勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2021年05月

    a0960_008531_m
       

    中国政府は、商品価格の高騰が企業収益を圧迫していると懸念している。5月の製造業PMI(購買担当者景気指数)は、商品価格の高騰によって前月比で減少した。これで2ヶ月連続減である。

     

    中国国家発展改革委員会や中国工業情報化省は5月23日、鉄鉱石や鋼材など資源会社を集めて、国際商品市況の高騰に合わせた価格のつり上げをやめるよう指導した。「過剰な投機が価格上昇を助長した」と強調したもの。その後の世界商品市況には、さほどの変化が起らず、中国経済の与える世界への影響力に陰りが見えるという指摘も出ている。中国経済の黄昏が始まった。

     

    ゴールドマン・サックスでは、世界経済の起動軸が中国から米国へ戻ったと「パラダイムシフト」を明言している。世界経済は大きく転換し始めているのだ。

     


    『日本経済新聞 電子版』(5月31日付)は、「5月の中国景況感 2カ月連続悪化 海外受注減や原材料高」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国国家統計局が31日発表した5月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は前月より0.1ポイント低い51.0となった。2カ月連続で悪化した。好不調の境目である50は上回ったが、海外受注の減少や原材料価格の上昇が企業の景況感に影を落としている。PMIは、50を上回れば前月より拡大、下回れば縮小を示す。20年3月以来、50を上回っている」

    PMIは、日本で言えば「日銀短観」のようなものだ。5月のPMIは50を上回っているが、2ヶ月連続で前月を下回り、景気回復力に陰りを見せている。

     

    (2)「柱である生産は52.7と0.5ポイント改善した。気がかりなのは2カ月連続で悪化した新規受注だ。海外からの受注に限った指数は3ヵ月ぶりに節目の50を下回った。20年6月以来の低さだ。人民元高が重荷になっている可能性がある。企業の規模別では明暗が分かれた。大企業と中堅企業はともに改善し、節目の50も上回る。対照的に零細企業は4月から2ポイント低下し、48.8となった。主要原材料の買い入れ価格を示す指数が上昇し、零細企業は価格転嫁に苦しんでいる」

     

    下線のように、海外からの新規受注が低迷しており、5月は50を下回った。原材料価格の値上りで零細企業は価格転嫁に苦悩している。頼りの輸出が力を失っている。中国政府が、世界商品市況高騰に歯止めを掛けたいと急いでいる理由は、以上で明らかである。だが従来と異なり、世界商品市況が大きく反応しないという新たな課題が見えている。

     

    『ブルームバーグ』(5月29日付)は、「中国は商品価格への影響力失った 介入は成功しない-ゴールドマン」と題する記事を掲載した。

     

    中国は商品相場を思いのままに動かす能力を失い、価格の急騰を抑えようとする同国の取り組みは実を結ばない可能性が高いと、ゴールドマン・サックス・グループが指摘した。

     

    (2)「米国を中心に先進国の景気が回復する速度を踏まえると、中国はもはや価格を決定する買い手ではなくなったことが示唆されると、ジェフ・カリー氏率いるゴールドマンのアナリストはリポートで分析。銅や大豆といった原材料は供給タイトで引き続き上向きの軌道上にあるとし、中国政府が投機に関して警告を発した後の価格下落は「明確な買いの好機」だと指摘した」

     

    中国がこれまで、世界の商品市況を動かしてきた。だが現在は、米国がその主導権を握っていると指摘している。米国経済の世界へ与える影響力が大きくなっている結果だ。

     

    (3)「多くの商品において最大購入国である中国は、インフレ懸念を理由に価格上昇を抑えようと努めてきた。こうした市場介入は一定の成功につながっており、同国での鉄鉱石価格は5月12日以降に20%超値下がりしている。ブルームバーグ商品スポット指数は同期間に約1%しか下がっていない」

     

    中国政府の警告で下落した商品は鉄鉱石の2割下落だけである。ブルームバーグ商品スポット指数は、約1%の下落に止まった。中国の影響力が急速に薄まっている。

     

    (4)「アナリストらは、「商品はもはや中国中心ではないとの兆候は増えている」と論じる。米国が市場での影響力を拡大した主因は、財政投入による経済刺激策だが、構造的な要因もあるという。中国はもはや低コストの労働力、あるいは環境問題に無関心でいることの恩恵をそれほど受けなくなり、それがパラダイムシフトを起こしていると解説した」

     

    世界商品のリーダーは、中国でなく米国に移っているという認識がアナリストの間に広まっている。恥ずかしながら、私もそうした認識を貫いている。私のメルマガでは、構造的な分析に力点を置き、この点を強調している。ここでは世界商品の起動軸が、中国から米国へ回帰したという「パラダイムシフト」まで言っている。肝に銘じるべき言葉だろう。

     

    a0960_008572_m
       

    中国が、欧米の大学と密接な関係を築き、技術窃取している疑いが持たれている。米国は、すでにFBIが、全米の大学や研究所に技術窃取の具体例を示して警戒を呼びかけているほど。カナダでは、アルバータ州が地方政府として初めて、大学に対して中国との協力関係の一時停止を通達した。

     

    日本でも孔子学院が全国の私立大学に設けられている。米国では、この孔子学院が隠れ蓑になって、学生のスパイ活動を支援するなど行なっていることから、廃止の傾向が強まっている。米国の孔子学院が、こうした不埒な行動を行なって、日本の孔子学院では行なわないという保証はどこにもない。全国の警察も目を光らせているだろうが、警戒対象であることは間違いない。

     


    『大紀元』(5月29日付)は、「カナダ・アルバータ州政府、大学に中国との協力停止を要求 安保上などの懸念で」と題する記事を掲載した。

     

    カナダのアルバータ州政府は、州内の主要大学が中国と関わりのある研究協力を一時停止すると発表した。国家安全保障上の理由および人権侵害への加担を避けるためだとしている。

     

    (1)「カナダの大学と中国の間には多くの共同研究プロジェクトが展開している。「中国はカナダの大学と協力を通じてカナダの重要な戦略的技術を盗み出し、国家に深刻な脅威をもたらす」とカナダの情報セキュリティ専門家は以前から警告してきた。アルバータ州は協力関係の一時停止を打ち出した同国初の州政府となった。同州の教育担当大臣は州内で学術研究を主とするアルバータ大学、カルガリー大学、レスブリッジ大学、アサバスカ大学の4校に対し、当面、中国との協力プロジェクトの停止を命じた。また、大学理事会は90日以内に、中国政府および中国共産党と関わりのある協定、研究およびその他の協力に関する報告書、大学と中国企業や政府機関との連絡資料の提出を求められた

     

    アルバータ州では、主要4大学に対して中国との協力プロジェクトの停止を命じた。同時に、90日以内に、中国との関連資料の提出を求めた。ここまで、強力な措置が取られた裏には、中国からの危険な動きが見られるのであろう。

     


    (2)「同州のデメトリオス・ニコライデス高等教育大臣は声明の中で、「カナダの知的財産権が盗まれている可能性や、中国との研究提携が中国の軍事・諜報機関に悪用される可能性」に対して懸念を示した。「州の大学研究は主に納税者からの資金によって賄われている。もし、それが中国に悪用され、カナダとカナダの同盟国に損害を与えたり、あるいは中国政府による自国民への人権侵害のために利用されたりすれば、これは全く容認できないことだ」とした。同氏は「今回の措置はあくまでも中国政府に対する予防的措置であり、中国人民を標的にするものではない」と強調した」

     

    下線部は、中国がカナダの知的財産を盗み出している危険性に警鐘を鳴らしている。これまでに、いくつかの被害が出ているのであろう。

     


    (3)「これに先立ち、カナダ紙「グローブ・アンド・メール」は、アルバータの大学と中国は、ナノ、生化学、人工知能などの戦略的プロジェクトに関わる多くの研究を共同で行っていると報じた。その多くはカナダで開発された技術の商業化に関する研究だが、主導権は中国にあると指摘した。オタワ大学のマーガレット・ジョンストン教授は、アルバータ州政府の行動を称賛した。「カナダの技術が悪用されるのを防ぐために、他の州でも追随することを検討すべき」と述べた。

     

    下線部は、実に危ないことをやっているものだと思う。「猫に鰹節」である。これまでの中国の行動から真面目なことをやるはずがない。そういう疑惑を持たずに来たこと自体、罰せられるほどの話であろう。

     

    (4)「同教授はまた、「ウイグル人を追跡したり、彼らの個人情報を収集し監視したりする技術の背後にはカナダの研究開発の成果がある。中国は常に『自分たちは技術を盗んだり、プライバシー情報を漏らしたりしない』と主張している。しかし、その主張は信頼できないと示す記録があまりにも多い」と指摘した。ブリティッシュコロンビア大学の教授は、中国だけでなく、外国と協力するすべての機密技術プロジェクトの再審査を要求すべきとの見解を示した

     


    (5)「今年3月、カナダのイノベーション・科学経済開発省は、各大学や研究機関に知的財産権の保護を求め、国家安全保障を研究パートナーシップの評価に組み込むためのリスク・ガイドラインを策定していると発表した」

     

    企業も自主技術開発より、M&A(合併・買収)の時代である。研究の生産性が極度に落ちてきた現在、技術窃取の可能性が高まっている。警戒することは常識の時代である。

     

    豪州政府は5月に、同国大学に設置されている孔子学院の審査を開始した。同国政府は、「国益に反した」地方政府や研究機関の協定を破棄できる法律を導入した。今回の動きは同法に基づくものとみられる。孔子学院を設置している13の大学は、中国の大学との協定書を審査のため政府に提出している。豪外務省は、協定を廃止するかどうかは個々の状況に基づいて判断するとしている。『大紀元』(5月10日付)が伝えた。

     

    日本では17私立大学が孔子学院を設置している。国公立大学は設置していない。文科省が設置にブレーキを掛けているのであろう。日本でも、いずれ孔子学院について問題が持ち上がると見られる。全国の警察署は監視体制にあると思うが、未然に問題を防がなければならない。

     

    ムシトリナデシコ
       

    タブーに触れてもお咎めなし

    韓国の半導体技術に惹かれて

    恒常的な生産性低下の落し穴

    米国が中国を引離す時期近い

     

    5月21日の米韓首脳会談は、中国にどのような負の影響が出るのか。目下のところ、どこもこの問題について触れていない。それは、目に見える形になっていないからだ。その見えない部分が重要である。

     

    今回、韓国企業が米国で400億ドルの投資を行なう。これで、米国の外資誘致が本格化して、米国経済を強くする。同時に、それが中国に技術的に大きな損害になることを示唆しているのだ。中国で行なわれても不思議でない韓国の投資が、米国へ流れ中国へ与える技術的なマイナス・インパクトは大きいはずだ。この問題は、後半でとり上げたい。

     

    タブーに触れてもお咎めなし

    韓国は、米韓共同声明で「台湾」と「南シナ海」に言及した。これで、米国寄りになったという一点のみが注目されている。外交的に見れば、日米首脳会談の共同声明にも盛られていたことを踏襲した。日米韓三ヶ国が、中国へ結束して対応する宣言になった意味は大きい。

     


    これによって、中国の対外戦略が影響を受けることは確かであろう。中国の戦略では従来、韓国を脅していけば米国側へピッタリとつくことはないと見てきた。現に、2016年に韓国が導入を決めたTHAAD(超高高度ミサイル網)へ行なった中国の経済制裁は、未だに続いている。中国は、このTHAADが無害であることを知りながら、あえて制裁に踏み切ったのは、韓国へ圧力を掛ける好機と判断した結果であろう。

     

    こういう経緯から言って、韓国が米韓首脳会談の共同声明で中国のタブーである「台湾」と「南シナ海」に言及した以上、さらなる「お咎め」があるという予想が一般的である。だが、中国の公式反応はないのだ。ただ、中国外交部の「戦狼外交官」による軽い脅し程度に止まっている。なぜ、中国政府は強い反応をしないのか。それには、裏があったのだ。

     

    ソウルの外交関係者によると、「中国は米韓首脳会談前に共同声明について大方の内容を知らされていた」と言う。韓国政府は、中国側との事前の擦り合わせで落としどころを探ったと見られる。中国は、日米豪印4カ国の枠組みである「クアッド」について共同声明での言及を容認する一方、香港や新疆ウイグル自治区などの人権問題には触れさせないように調整したというのである。これは、『日本経済新聞 電子版』(5月29日付)が報じたものだ。

     


    この報道は、その後の中国の対応を裏付けている。日米首脳会談の共同声明では、口汚く非難したが、今回の米韓首脳会談の共同声明では、軽い「ジャブ」で済ませたからである。ただ、韓国が米韓首脳会談というトップシークレットについて、事前に外国へ漏らす外交ルールに反することを行なった点は重大な裏切りであろう。韓国の信用度を著しく損ねるものである。しかも、同盟を組む米国と対立する相手国へ知らせたのだ。信義上も、看過できない事態である。

     

    このように韓国の「口が軽い」ことが分かった以上、韓国を「クワッド」に正式加盟させることは極めて危険である。特に、軍事情報が絡む問題では、中国へ筒抜けという最悪事態に陥るであろう。韓国の間諜(スパイ)まがいの行動は、黙認していると有事の際に思わぬ損害を被るはずだ。

     

    韓国の半導体技術に惹かれて

    中国が、米韓共同声明について正式反応しないのは、指導部で検討しているという見方もある。日本在住の中国人学者によれば、「米国の対中包囲網は効力がない。中国は科学技術など着々と手を打っている」と豪語している。これは、口先だけの話であり、それを裏付ける証拠は何もないのだ。仮に裏付けがあるとすれば、韓国が米国寄り姿勢を強めた以上、THAAD問題よりも強く反応して当然である。それが、沈黙しているのである。

     

    考えられる理由は、韓国企業による海外での半導体投資が、さらに中国を回避して米国などへ集中することを恐れていることであろう。これは、中国で行なわれてもおかしくない半導体投資が、米国へ流れることを意味する。これによって、中国での半導体生産が減って、中国の雇用が増えないというマイナスの影響を被るのである。

     

    半導体は、21世紀最大の「戦略物資」である。中国が、自国企業に依存する低い自給率(現状では10%程度)に悩んでいることかから推測して、韓国へ新たな報復を科すゆとりをなくしていると見るべきだ。

     

    前記の、半導体自給率について若干の説明を加えたい。中国の自給率は、中国企業と外資企業の半導体生産で計算される。このうち、中国企業分が前述の通り10%、これに外資企業生産分の10%が加わり、合計の自給率は20%になる。残り80%は輸入依存である。中国が「半導体後進国」であるのは、紛う方なき事実なのだ。

     

    戦前の日本は、当時の戦略物資である「鉄鋼」と「石油」を自給できずに米英と開戦した。中国は現在、半導体自給が不可能な中で、米国と開戦する構えの雰囲気を臭わせている。日本の例からも分かるように、現在の中国は極めて危険なコースを歩んでいる。中国はここで、戦闘状態に突入すれば、緒戦はともかく長期戦に備える経済力を持っていないのだ。

    (つづく)

     

    次の記事もご参考に。

    2021-05-06

    メルマガ255号 ハイテク企業叩きの習近平、「老人経済」に活気不足「米国大きくリード

    2021-05-10

    メルマガ256号 「中国の危機」、日本と同じ戦争・経済の道を歩めば「破綻する運命」

     

    a0960_008532_m
       

    新型コロナウイルスの発生源調査が、二転三転してようやく米英の情報機関が原因究明に乗出すことになった。中国武漢のウイルス研究所が疑惑の焦点になっている。

     

    バイデン米大統領は5月26日、起源解明に関して90日以内に結果を報告するよう情報機関に指示したと発表。世界保健機関(WHO)は3月、武漢を訪れた国際調査団の報告書を公表し、自然界から中間宿主の動物を介して人間に感染が広がったとみられると結論付けた。

     

    5月30日付の英紙『サンデー・タイムズ』は、新型コロナウイルスの起源について英情報機関が中国武漢のウイルス研究所の可能性があるとみていると報じた。起源解明へ追加調査を命じたバイデン米政権の情報機関とも連携しているという。同紙によると、欧米の情報機関はこれまで、研究所から漏えいした可能性は低いとみていたが、再び分析した結果「あり得る」と判断した。

     

    米国トランプ政権時代、大統領命令で米国情報機関が調査に乗出した。結果の正式発表はなかったが、トランプ氏は発生源を「武漢のウイルス研究所」と名指ししたが立ち消えになった。トランプ氏が、自らのコロナ対策の失敗を糊塗するためと勘ぐられたのである。米国進歩派メディアもトランプ非難に力点を置き、トランプ発言を葬ることに肩を貸してきた。メディアの報道姿勢も同時に問われることになった。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(5月27日付)は、「武漢研ウイルス流出説、信頼性高まる」と題する社説を掲載した。

     

    ジョー・バイデン米大統領は5月26日、新型コロナウイルスの発生源について、より突っ込んだ調査を行うよう情報当局に指示した。バイデン氏は、この問題に関する米国務省の調査部署の閉鎖を命じたと伝えられていたため、今回の対応は方針転換となる。同氏が自身のみっともない判断を取り繕おうとしているのは、ウイルスが武漢ウイルス研究所から流出した可能性を示す証拠によってついに「ダムが決壊」したためだ。当初から疑わしい事実が明らかになっていたのに、大統領が調査を指示するまでこれほど時間がかかったのは恥ずべきことである。

     


    (1)「マイク・ポンペオ氏やドナルド・トランプ氏など、有力な共和党関係者が(武漢)研究所説を支持し始めたが、政権によるパンデミック対応の失敗から人々の目をそらそうとしているとして非難された。ファウチ氏が研究所説を一蹴した時期には、ホワイトハウスと科学アドバイザーとの対立を楽しむような報道がなされていた。CNNは「アンソニー・ファウチ氏はコロナウイルスの発生源に関するドナルド・トランプ氏の理論を粉砕した」と報じた」

     

    ポンペオ前国務長官やトランプ前大統領は、武漢ウイルス研究所が発生源であると発言したが、米国の主流メディアは真面目に報道しなかった。「トランプ叩き」に熱中していたのだ。今になると、その報道姿勢は問題になる。

     


    (2)「最も重要な情報開示は、今年1月にトランプ政権の国務省が行った。国務省の報告書は「最初の(新型コロナ)発生事例が確認される以前に、武漢ウイルス研の複数の研究者が、新型コロナと通常の季節性疾患の双方に当てはまる症状を示す病気になったことを信じるだけの理由が米政府にはある」と指摘している。同報告書は、武漢ウイルス研は中国軍との関係を維持しており、新型コロナに類似の各種ウイルスに関する研究について透明性を欠き、首尾一貫していないとも述べている。バイデン政権はこれらの指摘の大半を公式に受け入れた。ファウチ氏でさえ今週、研究所からの流出の可能性を認めた」

     

    今年1月、米国務省は武漢ウイルス研が発生源と疑える根拠があると指摘した。バイデン政権は、ようやく現在になって原因究明に乗出した。

     

    本欄は、海外情報で武漢ウイルスの遺伝子配列が、人間の手が加えられて、異常であることを取り上げてきた。ただ、この分析を発表した中国人研究者に対して、多数説は悪意を見せて否定する状況であった。中国政府の手が回っていたのであろう。もう一つの疑問点は、ウイルスが公式発表される前の一昨年11月に人民解放軍がワクチン開発に乗出していたのだ。このニュースで株価が暴騰したと報じられていた。要するに、中国当局は全て把握していたはずである。

     


    (3)「WHO調査団が今年行った武漢訪問は、新たな情報をほとんどもたらさなかったが、同調査団は研究施設からのウイルス流出は「極めて可能性が小さい」との判断を示した。ジェイク・サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)はこの調査を批判した。テドロス・アダノムWHO事務局長でさえ、ウイルスが何らかの研究施設から流出したものかどうかについて「さらなる調査」を求めた。ある科学者グループは今月の『サイエンス』誌に掲載された書簡で、「研究所からの偶発的流出説と動物から人に感染したとの説は、いずれも引き続きあり得る」との見解を示した」

     

    ウイルス専門家の意見が、微妙に変わって点に注目すべきである。当初、中国政府の言分を100%聞かされてきた頭が、次第に冷静になると共に疑問点が浮かび上がったのであろう。専門家でもこういうミスがあるのだ。

     

    (4)「この精査は1年前に開始されるべきものだった。しかし、党派色の強いメディアは公平な議論を妨げた。多くの「専門家たち」は政治的打算で動き、科学に従うよりも集団思考の犠牲となった。単に点数表を付けているのではない。新型コロナの武漢起源説は、次のパンデミックを阻止し、危険な研究施設をより適切に運営し、人類を守るすべを理解する上で極めて重要である。世界は依然として誠実で開かれた調査を必要としている

     

    下線の部分の指摘通り、つぎのパンデミックを防がなければならない。中国政府は、調査に協力する義務がある。米英の情報機関が動き出した以上、何らかの「答え」が出るだろう。その後、中国が最も恐れる「賠償金」問題が出るはずだ。そうなると、中国は修羅場になろう。

     

     

    テイカカズラ
       


    韓国では、来年3月の大統領選挙を前にして候補者選びが本格化しようとしている。与党「共に民主党」からは、前首相の丁世均(チョン・セギュン)氏も候補者の一人として名乗りを上げている。世論調査では、丁氏の人気度は一桁に止まっている。それだけに、いかに世間の注目を集めるかに腐心しているところだ。そういう焦り気分が強いとは言え、日本を「あいつら」と呼んで猛批判することは褒められたことでない。「反日」が人気を集める常套手段であるものの常軌を逸した発言である。

     

    一方、最大野党の「国民の力」では、次期党代表選びが始まっている。こちらは、36歳で議員経験なしの青年が、党による世論調査(一般と党内)で一位になるという新風が吹いている。韓国政治の混乱の中で、新たな動きが始まるのか目を離せなくなった。

     


    『中央日報』(5月30日付)は、「韓国前首相、日本政府を露骨な表現で批判」と題する記事を掲載した。

     

    丁世均・前首相が「東京五輪地図」に独島(ドクト、日本名・竹島)を自国領土として表示した日本政府に向けこうした露骨な表現で批判した。

    (1)「丁前首相は5月29日、忠清南道(チュンチョンナムド)地域の市道議員懇談会に参加し、「日本はちょっと偏屈で恥知らずなのではないか。われわれを刺激しなくてもいくらでも五輪をできるのではないか。五輪地図(注:日本五輪HPで竹島を掲載)修正ができなければ国民の同意を受けて五輪をボイコットすべき」と主張した」

     

    竹島問題は、日本が国際司法裁判所へ提訴しようと申入れたが、韓国の拒否でそれもできない状況である。韓国が、それほど自信があるならば国際司法裁判所で白黒を決めるべきである。米国も日本領土であることを認めている。領土は、国家形成の基本要因である。ないがしろにできない問題である。

     

    (2)「その上で、「言うことも恥ずかしいが、われわれは何度も信号を送った。対話しようと。ところが最隣国に対し首脳会談もまったくできなかった。独島をあいつらが奪っていこうとするのは絶対容認できないこと」と述べた。また、「われわれが(独島を)奪ってきたならわからないが、歴史的にも史実的にもとんでもないことをする」と付け加えた」

     

    竹島問題と徴用工問題を混同した発言である。韓国は、竹島問題で国際司法裁判所提訴を拒否。徴用工問題では、韓国政府が解決案を示さない限り、日本が日韓首脳会談を開催しないと回答している。韓国は、自ら解決案を出さずに首脳会談を開こうとしているが無理難題な話なのだ。日本を「あいつら」呼ばわりすることは、あとあと困ったことにならないか。仮に、韓国大統領に当選した際、「あいつら」の日本政府に会わす顔があるまい。

     


    (3)「彼は、2019年に日本政府が韓国大法院(最高裁)の徴用関連判決を問題にして輸出規制をしたことと関連しても、「本来、敵国に戦争物資は禁輸しても生活物資や産業物資は禁輸しない」として「悪い人たち」と話した」

    日本は、輸出規制をしていない。正しい表現ではこうなる。「半導体主要3素材の輸出手続き規制の強化」である。それまでは、一括承認手続きで済ませたが、韓国から第三国へ輸出されている疑惑があるので、輸出手続きを改めて一件、一件厳しく行なうということだ。現に、輸入申請は全量認められ、韓国の半導体生産になんらの支障も起らなかったのである。

     

    韓国政府は、半導体生産に問題が起らなかった現実を糊塗して、韓国企業が「内製化した」「他国から輸入した」などと虚偽の発言にすり替えている。こうした経緯から見て、日本を「悪い人」と呼べるはずがない。悪いのは嘘発言をしている韓国政府である。

     

    韓国進歩派政権は、こうして「進歩」の看板に似つかわない言動をしている。その実態は、保守派以上の民族主義グループである。韓国では、保守派が革新的な存在といえる。

     


    『東亞日報』(5月29日付)は、「『当選0回』李俊錫氏がカットオフで1位、新しい保守を望む声」と題する社説を掲載した。

     

    (4)「野党「国民の力」の党代表選予備選挙(カットオフ)で、36歳の李俊錫(イ・ジュンソク)前最高委員が1位で通過した。今回のカットオフは、一般国民2千人、党員2千人を対象に2社の機関が行った世論調査を1対1の割合で合算した結果だ。李氏が41%を記録し、2位の羅卿瑗(ナ・ギョンウォン)前議員は29%だった。院内経験のない1位と当選4回を経験した2位の差が10ポイントも広がった」

     

    野党「国民の力」の党代表選予備選挙の世論調査では、36歳で議員経験のない李俊錫氏が41%になった。これは、現政権の無様な姿を見て、30代の青年に期待を懸けるという切羽詰まった雰囲気が現れている。

     


    (5)「一般国民調査で、李氏(51%)は羅氏(26%)を2倍近く圧倒したが、党員調査では1、2位の順位が逆転した。その差は1ポイント程だった。少なくとも党員調査では重鎮が優勢だという一般的な予測が外れたのだ。この機に保守野党の体質も抜本的に変わらなければならないという党員の切迫した期待が、「李俊錫旋風」に投影されたとみられる」

     

    党員調査では、30代青年がベテラン議員に1ポイントの差で逆転された。この僅差は、党内自体が危機感を強めている現れである。現状の民主党政権では、韓国の未来は真っ暗である。「反日」などと騒いでいる余裕はないはずである。

    (6)「6月11日の全党大会の勝負は、「党員投票70%、国民世論調査30%」方式となる。予備選挙とは違って党員投票と国民世論調査が7対3の割合なので、結果を予断することはできない。党員の比重が大きいことから、過去のように派閥争いや中傷合戦などの旧態がよみがえらないか懸念される。国民は今回の全党大会が保守野党の刷新と変化を推し量る試金石と見ている。全党大会では泥沼の争いで汚れた過去の党内選挙の様相が再演されてはならない。「李俊錫旋風」が全党大会に投じた明白なメッセージだ」

     

    最大野党「国民の力」の党代表選びは、単に党の問題に止まらない。韓国が、未来を左右する重大な局面にあることを認識しているのであろう。日本にとって、分からず屋の現与党よりも少しは話が通じるはずだ。

    次の記事もご参考に。

    2021-05-05

    韓国、「物笑い」文大統領、支持者の説得で市民告訴を取下げ、告訴理由「日本週刊誌記事

    2021-05-10

    韓国、「悪夢」文政権残り1年、政権支持メディアも力不足認める「空想政治」

     


    このページのトップヘ