勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2021年06月

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    中国で経済危機の前兆が強まっている。全国の産業モデル地区である深圳市で、従業員給料の改悪が行なわれるからだ。残業手当の規定撤廃などを盛り込む。社会主義国で労働条件引下げが堂々と行なわれることに、中国経済の危機が進行していることを覗わせている。

     

    『日本経済新聞 電子版』(6月28日付)は、「中国・深圳、従業員給料の抑制にカジ」と題する記事を掲載した。

     

    中国南部広東省の深圳市が企業の賃金抑制に乗り出す。条例を17年ぶりに本格的に改正し、残業手当の規定撤廃などを盛り込む。中国は人件費の高騰で生産拠点が東南アジアなどに移転しており、企業負担の抑制を狙う。中国の産業モデル地区である深圳の施策は全土に広がる可能性もある。

     

    (1)「深圳では2004年12月に施行した給与条例について、21年5月末から市人民代表大会(市議会に相当)で改正案の審議が始まった。可決され次第、施行に向けた手続きに入る。改正案の主なポイントは3つある。まず非正規労働者の残業代の抑制だ。従来は春節(旧正月)など政府が定める法定祝日に働く場合に残業代を平日の3倍払う必要があった。改正案では、この「3倍規定」を削除し平日と同じ水準にする」

     

    非正規労働者は、法定祝日勤務に伴う残業代の割増し制をなくすという。休日労働では割増金がつくのが普通である。これを撤廃するとは、何らかの見返り措置である平日を代替休日にすることはないのだろうか。

     


    (2)「2つ目はボーナス支給のルール改正だ。中国では勤務期間に応じてボーナスを年末に支給する。例えば、1カ月で辞めた従業員にも1カ月分のボーナスを支払う必要がある。改正案ではボーナスについて「労働契約などで別途定めることができる」と規定する。契約などで明記すれば、短期で辞めた従業員にボーナスを払わないで済む可能性がある」

     

    ボーナスは、一定期間の勤務が前提のはずだ。日本でも、新入社員の初ボーナスは、勤務期間が短いので削減されている。

     

    (3)「3つ目は給与の支払期限の延長だ。現行では当該月の翌月22日までに支払う必要がある。改正案では(月末の)30日までに延ばせるよう明記するが、市人民代表大会では30日よりは短くすべきだという意見もあり、調整が続いている」

     

    給料支払い遅延の場合、月末30日までに支払へというもの。給料支払い遅延を認めるのは、企業の資金繰りが恒常的に悪化していることを反映している。

     


    (4)「深圳市政府は、条例改正の狙いについて「企業の経営を支えることが労働者の中長期的な利益にかなう」と説明する。改正案が成立すれば、企業は従業員1人当たりに払う給与を抑えることができる。中国では雇用水準が新型コロナウイルス禍前の水準を回復しておらず、市政府は新規雇用の増加につながるとの思惑もあるようだ。改正案は深圳市に拠点を置く外資系企業も対象になる。中国の企業法務に詳しい水野コンサルタンシーホールディングスの水野真澄社長は、改正案について「深圳で工場を運営する企業などが人件費を抑えられる利点がある」と話す」

     

    深圳は、ハイテク産業の集積地である。そこで、こうした労働条件引下げが行なわれるのは、中国経済が容易ならざる事態へ突入していることを反映している。

     


    (5)「深圳は改革開放のモデル都市として1980年に経済特区に指定された。同市で新たな産業政策や制度が試行され、後に全国に導入される場合が多い。例えば企業の破産制度を定めた条例はまず深圳で90年代半ばから施行され、その後に全国に広がった。今回の給与条例の改正案が成立すれば、中国の労働法制の転換につながる可能性もある」

     

    深圳は、改革開放のモデル都市であること。また、ハイテク産業の集積地であることを考えると、中国経済が新たな危機局面へ移行していることを示唆している。全国へ波及するであろう。

     

    (6)「中国では2008年に施行した労働契約法をきっかけに、労働者の権利を強化する方向で法整備が進んできた。給与水準も上昇が続いている。中国国家統計局によると、「農民工」と呼ばれる農村から都市への出稼ぎ労働者の平均月収は20年に4072元(約7万円)で、10年間で2倍に増えた」

     

    農民工の平均月収は、すでに約7万円と10年間で2倍に増えた。これでは、隣接国と比べて高賃金になっている。中国が、高賃金に耐えられない状況になっているのだ。中国の最も恐れる「中所得国のワナ」が、目前にきていることを物語っている。生産性上昇で、賃上げを吸収できなくなっていることを示す。実質的な賃下げを図って、対抗せざるを得なくさせている。

     


    (7)「日本貿易振興機構(ジェトロ)がアジアとオセアニアに進出した日系の約6000社から聞き取った20年の調査によると、「製造業・作業員」の基本給(月額)の平均は中国で531ドル(約5万9000円)。タイ(447ドル)やマレーシア(431ドル)など東南アジア諸国の多くを上回る。とくに電機や繊維など広東省と得意分野が重なるベトナム(250ドル)は中国の半分以下にとどまる。韓国サムスン電子は携帯電話の組み立て工場をベトナムに移したほか、中国企業も家具や繊維の工場をベトナムに移す」

     

    JETRO調査によれば、日系企業は中国と隣接国で次のような賃金である。

     

    中国    531ドル(約5万9000円)。

    タイ    447ドル

    マレーシア 431ドル

    ベトナム  250ドル

     

    中国の「製造業・作業員」の基本給(月額)は、ベトナムの2.12倍である。これでは、深圳のハイテク企業も対抗不可能である。中国経済の産業空洞化対策が、賃下げしかないことは中国の限界を示している。

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    中国は、7月1日に共産党創立100年を迎える。記念館では習近平氏の写真が、鄧小平の3倍の枚数という。正直に言って、習近平氏の業績が鄧小平の3倍とはおこがましいこと。鄧小平は、文化大革命で荒廃した中国経済を発展軌道に乗せた。独裁体制を改めて集団指導体制にして、周知を集める改革をした人物である。習近平氏は、その鄧小平の3倍の大きさの写真を掲げさせた。滑稽と言うほかない。

     

    『日本経済新聞 電子版』(6月28日付)は、習氏の写真『鄧小平氏の3倍』、共産党100年控え権威付け」と題する記事を掲載した。

     


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    1日の中国共産党創立100年を控え、習近平(シー・ジンピン)総書記の権威付けが進んでいる。記念館では建国の父、毛沢東氏に次ぐ露出ぶりで、改革開放を進めた鄧小平氏よりも大きく扱う。2022年の党大会での続投を意識して環境を整備する思惑がありそうだ。

     

    (1)「6月に上海市で開館した「中国共産党第1回党大会記念館」で毛氏の次に目立つのは習氏の事績を紹介するコーナーだ。習氏が天安門で演説する場面など12枚の写真が並ぶ。革命第2世代の鄧氏が写った写真は4枚のみだった。さらに第3世代の江沢民(ジアン・ズォーミン)氏と第4世代の胡錦濤(フー・ジンタオ)氏の写真はそれぞれ3枚ずつにとどまる。記念館の結びの語は「習近平の新時代の中国の特色ある社会主義思想の導きのもと、国民の素晴らしい生活の前進を続けよう」と強調している」

     

    習氏は、自由こそがイノベーションの源泉と位置付ける米国に対し、権威主義の体制で挑もうとしている。上海記念館で、習氏の写真が鄧小平の3倍とは何を意味するのか。それは、習氏が鄧小平をはるかに上回る実力と権威の持ち主であることを公然と示したものであろう。

     


    権威主義とは何か。権威に価値を認める主義である。すなわち、権威をもって他を圧迫する態度や行動とされている。習氏は、国民に向かって「自分を毛沢東と同様に尊敬し盲従せよ」と迫っている。中国14億人は、等しく習氏の権威に従えと迫っているのだ。毛沢東時代の中国の経済環境と、現在の習近平時代のそれは全く異なる。価値の多元化が進んでいるのだ。

     

    政治は共産党一党支配であっても、価値の多元化という複雑化している中で、習氏を神様のように崇めろと言っても無理な話だ。そう言う習氏は、国民の心においてはピエロになっている。中国共産党は、そのことに気付かねばならない。

     


    (2)「中国共産党の機関紙、人民日報が党創立100年にあわせてまとめた歴代指導者の「100句の名言」では、習氏と毛氏の発言を30句ずつ取りあげて「同格」扱いにした。鄧氏は14句で、江氏と胡氏は10句ずつだった。習氏は17年の党大会で自身の名前を冠した政治思想を党規約に盛り込んだ。指導者名を冠した思想が党規約に入るのは毛、鄧両氏以来のことだった。毛氏を政治の師と仰ぐ習氏は、経済成長を重視した鄧氏の姿勢とは距離があるとの見方は絶えない。党創立100年を機に自身の指導力を誇示し、鄧氏をしのぐ権威を確立する狙いがありそうだ」

     

    歴代共産党指導者の「100句の名言」では、習氏と毛沢東の発言を30句ずつ取りあげて「同格」扱いにしたという。だが、鄧小平は14句に格落ちさせた。鄧小平の言葉には味わい深いものが多い。覇権主義への反対を明確に打ち出していた。このほか、人生訓もある。

     


    「人づきあいとは相手があってはじめて成り立つものです。『人が、自分が』とアピールするよりは、まずは相手を敬う気持ちを持つこと。ですから人づきあいにおける最も大切な究極の言葉は『ありがとう』であると私は思います」

     

    「文化大革命のとき、牛小屋に入れられたのだが、あのときはもう終わりかた思った。しかし、私は元来楽観主義者ですから、こんなバカなことがいつまでも続くはずがないと考え直した。いまは、ただただ我慢だと耐えて生きていたら、果たせるかな、文革の嵐が過ぎてしまっていた」

     

    こうした鄧小平の謙虚な生き方を見ると、習近平氏のように「終身皇帝」を狙う気持ちは起るはずもあるまい。中国にとってはどちら選択すべきか。それは、習近平氏でなく鄧小平的な生き方であろう。習氏の「終身皇帝」狙いは、鄧小平の言葉を借りれば、「こんなバカなことがいつまでも続くはずがないと考え直した。いまは、ただただ我慢だと耐えて生きていたら」ということになろうか。

     

     

     

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    新型コロナウイルスの起源はどこか。WHO(世界保健機関)は、中国武漢市へ現地調査団を送ったが、曖昧なままに終わっている。その後、「武漢ウイルス研究所」が起源とする研究が多く発表されている。また、新たな情報が追加された。

     

    『大紀元』(6月28日付)は、「英米豪の研究者、ウイルス起源に新たな知見『実験室漏洩は排除できず』」と題する記事を掲載した。

     

    英米豪3カ国の研究者はこのほど、新型コロナウイルスの起源調査についてそれぞれ研究を行い、3つの知見を得た。いずれも他国に責任を擦り付けようとする中国にとっては不利な内容になっている。

     

    英国の研究者は、「ウイルスは武漢で初めて確認されたよりも2カ月ほど前から、既に中国国内で広がり始めていた可能性」を指摘した。豪州の研究者は「最も早期のコロナウイルスでも、ヒトへの驚くべき適応能力を示していることから、実験室から漏洩の可能性を排除できない」と結論を導き出した。米国の科学者は「中国の専門家が最初期の頃のウイルスサンプルを削除したことから、ウイルスの発生源を隠蔽しようとしているのではないか」と疑問視した。

     


    (1)「英ケント大学の研究者らは、新型コロナウイルスの発生時期に関する調査を行い、解析作業を行った。その結果、ウイルスが発生したのは2019年10月初旬から11月中旬にかけてと推定した。発生時期としては11月17日の可能性が最も高く、20年1月にはおそらく全世界に広がっていたという。この論文は、米科学雑誌「PLOS Pathogens」に掲載された」

     

    英ケント大学の研究者らは、新型コロナウイルスの発生時期は11月17日の可能性が最も高く、20年1月には全世界へ広がった、と推測している。

     

    (2)「中国当局が発表している初の感染確認は19年12月で、武漢の華南海鮮市場と関連があるとしている。しかし、初期の症例の中には、華南海鮮市場との関連を特定できないものもあった。WHOと中国の専門家は、今年3月の武漢での調査後に、ウイルスは武漢で感染爆発する前にも、既に他の場所でウイルスが広がり始めていた可能性もあることを認めている」

     

    WHOと中国の専門家は、今年3月の武漢での調査後に、ウイルスは武漢の前に既に他の場所でウイルスが広がり始めていた可能性も指摘する。

     


    (3)「
    米フレッドハッチンソンがん研究センターのジェシー・ブルーム氏はこのほど、中国で発生した中共ウイルスの初期感染例から削除されたゲノム配列の情報を復元したと公表した。それによると、華南海鮮市場から採取されたウイルスのサンプルは、それ以前に中国の他地域に広がっていたウイルス配列の変種であることが分かったという。ロイター通信によれば、中国の研究者は米国立衛生研究所(NIH)に対し、同所が管理する主要な科学データベースから以前提出した新型コロナウイルス流行初期の遺伝子配列に関するデータの削除を要請していたと分かった。NIHは、要請を受け関連データを削除したという」

     

    (4)「ロイター通信は、マサチューセッツ工科大学(MIT)とハーバード大学の共同研究所であるブロード研究所の研究者・アリナ・チャン氏の話を引用して、「なぜ中国の研究者はウイルスがどのように武漢で発生したのかを示す重要なデータの削除をNIHに要請したのか?」と報じ、隠蔽を図った可能性があると示唆した」

     

    中国の研究者は、米国立衛生研究所(NIH)に対し、同所が管理する主要な科学データベースから以前提出した新型コロナウイルス流行初期の遺伝子配列に関するデータの削除を要請した。これは、武漢ウイルス研究所漏洩を疑わせている。

     


    (5)「オーストラリアの科学者が行った別の研究では、新型コロナウイルスは他のウイルスよりもヒトの受容体に結合しやすいことを発見した。つまり、ウイルスは最初に出現した時から、すでにヒトに適応できたことを示している。同科学者のこの研究は、英科学誌「ネイチャー」の姉妹誌である学術誌「Scientific Reports」に掲載された。今回の研究は、ヒトの受容体により近い、現在未確認の別の動物の宿主が存在する可能性があると示されたが、実験室による漏洩の仮説も排除できないとした」

     

    オーストラリアの科学者は、新型コロナウイルスが他のウイルスよりもヒトの受容体に結合しやすいことから、武漢ウイルス研究所から漏洩した可能性を否定できないとしている。これは、新型コロナウイルスが遺伝子操作された痕跡を示している事実と符合している。

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    深圳市の超高層ビルが、理由もなく揺れ出した問題は本欄でも取り挙げてきた。改めて振り返ると、7月1日に迎える中国共産党100年を象徴するような「スピード競争」を象徴する事態だ。質よりも量を競う、という中国社会そのものに見えるのだ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(6月28日付)は、「中国、予言されていた『揺れる超高層ビル』」と題する記事を掲載した。

     

    「本当だ。揺れている」「撮っている場合じゃない」――。中国南部の広東省深圳市にあり、市内最大の電気街である華強北で518日、多くの人が逃げ惑う騒動が起きた。地区のなかでもひときわ高いビル「賽格広場」が外からでも見てとれるほど揺れたのだ。倒壊するのではないか、という恐れから賽格広場で働く人、周辺で働く人はくもの子を散らすようにビルから離れた。

     

    騒動の当時、地震はなかった。現地メディアは地元当局が初期の調査を通じ、風や地下鉄による振動、温度差によるビル構造への影響が複合的に重なったことが原因とみていると報じた。ビルのオーナーである不動産会社は同月21日から建物への立ち入りを原則禁止した。

     


    (1)「賽格広場は、電子部品の卸売りなどの商業施設や企業の事務所が入居する地上70階以上のビルで一部内装などを除き1999年に竣工した。約350㍍という高さに加え、当時国内ではまだ珍しかった鋼管にコンクリートを充塡して柱をくみ上げる先進工法を採用したことから、業界の注目を集めた。さらに1フロアあたりの建設にかけた日数は2.7日と、それまでで速いとされていた3日を下回った。効率を重視する同市の気風、「深圳スピード」を体現するプロジェクトとしてもてはやされた

     

    中国では、超高層ビルの建設期間を短縮する競争が行なわれていた時期がある。これこそ「中国的」という質よりも量を重視する風潮を表している。今。それが破綻したということだ。

     

    (2)「象徴的な建造物だけに今回の騒動には多くの人が関心を寄せている。そうしたなか、20年前の2001年に発表されたある論文が「予言的」だとして脚光を浴びている。当時、華中科技大学の修士課程で経営学を専攻していた金典琦氏が執筆した論文「深圳賽格広場の建設プロジェクトに関する分析」だ。社会人学生だった金氏は賽格の関係者として同計画に携わっていた」

     

    正確な記録の重要性がここにある。あとから振り返り反省できる手がかりになるからだ。中国では現在、歴史の改ざんが政府主導で行なわれている。悪い点を抹殺して書き換える作業である。文化大革命を賞賛するようになってきたのだ。

     

    (3)「論文は賽格広場の計画から設計、施工、竣工後の運営について多角的に評価したもの。設計作業や業者の選定については批判的に記しているのが最大の特徴だ。論文はこう述べている。「当時の国内の技術水準に照らし合わせれば、このような大型プロジェクトは海外の設計事務所の入札への参加を認めるべきだった。度量の小さいナショナリズムに陥り、中国人による設計、施工、管理という『純中国』のコンセプトを宣言してしまった」

     

    現在の中国が、この二の舞いに落込もうとしている。米中対立によって自由世界から孤立する動きが強まっているのだ。対立原因は、中国の覇権奪取という身丈に合わない野望を掲げた戦狼外交が摩擦を生んでいる。

     


    (4)「金氏によると賽格広場は、12億元超(現在のレートで約200億円)を投じた大型案件だったが、設計業者は香港系を含む中国業者のみの競争入札によって選ばれ、外国企業は排除された。そして建物全体の設計が終わる前に着工し、行き当たりばったりの部分があったという。ビル最上部に取り付けたアンテナは設計上の不備から完成時に揺れが発生した。長さを調整するため再計算したが、それにもミスがあり、手直しの工事は2度にわたった。多少の失敗を許容しながら速度と効率を優先する深圳スピードはある種の美徳とされてきた。機動的な行政判断や企業の挑戦的な事業戦略が経済成長や社会進歩を生むと信じられ、中国全土の手本となってきた」

     

    不毛の地とされた深圳が、香港の隣接地という地の利を生かして急速な発展を遂げた。その深圳は、中国全土のモデルとされてきた。しかし、「揺れる超高層ビル」はスピード重視の弊害に揺れている。

     

    (5)「ただスピードを追い求めた結果、社会のひずみも大きくなった。その最たる例が住宅など不動産価格の高騰問題だ。当局は高騰対策で物件の売買規制を強化しているが、規制をかいくぐる不正が後を絶たない。市政府はこのところ、こうした問題への対応でギアを一段上げている。今年2月、中古住宅に「参考価格」を設定し、仲介業者や金融機関に相場の過熱抑制を呼びかけた。計画経済への逆戻りにもみえる方法だ。さらに5月下旬には戸籍取得の要件のひとつである最終学歴を従来の大専(短大)卒から大卒に引き上げる新ルールの草案を公表した。これも住宅高騰を防ぐ狙いがある。深圳はこれまで地方出身者を幅広く受け入れ、豊富な労働力を成長の源泉としてきた

     

    深圳は、ハイテクとして急成長した。だが5月下旬に、戸籍取得の要件のひとつである最終学歴を、大卒に引き上げて流人人口の抑制に動いている。これは、ハイテク産業の成長に陰りが出て来たことを裏付けるものだ。中国経済が曲がり角にあることを示している。

     

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    中国は、正統な国家だろうかと疑問を持たざるを得ないほど、民衆弾圧を行なっている。公安当局が怪しいと思えば、誰でも拘束できる暗黒社会である。罪名は、「騒乱挑発罪」だという。天安門広場で立ち話をしていたり、新聞の記事をコピーして置いただけで数ヶ月の拘束が普通だという。

     

    中国公安は、それだけ民衆を恐れている証拠である。中国の政治危機が静かに進んでいるという実感を与えるのだ。胡錦濤政権時代は、こうした蛮行が見られなかった。習近平政権は、国民が全て敵に見える異常感覚に陥っているのだろう。

     


    『大紀元』(6月27日付)は、「『歴史を隠蔽』中国共産党、党100周年に合わせ各種の記録削除―米メディア」と題する記事を掲載した。

     

    米紙『ロサンゼルス・タイムズ』(6月24日付)は、中国共産党の創建から100周年の記念日が来月に迫る中、中国当局は公式の過ちと不名誉な党史を抹消していると報じた。同時に各種記録や、反体制派を弾圧した司法判決もブロックしたという。同紙のアイリス・スー記者は2年前の報道について言及した。

     

    (1)「天安門事件30周年に当たる2019年6月4日、天安門広場で追悼活動を行う3人の1990年代生まれの若者が当局に拘束された。その2年後、当局はこの拘束に関する記録を消去した。スー記者は中国最高裁判所および他の11の裁判所に電話をかけ、その理由を尋ねた。裁判所職員は記録が登録されていることを確認したが、非開示にした理由についての説明はなかった。職員の1人は、「我々が見せたいと思えば、あなた方はそれを見ることができる。しかし、我々が見せたくないと思えば、それを消去するだけだ」と述べた」

     

    天安門広場で追悼活動を行う3人の1990年代生まれの若者が、2019年6月4日、拘束された。その拘束された時の扱いが、この記事の主題になっている。

     


    (2)「28歳の董澤華さんは当時拘束された若者の1人だった。彼は天安門広場で、黄色い傘を持った香港を支援する若者、そして天安門事件で死去した人を追悼しようとする別の若者と会った。彼らは広場でほんの少しの時間滞在しただけで、拘束された。黄色い傘を持った若者は拘束後まもなくして釈放されたが、董さん2人はそれぞれ6カ月と7カ月監禁された。罪名はいつもの「騒乱挑発の罪」だ。中国人たちはこれを「ポケット罪」と呼んでいる。全てをポケットの中へ突っ込むという意味で、言論、異議を唱える者、反体制派、請願者らを弾圧する際に中国当局が常用する万能の罪だ」

     

    天安門広場で、追悼しようとした2人の若者は、それぞれ6カ月と7カ月監禁された。罪名はいつもの「騒乱挑発の罪」である。何ら騒乱挑発をしたわけでない。死者への追悼が罪にされる国である。

     

    (3)「董さんは2020年6月に『ロサンゼルス・タイムズ』紙に自身の拘留記録を送った。当時その記録は裁判所の判決書の公開データベースの中から見つけることができた。しかし、その1年後(2021年6月)、董さんの判決書はデータベースから消失した。「彼らは記録を削除した。あたかも中国人全員の記憶までも直接消せると言っているかのようだ」と董さんは憤慨した」

     

    人間を半年も拘束しながら、その記録が削除されている。これでは、国家の名前を借りたリンチである。酷い国である。

     


    (4)「ツイッターアカウント「@SpeechFreedomCN」によれば、5月に中国のSNSウェイボー(微博)やツイッターなどで「騒乱挑発」「国家指導者」などのキーワードで検索してもゼロ件と表示されるという。通常、同じ検索方法で数千件の結果が出ている。同データベースの中には、ウイルスの流行に警鐘を鳴らしていた武漢の
    李文亮医師などウイルスに言及したため処罰されたケースが600以上ある。また、ほかにもあまり知られていない数百の判決書もフォルダに収められている」

     

    なぜか、「騒乱挑発」「国家指導者」などのキーワードで検索しても、結果はゼロ件と表示されるという。いずれも、公にされたくないからだろう。こうなると、「騒乱挑発」は完全に中国共産党の「リンチ」である。

     


    (5)「あるブロガーが武漢ロックダウン中の新聞報道を集めただけで、当局に6カ月間監禁された。また、コンピュータープログラマーの2人はGitHubにあるデータベースと、武漢がロックダウンされた初期、検閲された記事のコメント履歴を保存したため、当局によって1年以上も拘束された。2人の罪名も「騒乱挑発」だ」

     

    武漢ロックダウン中の新聞報道を集めたブロガーが、当局に6カ月間監禁されている。こういう暗いニュースは、外部に漏れることを恐れているのであろう。この罪名も「騒乱挑発」である。

     

    (6)「董さん自身でさえ、自分が2019年のあの日に警察から暴力的な扱いを受けるとは想像もしていなかった。「彼ら(中国当局)がやっていることは、すべての中国人の思想をコントロールし、一人ひとりの歴史を抹消することだ。彼らは自分たちで歴史を書き換えようとしている」と董さんは指摘した。董さんも他の人々と同じように、中国の新世代が政府の作った物語に惑わされ、プロパガンダの背後にあるものを識別できない。たとえ何かを見つけたとしても、声を上げる場所すらないと懸念している」

     

    中国共産党は、中国を乗っ取った集団である。国民を奴隷にし、自らの権力に対して永続性を狙っているのだ。これでは、国民に選挙権を与えるはずもない。この中国共産党の末路はどうなるのか。次第に末期症状へ陥いるほかない印象が強い。

     

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