解決できないのに、どのように実質的な損害賠償請求権を実現するのか」に対するそれなりの解決法も裁判部は示した。「司法的方法でなく外交・政治的な方式で責任を問うべき」という趣旨だった。「立法府と行政府の政策的な意思決定がない状況で司法府は極めて抽象的な基準しか提示することはできない状況」と限界を打ち明けたりもした」

    慰安婦問題は、日韓慰安婦合意で解決されたはずだ。今回の提訴者の中には、慰安婦合意で慰労金を受け取り、さらに賠償を求めるという二重受取りを策す者まで表われている。この点も判決で指摘している。「国家免除」の原則により、韓国政府が責任を持って解決すべきことである。二重取りは防ぐべきである。

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