勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2021年06月

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    日本政府は6月4日、調達している新型コロナウイルスワクチンのうち、英アストラゼネカ製124万回分を台湾に送った。ワクチン不足に直面している台湾がこれまでに輸入した量の約1.5倍に当たる。台湾では、「日本ありがとう」と感謝の念を表わしている。

     

    茂木敏充外相は、2011年の東日本大震災の際に台湾から義援金を送られたことに言及し、「日本の人々に鮮明な記憶として残っている」と発言。「台湾との重要なパートナーシップや友情を踏まえた」と語った。

     


    台湾は、コロナの抑え込みに成功していたが、5月上旬ごろから感染の拡大に見舞われた。2000万回分以上のワクチンを契約しているが、これまでに受け取ったのは約86万回分、接種率は人口2400万人の3%以下にとどまっている。それだけに、124万回分の無償提供に一息入れられる。

     

    米上院の超党派でつくる議員団は6日早朝、台湾を訪問し、蔡英文(ツァイ・インウェン)総統と会談した。台湾で新型コロナウイルスのワクチンが不足するなか、米国側は75万回分のワクチン提供を表明した。

     

    『読売新聞 電子版』(6月5日付)は、「ワクチン提供、ベトナム・マレーシアにも 米とも連携して中国に対抗」と題する記事を掲載した。

     

    日本政府は、国内での使用を見合わせている英アストラゼネカ製の新型コロナウイルスワクチンの一部を、感染が急増しているベトナムとマレーシアに月内にも無償で提供する方向で調整に入った。ワクチンの海外供与は、台湾に続いて2例目となる見通しだ。

     


    (1)「ベトナムは5月上旬からコロナ感染が急増し、世界保健機関(WHO)の集計によると、5月26日には過去最多の470人が新たに感染した。マレーシアでも5月30日に過去最多の9020人の新規感染が確認され、両国のワクチン不足は深刻化している。日本政府は、すでに両国の保健当局がアストラゼネカ製のワクチンの使用を許可していることから、日本国内で当面使用予定のない同社製のワクチンを提供しても問題がないと判断した。国際機関を通さず、直接供与する方向だ。数量は今後、決定する」

     

    初期のコロナの押さえ込みに成功した諸国は、ワクチン購入契約で後手に回った。そこへ、感染が急拡大しておりワクチン不足が深刻になっている。日本は、すでに購入契約済みの英国アストラゼネカ製のワクチンを当面、使用しないことからワクチン不足に悩むアジア諸国へ振り向けることになった。ベトナムやマレーシアへの提供を検討している。遅ればせながらのワクチン外交へ踏み出す。

     

    ベトナムはこれまで感染を抑制していたが、4月から感染者数が急増した。ワクチンの調達が遅れており、日本に支援を求めていた。日本も、これに応えるもの。台湾はもちろんのこと、ベトナムも中国とソリの合わない国である。

     

    こういう日本で現在、東京五輪を開催すべきかどうかと議論している。ワクチン外交が始まった現実と比べて、異次元の話をしている感じだ。つまり、政府は、五輪開催の先へ駒を進めているのである。五輪開催は、既定方針通りであろう。

     


    (2)「
    また、太平洋島嶼国への提供も検討している。日本政府が今月下旬にテレビ会議方式で開催する島嶼国首脳らによる「太平洋・島サミット」で、菅首相が表明する方向だ。国際機関を通じた支援となる見通しだ。ワクチンの提供を巡っては、日本政府は2日に開催したワクチンサミットでアストラゼネカ製ワクチンを念頭に3000万回分を海外に提供する方針を表明し、4日に台湾に124万回分を無償供与した」

     

    日本は、海外へ3000万回分のアストラゼネカ製ワクチンなどを提供する。一国あたり100~200万回規模の提供であれば、15~20ヶ国へ提供可能となろう。

     

    (3)「中国は国産ワクチンを80か国以上に供給するなど、積極的な「ワクチン外交」を展開している。日本政府としては、米国などと連携して中国に対抗する狙いがある」

     

    中国は、口先だけの約束である。現実に、どの程度の国へワクチンを届けられるかは不明である。

     

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    あじさいのたまご
       

    中国共産党は、世界的な宣伝工作機関の先兵として欧米に孔子学院を設置している。中国が、人材や資金を提供して中国語や文化の普及を目的にするもの。だが、裏の顔を持っている。米国では、中国人留学生の監視やスパイ工作の隠れ蓑に使っている。FBI(連邦捜査局)は、その手口を公表するなど監視下に置いているのだ。大学によっては、孔子学院を閉鎖するなど警戒感を強めている。

     

    日本政府は、遅ればせながら欧米に歩調を合わせて孔子学院の実態調査へ乗出すことになった。これまで、対中関係を重視して手を触れることはなかったが、日米首脳会談の共同声明において、中国への警戒感を見せた以上、「遠慮することもない」ということなのだろう。

     


    『日本経済新聞 電子版』(6月6日付)は、「中国の『孔子学院』実態調査 政府検討 世論工作を警戒」と題する記事を掲載した。

     

    政府は中国が日本国内の大学に置く「孔子学院」の活動について実態調査を検討する。運営体制や資金源などの情報公開を求める。中国の世論工作や技術流出に使われるのを警戒し、規制強化に動く米欧と歩調を合わせる。

     

    (1)「孔子学院は、中国が海外で中国語や文化を広めるため、2004年に世界各国で設置を始めた。およそ160カ国・地域で500以上の拠点があるとされる。日本には早大や立命館大など14の私立大が孔子学院を置く。学位取得に関わる機関ではないため設置する際に政府への許認可や届け出は不要だ。大学が市民向けに開く公開講座などと同じ扱いとなる。政府にとっては運営実態を把握しにくい」

     

    日本では、国公立大学に孔子学院が一カ所もないことが目立っている。文科省が、「行政指導」によって設置させなかったと見られる。そうでなければ、一校ぐらい設置されていてもおかしくはない。日本政府は、孔子学院について最初から「怪しい存在」と見ていたのだろう。

     

    (2)「文部科学省は年内にも調査する項目を決める。中国側から大学への資金提供や研究内容への介入の有無、参加者数などの情報公開を設置大学に要請する。政府・与党内には孔子学院が中国のプロパガンダに使われかねないとの警戒がある。孔子学院を通じた人的交流によって安全保障上の重要技術が漏れることも危惧する。自民党の有村治子元少子化相は5月の参院文教科学委員会で、孔子学院について「各国が安全保障上の脅威として認識している」と指摘した。関係府省で連携して監視を強めるよう問題提起した」

     

    中国の情報工作は巧妙を極めている。これと目星を付けた人物へ接近して金品を贈ったり、研究上で便宜を図るなど籠絡する。その代わりに、中国へ有利な発言や原稿を書かせるという義務を課すのである。中国礼賛の発言や論文は、疑って見るべきだ。客観的に見て、中国を褒められるべきことは皆無である。

     

    (3)「萩生田光一文科相は、「米国や共通の価値観を持つ欧州の国々からも廃止や情報公開を求める懸念の声が高まっている」と述べた。「組織運営や教育・研究内容などの透明性を高めるべく情報公開を促したい」と表明した。文科省の伯井美徳高等教育局長は、国会答弁で中国のほかに「孔子学院のような文化拠点を置く例はない」と説明した。

     

    孔子学院の手口は、米国で詳細に発表されている。中国文化の普及活動は表向きのこと。あくまでも中国共産党のプロパガンダ機関である。

     

    (4)「関東地方で大学運営に関わる私大幹部は、中国側から設置を打診されたが断ったと話す。大学経営の視点でみると提携先の中国の大学から安定的に留学生を受け入れられる利点がある。一方で、「台湾や香港、新疆ウイグル自治区に関する研究をすれば干渉を受けかねない」と話した。台湾の大学と交流した場合に中国からの助成金が止まる可能性も考慮したという」

     

    中国側は、日本の大学へ孔子学院設置の勧誘を行なっている。中国人留学生の斡旋がエサである。こういうレベルの学生は、総じて学習意欲が低く受入れた大学は難儀しているはずだ。

     

    (5)「米欧は、既に孔子学院への規制に乗り出した。米国はトランプ政権だった2020年、当時のポンペオ国務長官が孔子学院を中国大使館などと同じ外交使節団に認定した。活動内容の報告を求め、資産取得には事前承認が必要な仕組みにした。バイデン政権になっても米国の姿勢は変わっていない。米中央情報局(CIA)のバーンズ長官は就任前に臨んだ公聴会で「自分が大学の学長ならば閉鎖する」と強調した。

     

    中国の宣伝工作は、執拗を極める。一度、取り付いたならば絶対に離れないというもの。米シカゴ大学では、自由主義を売り物にする大学でそれと真逆の思想を宣伝する孔子学院は不適切でるとして閉鎖した。シカゴ大学は、ノーベル経済学賞の受賞者を輩出している、その名誉のためにも、中国共産党のシンボルである孔子学院を受入れないというのだ。

     


    (6)「米上院は今年3月、孔子学院の管理を強化する法案を可決した。大学が助成金などの運営を担い、管理できていない場合は米政府からの補助金を減らす内容だ。オーストラリアは20年12月、孔子学院を念頭に地方自治体や大学などが外国政府と結んだ協定について国益に反すると判断すれば破棄できる法律を制定した。「閉鎖も相次ぐ。全米学者協会によると17年に100を超えていた孔子学院の数は21年5月には47カ所まで減った。日本の外務省によると、欧州ではフランスやドイツなどの大学が施設を閉じた」

     

    カナダが、孔子学院の閉鎖を決めた最初の国である。この動きが米国へ伝播して、前記のシカゴ大学は、米国でも最も早い時期に閉鎖している。当時の状況は、ブログの「勝又壽良の経済時評」で克明に取り上げている。

     

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    中国は、共産主義で貧しい者が生きられる社会と思われがちである。実態は、大きく異なっていた。2020年の合計特殊出生率が「1.3」と初めて公表されたが、それまでは「1.6」とウソの数字が公然と発表されてきた。ウソを重ねざる得ないほど、出生率が落込んでいたのである。

     

    この数字さえ眉唾であることが分かる。出産費用が表向きは無料だが、それは限られたケースであり、ほとんどは民間施設で出産するという。その費用が何と10万元(約172万円)である。日本では信じられない高額費用だ。こういう中で、子どもを生みたいという家庭がどれだけあるか。合計特殊出生率「1.3」も極めて怪しいことが分かる。中国という守銭奴社会は、こうして人民から金を巻き上げるシステムを作り上げている。

     

    私は、人民元を円に換算するたびに「計算を間違っていないか」と自問自答した。子どもの出産から教育費にまで、高額な費用が掛かることに驚いたのだ。これが、「貧者に優しい」と宣伝する中国共産主義社会の実態である。この「まやかし」が、中国経済の芯を腐らせていくことは必至だろう。



    『ロイター』(6月1日付)は、「少子化進行の中国、子育てにかかる費用とは」と題する記事を掲載した。

     

    中国政府は5月31日、1組の夫婦が最大3人までの子どもを持つことを認めることを発表した。最近のデータにより、世界で最も人口の多い中国で出生数が劇的に減少していることが示されたことを受け、子どもを2人までに制限していた政策を大きく変更する。

     

    (1)「中国の都市部では育児のための費用が上昇しており、夫婦の多くが子どもを持つことをちゅうちょしている。2016年に中国政府が「1人っ子政策」を撤廃したが、それにもかかわらず、出生率は女性1人当たりわずか1.3人に低下した。では、中国の大都市で子どもを育てようと思ったら、どれくらい費用がかかるのだろうか。中国の公立病院で出産する場合は、妊娠期の検査や分娩時を含め、費用は国の保険でカバーされるのが普通だ。だが、公立病院のリソースがひっ迫しているため、民間のクリニックを頼りにする女性が増えており、こちらでは10万元(約172万円)以上の料金を請求される」

     

    私の知人は数年前、酒を飲み過ぎ気分が悪くなり北京の病院へ行ったら、6万円請求されたという。何と「ボッタクリ」でないかと笑ったが、出産となるとボッタクリも並みの金額でない。民間病院では、172万円も掛かるというのだ。信じられない金額である。

     

    (2)「裕福な家庭では、出産後1カ月間、母親と新生児の世話をするために「月嫂」と呼ばれる専門のベビーシッターを雇うのが通例であり、その費用が約1万5000元(約25万8000円)かかる。中国では所得水準の向上に伴い、産後まもない母親が専門的な診療やサービスを提供する分娩後診療センターに集まるようになっているが、これも費用は高い。北京市内の王府井地区にある施設の場合、月15万元(258万円)~35万元(602万円)だ」

     

    ベビーシッターになるには、一流大学卒が条件であると聞いたことがある。大学卒業後、適当な職場がなく、「女中さん」や「ベビーシッター」になるという話は、こういう好条件を見るとウソではないことが分かる。つまるところ、高学歴社会になっても、それに見合った雇用がないことを意味している。それは、所得分配の不平等ゆえに均質なサービスが普及せず、金持ちだけが利用する歪な社会を生み出しているのだ。こういうアンバランスな中国に持続的発展を望むべくもない。一部で「王侯貴族」を生みだしているに過ぎない。

     


    (3)「裕福な親たちは、子どもを幼児教育施設に送り出すようになると、北京市内の海淀地区など名門校のある地域でマンションを探す。このあたりの住宅コストは1平方メートル当たり平均9万元(約155万円)以上で、米マンハッタンの価格の中央値に匹敵する」

     

    (4)「『戸口』と呼ばれる居住許可がなく、公立学校への入学資格が得られない子どもは、私立学校へ 入学する。年間4万(68万8000円)~25万元(約430万円)の学費がかかる。子煩悩な親の大半は、1人しかいない子どもにお金を惜しみなく使い、個別指導の学習塾や、ピアノやテニスなどといった習い事に通わせる。家庭が負担する教育費を抑えることにより、子どもへのプレッシャーを緩和し出生率を引き上げるため、中国は活気を帯びる学習塾産業への締め付けを開始している」

     

    私立学校の授業料が、年間68万~430万円も掛かるとは卒倒するほどの高額費用である。そのほか、芸事やスポーツにも金をかけているとは、日本でも余り聞いたこともない話だ。守銭奴社会ゆえに、金のありそうな者にはいくらでも払わせる、昔からの「たかり精神」が中国には息づいているのであろう。「公正な取引」という概念が欠落している社会になっている。

     


    (4)「上海社会科学院による2019年の調査報告書では、上海の高級地区である静安区で生活する平均的な家庭では、誕生から中学校卒業(通常15歳)までに、子ども1人あたり約84万元(約1444万円)を支出している。そのうち、教育費だけでも51万元(約877万円)だ。この報告書によれば、静安区・閔行区の低所得世帯(年収5万元(約86万円)以下の場合、収入の70%以上を子どもに費やしているという。1人っ子として多くの費用を投じて育てられたことによるプレッシャーだけでなく、いずれは両親の介護を期待されていることもあり、多くの若者は自分では子どもを持つことに腰が引けてしまっている)」

     

    上海の高級地区における平均的な家庭では、誕生から中学校卒業(通常15歳)までに、子ども1人あたり約84万元(約1444万円)を支出しているという。中国のソーシャルメディアでは、政府が子どもを3人まで生んで良いとの許可に冷ややかな反応である。子ども3人どころか、1人を育てる余裕すらないという声が多い。あるユーザーは「500万元(約8600万円)くれるなら、子どもを3人持ってもよい」と微博に投稿した。8600万円で子ども3人とは、一人当たり2866万円である。

     


    前記の上海の高級地区では、誕生から中学校卒業までに平均で1444万円もかかる。これに大学進学までの費用を加えれば、2800万円という金額はまんざらウソでもなさそうである。ともかく、守銭奴社会中国での子育ては「難事業」である。合計特殊出生率は今後、釣瓶落としになって当然である。

     

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    2021-06-01

    中国、「行き詰まり」今になって3人目出生許可、人口減の流れは「変わらず」

     

     

     

     

     

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    4月16日の日米首脳会談による共同声明は、台湾問題に言及して「座視」しないことを示唆した。中国は、この共同声明発表を境にして、台湾への軍事挑発を抑制する方向に変わった。中国が、台湾を深追いすると日米が結束して対応することを確認したのだ。

     

    日米共同声明で台湾に言及したのは1969年以来、51年ぶりのことである。日本の安全保障における台湾の重要性から見て当然のと受け止められている。こういう、時代の変化を映して、日本は米軍への後方支援という形で台湾防衛に加わるものとされている。ただ、大枠は決まっているとしても、具体策は未着手である。

     


    自民党内では、これを受けて日米の防衛協力の指針(ガイドライン)を見直す案が浮上している。日本が防衛政策を変更する場合、国家安全保障戦略や防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画を見直す。政策の方向性から装備品の調達の予定までを書き込む。こうした文書と並行して米国とつくるのがガイドラインになる。自衛隊と米軍の役割や任務を記し、両者の協力関係を定める。平時から日本が武力攻撃を受ける事態まで緊密に連携できるようにするもの。台湾防衛への協力は、日本の防衛政策変更を意味する。重大なことである。

     

    『日本経済新聞 電子版』(6月5日付)は、「中国、台湾への軍事挑発一段落か『日米共同声明後』」と題する記事を掲載した。

     

    中国の台湾への軍事的圧力が一段落している。1週間で5日間ペースだった中国軍機による台湾の防空識別圏(ADIZ)入りが共同声明で「台湾」が明記されたことで米国への過剰な刺激を避ける目的に加え、国内の統制を優先し、間近に迫る71日の中国共産党創立100年を成功裏に収めたい中国指導部の狙いが透ける。

     

    (1)「今年11日から、日米共同声明の発表があった4月16日までの間に、中国軍機が台湾のADIZに侵入した日数や軍機の数を詳細に調べた。それによると、全106日間のうち、中国軍機が侵入した日は75日に上り、侵入した日の割合は全体の約70%となった。1週間のうち、5日間のペースで台湾に圧力をかけ続けた計算になる。侵入した軍機の数は、戦闘機「殲16」「殲10」などを中心に、延べ257機に上り、1日平均で3.4機が侵入した」

     

    中国は、日米首脳会談前に台湾への軍事圧力を掛ければ、日米が中国への警戒姿勢を見せることは予想できたはずである。案の上、中国は日米を結束させて台湾防衛に向かわせるという最悪事態に陥った。これは、外交戦略から言えば、最も愚策のはずである。それをあえて行なったところに、習近平の不可思議さがある。

     

    中国外交は、伝統的に同盟を忌避して分裂させることを特技としてきた。まさに、「合従連衡策」である。今回の振る舞いは、この「逆バージョン」である。なぜか。中国は、台湾へ軍事圧力を掛けるだけで、侵攻する意思がないことかも知れない。つまり、中国国内へのポーズにすぎない、という解釈も成り立つのだ。真意は不明だが、日米共同声明後に見せる台湾への慎重姿勢は、これまでの台湾侵攻がポーズであったとも言えそうだ。

     


    もう一つの解釈も可能である。次のパラグラフのコメントに示した。

     

    (2)「特に、中国が米国への強い反発姿勢をみせる10機以上の大量侵入を見せた日を集計したところ、日数は9日を数えた。9日のうち6日は、日米共同声明発表前の3週間以内に集中し、中国の強い不満と焦りがうかがえた。中国は一般的に、米国が台湾への関与を深める度合いに応じ、台湾のADIZに侵入する軍機の数を決める傾向にある。軍機の数が多ければ多いほど、米国への強い不満を示すことになる」

     

    下線部は、中国が台湾問題をめぐる対米不満と焦りを日米首脳会談前に集中させた。その結果、日米が協力して台湾問題に乗出す姿勢を後押しする形になった。これは、先述の通り、外交戦略上は失敗のはずである。中国は、そういう失敗を招いたことから、日米首脳会談後に慎重姿勢に変わったという解釈も成り立つ。

     

    (3)「日米が共同声明を発表して以降、64日現在までは、台湾に侵入する軍機の数は大きく減った。1日平均で1.9機と、共同声明発表前までの3.4機から大幅減となった。10機以上による中国軍機の大量侵入も、日米共同声明発表後は、1回も確認されていない状況にある。特に、最近は侵入回数自体も減っている。直近の2週間でみると、7日間は侵入がなかった。残りの7日間も2機が最多で、6日間は1機の侵入にとどまっている。

     

    台湾に侵入する中国軍機の数は、共同声明発表前までの一日平均3.4機から、共同声明発表後に同1.9機へと大幅減となった。これが、中国にとってどういう意味かという謎解きが必要である。私はその回答が、先述の通り二つあることを示した。

     


    (4)「台湾国防部のシンクタンクである国防安全研究院の蘇紫雲所長は、「明らかに日米共同声明が影響している」と指摘する。具体的には「中国指導部としては、台湾に敏感な米国への刺激を避けながらも、中国共産党創立100年を成功裏に収めるため、中国軍の実力を誇示し、中国国内に対して強さをアピールし続けなければならない。そのため、それが最近のマレーシアやフィリピンなど東南アジアでの挑発行動につながっている」と分析する。

     

    中国共産党創立100年を内外で誇示する必要があれば、記念式典が終わるまで台湾への軍事的な圧力の継続させる必要があろう。それが、日米首脳会談後に腰砕けになってしまった。これでは、内外への示しがつかないはずだ。中国国内で強硬論への反対が出てきたのかも知れない。

     

     

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    韓国は、東京五輪ホームページにある竹島地図をめぐってヒートアップ状態である。肉眼で見れば、HPの竹島は消えている。だが、拡大鏡で見れば「痕跡」を止めているという。韓国の言分では、その痕跡を消せと迫っている。

     

    韓国の元首相で与党「共に民主党」前代表の李洛淵(イ・ナギョン)氏は4日、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長に抗議の書簡を送った。李氏は書簡で、「IOCの迅速かつ断固たる措置を求める」として、「独島を日本の領土として表記した東京五輪の地図を是正し、旭日旗の使用を禁止させてほしい」と要請。「IOCの規定ではあらゆる政治的な行為を厳しく禁じている」とし、「韓国の領土である独島を日本の領土として表記することと、軍国主義の象徴である旭日旗を使用することは明白にIOCの規定に反する政治的な行為」と指摘しているという。

     

    これまでのIOCの態度は、この竹島問題に付いて答えず、JOC(日本オリンピック委員会)へ問合せよと介入を避けている。韓国の前首相の書簡も同様の扱いになるであろう。もともと、竹島は日本領であった。李承晩大統領が、「李承晩ライン」で囲い込んで窃取したものである。日本は、被害者である。

     


    IOCが、回答を避けているのは、竹島の地図がすでに訂正されて肉眼で見えないことが理由であろう。IOCは、消した後の「痕跡」まで対応できないというに違いない。

     

    韓国では、この竹島の「痕跡」まで消さなければ、五輪に参加しないと言い出している。日本が、「痕跡」まで消せという韓国の要求に応じなければ、韓国は不参加となるのだろう。

     

    『中央日報』(6月2日付)は、「五輪目前なのに『独島表記議論』、IOCの仲裁なければどうなる?」と題する記事を掲載した。

     

    1カ月余り先に迫った東京五輪の公式ホームページに日本が独島(ドクト、日本名・竹島)を自国領土のように表記していることと関連し韓日対立が激化している。この問題に微温的な態度を見せている国際オリンピック委員会(IOC)が最後まで仲裁に乗り出さない場合には五輪開幕時まで韓国は抗議を繰り返し、日本はこれを無視する状況が続きかねないという懸念が出ている。

     


    (1)「独島表記議論が初めて出てきたのは先月21日だ。その後韓国政府は先月24日に文化体育観光部と大韓体育会が日本オリンピック委員会(JOC)を相手に独島表示の是正を要求したのに続き、1日にはIOCに追加で仲裁を要請する書簡を発送し、相馬弘尚駐韓日本大使館総括公使を外交部に呼び出して抗議した。同日京畿道(キョンギド)の李在明(イ・ジェミョン)知事もトーマス・バッハIOC会長に書簡を送った」

     

    五輪開催権はIOCにある。IOCが、竹島問題でさらなる介入を避けているのはなぜか。竹島は、HP上で可視できないことだ。それゆえすでに、解決済みとしているのであろう。竹島が、肉眼で認識できなければ、これ以上の問題発展はないと見られる。

     

    (2)「一見強硬な対応に見えるが、事実上「IOCに仲裁要請」と「日本に抗議と是正要求」という千編一律的な対応を主体だけ変えて繰り返しているという指摘が出る。IOC憲章第50条第2項は「政治的・宗教的・人種的宣伝を認めない」と規定しているが、現在IOCは独島表記議論について「日本側に問い合わせよ」という回答だけ繰り返し、事実上後ろ手を組んでいる。今回の議論の事実上唯一の解決策は地図の修正しかない状況でIOCが仲裁を控え日本が前向きな措置を取らない場合、五輪開催時まで韓国が返事のない叫びだけ繰り返すことになりかねないという懸念が出ている」

    韓国は、もともと福島の放射能問題で参加しないと言っていた経緯がある。そういう過去の話と重ね合わせると、東京五輪に消極的であったはず。参加を見送るのも一つの選択であろう。

     


    (3)「丁世均(チョン・セギュン)前首相をはじめとする与党の大統領候補らは、日本が独島表記を修正しない場合には五輪をボイコットしようと声を高めており、野党陣営もボイコット検討に同調する雰囲気だ。だがボイコット問題は五輪を4年以上にわたって準備してきた選手たちの立場を優先的に考慮すべきと指摘される。選手らの犠牲を甘受してボイコットしても東京五輪公式ホームページには独島が堂々と残され、日本もまた韓国の不参加を意に介さず居直るような状況になるならば、韓国として実益はいくらもない」

    韓国は、難しい選択であろう。これだけ騒ぎを大きくして、開会式に出てくるというのも「バツ」が悪いはずだ。むしろ、その方を懸念する。

     

    (4)「外交界の一部では、日本が土壇場で立場を変えるかもしれないという期待感の混ざった観測も出ている。日本が、独島領有権に対する主張は継続しながらも、これとは別個で韓日対立解消次元から前向きな態度を取るかもしれないという見通しだ。2018年の平昌(ピョンチャン)冬季五輪ホームページにも当初独島が表記されていたが日本の抗議とIOCの勧告により韓国政府が大乗的次元で独島を削除している」

     


    日本はすでに一度、訂正している。「痕跡」が残っているとして、それまで消せという韓国の主張に応じるならば、逆に日本国内で騒ぎが広がるだろう。

     

    韓国は、この問題の「火付け役」である韓国女子大教授の発言にまんまと乗せられた。それが迂闊であった。「反日闘士」であり、これを生きがいにしている人物なのだ。

     

    (5)「そうでなくても新型コロナウイルス流行の渦中に五輪開催を強行し、日本は国際社会の世論でコーナーに追い詰められている。こうした日本の状況を戦略的に活用し、日本が周辺国と不必要な対立を引き起こさないよう圧迫し説得すべきという提言が相次いでいる」

     

    開催に反対の世論もあるが、賛成世論もある。安全に最新の注意を払って開催することも一つの対応である。外国の選手団は、宿舎と競技場を往復するだけという厳しい制限がついている。日本の感染状況も、ワクチン接種の進行で劇的に改善される可能性があるのだ。米国の例を見ても、ワクチン接種の抑制効果は大きい。科学の力を信じるほかない。

     

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