勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2021年05月

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    韓国は、初の米韓首脳会談を終えて昂揚している。バイデン米大統領が、北朝鮮問題で韓国の要望を受入れて米朝話合い路線の継続が固まったからである。ただ、北朝鮮の完全非核化という目標には何らの変化もない。要するに、米朝が喧嘩腰でなく静かに話しましょうというだけのことである。

     

    バイデン氏は、韓国の対北朝鮮に要望を聞いた形になった反面、対中戦略ではほぼ米国の要請を受入れた。米外交は、最大のテーマが対中国である。北朝鮮問題は、その対中外交の一つに過ぎない。米国は、小(北朝鮮)で韓国へ譲歩し、大(中国)で韓国の譲歩を得たのである。結果論で言えば、バイデン外交の勝利となった。韓国は、そのことに気付いていないのだ。

     


    『ハンギョレ新聞』(5月26日付)は、「バイデン大統領は同盟国の腕を捻ることなく実利得る外交の専門家」と題する記事を掲載した。

     

    文在寅(ムン・ジェイン)大統領と米国のジョー・バイデン大統領の韓米首脳会談は、就任4カ月を迎えたバイデン大統領の外交スタイルを特徴的に示している。上院外交委員長を含む上院議員36年と副大統領8年間の経歴で積み上げてきた外交・安全保障の専門性と所信を、首脳外交を通じて本格的に打ち出しているといえる。

     

    (1)「まず、バイデン大統領は韓米首脳会談で相手の腕をねじることなく、自分の方に引き寄せる技を見せた。同盟を脅かし、「もっと金を出せ」と圧力をかけたドナルド・トランプ前大統領と違い、バイデン大統領は同盟を同等なパートナーとして尊重し、それに見合う権限と役割も共有することで、結びつきを深める戦略に出た。バイデン大統領は今回の首脳会談で、韓国を地域安保や経済、気候変動などにわたるグローバルレベルのパートナーとして認め、南北対話や関与、協力に支持を表明したことで、韓国の独自性を受け入れた。文大統領は「台湾海峡における平和と安定維持の重要性」を認めるなど、米中戦略競争の中、米国側へとさらに一歩近づいた」

     


    バイデン外交は、家康型の「鳴くまで待とうホトトギス」である。秀吉の「鳴かせてみせるホトトギス」でなかったが、下線部はクアッドの分科会のテーマである。韓国は、クアッドの準会員になっていることを自覚しなければならないのだ。それは、対中防衛の義務を負ったことを示す。外交は「ギブ・アンド・テイク」である。「ギブ・アンド・ギブ」はあり得ないのだ。その辺の認識を欠くと後で大変なことになろう。

     

    (2)「同盟国が持つ個別の特殊性を考慮する点も、バイデン外交の特徴だ。中国と関連し、先月16日の米日共同声明には「中国」を4回も名指しし、「両国は東シナ海におけるあらゆる一方的な現状変更の試みに反対する」など、攻撃的な表現が盛り込まれた。しかし韓米共同声明では「中国」を名指しすることなく、「国際法の尊重」など緩和した表現が使われた。韓国と日本に要求できる線を守ったわけだ」

     

    日米共同声明では、中国へ対する強い姿勢が滲んでいる。これは、日米がクアッドの一員(正会員)であることを示しており、韓国の「準会員」と異なる対応である。ただ、韓国は無意識のうちに対米外交において「日韓は対等」としている。だが、クアッドという線引きによって日韓は異なる次元に住むことになった。日本は「御三家」となり、韓国は「譜代」の扱いになるのだ。

     


    (3)「バイデン大統領が民主主義と人権、同盟の回復、多国間主義の復元などの“名分”を重視することも再確認された。米国が韓国軍55万人に新型コロナワクチンを提供することにしたのは、韓国のワクチンの要請と国際的公平性の間で、韓米同盟の重視という名分を掲げ、接点を見出した結果だ。

     

    米国が、韓国軍だけのワクチン供給になったのは、クアッドに参加していないことである。米国は、クアッド参加国へワクチンを供給すると明言しているからだ。ここが、「御三家」と「譜代」によって扱いが違うところである。日本は、ワクチンの供給を受けている。

     

    (4)「もちろん、バイデン外交が相手に対する善意だけで行われるわけではない。バイデン外交もまた懸案の解決を目指しながらも、結局は米国人の実利を確保している。オ局長は韓国企業の400億ドル規模の対米投資計画の発表などについて、「バイデン大統領の国内向けスローガンである、『より良き再建』と外交を結び付けた」と分析した」

     

    韓国企業の400億ドル規模の対米投資計画は、江戸城の改修工事に伴う出費と見るべきだろう。「譜代」は、徳川家への忠義心を金銭によって示さなければならないのだ。

     


    (5)「実際、バイデン大統領がつねに穏やかな笑顔を見せているわけではない。中国やロシアなどには強硬な態度を維持し、場合によっては人権などの価値よりも目的の達成を優先する態度もうかがえる。最近、イスラエルとパレスチナ武装政派ハマスの武力衝突の中で、「パレスチナ人の人権に目をつぶってイスラエルを擁護している」という民主党内部の批判にもかかわらず、親イスラエル路線を維持し、休戦に向けた仲裁に力を注いだ。ワシントンのある外交専門家は「バイデン氏は外柔内剛ではなく、表向きにも強い信念があり、自分の考えがはっきりしている、やるときはやるというタイプの人物」だと述べた」

     

    韓国が、クアッドの準会員になりながら、中国へ向けて二股外交を続ける訳にはいくまい。その辺のけじめを守らないと「仏」のバイデン氏が、「夜叉」になりかねないであろう。米国は韓国を、無条件で信頼しているのでないのだ。

     

     

     

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    文大統領は、米韓首脳会談が最大の効果を上げたと自画自賛している。米国とワクチンの生産・開発のメドを付けたと胸を張っているのだ。早ければ、サムスンバイオロジックスが8月からワクチン生産に取りかかるという。

     

    このワクチン生産の実態は、米モデルナ社から「原液」を輸入し、小分け(瓶詰め)作業をするというものだ。今から3ヶ月後に、「原液」からの製造が始められるはずもない。韓国では、この「瓶詰」作業に拍子抜けしているという。

     

    だが、「ボトリング」から出発して、「原液」生産の夢を持っている。こうなると、日本企業の存在が急浮上している。モデルナCEOのバンセル氏が、『日本経済新聞』(5月21日付)で次のように語った。

     


    「モデルナは、
    日本国内での生産について、日本企業と委託契約やライセンス契約をする可能性があるという。バンセル氏は、『まだ初期段階だが、日本の製薬業界の関係者と協議を進めている』と明かした。『アジアでの事業拡大と生産拡大について非常に興味を持っている』とし、『日本の高い労働力と研究力については理解している』と話した」。韓国の関係者が聞くと卒倒するような内容だ。韓国では、モデルナが日本企業と話合いしていることを知らないのだ。

     

    『ハンギョレ新聞』(5月25日付)は、「製造網が弱いモデルナ、20億回分のワクチン原液追加生産に向け韓国は手を組むか」と題する記事を掲載した。

     

    米国系グローバルバイオテクノロジー会社のモデルナが4月29日、「追加投資で製造施設を増やし、2022年には新型コロナワクチンを最大30億回分まで供給できると予想している」と発表した。2010年に創立されたモデルナは、これまで独自の製造施設というものがない研究開発中心の企業だった。そのモデルナが昨年、mRNAコロナワクチンの開発に成功し、急速に事業規模を拡大している。

     

    モデルナは、今年の目標生産量を5億回分から10億回分に、来年は10億回分から14億回分に増やすと今年2月に発表した。それから程なくして、来年の生産量目標をまた30億回分に引き上げたのだ。

     


    (2)「先日のサムスンバイオロジックスと、モデルナ間での「ボトリング」(充填・仕上げ)生産契約はこうした流れの中で成立した。今月22日(現地時間)、米ワシントンで両社が委託生産契約を確定し発表したことについては、一部からは惜しむ声も上がっていた。世界1位のバイオ医薬品受託生産会社であるサムスンバイオが、“単純な下請け作業”にすぎない工程のみを引き受けることになったという評価だ」

     

    世界1位の生産力を持つサムスンバイオなら、交渉力を発揮して原液生産に一部でも関与する事業を獲得できるのではないかと期待するのは当然であろう。

     

    (3)「モデルナが、いま最も急務だったのはほかでもない「瓶詰め」であることが分かった。モデルナは臨床第1相を行っていた昨年5月、スイスのロンザといち早く原液生産の委託契約を交わした。当時の発表によると、ロンザはコロナワクチンを年間10億回分生産するだけの力量を備え、モデルナは今後10年間、mRNA技術に基づく医薬品とワクチン原液生産をロンザに任せることを決めた。長期的な観点から戦略的提携を結んだわけだ。昨年5月といえば、国内ではコロナワクチンへの関心が高くなかった時期だ」

     

    韓国では、「原液」生産に大きな期待を繋いでいる。ボトリングだけで終われば、コカコーラの「ボトラー」と何ら変わらない地位に成り下がる。

     

    (4)「今回のサムスンバイオのボトリング生産参加はこれに加え、モデルナが欧米以外の地域で新たに量産体系を整えなければならないという必要性もあいまって実現したものとみられる。特に韓国政府が「ワクチンハブ」構想を提示したため、双方の利害が一致した部分もあり得る。さらに、モデルナが最近提示した「来年30億回分を生産」という目標の中には、原液生産施設を追加で構築する構想もあるとの観測が出ている」

     

    モデルナは、先述の通り日本企業とも原液生産で交渉している。日韓どちらの企業を選ぶのか。結論は、近く発表になろう。

     


    (5)「先に発表されていたように、スイスのロンザが年間10億回分の規模を生産するとしても、残り20億回分の物量をめぐっては新たな参加の機会が生じる可能性があるのだ。バンセル氏は最近、国内の放送局とのインタビューで、「モデルナはサムスンに技術を移転する」としながらも、具体的な技術内容については言及しなかった。さらに「韓国政府はこのような過程を円滑に進める上で大きな役割を果たすだろう。文在寅(ムン・ジェイン)大統領と担当部署がそのような働きかけをするものと確信している」と付け加えた。これは、モデルナが韓国に主要技術を移転する条件で、韓国政府の全面的な支援をそれとなく要求するシグナルとも読み取れる」

     

    モデルナは、アジアでの原液生産基地を日韓のいずれかに置く積もりであろう。そこで、日韓を天秤に掛けてより良い条件を引き出そうとしているのだろう。

     

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    中国資本が、ハリウッドへ乗り込み猛威を振ってきた。14億人という映画市場の魅力を振りかざして、米映画界を支配下においてきたのである。映画は、ほとんど「中国礼賛」モノが多く、ハリウッドが、中国共産党の片棒を担いでいると批判されてきた。その状況が、急に変わり始めたという。その象徴的な事例が、次の動きである。

     

    中国の「映画王」とされてきた大連万達集団(ワンダ・グループ)が、海外での映画事業を大幅に縮小する。5月23日に米国の映画館チェーン大手、AMCエンターテインメント・ホールディングスのほぼ全株式を売却したと発表した。万達はかつてスクリーン数で世界一になったが、新型コロナウイルスで「映画王」の夢が頓挫した。万達は12年、26億ドルを投じてAMCを完全子会社化し、13年のAMC上場後も過半を保有してきた。AMC以外にも豪映画館チェーン大手のホイツなどを傘下に収め、16年にはスクリーン数で世界一となった。

     


    17年に中国当局の融資規制で資金繰りが悪化。過剰債務に陥ったことで18年、AMCの一部の株式を5億ドルで売却。その後も段階的に手放し、出資比率は21年3月に9.%にまで下がった。AMCの発表によると万達の出資比率は0.002%に低下した。以上は、『日本経済新聞 電子版』(5月24日付)が報じた。

     

    『大紀元』(5月25日付)は、「米映画業界誌、中国との関係を反省『熱狂的からデカップリングへ』」と題する記事を掲載した。

     

    米映画・エンターテインメント情報誌『ハリウッド・リポーター』電子版は21日、米映画界が中国市場に進出するため、中国当局の顔色を伺ってきたことについて反省する記事を掲載した。関係者は、記事は米ハリウッド映画業界にある中国当局を批判してはいけないとのタブーを打破したと認識を示した。同記事は、「熱狂的な取引関係からデカップリングへ:中国とハリウッドのロマンスが終わろうとしている」とタイトルが付けられた。

     

    (1)「同誌は記事の中で、映画プロデューサーであるジェフ・ロビノフ氏の話を引用した。ロビノフ氏は、「数十年間、(中国当局は)中国経済のあらゆる分野に参入しようとする欧米企業との間で、協力を約束した。しかし、投資家にとって、このような約束は一度も果たされたことがない」と述べた。ロビノフ氏は2014年、スタジオ8を設立した。設立当時、中国複合企業、復星国際は10億ドルを出資するとロビノフ氏に申し出た。しかし、その後の米中貿易戦で、復星国際は支払いを延期し続けた。同氏によると、復星国際は約束を破ったが、スタジオ8の一部の株式がすでに復星国際に渡ってしまった」

     

    中国企業が、欧米企業との間で交わした約束はほとんど実行されなかったという。

     

    (2)「ハリウッド・リポーター」誌は、中国当局の経済的・政治的影響力の拡大で、米映画制作会社はここ十数年間、中国当局を批判し、中国社会の現状を反映する作品を作ったことがないと批判した。「最も歯に衣きせぬ有名人でも、香港市民の民主化運動に対する中国当局の鎮圧や、新疆ウイグル自治区でウイグル人住民に対する人権侵害について、何も述べていない」という。「映画製作会社は、中国当局のレッドラインを越えて踏み込んだ発言をすれば、失うもののほうがはるかに大きいと認識している。(中略)1910月、ヒューストン・ロケッツの元ゼネラル・マネージャーであるダリル・モーリー氏が、香港の民主化運動を支持するとツイートしただけで、中国当局はNBAの試合放送を1年間停止した」

     

    米映画制作会社はここ十数年間、中国当局を批判し、中国社会の現状を反映する作品を作ったことがないと自己批判している。中国の検閲を恐れて自己検閲してきた結果である。14億人という映画市場の規模に圧倒されてきたのである。行き過ぎた商業主義の結果である。

     


    (3)「同誌は、中国当局が映画製作という欧米各社の得意分野において、欧米各社を追い越し、支配権を握ろうとしているとの見方を示した。中国当局は、経験豊富な外国映画製作会社を誘致し、合弁会社を設立するために「国内市場を開放した」。しかし、その最終的な目的は、中国側に制作技術や知識を移転させることだ。「アメリカ映画には、中国共産党が望まない文化的な影響力を持つ。その一方で、中国側はハリウッド映画の消費者を惹きつける力を認識しているため、その力を利用し、国内のインフラ建設を促進する狙いがある」

     

    中国当局は、経験豊富な外国映画製作会社を誘致し、合弁会社を設立するために「国内市場を開放した」。これは、一時的な措置であった。最近は、外国映画の上映本数を割り当てるなど、規制を強めている。

     


    (4)「中国国内にある映画スクリーンの数は10年の6000余りから、20年末の7万5000に拡大した。中国企業による米映画製作会社の投資も近年増えている。中国の博納影業集団(ボナ・フィルム・グループ)は15年、米テレビ映画製作大手の21世紀フォックスに2億3500万ドルを出資した」

     

    (5)「中国のマスメディア会社、完美世界股份有限公司(パーフェクト・ワールド)は16年と17年、米ユニバーサル・スタジオの映画製作に総額5億ドルを投資した。中国電子商取引最大手アリババ集団は16年、米著名映画監督、スティーブン・スピルバーグ氏らが設立した映画製作会社「アンブリン・パートナーズ」の一部の株式を取得した」

     

    米国政府も次第に、中国のハリウッドへの進出に警戒するようになった。

     

    (6)「米映画プロデューサーのクリス・フェントン氏によると、米映画業界の情報誌は長い間、業界と中国当局の非互恵的な協力関係について声を上げることができなかった。同氏は「今、状況が変わったと言える。米国のエンターテインメント業界と中国の関わり方が建設的に変わることを望む」とした」

     

    冒頭に掲げた大連万達集団が、米国の映画館チェーン大手、AMCエンターテインメント・ホールディングスのほぼ全株式を売却した。これは、中国資本が米国の映画市場からの撤退を象徴する動きである。中国「赤い資本」による米国支配の時代は終わったのである。

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    中国の急速な軍事力拡大が、来たる米中戦争の予感を強めている。中国は、ロシアを抱き込んで米軍に対抗すると予想されているのだ。その場合、戦場は陸海空を超えた宇宙戦争という予測もされ始めている。だが、これを否定する見方も強い。

     

    日本を含めた一部の軍事専門家は、陸海空の兵力を大幅に削り、宇宙やサイバー、無人機といったハイテク戦にシフトすべきだという意見があるという。しかし、そうした思考はあまりにも早計とされている。逆説的だが、各国が宇宙戦に力を入れれば入れるほど、艦船や戦闘機、ミサイルといった旧来型の軍事力の重要性もますます高まると指摘されている。

     

    この見方を裏付けるように、米海軍と海兵隊25万の将兵が今夏、世界規模での大規模演習に踏み切る。あくまでも民主主義防衛の戦いという位置づけである。

     


    『大紀元』(5月25日付)は、「米海軍、17のタイムゾーンにまたがる大規模演習を計画 中露との衝突に備える」と題する記事を掲載した。

     

    米海軍と海兵隊は今年の夏頃、近年まれに見る大規模な軍事演習を行う予定だ。最先端の技術と戦術を用いて訓練を行い、将来起こりうる中国やロシアとの軍事衝突に備える。演習は17のタイムゾーンにまたがり、米海軍と海兵隊から約2万5000人が参加する。米軍事サイト「Millitary.com」が報じた。

     

    (1)「ラージスケール演習(LSE:2021)」と呼ばれる今回の演習には空母や潜水艦、航空機、無人船舶などが投入され、米国本土、アフリカ、ヨーロッパそして太平洋に配備された米軍の各部隊が参加する。米海軍と米海兵隊は20年近い中東地域での作戦行動を通じて、密接な連携関係を構築してきた。中国やロシアとの競争が激しさを増す今日、米海軍省は主要な任務を対テロ戦から中露の侵略行為を阻止する方面へと切り替えている。

     

    開戦当初は、敵味方の人工衛星のつぶし合いになると見られている。そうなると、従来型の戦争スタイルに戻るという想定で地道な演習を展開する。

     

    (2)「米艦隊総軍司令部のタビサ・クリンゲンスミス少佐は、30以上の部隊が実地訓練に参加する予定で、そのほかに50以上の部隊がバーチャルで参加する予定だと明かした。そして、クリンゲンスミス少佐は、今回の演習は実際にフィールドで参加する部隊とバーチャル空間で参加する部隊が一体となり、既存の演習では達成できなかったようなレベルのものになるとの見方を示している。「LSEでは、ゲームの中に登場するような技術が使われる。世界各地の司令部とユニットをオンラインで接続することで参加する部隊を増やし、海軍と海兵隊が将来直面するような場面を如実に再現する」という」

     

    下線部は、すでに米軍が開発済みの無人機を投入するのであろう。この無人機には、ロケットを装備して、無人機の判断で発射するというAI(人工知能)を100%活用するという。

     


    (3)「軍事演習に参加する部隊は、将来、中国共産党の人民解放軍と武力衝突が発生した際に遭遇しうる状況に対処する能力が試される。演習では、紛争中の環境における沿岸作戦(LOCE)や、遠征前方基地作戦(EABO)、紛争中の環境における指揮および統制といったシチュエーションが想定されている。「EABO」とは米海軍が提唱した新時代の作戦構想である。まず、敵軍の占拠する島を海兵隊が襲撃し、自軍の陣地とする。そこに各種ミサイルシステムや通信システムを配備し、飛行場を整備することで拠点化する。そして、このような拠点に依託して軍事行動を展開し、最終的に制海権を掌握する。海兵隊はEABOを「海上阻止の形勢を逆転させる」ものであると形容している」

     

    下線部は、すでに先の日米豪仏の4ヶ国合同演習で実際に行なわれている。小規模の部隊編成で活動するもの。自衛隊にも米海兵隊と同じ機能を持つ水陸機動団(2018年発足、佐世保駐屯)が、陸上自衛隊内に創設されている。戦前の海軍陸戦隊である。この作戦では、衛星が破壊されているという想定で行動する。

     


    米軍は全地球測位システム(GPS)を当てにせず、アナログ的に戦わなければならなくなる。米軍は数年前から、衛星の機能が失われるシナリオを想定し、GPSを使わない演習もしているという。米海軍では六分儀を使い、星から位置を測定する18世紀の航海法も訓練し始めたと報じられている。

     

    (4)「米海軍の訓練および本土防衛を担当する米艦隊総軍で指揮官を務めるクリストファー・グレイディ大将は『Millitary.Com』の取材に対し、「今回の大規模演習は単なる演習ではない。複数の海軍部隊が、世界中の紛争状態にある水域で武器やプラットフォームを共有しながら統合的な戦闘能力を高めるためのものだ」と述べた。そのうえでグレイディ氏は、今回予定されている演習は始まりに過ぎず、今後も海軍は絶えず力量を増強していくことを明らかにした。「優れた海軍部隊とはどういうものか、その限界の枠を押し広げ続ける」と強調した」

     

    今回の大規模演習は、世界中の紛争状態にある水域で武器やプラットフォームを共有しながら統合的な戦闘能力を高めるためのもの、という。米海軍が中ロ海軍と戦う場合、NATO(北大西洋条約機構)やクアッドも参戦する世界規模の戦争に発展する。その際、米海軍の準備している無人機が、大量に投入されるはずだ。米海軍は、すでにこういう準備を万端整えているのだ。

     

     

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    韓国は、これまで「安保は米国、経済は中国」という二本足の外交姿勢を取ってきた。今回の米韓首脳会談によって、「経済も米国」へと切り変えた。米国の主導するサプライチェーンの充実路線に乗ったからである。米国で、半導体とバッテリーで約400億ドルの投資方針を打ち出したのだ。

     

    韓国は、こうして「安保も経済も米国」という大きな流れに乗ったが、中国への「怯え」は依然として続いている。できるだけ中国を刺激したくないという臆病な態度に変わりはなさそうだ。この点が、日本と大きく異なる点である。日本は、中国による台湾危機と連動する尖閣諸島への脅威という現実問題を抱えている。対中姿勢では、韓国と異なる「現実路線」を要求されている。

     

    日本の危機は、同時に米国の危機でもある。日米が、対中戦略で一体化するのは当然のことである。韓国から見れば羨ましく見えるようだが、日米と韓国の危機感の間にはギャップがあるだけに、これをどう埋めるかが今後の課題になる。

     


    『朝鮮日報』(5月25日付)は、「『ひとつの体』になった日米、足だけかけた韓国 本番は韓日米首脳会議」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「米国のジョー・バイデン大統領が描く北東アジア地域の核心戦略は、韓日米3国協力を土台としている。特に、日本は外交・安保・経済などの分野で中国を圧迫するための米国の核心パートナーに該当し、韓国はバッテリー・半導体など新技術関連サプライチェーン(供給網)構築のために最も適した協力対象だと評価されている。韓日米協力は単に「同盟強化」という側面の他にも、バイデン政府が全力を傾けている対中牽制(けんせい)と新技術サプライチェーン構築の鍵を握る核心的な結びつきだという意味だ」

    日米韓三ヶ国が結束して中国へ立ち向かう場合、日韓の間にはギャップが存在する。日本は、外交・安保・経済などの分野で中国へ対抗するための米国の核心パートナーである。韓国はサプライチェーンという兵站部の担当に特化しそうである。ただ、日米韓三ヶ国の結束を乱してはならない。

     


    (2)「バイデン政府の優先順位を反映するように、日米および韓米首脳会談の共同声明には新技術サプライチェーンを構築するための協力意志が入った。日米首脳は、共同声明を通じて半導体・5Gなどの分野のサプライチェーン構築に向けた協力を「安全及び繁栄に不可欠」と表現して両国間の協力を明示した。韓米も、共同声明にサプライチェーンの協力に関連して「新たな紐帯の形成を約束した」という内容を入れた。サプライチェーンの構築を目標に、一致した立場を打ち出す韓日米3国が「ワンチーム」を形成する場合、韓米および日米間の二国間協力以上の効果を発揮することができるという期待も出ている」

     

    韓国の専門家は、半導体・バッテリー分野の日米韓三ヶ国の協力が実現すれば、それ自体でも大きなシナジーを発揮するとみている。それはそうだろう。中国の羨むドリーム・ティームの結成である。

     

    (3)「今回の韓米首脳会談では、中国が鋭敏に反応している台湾海峡と南シナ海問題に対する共同声明が出され、韓国政府の「中国傾斜論」をある程度払拭させる契機となった。ただし、日米首脳が共同声明を通じて直接中国を明示して牽制(けんせい)基調を鮮明にしている。韓米共同声明には、「中国」という単語は入っていない。国際社会の批判が続いている新疆ウイグル族人権問題に対しても、韓米首脳は共同声明に関連内容を入れなかった。バイデン政府の対中圧迫に一部参加しながらも、中国を刺激しないための措置と解説される」

     

    韓国は、38度線を境に中朝連合軍を抱えている。それは、日米の経験しないシビアな事態である。ただ、日米韓三ヶ国の強力布陣を結成すれば、無謀な中朝といえども簡単に手を出せなくなる現実を忘れてはならない。韓国は、中朝に隙を見せてはならないのだ。第二次世界大戦後、北欧諸国がソ連軍の侵略に対抗すべく「ハリネズミ戦略」を展開した実例を見倣うことである。あのソ連軍が、手出しできなかったのだ。

     

    (4)「韓日米協力の観点からみると、対中牽制に関連し、むしろ米国よりも積極的に立ち向かう日本と、絶えず余地を残さなければならない韓国間の立場の違いは潜在的葛藤要因になり得るという分析もある。特に、日米が韓国に対してより積極的な対中牽制の動きを要求する場合、異見が浮き彫りになる可能性が高い」

     

    日本は、中国を恐れたことがない。中国の裏表を研究し尽くしているからだ。中国は、張り子の虎である。韓国は、今こそ冷戦時代の北欧諸国の対ソ連軍対策に見せた姿勢を学ぶべきだ。北欧はNATOに加盟して、米軍事力の傘に入っていたのである。

     

    北朝鮮問題は、同じ朝鮮民族という独特の感情問題を抱える。ただ、政治体制が全くことなる「金ファミリー」の統治下である。この一族が、生き延びることを手助けする形の南北交流に、韓国国民は拒否感を持っている。特に、若者層に多い。文政権は、この流れを無視できないのだ。

     


    (5)「韓国外大のカン・ジュンヨン国際地域研究センター長は、「バイデン政府の希望通り、韓日米3国が一丸となって一糸乱れず中国を制御するための動きに参加する状況は現実化しにくい」とし、「日本はより強力な対中圧迫を要求できるかもしれないが、文在寅(ムン・ジェイン)政府は『対中圧迫』というしくみで韓日米が強くまとまる状況に呼応しにくく、バイデン大統領もこれを十分に認知していると考える」と話した。


    韓国は、中国を宗主国にしてきたので心理的に恐怖の的である。この韓国に対して、「中国を恐れるな、毅然と対応せよ」と言っても馬に念仏かも知れない。ただ最低限、日米韓三ヶ国の隊列を乱すような振る舞いを抑制して欲しことだ。兵站部隊に徹して貰って結構だろう。 

     

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