勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2021年06月

    あじさいのたまご
       

    中国製ワクチンは、有効性について詳細データを発表されない「疑惑のワクチン」である。それにも関わらず、WHO(世界保健機関)は中国製の使用を承認した。だが、世界中から聞えてくる中国製ワクチンの評判は、気の毒なほど悪いのだ。この調子では、中国の「ワクチン外交」が、怨嗟の的になりかねない。

     

    『AFP』(6月26日付)は、「医師14人、コロナワクチン接種後に死亡 中国製の効果に疑念も インドネシア」と題する記事を掲載した。

     

    インドネシアで、少なくとも14人の医師が、規定回数の新型コロナウイルスのワクチン接種を受けた後に死亡していたことが分かった。インドネシア医師会(IDI)が25日、発表した。インドネシアではワクチン接種を受けた医療従事者が重症化するケースが相次いでいる。

     


    (1)「インドネシアで新型コロナウイルスによって死亡した医療従事者は累計で1000人近くに上っている。インドネシア医師会は、新型コロナウイルスに感染して死亡した医師401人のうち14人が規定回数のワクチン接種を受けていたと明らかにした。同医師会の新型コロナ対策責任者、モハンマド・アディブ・クマイディ氏は記者団に対し、14人のほかにもコロナワクチンの接種を受けた後に死亡した医師がいないか調べていると述べた」

     

    インドネシア医師会は、新型コロナウイルスに感染して死亡した医師401人のうち、14人が規定回数のワクチン接種を受けていた。まだ、調査中であるのでさらに死亡医師が増えるかも知れない。一般には、米国製ワクチンでは、接種後の感染があっても軽度で済むとされる。中国製ワクチンには、命を落とすリスクがあるとなれば、「殺人ワクチン」になる。

     

    (2)「人口2億7000万人のインドネシアでは感染者が急増し、21日には累計200万人を超えた。インドネシアは、主に中国製薬大手シノバック・バイオテック製のワクチンを使用して、1億8000万人以上の予防接種を来年の早い時期までに終える方針だが、接種を受けた医療従事者に重症者が増えていることで、その有効性に疑念が生じている」

     

    インドネシアは、主に中国製薬大手シノバック製ワクチンを接種しているという。このワクチンが「毒ワクチン」になっている。一方で、「毒にも薬にもならない中国製ワクチン」という評価も出ている。

     


    『朝鮮日報』(6月26日付)は、「
    中国製ワクチンは効果も副作用もない『水ワクチン』?」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のキム・ミンチョル論説委員である。

     

    (3)「南米チリはワクチン接種のスピードが速い国の一つだ。チリの人口1900万人のうち63.3%が1回以上ワクチン接種を受け、接種を全て終えた割合も50.0%に達している。しかし、チリでのコロナ感染者数は減少していない。最近も1日5000人以上の感染が確認されており、今月8日には7294人もの感染者が出た。チリは中国製のシノバックを主に使用している」

     

    チリは、中国製のシノバックを主に接種している。人口の63.3%が、1回以上のワクチン接種を済ませている。それにも関わらず、感染者は激増しているのだ。

     

    (4)「チリだけではない。モンゴルでも全人口の58.7%が1回以上、さらに52.1%が接種を全て終えたが、人口335万人の国で1日2000人以上の感染者が出ている。人口100万人当たりの感染者数を計算すると世界第2位となる数だ。モンゴルでも中国製ワクチンを使用している。米国の『ニューヨーク・タイムズ』紙は「中国製ワクチンに依存してきたモンゴル、チリ、セイシェル、バーレーンなど90以上の国ではワクチン接種率が最高で70%に達しているが、今もコロナ感染者数は急増している」と報じた。つい先日には、インドネシアでシノバックのワクチン接種を受けた医療関係者350人以上が一気に感染したことも確認された」

     

    世界90ヶ国以上で、ワクチン接種率が最高で70%にも達している。だが、コロナ感染者数は急増している。この中には、中国の「ワクチン外交」に関係した国が多く、中国製ワクチが効かなかった証拠と見られている。

     


    (5)「香港大学の研究チームがシノバックとファイザーの接種を受けた1000人を対象に抗体検査を行った。研究チームは具体的な数値は公表せず、ファイザーの接種を受けた人の方がシノバックよりも抗体の数がかなり多かったと発表した。さらに「シノバックの接種を受けた人はブースター・ショット(ワクチンの効果を高めるために行う追加の接種:3回目の接種)を受ける必要がありそうだ」との見方も示した。シノバックについてはその効果が信頼できないことを遠回しに指摘したのだ。実際にチリの保健当局は「9月には3回目の接種が必要」との方針をすでに発表している」

     

    香港大学が、シノバックとファイザーの接種を受けた1000人を対象に抗体検査を行った。それによると、ファイザー(米国)は抗体ができていたが、シノバック(中国)は少なかったようである。シノバックワクチンは、3回目の接種が望ましいと勧めている。シノバックの有効性が劣るという証明である。

     

     

     

     

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    中国政府が、スパイの基地として設置してきた孔子学院が、オランダやカナダから閉鎖を迫られている。「価値観の相違」を理由にして受入れを拒否されているからだ。米国バイデン大統領は、世界に向けて「民主主義の価値を守る闘い」を宣言しており、民主主義国は中国の人権弾圧政策に違和感と警戒感を示している。

     

    『大紀元』(6月26日付)は、「オランダ教育相、孔子学院との提携停止呼びかけ 複数大学が中国軍大学にも協力」と題する記事を掲載した。

     

    オランダのイングリット・ファン=エンゲルスホーフェン教育・文化・科学相はこのほど、中国の孔子学院(CI)が学問の自由を侵しているとし、オランダの大学に同学院との提携をやめるべきだと呼びかけた。16日の議会で孔子学院に関する質問に書面でこう回答した。オランダの独立調査報道メディア「Follow the Money」は57日、中国共産党との提携は経済的損失をもたらすだけでなく、学問の自由も制限を受けていると報じた。その後、同国の政党「キリスト教民主アピール」が議会で孔子学院について問題提起した。

     


    (1)「現在、オランダにある孔子学院は2校だ。それぞれフローニンゲン大学とザウト応用科学大学と提携している。オランダ最古の高等教育機関、ライデン大学は、2019年に契約満了をもって、同大の孔子学院を閉鎖した。オランダ放送協会(NOS)は5月、フローニンゲン大学の中国人教授は孔子学院との契約書で、「中国のイメージを損なう言動をしない」と約束したことを報じた。また、同教授の報酬の一部は中国政府教育部(文部科学省に相当)傘下の国家漢語教育指導弁公室(国家漢弁)から支払われている事が分かった。国家漢弁は孔子学院の本部でもある」。

     

    現在、オランダには孔子学院が2つの大学に附設されている。下線のように、中国に反対することを教えないという契約が交わされている。つまり、中国の政治的宣伝機関である。

     

    (2)「その後、フローニンゲン大学は、孔子学院との提携継続に反対する署名活動を開始した。これを受け、同国のエンゲルスホーフェン教育相は議会の質問に対して、「フローニンゲン大学は国家漢弁から資金提供を受けている中国語と文化の講義を中止する予定だ」と書面で答弁した。同大学も「国家漢弁」との契約を更新しないと表明した。契約は2016年からの5年契約となっている」

     

    フローニンゲン大学は、2021年の契約満了をもって閉鎖する。

     


    (3)「表向きで中国語教育の普及を目的とする孔子学院は、米連邦捜査局(FBI)から「学術活動を破壊し、学問の自由を損なっている」と指摘され、捜査の対象にもなっていた。中国共産党政権は孔子学院を巨大経済圏構想「一帯一路」の教育アクションの重要部分に位置付けている」

     

    孔子学院は、一帯一路プロジェクトと関連づけられており、教育宣伝機関としての「宣撫工作」の任が与えられている。日本にも二桁の孔子学院が設置されている。日本は、この孔子学院から被害を受けていないのかどうか。気懸りである。

     

    (4)「オランダでは孔子学院以外にも、中国の大学との学術交流が問題となっている。3月26日、オランダのデルフト工科大学(TUD)は同校が中国軍とつながりのある中国の4つの大学と協力しているとのレポートを発表した。デルフト工科大学は、オランダで最も古く、最大の総合工科大学である。設立以来3人のノーベル賞受賞者を輩出しているオランダを代表する研究型工科大学であり、多くの高等機関において高い評価を得ている世界トップレベルの名門校の1つである。航空宇宙工学科をはじめとする9つの学科で構成されており、1万5000人を超える学生と、2700人以上の研究者が在籍している。

     

    中国軍は、オランダで最も古く最大の総合工科大学であるデルフト工科大学へ食込んでいる。ここから、貴重な研究成果を窃取する基礎をつくっていたのだ。

     

    (5)「同大学の科学者はしばしば中国の研究者と協力して、中国軍に利益をもたらす技術の研究行っている。デルフト工科大学は、中国の「国防七大学」に数えられる北京航空航天大学、北京理工大学、ハルビン工業大学、西北工業大学と共同研究を行っている。デルフト工科大学のレポートによれば、過去15年間、同大学はこの4大学と学生交換、研究協力などの協定を締結している。特にデルフト工科大学の航空宇宙工学部もこの4大学と協定を締結しているという」

     

    豪シンクタンク「オーストラリア戦略政策研究所」は報告書で、中国の「国防七大学」は民間大学ではあるが、中国軍と密接な関係があり、その研究予算の少なくとも半分は、ミサイルや顔認識技術、軍用機や衛星の開発などの軍事研究に費やされていると指摘した。オランダは、こういう軍事目的に研究を中心とする中国の国防七大学の研究員を受入れていた。

     


    『大紀元』(6月26日付)は、「カナダの地方政府が孔子学院の閉鎖を決定、中国総領事が『ロブスター輸入禁止』で脅迫」と題する記事を掲載した。

     

    カナダのニューブランズウィック州のドミニク・カーディ教育長官は21日、同国議会の公聴会に出席し、同州が孔子学院の閉鎖を決定した後、中国総領事館から経済的な脅迫を受けたと証言した。

     

    (6)「カーディ教育長官は、下院のカナダ・中国関係に関する特別委員会(CACN)の公聴会で、孔子学院は中国共産党の関連組織で、カナダの教育界にそのイデオロギーを浸透させようとしていると批判した。このため、ニューブランズウィック州は2022年の契約終了とともに、孔子学院との協力関係を停止することを決定したとした。

     

    ニューブランズウィック州は、2022年末の契約を持って孔子学院との関係を終了する。

     

    (7)「在モントリオール中国総領事館の総領事がカーディ長官のオフィスを訪ね、直に交渉したという。「総領事は、孔子学院をめぐって私に圧力をかけようとしているとわかった。経済的な報復も含めた圧力だ。しかも、彼は、この件を学校教育の問題ではなく、両国の外交問題にまで発展させたい狙いだった」という。さらに、孔子学院を閉鎖することは「中国内政への干渉に関わる問題だ」と主張した。その結果、カナダ産ロブスターが中国で販売できなくなることも含めて、様々な影響が出ると話した」


    中国総領事は、孔子学院の閉鎖について「内政干渉」という口実を使って、カーディ長官へ圧力を掛けた。具体的には、カナダ産ロブスター輸入が困難になるという脅しである。こういう「戦狼外交」を連発して、相手国を威嚇するのだ。いかにも中国的である。

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    韓国が、日韓国交正常化以降に日本を相手に貿易黒字を記録したことは一度もない。韓国は半導体など主要産業で急成長を遂げたものの、これに必要な装置・素材・部品分野は日本に依存している関係が続いている。韓国の対日貿易収支が万年赤字であるのは、日本の産業構造にとうてい敵わないことを示している。

     

    『日本経済新聞 電子版』(6月25日付)は、「韓国、半導体装置で『脱日本』遠く 輸出管理厳格化2年」と題する記事を掲載した。

     

    韓国の対日貿易赤字が再び拡大している。半導体製造装置などの輸入増で、15月の貿易赤字は前年同期比34%増えた。日本による対韓輸出管理の厳格化から間もなく2年。韓国政府が日本への依存度の高い品目で国産化を推進する「脱日本」は道半ばだ。

     


    (1)「韓国貿易協会によると、15月の韓国の対日貿易赤字は前年同期比34%増の100億ドル(約1兆1100億円)だった。前年同月比の赤字幅拡大は13カ月連続となる。その要因は、最大品目である半導体製造装置の輸入増だ。15月の輸入額は29億ドルで前年同期比55%増えた。半導体材料を含む「精密化学原料」も12%増だった。世界的な半導体不足も背景にサムスン電子などが増産投資を表明し、日本の製造装置や素材を買い入れているためだ。これらは韓国政府が国産化を特に注力してきた分野だ」

     

    韓国が、半導体産業で生きて行く限り日本から離れられない宿命である。半導体の装置・素地・部品の全てを日本からの輸入に依存している結果だ。元々、日本のお家芸であった半導体技術が、韓国に盗まれその上、日米貿易摩擦で日本が苦汁を飲まされ、急激な円高によって苦しんでいる間に、韓国が日本の「虎の子」を育てていた経緯である。それゆえ、元をただせば日本が半導体の盟主である。

     


    (2)「韓国は2019年7月の日本の輸出管理厳格化措置に対抗し、素材と部品、装置の産業育成を打ち出した。補助金や税制優遇などで19年から3年間で5兆7000億ウォン(約5600億円)の予算を充てる。文在寅(ムン・ジェイン)大統領も「危機を機会として、先端素材・部品・装備の製造強国に跳躍する」と鼓舞してきた。実際に成果もある。半導体の回路形成工程に使われるフッ化水素については韓国製の採用が広がり、足元の輸入額は18年と比べて1~2割の水準で推移する」

     

    韓国が、部分的に国産化に成功しても、それはほんの一部であろう。これによって、日本の半導体関連産業がよろめくことはない。半導体産業の特色は、装置・部品・素材が一体化しており、人間の肌のように微妙な関係という。こういう関係を知悉している日本が、昨日、今日に国産化を始めた韓国に負けるはずがない。もっとも過信は戒めなければならないが、世界の半導体産業を相手にする日本が、未経験な韓国に揺さぶられることはなさそうだ。

     


    (3)「消費に波及した「不買運動」によって、足元のビール輸入額は18年の1割程度の水準だ。韓国輸入自動車協会によると、日本車販売も半減したままだ。それでも対日貿易赤字が拡大するのは、日本の先端装置や素材が競争力を保つためだ。文政権は一部で「国産化実現」を強調するものの、対日貿易赤字の拡大は脱日本戦略の後退を示している。韓国半導体業界からは「日本製がなければ戦えない」との声も漏れる。サムスンは台湾積体電路製造(TSMC)などとの最先端競争を勝ち抜くために日系サプライヤーとの関係強化を求めているのが実態だ」

     

    韓国は、感情論で日本へ立ち向かっているが、韓国だけの市場を相手にした開発は、コスト的に立ちゆかぬものだ。なぜこれまで、国産化を見送ってきたか。それは、コスト・品質の面で日本と競争できなかったからだ。

     

    (4)「一方で日本企業側も韓国市場を重視する。東京応化工業は韓国のレジスト工場の生産能力を2倍に高めた。ダイキン工業も半導体製造用ガスの新工場を韓国企業との合弁で設立する方針を示す。日韓企業の相互依存関係は貿易統計を見る限り続いている。ただ、韓国企業の中には政府の意向を受けて国産品を採用する動きもある。米中対立を背景にサプライチェーンの寸断が企業活動に影を落とすなかで、国際分業の成功例だった日韓半導体産業もまた政治に翻弄されている」

     

    日韓は、半導体で国際分業のモデルとされてきた。それが、歴史問題をきっかけに日本から「政経不分離」原則を投げつけられたものの、実態は何ら変わっていない。つまり、韓国の必要な装置・部品・素材の供給は100%行なわれている。韓国の慢性的な対日貿易赤字は、韓国が日本の技術「属国」である証拠だ。

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    韓国は、半導体で世界有数の地位を占めているが、産業構造はいたって後進国型である。自営業者比率が世界8位と断然高いことに現れている。就業者全体に占める自営業者の比率が高いのだ。これは、雇用構造が近代化されていない証拠である。まだまだ、韓国が自称「G8」国と威張るには早すぎるようである。

     

    OECD調査による自営業者比率(2019年)は、次のような状況である。

     

    1)コロンビア  50.13%

    2)ブラジル   32.49%

    3)メキシコ   31.95%

    4)ギリシャ   31.90%

    5)トルコ    31.54%

    6)チリ     27.21%

    7)コスタリカ  26.64%

    8)韓国     24.64%

    9)イタリア   22.74%

    10)ポーランド 20.01%

     


    韓国は、手工業で特色を持つイタリアより、1.9ポイント高い比率である。韓国には、イタリアのような特色はなく、漫然と自営業者が割拠している状況である。この状況で、最低賃金が生産性を大幅に上回って設定されたので、雇用を破壊する結果になった。

     

    『中央日報』(6月25日付)は、「猛スピードで進んだ最低賃金に倒れた『社長の国』」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のチュ・ジョンワン経済エディターである。

     

    大韓民国は「社長」の国だ。良く言えば社長だが、悪く言えばその日その日の暮らしも大変な零細自営業者が大部分である。経済協力開発機構(OECD)によると、韓国の自営業者の比率は24.6%(2019年基準)に達する。就業者4人に1人が自営業者ということだ。米国(6.1%)や日本(10%)はもちろん、OECDの平均(16.8%)をはるかに上回る。



    (1)「商売が順調な人もいなくはないが、廃業寸前の崖っ縁に立たされた人々も多い。最近ではソウル明洞(ミョンドン)・東大門(トンデムン)・梨泰院(イテウォン)などの中心商圏にも空き店舗が続出するほど深刻な状況だ。毎年80万人以上の個人事業者が国税庁に廃業届を出す。廃業までしなくても、毎日ため息だけ吐きながらなんとか持ちこたえているという人も少なくないだろう。韓国銀行は最近の報告書で「雇用員のいる自営業者に集中した雇用衝撃は通貨危機当時とほぼ同じ様子」と指摘した。スタッフを雇って商売をしている自営業者の困難が1990年代後半の国際通貨基金(IMF)の救済金融を受けた時期とほぼ同じ水準ということだ

     

    日本でも戦後に、街の八百屋や魚屋が一斉に「社長」と呼ばれるようになった。個人企業から法人化すれば、税金が軽くなるというメリットを狙ったものだ。韓国でもにわか「社長」が増えたのである。その社長に逆風が吹いている。最低賃金の大幅引上げで、従業員を雇用できず、解雇しているからだ。毎年80万人以上の個人事業者が、国税庁へ廃業届を出す時代になっている。

     

    現在の苦境は、韓国が通貨危機を起した1997年当時に匹敵しているという。ただ事ではない。

     


    (2)「文在寅(ムン・ジェイン)政府の所得主導成長は自営業者には恐ろしい悪夢だった。週52時間勤務制は夕方の商売が中心だった一部業種に「夕方に客のない生活」をもたらした。最低賃金の急激な引き上げは自営業者だけでなくアルバイトスタッフにも衝撃だった。相当数の自営業者は人件費の負担によってスタッフを解雇したり、週休手当てのない週15時間未満のアルバイトに切り替えた。フランチャイズ加盟店の中には人を使う代わりに自動化機器を導入したところも多かった。1980年代に学生運動の先頭に立った刺身料理店の主人ハム・ウンギョン氏は「所得主導成長を語った人々は全員詐欺師」と話したことは自営業者の大多数の気持ちを代弁した、胸のすくような発言だった」

     

    下線のように、最低賃金の大幅引上げが、韓国の雇用を破壊した。問題は、文政権にそのような意識がないことだ。生産性向上と見合った最賃引き上がルールであるが、それを完全に無視して、大手企業の労組要求に盲従したのである。

     


    (3)「現政権が発足した2017年、1時間あたり6470ウォン(約635円)だった最低賃金は今年8720ウォンに跳ね上がった。過去4年間の最低賃金引上率は35%だ。それでも昨年(2.9%)と今年(1.5%)は最低賃金引上率が少し緩やかになり、自営業者がようやく少し息をつくことができた。もっと大きな問題は来年の最低賃金だ。24日に公開された労働界と経営界の最低賃金要求案は天地の差ほど大きいように思われる」

     

    2017年、1時間あたり6470ウォン(約635円)だった最低賃金は今年8720ウォン(約856円)に跳ね上がった。この間に34.8%の増加である。どんなに頑張る自営業でも4年間に3割強もの生産性向上を実現するのは不可能であろう。文政権は、こういう現実を見ようとしなかった。


    (4)「労働界は、現政権任期最後の年である今回こそ1時間あたり1万ウォンを超えるようにしようという意気込みだ。青瓦台(チョンワデ、大統領府)の雰囲気も普通ではない。文大統領は最近、国際労働機関(ILO)総会で「韓国政府は長時間労働時間を改善し、最低賃金を果敢に引き上げ、所得主導成長を含む包容的成長を追求した」と自慢した。しばらく水面下で静かだった所得主導成長というみじめな失敗作が蘇ってくるのではないか心配だ」

     

    大手企業労組は、来年の最賃を文政権公約の「1時間1万ウォン」に近づけるべく、あの手この手の闘争を試みるであろう。最賃は、韓国経済を破綻に追込む時限爆弾である。文政権は、どうしようもない「経済音痴」である。

     

     

     

     


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    ミャンマーは、中国にとって陸路でインド洋へ出られる地政学的に重要な位置を占める。2月のミャンマー国軍のクーデター前に、国軍総司令官が中国を訪問していたことが分かっているので、両国は何らかの打合せをしたのでないかと疑惑の目で見られてきた。それを、裏付けるように、中国は早くもミャンマーとの貿易を復活させている。

     

    一方、ミャンマー国民による中国への冷たい眼差しが存在する。ミャンマーは次第に内戦的な様子も見せていることから、中国のミャンマー接近は、大きなリスクを抱えることになった。こうして、ミャンマー国内では行政施設や国軍協力者を狙った爆弾事件や襲撃が増えている。米調査団体の集計によると5月は297件の爆発があり、4月の4倍になっている。国軍が民主派への弾圧を続けるなか、市民の抵抗が一部で先鋭化している結果だ。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(6月25日付)は、「中国、国軍支配のミャンマーと通商・外交強化へ」と題する記事を掲載した。

     

    2月のクーデターで全権を掌握したミャンマー国軍が国内の激しい抗議活動や国際的な批判にさらされる中で、中国とミャンマーが通商・外交関係の正常化に動き始めた。民主化指導者アウン・サン・スー・チー氏が率いた国民民主連盟(NLD)政権が倒されて以降、中国系企業の資産を狙った激しい攻撃が相次いでいるが、中国はミャンマー国軍指導部との関係強化を図っている。

     

    (1)「米シンクタンク、スティムソン・センターでミャンマー・中国関係を専門とするユン・スン氏は、中国がミャンマーを「抜本的に評価」した結果、同国は再び長期的な軍事政権時代に入るとの結論に達したと指摘した。中国は今回の軍事クーデターが成功し、今後も軍政が続くと判断した」と同氏は述べた。両国の外交関係および経済活動の再開により、ミャンマー経済は再びこれまで通りの中国依存に戻る見込みだ。ミャンマーはこれまでも国際的な制裁を受け、外国企業が投資案件の中止・棚上げを表明した際には、その影響を和らげるための盾として中国を利用してきた」

     


    中国は、ミャンマーが再び長期の軍事政権時代へ逆戻りするとの判断を固めたという。この結果、ミャンマーとの関係復活に本腰を入れるのであろう。これによって、ミャンマー国民の反発をうけることは決定的である。

     

    (2)「ミャンマーの人権団体、政治犯支援協会によると、クーデター以降、軍の武力弾圧で875人が犠牲になり、6242人が拘束された。経済活動や公共サービスはクーデター直後から3カ月間に相次いだ大規模な抗議活動により深刻な打撃を受けたまま、ほとんど復旧していない。中国は、クーデター前から軍事政権を支援する構えだったとの疑惑が反クーデター派の間に広がっていたが、中国との貿易が再開されればその疑念は一層深まりそうだ」

     

    国軍司令官は、クーデター前に訪中している。中国側へ事情説明して支援を求める打合せをしたと疑われている。今回の貿易再開は、こうした疑惑を裏付けるようなものだ。

     

    (3)「中国の通関統計によると、ミャンマーの2021年15月の対中輸出額は累計33億8000万ドル(約3750億円)に達した。これは20年の24億3000万ドルだけでなく、新型コロナウイルスが世界的に流行する前だった19年の25億6000万ドルも上回っている。だが、中国のミャンマーへの輸出はそこまで回復していない。15月のモノの輸出額は42億8000万ドルと、直近2年間の45億6000万ドル、47億9000万ドルを下回った」

     

    ミャンマーの対中輸出は、2021年15月で累計33億8000万ドルに達した。ミャンマーにとって、中国が救いの手になっている。一方、中国の今年1~5月のミャンマー向け輸出は、直近2年間の同期間を下回っている。中国が、少しは世界の目を気にしている結果であろう。だが、いずれ図々しくなって、過去を上回る実績になるのは確実だ。

     


    (4)「両国の外交関係強化の兆しは他にもある。中国の陳海駐ミャンマー大使は5日、クーデターを指揮したミン・アウン・フライン国軍総司令官とミャンマーの首都ネピドーで会談した。その後発表された声明で、陳大使は総司令官をミャンマーの指導者と呼んでみせた。国連総会は18日、ミャンマーへの武器流入の防止とスー・チー氏ら政治犯の解放を国際社会に求める決議を採択したが、中国をはじめ一部の国は棄権した」

     

    中国は、予定通りの行動に出ている。

     

    (5)「中国はクーデター前、スー・チー氏率いる民主政権と良好な関係を維持していた。スー・チー氏は軍に拘束され複数の容疑で刑事訴追されている。だが、中国が国軍批判を避けているため、クーデター後の大規模な抗議活動では中国に対する反発が強まっている。中国はミャンマー最大の貿易相手国であるだけでなく、ミャンマーに戦略的なインフラ投資をしている。中国にとっては陸路でインド洋とつながる原油・天然ガスパイプラインもその1つだ」

     

    世界世論は、ミャンマー国軍批判から中国も同罪という見方に変わる日も近い。これは、中国の立場を一層、不利な状況へ追込むはず。中国は、こうやって隣接国を影響下に収めてゆくのだ。

     

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