勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2021年06月

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    三峡ダム象徴の環境破壊

    依然として成長優先主義

    鉄鋼生産の削減が不可避

    免罪符を得られる道なし

     

    これまでの順風満帆な中国経済に、大きな二つの障害が立ちはだかってきた。一つは、周知の出生率急減に伴う人口減少の絶壁である。もう一つは、世界的な異常気象の原因とされる二酸化炭素の排出量抑制である。どちらも、中国へ大きな課題を背負わせている。

     

    間近に迫った人口減は、潜在経済成長率を引下げる。脱炭素は、即効性を求められるだけに、大量の排出源である製造業にメスを入れるほかない。これも、経済成長に大きなブレーキを掛ける。体力の弱ったところへ新たな負担が増えて、中国経済は十字架を背負うのだ。

     

    中国は、二酸化炭素の排出量で世界全体の28.4%(2018年)を占め断トツのワースト・ワンである。ワースト2位の米国14.7%(同)を1.9倍も上回っている。ちなみに、日本は3.2%(同)でワースト6位である。一部原発を止めている影響が出ている。

     


    この中国は、トランプ米政権時の対応と反対に、「脱炭素」の旗を掲げて積極性を見せてきた。だが、中国は積極的にならざるを得ない事情を抱えている。EU(欧州連合)が、「炭素国境措置」を2023年までに導入する方針であるからだ。炭素国境措置とは、環境政策が不十分な国や地域からの輸入に対し、生産時に排出した二酸化炭素(CO2)量に応じて、関税や排出枠の購入義務を課す措置である。

     

    中国は、この炭素国境措置に引っかかればイメージダウンもさることながら、肝心の輸出に致命的打撃を受ける。そうなるよりも先に、中国自らが「脱炭素」の旗を高く掲げて、「環境立国」のような振る舞いをした方がプラスと判断したはずだ。

     

    学校で勉強しないでサボっていた生徒が、先生の前で「これから一生懸命勉強します」とアピールしている構図である。炭素国境措置という罰が控えている以上、真面目にやらざるを得ないのだ。

     


    先進国の「脱炭素」では、化石燃料から自然エネルギーへ熱源転換すれば、大方の目標が達成される。中国の場合は、そういう簡単な問題で済まない点が悩みである。
    2019年の石炭火力発電の総発電に占める割合は51.95%である。2015年と比べて7.05%改善している。ただ、国内に膨大な石炭資源を抱え、多くの雇用吸収先である。火力発電を自然エネルギーに転換すれば、必ず失業問題を発生させるのである。習政権には、一筋縄でいく問題でない。

     

    三峡ダム象徴の環境破壊

    中国の環境対策は、「不徹底」の一語に尽きる。中国憲法では実に立派なことを書き込んでいるが、それは建前に過ぎなかった。

     

    1982年に制定された中華人民共和国憲法においては、環境保全に関する規定がいくつかある。第26条第1項には、麗麗しく「国家は生活環境および生態環境を保護、改善し、汚染およびその他の公害を防除する。」としている。国家による環境保全の責務を定めているのだ。現実には、こういう条文は棚上げされ、経済成長優先策が取られてきた。

     


    当局による企業への環境調査では、事前に立入調査の日時を教えてカムフラージュさせるという、考えられない癒着ぶりを見せてきた。工場汚水は川に流す。穴を掘って地中へ垂れ流す。こういう違法行為が2015年頃まで行なわれきた。大気汚染、土壌汚染、水質汚染は、経済成長優先の名の下に取り締まりが緩やかであった。

     

    中国の年々のGDPのうち、環境破壊分が2~3%含まれていると試算されている。本来であればそういう環境破壊分は環境対策費で補われなければならない。それが、前述の通り当局と企業の癒着でかなりの部分が賄賂として役人の懐に消えていった。中国は、国家としての体裁をなしていなかったのである。

     


    中国の環境破壊のモニュメントは、三峡ダムの建設である。中国最高指導部は、竣工式において当時の国家主席であった胡錦濤氏らが姿を見せない異常な光景であった。いかに問題の多いダム建設であるかを物語っている。

     

    三峡ダムは揚子江(長江)中流域の湖北省にある。1993年に着工、2009年に完成した。洪水抑制・電力供給・水運改善を主目的として建設されたが、着工に至るまで激しい反対論に見舞われた。中国共産党で、これだけ揉めた事件は他にない。1992年の全人代(国会)では、出席者2633名中、賛成1767名、反対177名、棄権664名、無投票25名により採択された。全会一致が基本である全人代において、これほどの反対・棄権が出るのは異例とされた。

     

    反対論は、環境破壊が理由である。必ず異常気象や流域での群発地震をもたらし、恒常的に地滑りが起きると警告していた。その後の経緯を見ると、その通りの事態に陥っている。三峡ダムを建設した目的の一つは、前述の通り揚子江の増水期に洪水を防ぐために貯水し、渇水期になると放水して下流の水不足を解決することであった。ところが、現実は逆のことが起こっている。

     


    三峡ダム下流の湖北省武漢市では昨年夏、大洪水に見舞われた。この冬は、揚子江の水が消えて川底の地肌が表われる事態を生んだ。三峡ダムの役割の一つである洪水と渇水の予防機能は、完全に失われたのである。今年5月には、早くも大洪水予想が起こっている。
    問題の根本は、中国当局の「自然改造」「人は必ず天(自然)に勝つ」という思い上がった思想が破綻したことである。環境破壊の報いだ。三峡ダムが大洪水で破壊されれば、中国の面目は丸潰れになろう。(つづく)

     

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    あじさいのたまご
       

    文政権によって不本意な辞任へ追込まれた前検察総長の尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏が、来年3月の大統領選立候補へ意思を固めた模様だ。最大野党「国民の力」所属議員と、相次いで会談を重ね、「政権交代の必要性」を訴えているという。

     

    世論調査によれば、ユン氏の支持率は1~2位と高位で安定している。これまで、一度も立候補の意思を見せないながら、国民の高い期待感を示している。

     

    『中央日報』(6月2日付)は、「尹錫悦前検事総長、文政権必ず交代すべき『政権延長すれば国の未来は不毛に』」と題する記事を掲載した。

     

    最近野党「国民の力」所属議員らと相次いで接触した尹錫悦(ユン・ソクヨル)前検事総長が、「文在寅(ムン・ジェイン)政権は必ず交代しなければならないというとても強力な意志を表明した」と議員らが伝えた。

     


    先月24日に尹前総長と通話した張済元(チャン・ジェウォン)議員は、「尹前総長が『文政権はとても常識に外れたことをたくさんしてきた。国政運営をこのようにしてはならず、政権を必ず交代しなければならない』という趣旨で話した」と伝えた。

     

    (1)「張議員は、「尹前総長は強い語調で話しており政権交代に対する強い意志を感じた。文政権が検察の権力不正捜査を妨げたことのためだけでなく、国政全般で非常識なことをたくさんしたため必ず交代すべきとみていた」と付け加えた。この日、尹前総長が張議員に電話をかけてきて、「これまでたくさん悩んできたが、身を捧げる。足りない部分も多いが、張議員に助けてほしい」としながら対話に至った」

     

    下線部分は、事実上の立候補の弁であろう。これまで、沈黙を守り経済や外交の勉強に時間を割いてきたユン氏は、政策全体の構想を固めたのであろう。

     

    (2)「先月26日に尹前総長と4時間にわたって会った鄭鎮碩(チョン・ジンソク)議員も、「尹前総長が文在寅政権に問題意識をとても深く持っていた。この政権が延長されれば国の将来が不毛のものになるという認識の下、必ず政権交代をしなければならないという使命感があった」と話した。

     

    ユン氏は、文政権の理不尽な退任騒動を自ら経験して、民主主義の危機を肌で知った。昨年1年間、ユン氏は法務部長官と対立の渦中に置かれた。文政権に犯罪捜査を妨害され、進歩派政権の醜さを体験している。選挙戦でこういう過程をぶちまければ、進歩派にとって大きな負担になろう。

     

    (3)「先月25日に尹前総長の提案により夕食会合をした尹喜淑(ユン・ヒスク)議員は、「対話をしてみたら尹前総長は市場経済に対する理解が相当に高かった」と伝えた。韓国開発研究院(KDI)教授出身の経済学博士である尹議員は、自身が考える望ましい経済政策を話したところ尹前総長もうなずいたとし、「尹前総長は『国民の力』に入ることを完全に常数と考えているようだった」と付け加えた」

     

    ユン氏は、最大野党「国民の力」に入党する意思を固めたという。ユン氏が、中道派の支持も得ていることから、一挙に党勢拡大の機会になるかも知れない。

     

    (4)「尹前総長をよく知る消息筋も、「尹前総長は法曹人であるのに経済をとてもよくわかっている」と伝えた。消息筋は「父親の尹起重(ユン・ギジュン)延世(ヨンセ)大学名誉教授が経済学者であるため、尹前総長は幼い時から経済学の書籍をたくさん読んできた。ミルトン・フリードマンのような通貨主義者的見解の下で自由市場を擁護するなど、経済哲学が確固としている」と話した」

     

    ユン氏の父親は、経済学者で延世大名誉教授である。ユン氏もフリードマン学説に通じているようで、大統領に当選すれば経済改革は確実である。韓国経済再生には大きな力を発揮するだろう。

     

    (5)「続けて、「尹前総長は『公正のための国の役割の必要性は自由主義経済学の大家であるアダム・スミスまで認めた』としながらスミスが作った『国富論』の該当の一節を引用までするほど。もし尹前総長が大統領選挙討論に出るならば経済はだれにも押されないだろう」と話した」

     

    フリードマン学説の淵源は、アダム・スミスである。韓国進歩派が、メチャクチャにした経済政策に一本筋が入るであろう。米韓関係もスムースに行くであろう。

     

    検察総長出身だけに、正義の追及では峻烈を極めるであろう。文大統領は退任後、決して枕を高くして寝られないはずだ。

     

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    民主主義国の同盟は、専制国家の侵略を防ぐ意義が課されている。米韓同盟の目的もここにある。先に、米韓首脳会談が開かれて、米韓は「一枚岩」になったような雰囲気を与えた。中国の海外進出への懸念意識を米韓が共有したと鮮明にしたからだ。

     

    だが、その後の韓国大統領府の発言から、韓国が米国へ譲歩したのは「便法」というイメージを与えている。韓国が、南北問題で米国の対北朝鮮姿勢の緩和を求めるために、あえて対中姿勢で米国寄りになったというニュアンスが感じられるのだ。ことの真相は、今後の韓国の行動によって見分けられる。

     

    韓国が、対中姿勢で米国寄りになったことへの批判がある。韓国は、ベトナム・シンガポール・マレーシア並みに米中の間で「泳いでいればいい」という提言だ。あえて「珍説」と呼びたいが、韓国を狙う中朝の思惑を完全に無視した議論である。

     


    『ハンギョレ新聞』(6月2日付)は、「韓米同盟、本当に問題はないのか」と題するコラムを掲載した。筆者は、朴露子(パク・ノジャ)ノルウェー、オスロ国立大学教授である

     

    (1)「30年前に保守側は、韓米同盟の最も重要な存立根拠として「北朝鮮の脅威」を挙げていた。北朝鮮の核とミサイルのために今もたびたび繰り返される主張だが、一方では、北朝鮮の名目国内総生産(推算約35兆3000億ウォン)が韓国の今年の国防予算(52兆8401億ウォン)の70%にしかならないということも良く知られていることだ。2021年現在、韓国の軍事力は世界6位と評価されるが、北朝鮮は28位だ。つまり、主に対米防衛用である核とミサイルを考慮しても、「対北朝鮮抑制力」という次元で現在のような米軍の韓国内駐留まで含む韓米同盟が絶対に必要だという主張は、いかんせん“無理な主張”に聞こえる」

     

    韓国の軍事力ランキングは世界6位、北朝鮮は28位と韓国よりもはるかに低い。だからと言って、核保有の北朝鮮の脅威が低減する訳でない。北朝鮮の軍事力が劣勢であるだけに、核使用のリスクが一層高まることも想定しなければならないであろう。北朝鮮独特の統治体制を考えれば、「やけっぱち」になって何をするか分からない危険性が存在する。

     


    (2)「多くの分析家たちは、かつて中国中心の朝貢体制に編入されていたが抜け出した国家や、中国系の人口が多い中国の周辺国家が、中国の「浮上」に備える次元で最近、軍事部門を含む対米協力に力を入れているとみている。一時は米国の侵略で荒廃したベトナムも、10年前からは米国との軍事協力を始めており、2016年以後は米国から武器を購入できるようになった」

     

    (3)「シンガポールも2015年から米国と拡大した軍事協力協定書を締結し、米軍偵察機がシンガポール軍事飛行場を利用したり、米国軍艦が停泊することなどを容認している。伝統的に米国でなく英国に依存してきたマレーシアも最近、米国の先端兵器を大量購入するなど、中国の浮上に備えて一種の“保険”に加入する姿を見せている。すなわち、韓国だけでなく領域内の一部の他の国家も、中華主義または中国の地域的ヘゲモニー復活の可能性を意識して、米国により積極的に接近する姿を見せている」

     

    シンガポール・マレーシアは、中国共産党と戦った経験はない。それゆえ、中国の勃興に警戒はするが、米国と同盟を結んで対中防衛を固める必要性がない。韓国とは、全く事情が異なる。

     


    (4)「ところが韓国とは違い、シンガポール、マレーシア、ベトナムは、米国と中国という二つの超強大国の“間”をはるかに効率的に航海し、両側から実益を取ることができる。東南アジアのこの3つの国は、米国との軍事関係を補強する一方、中国との軍事関係も維持している。排他的「同盟」である韓米関係の現実からは想像できない形態だ。私は現時点で韓米同盟の“解体”のようなことが現実的に可能だとは思っていない。韓国軍などの米軍との癒着程度も簡単に切ることができないくらいきわめて強固であり、世論調査のたびに90%以上の韓国人が韓米同盟支持を表明しているのも現実だ」

     

    中国にとっては、シンガポール、マレーシア、ベトナムの存在と韓国のそれでは異次元である。経済発展レベルが異なるからだ。中国が、韓国を引き寄せるメリットは、前記3ヶ国とは全く異なる。韓国には半導体という中国が喉から手の出るほどの技術がある。こういう戦略物資を抱える韓国が、米国でなく中国へ接近するメリットは計り知れない。

     


    (5)「この現実を直視して、韓米同盟の問題点も合わせて真剣に考慮してみる必要がある。米中間のあつれきに韓国まで不必要にまきこまれる可能性もある。また、現在のような韓米同盟構造の中で、南北間の信頼構築と相互軍縮、引いてはゆるい国家間の連合のような形態の統一の道がはたして開かれるのか、疑問を感じざるをえない。いくら韓米同盟強化論が主流だとしても、この同盟に対する問題意識を放棄してはならない」

     

    危機は、起きる前に対処することが必須である。米韓同盟は、中朝が危機突破策として38度線を越える行動を抑止する役割を持っている。中国が、シンガポール、マレーシア、ベトナムを自国の影響下に置くメリットはあるだろうか。その見返りに、何が得られるか。それを考えれば回答は自然に出るはずだ。つまり現状で、前記3ヶ国へ軍事行動を起す必要性がない。

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    日韓関係は、膠着状態にありテコでも動かない感じである。韓国が、次々と「反日テーマ」を探してきて騒ぎ回っているからだ。

     

    日本では、東京五輪の日本ゴルフ代表チームのユニフォームを公開し、「日が昇る国を表すイメージを使用した」と発表した。NHKが5月31日、「ゴルフの日本代表選手が着用するユニフォームが発表された。海や桜といった日本の自然をイメージした」と伝えたからだ。

     

    韓国メディア『中央日報』(6月1日付)は、さっそく「日本の軍国主義を象徴する旗の旭日旗は広がる太陽光を形象化したものだ」と難癖を付けている。これこそ、「内政干渉」「表現の自由圧迫」である。

     

    韓国は、日本に対して戦勝国気取りでいることが、日本の「嫌韓感情」を刺激するのだ。戦後76年も経ってまだ、過去を引きずって首でも取ったような大仰な報道することに日本は辟易する。

     


    『中央日報』(6月1日付)は、「『ゴールポスト論』再び取り出した日本、『問題は韓国』対米世論戦に出るか」と題する記事を掲載した。

     

    日本が歴史問題で韓国を狙い、再び「ゴールポスト論」を持ち出した。バイデン米政権に入って韓日米安保協力復元に対する期待は高いが、3角構図の一つの軸である韓日関係は構造的葛藤が固定化局面に入ったという懸念が出ている。


    (1)「茂木敏充外相は先月31日、参議院決算委員会で慰安婦問題に関連して「韓国によって、せっかくのゴールポストが常に動かされる状況がある」と明らかにした。「慰安婦問題を含めた歴史問題について、正確な事実関係や日本政府の考えについて、さまざまな形で国際社会に対して説明し、発信してきた。引き続き確実に対応していく」としながらだ。日本は過去にもこのような論理を対米説得のために使っていた。朴槿恵(パク・クネ)政府に入り、韓国が慰安婦問題を解決しなければ日本と首脳会談をしないと強硬な立場を見せて、日本はワシントンで本格的な歴史外交戦に突入した」

     

    日韓問題の根源は、韓国の裁判所が国際法違反の判決を出していることにある。すでに日韓両国で解決済みの問題に、司法が関与するという「違法判決」を出したのである。韓国は、「司法自制の原則」(裁判所は条約や協定に関与できない)と「主権免除論」(国家は外国の裁判権から除外される)に反しているのだ。こういう、国際的な法的常識論が、韓国には通用しないのである。



    (2)「核心な点はゴールポスト論だったが、日本がいくら謝罪しても韓国がたびたび基準を変えて充分ではないと主張するため歴史問題が終わらないという論理だった。韓国がたびたびゴールポストを動かすため、日本としてはゴールインするのが不可能だという主張である。実際、これは当時オバマ政府の人々を説得するのに功を奏した。米国務省の官僚が公然と、過去の戦争犯罪に関する日本の責任とは別に、韓国も今後はゴールポストを動かすことは止めなければならないという意見を出したりした。2015年12月28日の慰安婦合意に「最終的解決」という表現が入ったのも、日米がこのような認識を共有したからこそ可能だった」

     

    米国の立場は、国際法に依拠したものである。韓国は、日韓で条約や協定で解決済みの問題をぶり返してくる。これぞまさに、ゴールポストの移動である。

     

    (3)「日本が再びゴールポスト論を持ち出したのも、これと無関係ではなさそうだ。特にオバマ政府の多くはバイデン政府でも再起用された。2015年2月、「韓中は『いわゆる慰安婦(』問題で日本と口論してきた。政治指導者が過去の敵を非難することで安っぽい拍手を得るのは簡単だ。しかし、このような挑発が麻痺を誘発する」と話し、韓国内で大きな批判を受けたウェンディ・シャーマン当時国務省政務次官は、今では国務省副長官だ」

    バイデン政権内は、日韓関係の悪化責任が韓国にあるという立場で共通している。国際法の知識があれば、そういう結論になるであろう。

     

    (4)「このような状況を考慮すると、結局韓日関係の悪化の原因は韓国にあるという点を浮き彫りにすることが日本の狙いとみられる。韓日米安保協力に集中するバイデン政府に対しても「問題を起こしたのは韓国だから、解決策も韓国が出さなければならない」という立場を貫徹しようしているとも考えられる。文在寅(ムン・ジェイン)政府も発足直後、慰安婦合意の欠点が大きいとし、事実上これを無力化するなど口実を与えた側面がある」

     

    米国は、日韓関係に関与する意思はない。日韓慰安婦合意をめぐって黒子になり推進したのが、当時のバイデン副大統領である。その慰安婦合意を破棄したのは文大統領だ。文氏は、日韓関係悪化の張本人である。日韓問題について、沈黙せざるを得ない立場である。

     

    (5)「ソウル大学国際大学院の朴チョル熙(パク・チョルヒ)教授は、「突然、日本外相がゴールポストを再び取り出したのは、国内政治的要因に加えて、これまで韓日米協力の弱化および韓日関係の悪化の責任を韓国に転嫁しようとする意図など、複合的要因があるようにみえる」と指摘した。続いて、「日本の主張通り歴史問題で韓国がゴールポストを動かしてきたとすれば、事実、日本は『センターライン』を動かしてきた。日本も歴史問題に対して謝罪した立場を否定するようなわい曲された見解をたびたび見せてはならず、韓国も日本の誠意ある謝罪はそのまま受け入れるなど、バランス感覚のある態度が両国共に必要だ」と強調した」

     

    このパラグラフの朴チョル熙教授のコメントは、熊さん八さんレベルである。ソウル大教授にふさわし法的コメントが欲しかった。「司法自制の原則」や「主権免除論」に関する見解を披瀝すべきであろう。だが、そういう論理的話になると、韓国は一言もないはずである。

     

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    韓国、「悪夢」文政権残り1年、政権支持メディアも力不足認める「空想政治」





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    文大統領は、5月21日に行われた米韓首脳会談で従来、見せていた言葉と全く違う「米国寄り」で内外を驚かせた。文氏が、これまでの「親中国」から、「親米国」へと変わったのでないかという憶測も流れている。事実は、文氏しか知らないのだが、これからの時間によって、それを証明されるだろう。

     

    韓国にはこれまで、味方になる国がなかったと指摘されている。それは、韓国の民族性がもたらした身勝手さで、外国から嫌われたもの。言行不一致が、親友をつくらないという市井の原理が、韓国という国家にも当てはまるだけの話だ。文大統領は今回、バイデン大統領と真の友人になれるだろうか。

     


    『中央日報』(6月1日付)は、「文大統領の変身、豹変か 革面か」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のイェ・ヨンジュン論説委員である。

     

    (1)「あまり知られていないが、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の語録の中には、中国の習近平国家主席を「民主的」指導者と称賛した発言がある。2017年12月、問題の「高い山、小さい国」発言の前、日韓中首脳会談で「習主席が民主的リーダーシップを提示した」と述べた。つい10日前の韓米首脳会談の共同声明を見ると、文大統領が当時そのような発言を本当にした人なのだろうかと感じる」

     

    文大統領は、習氏と初めて会談したとき、中国を大国、韓国は小国と発言して物議を醸した。「臣・文在寅」というイメージであった。その文氏が、米韓首脳会談において「米国寄り」へ鞍替えしてしまったのだ。

     

    (2)「米韓共同声明は、中国が嫌がる言葉で埋まっている。「韓米は規範に基づく国際秩序を阻害、不安定化または脅かすあらゆる行為に反対する」とした。誰を指しているのかは明白な表現だ。予想を越える文在寅大統領の変身にさまざまな声が出ている。世間では、シンガポール・板門店(パンムンジョム)宣言を声明に入れることに執着した結果、米国が望む表現を大幅に受け入れるバーター(交換)をしたという分析がもっともらしく出ている。大規模な外交交渉に関与した元老外交官の中にもそのように見る人が少なくない。実際、外交交渉の属性はお互い望むものを交換するというものだ」

     

    米韓共同声明の発表を見て、多くの人が驚いたはず。すっかり「親中」から脱して「親米」になったからだ。文氏の本心か、北朝鮮問題で米国の妥協を引き出すための「取引」であったのか。ベテラン外交官は、取引説に立っているという。

     

    (3)「そのようなバーターを受け入れた背景には、過去4年間の外交経験の蓄積を通じて現実的な方向に変わった文在寅政権の現実認識があったのだろう。世の中は自分を中心に回らないという悟りが陰にも陽にも影響を及ぼしたということだ。盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権も任期末に向けて同じ傾向を見せた。おそらく韓米の共同声明はこうした複数の要因が複合的に作用した結果とみられる。とにかく、大韓民国が立つべき座標をさらに明確に表明したのが今回の会談の最大の成果だ」

     

    バーターであったとすれば、それも外交交渉で行なわれる「妥協の産物」と見てよいだろう。ただし、妥協でもそれを誠実に履行する義務がある。後日になって、あれこれ言い訳をして取り繕っては外交儀礼を欠くのだ。

     

    (4)「ところが会談が終わるやいなや、韓国政府当局者がその貴重な成果を自ら低く評価しているようだ。青瓦台(チョンワデ、韓国大統領府)と外交部が前に出す成果は、「韓半島平和プロセスの再稼働」に集中している。冷静になる必要がある。バイデン大統領が候補時代からシンガポール会談を批判してきたが、それは形態についてだ」

     

    韓国は案の上、言い訳を始めたのである。南北問題の「成果」を誇張している。

     


    (5)「北朝鮮の核放棄と米国の体制保障、米朝関係正常化を盛り込んだシンガポール宣言自体に反対する理由はない。板門店宣言も同じだ。非核化のカギは目標に向かっていかなる経路をたどるかの方法論にある。この部分で今回の会談は進展した結果を出すことができなかった。米国は北朝鮮制裁の忠実な履行を再確認し、言葉だけでなく誠意ある行動を交渉の前提に掲げた。要するに、米国は北朝鮮の核問題に関する限り従来の立場と特に変わっていないということだ。にもかかわらずこれを韓国政府が成し遂げた成果のように包装するのは我田引水だ」

     

    韓国大統領府によれば、米国の北朝鮮政策はなにも変わっていないが、大きな成果が上がったように宣伝している。中国問題については、事前に中国と共同声明の内容について打合せをしていた事実が知られている。外交部長官が、「中国と密接に連絡を取り合っている」と、喋ってしまって、この噂を裏付けることになった。

     

    (6)「もう一度繰り返すが、今回の会談の本当の成果は、板門店宣言を共同声明に含めたところにあるのではない。鄭義溶(チョン・ウィヨン)外交部長官はなおさらだ。台湾海峡の安定を取り上げたのは、韓半島の平和安定と同じく原則的な表現だと述べたのである。誰がこの言葉に同意するだろうか。共同声明のインクも乾かないうちに出てきたこうした言葉は自分たちの信頼を落とすだけだ」

     

    中国外交部は、対中問題について原則論を強調して、具体論は何もなかったように否定している。米国の心証を悪くしているだろう。

     

    (7)「韓国で豹変という言葉は否定的なニュアンスで使われるが、原典を見るとそうではない。『周易』の革卦に「大人虎変 君子豹変 小人革面」とある。虎が毛色を変えるように大人は世の中を革新し、豹柄が秋に鮮明になるように君子は不断に新しくなるべきだ。小人は、顔だけを変えて本心は変えないという意味だ。これまでの状況を振り返ると、韓米首脳の共同声明は虎変の結果物ではないはずだ。なら、文大統領の変身は、豹変または革面のうちの一つだ。真実は何か、私はそれが知りたい」

    韓国が米国と交わした約束は、本来の意味である君子の「豹変」(革新)か、それとも小人の「革面」(本心を変えない)か、そのどちらかと見られている。「君子豹変」は、君子だからこそ根本的な革新が可能とされている。文氏が「小人革面」であれば、米韓同盟に隙間風どころか、崩壊への第一歩となろう。韓国の運命は、瀬戸際にある。

     

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    韓国、「痛烈」バイデン氏、米の反対側へ賭けることは良くない賭け 「二股外交絶望」

    2021-06-01

    韓国、「自己反省」朝鮮以来、韓国に真の友好国が現れなかったのは「なぜか?」

     

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