勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2021年06月

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    韓国では、20~30代の失業が目立つ。政府の救済策と言えば、財政資金を使ってアルバイト口をつくるくらいである。経済無策と、批判されるゆえんである。今年5月の失業率は4.0%である。日本の3.0%より悪化している。

     

    韓国の正規雇用が減っており、官製アルバイト増によって一時しのぎ策に出ている。文政権の経済無策を表している。最低賃金の大幅引上げは罰則を伴うので、賃上げできない職場では解雇するという無慈悲なことが行なわれている。最賃が、失業者を増やしているのだ。

     


    昨日、大統領選への立候補を発表したユン前検察総長は、次のように文政権の経済政策を批判した。

     

    「『経済の常識を無視した所得主導成長、市場と争う住宅政策、法を無視して世界一流の技術を死蔵させた脱原発、買票に近いポピュリズム政策で、多くの若者、自営業者、中小企業者、低賃金労働者が苦痛を受けた。政府の負債の急増で、まともな雇用も探せない若者世代が途方もない未来の負債を抱え込んだ。若者の挫折は、大韓民国を人口絶壁に追い込んでいる』とし『20~30世代』に訴えた」(『東亞日報』6月30日付)

    この発言の通りであり、経済の常識から外れて、労組の支持する政策を鵜呑みにしてこのような惨憺たる結果を招いた。

     


    『東亞日報』(6月30日付)は、「企業採用を増やす誘引策なしに『アルバイト』15万件を追加した経済政策」と題する記事を掲載した。

     

    文在寅(ムン・ジェイン)大統領は昨日、拡大経済閣僚会議を開き、洪楠基(ホン・ナムキ)経済副首相などから「下半期の経済政策方向」について報告を受けた。財政を供給して「税金雇用」を増やし、クレジットカードの使用など消費を促進する内容が報告に多く含まれている。大統領は、「下半期の経済の最優先目標は、雇用を増やし格差を減らす完全な危機克服だ」とし、「第2次補正予算の編成を迅速に推進してもらいたい」と指示した。

    (1)「政府は第2次補正予算を投入して、人工知能(AI)、ソフトウェア分野の若者雇用2万〜3万件を含め、15万件以上の雇用を新たに創出することにした。当初本予算に含まれている104万2000件、3月の第1次補正予算の際に追加された25万5000件を含め、今年は144万7000件の雇用を、財政を投入して創出するという。青年層のために、大学街や駅周辺に安価な賃貸住宅5000戸を提供し、若者層だけのための優遇金融商品も7月中に出すという。20~30世代をなだめるために税金を使った雇用、住居支援などの政策資源を総動員した格好だ」

     


    文政権は、雇用減の原因が経済無策にあることを無視している。その結果、対症療法として官製アルバイトを増やしている。政府は、アルバイトであろうと短期的な就業者を増やすので、これを自慢するトンチンカンな発言をしている。

     

    20~30代の若者には、文政権の存在が大きな災難として降りかかっている。文政権支持で、20~30代の若者が離間しているのは当然であろう。

     

    (2)「社会に進出しなければならない時期に新型コロナ禍を受け、第一歩すら踏み出せなかった若者らに、就職のチャンスを提供するのは重要なことだ。しかし、キャリアに役立たない単純業務であるという理由のため、今年予定された60万以上の青年雇用のうち、多くが青年層からそっぽを向かれている状況で、数字をさらに追加するのは財政無駄遣いになる可能性が高い」

     

    韓国の大卒(短大を含む)率は、95.86%(2018年)で世界5位である。若者に正規雇用でなくアルバイト口を提供している政権は、支持されるはずがない。



    (3)「若者層が望む雇用を増やすためには、大企業が国内投資を増やし、自営業者が従業員を採用する誘因を作らなければならない。しかし政府が今回、半導体、バッテリー、ワクチンの3大「国家戦略事業」の研究開発(R&D)、設備投資への支援は米国などに大きく及ばない水準だ。「Uターン企業」に対する支援策も、依然として首都圏に戻ってくる企業は排除されている」

     

    文政権は、反企業の立場である。企業性悪説に立っており、企業を規制することが国民の利益になるという逆立ちした考えである。これでは、企業が積極的に設備投資するはずもない。設備投資しなければ、正規雇用は増えないのだ。この分かりきったことを理解できない政権である。

     

    (4)「下半期の韓国経済には、若者雇用を減らす出来事が次々と待ち受けている。中小・ベンチャー企業の反対を押し切って、来月から施行される5〜49人の事業所に対する週52時間勤務の拡大は、企業の困難を増大させ、雇用に悪影響を及ぼす可能性が高い。二大労総が1万ウォンを超える最低賃金を要求しており、自営業者たちは必要な人材さえ採用せず、状況を見守っている。政府が企業各社の訴えに耳を傾けなければ、いくら多額の税金をつぎ込んでも、若者らが希望する雇用は容易には生まれないだろう」

     

    週最大52時間労働制は理想型である。だが、生産性の低い職場では、どうしても「52時間」に収まらない。韓国では罰則を伴うので絶対的な規制になるので、このルールは労働者の収入を減らすという逆の問題を起している。週52時間労働制を守らせるには、企業の設備投資支援策など総合的な対策が必要である。

     

     

     

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    英国のTPP(環太平洋経済連携協定)加入は、年内の見通しが強くなっている。英国は、自由貿易の国ゆえにTPP参加にとって格別の障害が見当たらないからだ。英国の年内加入説は、年初から指摘されてきたところでもある。

     

    『日本経済新聞 電子版』(6月29日付)は、「英貿易相『TPP加盟合意』22年中に、中国の参加に難色」と題する記事を掲載した。

     

    英国のトラス国際貿易相は日本経済新聞のインタビューで、環太平洋経済連携協定(TPP)の加盟交渉について「2022年中に結論を出すことを希望している」と語った。TPP参加に関心を示す中国に対しては世界貿易機関(WTO)などの国際貿易ルールに従う努力が必要だと述べ、現状ではTPP参加国が加盟を受け入れることに難色を示した。

     

    中国は、香港への「国家安全法」導入によって、英中で取り決めた「一国二制度」を破棄した。これが、中国への不信感を強め、怒りへとなっている。かつての「大英帝国」である。その沽券に傷をつけられたのだ。中英関係が、急速に冷却化したのは当然であろう。英国が、中国に対して「裏切られた」という感情を持っている以上、中国がTPPへ参加したいと言っても断固、拒否する姿勢を強めるのは当然だ。英国は、「目には目を」の報復精神に燃えている。

     

    (1)「20年末に欧州連合(EU)を完全離脱した英国は21年2月にTPP参加を申請し、6月22日から加盟交渉を正式に始めた。TPP参加をEU離脱後の目玉政策に位置づけている。TPP交渉では関税などの市場アクセス分野では加盟11カ国と国ごとに個別交渉する。英国内では畜産品や農産品の市場開放を警戒する声が農業関係者から上がる。トラス氏は、「TPP加盟国のオーストラリアと2国間の自由貿易協定(FTA)の合意にこぎ着けた。TPPでも市場アクセス交渉はうまくいくと思う」と述べ、交渉が行き詰まるような展開にはならないとの見通しを示した」

     

    英国は、すでに豪州とのFTA交渉で合意にこぎつけている。日本は、日英友好で固く結びついているので、英国のTPP加入を促進する役割を果たすであろう。

     


    (2)「TPP参加には中国も関心を示すが、TPPは加盟の条件として国有企業の改革や幅広い品目での関税撤廃を求めている。トラス氏は「不透明な政府補助金や進出企業への技術移転強制、(新疆ウイグル自治区の)強制労働などの問題がある」と中国が抱える課題を指摘した。「中国はもっと努力する必要がある」とも語り、WTOなどの国際貿易ルールに従わない限りTPP参加は難しいとの見解を示した。英国が正式にTPP加盟国となれば、中国の加盟申請を審査する立場になる」

     

    英国が強硬路線にカジを切るのは、ジョンソン政権を支える与党・保守党内の対中懐疑派が勢いを増している点が大きい。特に伝統的に人権を重んじる保守派にとっては、香港の自治の侵害やウイグル族の強制労働が疑われる問題は容認できない。英議会では政府提出の貿易法案に、特定民族の破壊行為があると認定された国との貿易や投資の協定を結びにくくする修正を加えようとする動きが活発化している。

     

    上院は、2月上旬の貿易法案の審議で「英国の高等裁判所に、民族破壊行為があったかを判断する役割を与え、『あった』と認定された場合、議会で当該国との通商政策について議論する」という趣旨の修正を加えた。議会が既存の自由貿易協定(FTA)を停止したり、進行中の交渉を止めたりできるようにする狙いだ。

     


    (3)「10月に英国で開くG7貿易相会合はWTO改革が主要な議題になる。WTOは途上国に国内産業の保護を認めたり、先進国の市場に農産品や工業製品を安く輸出できたりする特権を与えている。途上国かどうかの認定は自己申告制で、中国など一部新興国が途上国の地位を返上しない問題が起きている。トラス氏は中国経済が米国の1割程度の規模だったWTO創設当時とは状況が全く違うと指摘した。「WTOの途上国の地位は貿易を通じて人々を貧困から救い出すために支援を必要とする国にだけ活用されるべきだ」とも強調し、中国の扱いの是正が必要だとの考えをみせた」

     

    トラス氏は10月に対面で開く予定のG7貿易相会合の議長も務める。WTO改革が主要な議題になる予定だ。WTOは、途上国に国内産業の保護を認めたり、先進国の市場に農産品や工業製品を安く輸出できたりする特権を与えている。途上国かどうかの認定は、自己申告制である。改めて、中国を途上国と認めるかどうかを議論する。英国は、徹底的に「中国シフト」を敷いている。

     

     

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    来年3月の大統領選へ向けて、最有力候補者と見られている尹錫悦(ユン・ソンニョル)前検察総長が6月29日、正式な立候補宣言をした。

     

    ユン氏は検察改革などを巡って文在寅(ムン・ジェイン)政権と鋭く対立し、今年3月に検事総長を辞任せざるを得なかった。法務部長官から二度もの懲戒処分を受け、行政裁判所へ上訴して復権してきた。それも、限界として辞任したもの。

     

    大統領選立候補に当り、ユン氏は記者会見で次のように語った。『聯合ニュース』(6月29日付)が報じた。

     


    1)「ユン氏は、「この政権が犯した無道な振る舞いはいちいち列挙することも難しい」として、「この政権は権力を私物化するだけにとどまらず、政権を延長して国民を略奪し続けようとしている」と批判。「自由が抜けた民主主義は本当の民主主義ではなく独裁」とし、「到底彼らをこのままにして置くわけにはいかない」と強調した」

     

    ユン氏は、文政権から捜査妨害を受けるという圧力を加えられてきた。蔚山市長選と月城原発の疑惑は、文政権を直撃するだけに絶対に捜査させないという強烈なものだった。民主派を名乗る政権が、こういうあくどいことをしたのである。

     

    2)「また、「これ以上彼らの欺瞞(ぎまん)とうその扇動に騙されない」として、「腐敗し無能な勢力の政権延長と国民略奪を防がなければならない」と述べた。その上で、「同意するすべての国民と勢力は力を合わせなければならない。必ず政権交代を成し遂げなければならない」と訴えた」

     

    文政権は、さらに進歩派政権の継続を狙って司法を味方につける露骨な干渉を人事面でしている。ユン氏にとっては、いずれも生々しい経験だけに、「検事の正義感」も手伝って、徹底的に洗い直すであろう。

     


    日韓関係では次のように答えた。『産経新聞 電子版』(6月29日付)が伝えた。

     

    (3)「文政権下で極度に悪化した日韓関係の改善に向けて意欲を示した。ユン氏は「今の韓日関係は回復不可能なほどだめになった」と指摘。イデオロギーにこり固まった文政権の姿勢に原因があったとの認識を示した上で、政権末期の現政権には収拾できないとの見通しを語った」

     

    ユン氏は、文政権が対日外交でイデオロギーに固執したことで、日韓関係悪化をさせたと、はっきり認識している。後一年足らずの任期中に日韓関係改善は難しいとしている。

     

    (4)「ユン氏は、日本との関係について、歴史問題の重要性に触れつつも「未来の世代のために実用的に協力しなければならない」と強調した。慰安婦やいわゆる徴用工問題に加え、日韓間の安全保障協力や貿易問題なども「全て一つのテーブルに上げて協議する方式でアプローチすべきだ」とも述べた。日韓間に防衛と外務の「2+2」形式や、防衛と外務、経済の「3+3」形式など各担当相による協議体を立ち上げ、関係回復を図っていく必要性にも言及した

     

    日韓関係改善では、防衛・外務・経済の「3+3」委員会などの立上げに言及するなど、具体策に踏込んだ発言をしている。ユン氏は、検察総長辞任後に安全保障、外交、経済などと幅広い勉強会を行なってきた。予備知識は十分とみられる。

     

    ユン前検察総長の辞任のほかに、28日は崔在亨(チェ・ジェヒョン)監査院長(日本では会計検査院長)が、「大韓民国のための役割を熟考する」として辞任した。政界は事実上、大統領選出馬の手順だと見なしている。文在寅政権が任命した二つの監査機関の首長が、任期を待たずに政治参加へ向かう珍しい現象が現れている。

     


    これは、文政権がいかに非道なことを検察総長と監査院長に押し付けていたかを証明している。

    『中央日報』(6月29日付)は、「検察総長・監査院長が政治を宣言する未曽有の事態」と題する社説を掲載した。

     

    尹錫悦前検察総長がきょう、大統領選出馬を公式宣言するという。昨日は崔在亨監査院長が任期を待たず辞任した。特に、崔監査院長の辞退は格別だ。検察庁法に任期(2年)が明示された検察総長と違い、監査院長は憲法が任期(4年)を保障した憲法機関長だ。憲法は三権分立のために国会議員と大統領・大法院長の任期を明示しているが、監査院長も同じだ。崔院長に向かった一部の批判が、一見適切に見える理由だ。



    (5)「それにもかかわらず、二人の政治参加を非難ばかりするわけにはいかないのが昨今の状況だ。このような事態を自ら招いた1次的な原因が文在寅政権にあるためだ。文在寅政権はチョ・グク元法務部長官一家の不正捜査や月城(ウォルソン)原発の早期閉鎖事件に対する監査を執拗に妨害した。人事権を振り回して両機関の政治的中立性と職務上独立性を押し倒し窮地に追い込んだ」

     

    文政権は、政権疑惑捜査を封じるためにやりたい放題のことをしてきた。その咎めがこういう選挙の場で明らかにされようとしている。自業自得と言うほかない。

     

    (6)「約1年間、ユン前総長を追い出すために行った秋美愛(チュ・ミエ)前法務部長官の無理な方法や、最近、朴範界(パク・ボムゲ)法務部長官の政権捜査を無力化するための検察中間幹部の人事などが代表的だ。崔院長は、月城原発を監査して民主党議員から辞職の圧力を受け、市民団体の告発で捜査対象になる状況に追い込まれた。事実上、監査院・検察の制度的根幹を揺るがす、とうていあり得ない異常な状況を招いた」

    文政権の幹部は、法廷に立たせてその恣意的な権力執行の実態を暴かねばならない。過去の政権にも見られなかった権力の私物化を図ってきた。そのテコに「反日」を利用してきたのである。日本から見れば、許しがたい政権である。

     

    韓国の保守政界では、ユン大統領と崔首相の組み合わせを要望する声もあるという。仮に実現したならば、文政権の権力乱用が白日の下に曝け出されるであろう。韓国政治の大掃除を期待したい。

     

     

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    韓国は、中国けん制の軍事演習への参加する、これまで、言い逃れをして逃げ回ってきた。だが、先のG7へゲスト国として出席し、国際情勢の厳しさにようやく気付いたようである。韓国は、これまで中国を恐れて萎縮してきたが、G7の対中強硬論を聞いて安心したのだろう。

     

    『朝鮮日報』(6月29日付)は、「韓国、『中国けん制』米豪合同演習に初参加へ」と題する記事を掲載した。

     

    中国の膨張をけん制するための米国とオーストラリアの大規模合同演習に、韓国海軍が史上初めて参加する。米国とオーストラリアは6月25日、豪クイーンズランド一帯で「タリスマン・セイバー2021」演習を開始した。米豪と共に「ファイブ・アイズ」と呼ばれる英国・カナダ・ニュージーランドの、米国のアングロ・サクソン系列の最友好国と日本も演習に参加する。同演習は05年から隔年で実施され、日本は19年から参加している。今回の演習参加を契機に米国の中国けん制連帯へ韓国が本格的に加わるのかどうか、注目されている。

     


    (1)「韓国国防部のプ・スンチャン報道官は6月28日「タリスマン・セイバー2021演習に韓国海軍が今年初めて参加する」と発表した。韓国海軍の駆逐艦(4400トン級)1隻とヘリ1機、海軍・海兵隊の将兵およそ240人が7月中旬ごろ演習に参加する予定だ。中国けん制という観点から演習に参加するのかという質問に対し、プ報道官は「何らかの特定の国を対象とするものではなく、連合作戦遂行能力の向上のため参加するもの」と答えた。また、米豪の側からまず演習参加を要請してきたのかという質問にも、国防部と海軍は「外交的な事案なので回答は難しい」とした

     

    下線部は、韓国が依然として中国が「怒らないか」と気にしている様子が手に取るように分かる。だが、中国はここで韓国へ報復すれば、さらに韓国を遠ざけるリスクを抱えるので、静観するであろうという見方がある。

     


    (2)「
    韓国政府や韓国軍内外は、5月の韓米首脳会談で両首脳がコンセンサスを形成した「同盟強化」と「中国けん制」の延長線上で今回の演習参加を受け止めている。当時、会談では「台湾海峡」「南シナ海」など中国がデリケートに反応する文言が多く含まれた。今月初めに韓国が初めて参加したG7(主要7カ国)首脳会議でも、中国を批判するメッセージが採択された。韓国政府の関係者は「今回の演習参加は、韓米同盟がかつてよりずっと強固になる契機となるだろう」と語った」

     

    5月の米韓首脳会談で韓国は、「同盟強化」と「中国けん制」のコンセンサスができたので、今回の演習参加がその延長線上であると認識しているようだ。となれば、渋々と米韓同盟の基本線に乗った行動のように見える。

     


    (3)「演習は8月7日まで、海上兵力輸送や上陸作戦などの内容で進められる。フランス通信(AFP)の最近の報道によると、オーストラリアのデビッド・ジョンストン海軍中将は「今年およそ17000人の兵力が演習に参加する」とし「オーストラリアに入国する外国将兵およそ2000人が隔離される予定」と語った。仏・印・インドネシアはオブザーバー資格で演習を参観する」。

     

    「タリスマン・セイバー2021」演習は、諜報組織「ファイブ・アイズ」(米英豪カナダNZ)5ヶ国と日本・韓国が参加する。この演習は、日本が「ファイブ・アイズ」へ正式参加する儀式のような感じがする。仏・印・インドネシアはオブザーバー資格で参加という。大掛かりな演習である。

     

    (4)「AFPは、「コロナで規模を縮小する状況でも、演習を行う」とし、同演習を「同盟諸国の象徴」と表現した。米国のラジオ放送「ボイス・オブ・アメリカ」も「このところ豪中の対立が強まる中、オーストラリアと米国の軍当局が今回の演習実施に向けて強い意志を示した」と伝えた。2年前の演習には18カ国、およそ3万4000人の兵力が参加した」

     

    諜報組織「ファイブ・アイズ」(米英豪カナダNZ)5ヶ国と日本・韓国が参加する演習は、中国にとって相当の圧力となろう。

     

    (5)「オーストラリアは今年の初め、中国のコロナ責任論を提起して中国と貿易摩擦を起こしている。中国当局は最近「オーストラリア政府の一部の人物が冷戦的思考と偏見的態度を示し、両国間の正常な交流と協力を害する措置を取った」と主張した。日本の陸上自衛隊は6月24日に報道資料を出し、演習参加の事実を明らかにするとともに、上陸作戦を目的とする「水陸機動団」が参加する予定だと発表した。韓国海兵隊もまた今回の演習に参加する。ただし、実際には上陸作戦演習の計画はないといわれている」

     

    米豪は直接、中国と切っ先を交える関係にまで外交関係が悪化している。それだけに、今回の演習を成功させなければならない事情もある。中国には一切、弱みを見せられないのだ。

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    最大野党「国民の力」の代表は、36歳・非国会議員の李俊錫(イ・ジュンソク)氏である。この李氏は、代表選挙の演説で「公正と自由な競争」を訴え、20~30代の若者の支持を得た。これは、文政権下において「公正と自由な競争」が行なわれず、進歩派支持層だけが優遇されていることへの痛烈な批判である。

     

    進歩派は、李氏が最大野党の代表に選ばれた背景を理解しないで、ガリガリの自由競争論者と批判しているのはお門違いである。言葉尻を捉まえて非難しているだけである。

     

    言葉は悪いが、現政権の中枢部は「民主のゴロツキ」と評されている。「公正・公平・倫理」の旗を立てて、働かずに生きているというのだ。具体的には、次のような振る舞いである。

     

    「現政権では青瓦台、政府に進出した参与連帯出身者(注:市民団体)が60人を超える。権力機関を掌握しているのはソウル大出身者ではなく、参与連帯出身者だと言われる。尹美香議員は「正義」の名を掲げ、慰安婦被害者の女性を利用し、カネを稼いだとして起訴された。2000年代初めまでは市民団体で信頼度1位だった。現在では信頼度が5本の指にも入らないという・市民団体の公正・正義屋さんたちの実態を国民が知った結果だ」(『朝鮮日報』(2020年12月27日付コラム「民主ごろつき・正義屋さん・民族主義業者」)

     

    こういう文政権への痛烈な批判が、李氏の言葉の裏にあることを理解しようとしない上辺だけの批判が出ている

     


    『ハンギョレ新聞』(6月29日付)は、「韓国における公正な競争と能力主義」と題する寄稿を掲載した。筆者は、イ・ガングク立命館大学経済学部教授である。

     

    (1)「公正を主張する声が高まっている。国民の力の代表に選ばれたイ・ジュンソク氏は、米国のようなジャングルの競争を韓国に導入したいと述べ、公正な競争を主張している。彼の言う公正とは、保守派の立場から見た、試験のような競争の結果が地位を決定する、能力主義にもとづく手続きと形式の公正だ。彼はある演説で、誰もが教育を通じて公正な競争のスタートラインに立てる世の中を夢見ていると語った。公正でないと主張して政府に批判的な若者たちは、このような主張にうなずくかもしれない」

     

    筆者のイ・ガングク氏は、下線部のような演説の一部分を取り上げて批判しているが的外れである。米国経済の発展は、自由と能力を生かす社会基盤が整っている結果だ。こういう客観的事実を見落として、言葉尻を捉まえた批判はナンセンスである。

     

    韓国は、米国と並んで大学進学率(短大を含む)が極めて高い社会である。韓国は95.86%、米国88.30%(いずれも2019年)である。この状況では、公正な能力主義が不可欠であろう。韓国は、米国型の開かれた競争社会でなく、「閉じられた競争社会」=不公正の温床になっている。具体的には、進歩派支持者だけに有利になるような政策を行なっているのだ。

     

    (2)「しかし、弱肉強食のジャングルでも動物の種類が異なるように、それぞれが異なる各家庭の子どもたち同士の競争を本当に公正なものとすることは、なにぶん難しい。実際に多くの研究は、子どもたちの努力と実力は親や家庭環境に大きく影響されると報告する。幼い頃に貧しさから受ける深刻なストレスは脳の発達を阻害し、妊娠した母親の環境要因が子どもの生後の健康と所得にも影響を及ぼす。したがって、不平等が深刻な現実において、公正な競争などというものは非現実的だ。すでにスタートラインが異なり、ある人は競技場に立つことも難しい中で、形式的な公正ばかりを押し通せば、結局のところ不平等がさらに深刻化する可能性が高い」

     

    韓国の大学進学率は、世界6位である。米国は13位だ。韓国がこういう学歴社会になっている以上、公正な競争維持が極めて重要である。それには、規制を少なくすることである。実態は逆である。労組の希望を100%受入れて、規制を増やしている。労働市場の流動化にストップを掛けているのだ。これが、新たな雇用先を選ぶ道を塞いでいる。労組は、終身雇用制と年功序列賃金制を断固、守るように要求している。これが、諸悪の根源である。自由な転職が、公正な競争を実現する道である。

     


    (3)「これはやはり、現政府は公正を強調してきたものの、若者から見ると反則のようなケースが時折あったからだ。また、細心の政策によって現実の不平等は改善しうるという希望と信頼を抱かせることに政府が失敗したという事実とも大きな関係がある。不平等が激しく、過去に比べて成長と上昇の機会が減っているという現実においては、地位の配分の過程で形式的な公正に対する要求がより強まりうる。だとすれば、結果の不平等と形式的な公正との悪循環が懸念される。結局、現在の進歩勢力は、不公正と不平等をすべて改善するために積極的に努力するとともに、形式だけの公正を時には抑制することがすべての人にいかにより良い結果をもたらすのかを若者たちに説くという難しい課題に向き合わされている

     

    下線部の主張は正しい。「形式だけの公正を時には抑制することが,すべての人にいかにより良い結果をもたらす」としている。具体的には、無意味な規制を撤廃することである。最低賃金の大幅引上げは、大企業労組の利己的要求を実現したに過ぎない。多くの零細企業に勤める人々にとっては無益どころか、雇用を奪われる災難になった。 

     

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