勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2021年06月

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    中国の「戦狼外交」は、確実に自国企業の対外直接投資を減少させている。「お行儀の悪い」中国企業の直接投資を受入れようとする国が減っているのだ。とりわけ、先進国での中国企業への警戒感が強い。スパイ行為を警戒しているのであろう。

     

    昨年のEU(欧州連合)と英国では、中国企業の直接投資が45%も減った。2016~19年までの累計では、すでに約30%の減少である。いかに中国企業が不人気であるかを示している。ちなみに、米国の2016~19年までの累計では約48%の減少である。欧米での業種別動向では、不動産、娯楽・観光、テクノロジーでの投資減少が目立っている。

     

    『大紀元』(6月21日付)は、「中国の対EU投資、10年ぶりの低水準 要因はパンデミックのみならず『政治関係の悪化』も―報告」と題する記事を掲載した。

     

    中国からEU27加盟国および英国への投資は、2020年に10年ぶりの低水準に落ち込んだ。専門家の分析によると、要因は 「政治的な関係の悪化 」で、今後も減少傾向が続くとみている。調査会社ロジウム・グループとドイツのシンクタンク「メルカトル中国研究所(MERICS)」の報告で明らかになった。

     

    (1)「両組織による共同報告書「Chinese FDI in Europe: 2020 Update(欧州における中国の海外直接投資、2020年更新版)」によると、中国から欧州への海外直接投(FDI)は、2019年の139億ドルから77億ドルに減少し、10年ぶりの低水準となった。新型ウイルスによる渡航規制や、中国国内の経済状況も要因だが、「パンデミックが唯一の原因ではない」と報告書は指摘する。投資の低下は、欧州諸国の人々にとって中国からEUに対する「報復的な制裁措置」は受け入れ難いとの拒否感が強まっていること、また、中国当局の海外投資規制や、EUのFDI審査の強化なども理由に並べた」

     

    EUが、中国への警戒姿勢を強めていることでFDIが減っている。背景は、政治的な理由である。

     

    (2)「EUは3月、ウイグルのイスラム教徒に対する人権侵害に関与したとみられる4人の中国政府関係者に制裁を科した。その数日後、中国共産党政権は英国側の9人の個人と4つの団体への報復制裁を発表した。また、紛争中の南シナ海や台湾をめぐるEUの関心の高まりも、西側諸国と中国の政治的緊張を高める要因となっている。報告書は、中国による対米投資が激減したのは「FDI審査ではなく、政治的な関係の悪化によるもの」と分析している。この前例から、中国による対EUや英国投資も同様に減少に傾くと見ている」

     

    中国とEUが昨年12月末、包括投資協定で7年越しの交渉が署名にまでこぎつけた。だが3月に、中国によるEU側への報復措置で批准に必要な欧州議会の審議が棚上げになった。署名から2年以内に批准されなければ「失効」する。中国にとっては、大きな代償を払わされている。

     


    (3)「ウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長は6月15日、EUと中国を隔てる主な問題は人権問題であり、中国はEUにとって「ライバル」であり、「経済的に強力な競争相手」だと述べた。報告によると、中国の対EU総投資額の50%以上はインフラ、ICT、電子装置が上位3分野を占める。

     

    ライエン欧州委員会委員長は、人権問題が対中国との争点であることを認めている。この問題が解決しない限り、包括的投資協定の批准手続きを進めないというニュアンスである。

     

    (4)「ライエン委員長によれば、EUは最先端技術を確保して国家安全保障上の脅威に取り組み、投資審査のプロセスを強化している。「機密分野の取引は審査され、ブロックされる可能性が高くなる」と語った。また、中国企業による買収やM&Aは、2016年以降、毎年減少している。2020年には13年ぶりの低水準に縮小し、同年までに完了した案件の総額でみれば、前年比45%減の約400億ドルとなったことがわかった」

     

    中国企業による買収やM&Aは2016年以降、毎年減少している。これによって、中国への技術移転件数が減るわけだ。EUが、最先端技術を守り国家安全保障上の脅威に取り組んでいる結果である。

     

    中国は、EUから閉出された。新技術導入で、大きな痛手は必至である。戦狼外交のもたらす高いコストを払わされているのだ。

    あじさいのたまご
       


    中国が、習近平時代の始まりと共に一段と強権体制を強化している。戦狼外交の登場によって、世界全体が中国共産党への見方を変えてきた。こういう背景に何があるのか。それは、共産党用語でいう「全般的危機の深化」である。

     

    中国経済が、ピークを迎えたのは2010年である。生産年齢人口比率のピークによって、それが証明されている。日本の場合は、1990年であった。中国経済は、日本より20年遅れて経済の「慢性的な下降時代」に突入したのだ。民主主義政治であれば、こうした「下降時代」は規制緩和で対応可能である。中国という一党独裁体制では、規制緩和は共産党解体の危機に直結するゆえ、逆に強権体質の強化以外に道はない。病気の治療法に喩えれば、病状を悪化させる処方箋を採用している。

     

    『日本経済新聞』(6月21日付)は、「中国共産党支配の行方「独裁維持」強権しかない 前防衛大校長 国分良成氏」と題する記事を掲載した。国分氏は、慶応義塾大学法学部長などを経て今年3月まで防衛大学校長を務めた。現代中国論が専門である。

     

    中国共産党は7月に結党100年を迎える。経済発展の実績を誇示する一方、習近平(シー・ジンピン)体制下で強権への傾斜や米欧との摩擦は止まらない。過去に1989年の天安門事件などの体制危機も経験した共産党支配の行方はどうか。

     

    (1)「中国共産党の性格は結党以来の革命期、新中国の建国後とも本質的に変わらない。そこには3つの特徴がある。中国共産党の歴史は権力闘争の歴史である。これが第1の特徴だ。次の権力者、後継者を決める選挙制度、メカニズムがないため人事と利権を巡って絶えず争いが起きる。第2は41年も権力の座にあった毛沢東の負の遺産の影響だ。毛沢東は1949年以降の国家建設時代も階級闘争や革命を続けた。鄧小平時代以降は終身制を廃止するなど変わったかにみえたが、思想の自由を許さないのは同じだ。権力維持に固執する習近平氏を毛沢東の再生産とみるのはその通りだろう」

     


    中国共産党には、意思決定過程で民主的ルールが存在しない。それゆえ、際限ない権力闘争によって意思決定過程に代替している。この状況は、現在も続いている。思想の自由を認めれば、中国共産党は崩壊する。

     

    (2)「第3は、「中国的社会主義」の模索というイデオロギーの曖昧性である。毛沢東の自力更生モデルの失敗後、鄧小平が打ち出した「中国的な特色を持つ社会主義」では共産主義理念は死んでしまった。中国的な特色として残ったのは権威主義体制だけだった。3つの特徴により、中国は国民を主体にした普通の国家になれず、肥大化した共産党が国家の上に立つ党・国体制が固まった。「国民国家」建設の中途半端さは今後も変わらない。市場経済の導入で中国が長期的に民主化するとの期待があったが、世界は今、中国は変わらないという現実を目の当たりにしている」

     

    中国政治は、古代と変わらない専制政治体制である。それは、下線のような権威主義体制である。ただ、異論を認めない点では全体主義と言っても差し支えない。この結果、中国は18~19世紀の欧州に現れた「国民国家」(国民的一体性の自覚の上に成り立つ)にもなりきれない状態である。

     


    (3)「習近平体制では、経済的成功を収めた鄧小平路線を否定はしないが、肯定もしない。改革・開放という言葉は減った。社会主義体制が壊れる危機感から、かつての体制に逆戻りしている。それが国有企業重視や私営企業いじめだ
    成長が鈍り、利益配分もできなければ、強権体質を強めるしかない。全ては中国共産党の一党独裁という政治体制の問題に行き着く。世界はようやくそこに気が付いた」

     

    習近平体制は、経済成長鈍化の過程で社会主義体制を守るべく必死である。国内では、民営企業を弾圧して国有企業偏重主義を貫いている。それがますます、中国経済の成長を押し下げるという矛楯に気付かないのだ。まさに、蟻地獄に落込み始めている。

     

    (4)「中国が絡む安全保障で日本は尖閣諸島といった「点」ではなく、より広い東シナ海という「面」で考える方向に脱皮すべきだ。東シナ海では、海ばかりではなく空でも中国の圧力が強まっている。米国が日本との協力を必要とするのも、中国の海になりかねない東シナ海である。中国が東シナ海から米国を追い出したい理由は台湾だ。49年以降、共産党が訴えてきた唯一の正統性は台湾統一である。実際に武力統一に踏み切るかは別にして、台湾統一を言い続けるしかない

     

    中国共産党は、唯一の正統性として台湾統一を言い続けるしか道はない。尖閣諸島と台湾は東シナ海というワンセットで捉えるべきである。中国は、この二つの島を同時に攻撃して手に入れようとするだろう。

     


    (5)「この台湾問題は米中関係そのものである。米バイデン政権とすれば台湾問題は民主主義をどう守るかという問題だ。そして中国との関係も深い台湾の半導体産業などの技術をどう取り込むのかという技術覇権の問題でもある。日本は対話と抑止、国際的な連携強化で中国に対処するしかない。特に対話での外交力は重要だ。
    かつての米ソ冷戦と米中冷戦は違う。中国はソ連と違って国際経済に深く入り込んでいる。中国からみても国際システムに入らなければ生きてゆけない。中国外交の現状はかなり苦しい。その辺に着目して相手も妥協できる批判や提言ができるかだ。中国が簡単に聞き入れるとは思えないが、それぐらいしか手がない」

     

    中国外交は、苦しい局面にある。グローバル経済で急成長してきた中国だけに、「デカップリング」によって、ここから切り離されれば生きていけないはずだ。つまり、米国がTPP(環太平洋経済連携協定)へ復帰すれば、中国は米国市場を失う危機に直面する。経済面から中国を締上げるのが、極めて有効である。「戦わずして勝つ」という孫氏の兵法を生かすことである。 

     

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    台湾は一時、「T防疫」としてコロナ防疫面で成果を上げていたが、その後の感染急増で苦境に立っている。日本は、先に台湾へ124万回分のワクチンを贈ったが、少なくとも1回のワクチン接種を受けた人が人口の6%にとどまっている。当局はワクチンの調達を急いでおり、民間企業によるワクチン購入を許可せざるを得ない状況に追い込まれている。

     

    郭氏は18日、自身の教育財団を通じて、独ビオンテックの新型コロナワクチン500万回分を購入する計画について、蔡英文総統と協議したいと表明。「政治的な意図や商業的な意図は全くない」と述べた。羅秉成報道官は、TSMCからも同量のワクチンの寄付の申し出があったことを明らかにした。

     


    台湾当局は、ドイツ政府の支援を得て、独自にビオンテックとの交渉を続けており、郭氏などがワクチンを調達できる保証はないとしている。台湾は、中国からの圧力により、ビオンテックからワクチンを購入する契約が今年初めに成立しなかったと主張している。中国側はこれを否定。大中華圏でビオンテックと販売契約を結んでいる上海復星医薬を通じて、台湾は自由にワクチンを確保できるとしている。しかし、台湾は中国からのワクチンは信用できないとし、ビオンテックとのみ契約する方針を表明している。以上は、『ロイター』(6月18日付)が報じた。

     

    台湾政府が、下線のように中国製ワクチンは信用できないとして拒否しているには理由がある。中国製ワクチンを接種しても感染者が続出している結果だ。

     

    『大紀元』(6月20日付)は、「中国シノバック製ワクチン接種した医療従事者350人感染―インドネシア」と題する記事を掲載した。

     

    インドネシアでは、350人以上の医療従事者が、中国の科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)が開発したウイルスのワクチン「コロナバック」の接種を受けた後に感染したことが判明した。18日付のロイターが報じた。

     

    (1)「中部ジャワ州クドゥス県の保健局長バダイ・イズモヨ氏はロイターの取材に対し、感染した医療スタッフのほとんどは軽症や無症状と診断され、自宅で隔離治療を受けているが、数十人が高熱と呼吸困難で病院に搬送されたと語った。この地域では現在、より感染力の強いインド型の変異ウイルスが原因とみられる流行が発生しており、病床使用率は90%を超えている。多くの医療従事者が次々と感染し、医療スタッフの不足は深刻化している」

     

    インドネシアは、中国シノバック製ワクチンを接種しているが、それでも大量の感染者が出ている。

     

    (2)「首都ジャカルタでは、放射線科医のプリジョ・シディプラトモ博士がロイターに、過去1カ月間に少なくとも6人の医師がワクチン接種後に感染し、うち1人は集中治療室で治療を受けていると述べた。インドネシアでは、医療従事者が優先接種者に指定され、1月にワクチン接種が始まった直後に接種を受けた。インドネシア医師会(IDI)によると、医療従事者の大半がシノバックワクチンを接種しているという。世界保健機関(WHO)は今月1日、シノバックワクチンの緊急使用を承認した。WHOの戦略的諮問委員会は、同ワクチンの有効性を50~84%と評価している」

     

    WHOがシノバックワクチンの緊急使用を承認したが、感染率の高いところから有効性が低いことを立証している。

     


    (3)「インドネシアでは、ほとんどの医療従事者がシノバックワクチンを接種しているが、このワクチンがウイルスの変異体に対してどの程度効果があるのかは分かっていない」と述べた。インドネシアでは現在、国内の新型ウイルスの累計感染者が196万人を超え、医師や看護師946人を含む約5万4000人の死亡が確認された」

     

    シノバックワクチンは、ウイルスの変異体に対してどの程度効果のあるかも不明である。インドネシアは、厄介なワクチンを導入したものだ。

     

    こうして、台湾政府は中国製ワクチンを除外しているが、米国が当初予定の3倍に当る250万回分のワクチンを供与することになった。

     


    『ロイター』(6月19日付)は、「
    米、台湾にワクチン250万回分を供与 中国けん制へ予定の約3倍」と題する記事を掲載した。

     

    (4)「米国が台湾に供与する新型コロナワクチンが、当初の3倍以上となる250万回分になることがわかった。米政府高官が19日、ロイターに明らかにした。供与するのはモデルナ製。もともと75万回分を予定していたが、中国の「ワクチン外交」をけん制する。20日晩に台北に到着する予定。同高官は「政治、経済の状況に基づいてワクチンを提供するのではない。人命を救うことが目的だ」と述べた。また「われわれのワクチンは条件付きではない」とし、台湾が国際市場でのワクチン入手で不公正な状況に置かれているとの認識を示した。台湾は今年、独ビオンテックのワクチン購入計画が不調に終わった。台湾側は、中国からの圧力があったと主張している」

     

    米国が、独ビオンテックのワクチン250万回分を20日午後、台湾へ送り届けた。地元テレビ局は日本の時と同様に、ワクチンを載せた航空機が空港に着陸する様子を生中継し、歓迎した。これによって、台湾政府とビオンテックの間にルートが開ければ今後、問題なく購入することが可能になろう。

     

     

     

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    進歩派が狙う次期政権は絶望

    虐めて追出したユン氏復讐劇

    改革意欲を失った与党の堕落

    最初は国民の声を聞く儀式で

     

    韓国政界に大きな衝撃が、近く起こりそうである。来年3月の大統領選に前検察総長の尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏が、立候補の意思を固めて6月27日の出馬表明を計画していると伝えられたからだ。今回は、ユン氏の大統領立候補がもたらす影響を取り上げた。

     

    先ずその前に、文政権が相変わらず「悪あがき」している実態から見ていきたい。

     

    韓国大統領府と与党は、先のG7首脳会議に文大統領が招待されたことを自画自賛している。欧米首脳から歓待されたという。その一方で菅首相は、事前に約束していた日韓首脳の立ち話をキャンセルしたと非難している。日本政府は、事前の約束説を否定している。だが、韓国はそれで収まることなく、日本を「嘘つき」呼ばわりしてまで騒ぎを広げているところだ。

     


    韓国が、ここまで日本非難を繰り広げているのは、国内に対して日韓関係冷却化の原因が日本にあることを印象づける策謀であろう。文大統領には責任がないという戦術だ。韓国は再び「反日」に転じているが、狙いは文政権の支持率を高めることにある。

     

    進歩派が狙う次期政権は絶望

    文政権が、反日をテコにして支持率回復を狙うのは、来年3月の大統領選に照準を合わせている結果である。何としても、二期連続で進歩派政権を継続させなければならないという脅迫観念に囚われている。だが、世論は逆である。政権交代を望むのが半数を超えている。文政権一期を見て「もうたくさん」という逆風が吹いている。

     

    文政権は来年3月の大統領選を前に、今年4月の二大市長選(ソウル・釜山)では、与党候補が大敗を喫したことで、にわかに危機感が高まっている。文政権を支持してきた20~30代が、与党を見限って、野党支持に鞍替えしたのだ。

     

    20~30代が文政権を支持した理由は、「公平・公正・平等」にある。現実の政策は、これと真逆であった。最大の問題は、経済政策の失策と政権腐敗の捜査を政治権力でストップさせたことだ。こうなると、政策的な無能に加えて、政治腐敗を隠蔽するという韓国政治史上、かつてない政権であることを露わにした。この構造腐敗が、与党を追詰めている。

     

    韓国の検察は当然、職務として政治腐敗を捜査した。次の事件がそれだ。

     

    1)文大統領の旧知の者が市長選に立候補した際、野党候補を無実の罪名で家宅捜査させ汚名を着せて落選させた。この陰謀に、大統領府高官が絡んでいた。文大統領自身へも疑惑は広がっている。

     

    2)正常に操業し黒字経営である月城原発を強引に操業停止に追込んだ。文氏が大統領選立候補の際に「脱原発」を公約したというのが理由である。政府は、前記原発の操業を中止させるために、データをねつ造して赤字経営に装わせた。そのため、スパイもどきで夜間秘かにしのび込みデータを改ざんさせた。その命令が長官(大臣)から出たとされている。

     

    韓国法務部(法務省)は、こうした疑惑の捜査を中止させるべく、検察総長の尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏の辞任を画策した。ユン氏の任期は2年間で、今年7月が期限切れである。それを待たずに辞任させようとした。ユン氏は、文大統領が任命した人事である。朴槿惠(パク・クネ)前大統領の弾劾捜査を指揮した経験を高く評価されて、検察総長へ抜擢されたものだ。

     


    文氏は、ユン氏が保守党に厳しいものの、進歩派に甘いであろうという期待を持って任命した。ユン氏は就任に当たり、「党派に関係なく悪を退治する」と発言し、その通りに実行した。これに驚いたのが政権である。昨年1~10月は、法務部長官とユン氏をめぐる「辞任」「弾劾」を求める騒ぎになって、検察総長としての職務遂行を妨害した。

     

    政権は、この間にユン氏を悪者に仕立てて、検察改革と称して検察捜査権の縮小化を図った。ついに、高位公職者犯罪捜査処(公捜処)をつくって大統領、国会議長、大法院長などの高位公職者の犯罪捜査を専門とする独立機関に分離した。この機関のトップ選任では、与野党の合意とする法律を、与党の単独審議で削除する改定まで行なった。

     

    こうして、文大統領が退任後も前記二つの案件捜査で検察の追及を受けず、仲間内の捜査官による、もたれ合い捜査で逃げ切れると甘く見ているようである。

     

    虐めて追出したユン氏復讐劇

    ユン氏は、文政権の限りない攻撃によって、この3月に自ら辞任した。だが、文政権にとってこれが大誤算であることがすぐに分かった。世論調査では、ユン氏が次期大統領選で有力候補として支持を集めていることが判明したのだ。ユン氏は、政治問題について沈黙しているにもかかわらず、世論では「ユン氏待望論」が高まったのである。

     

    皮肉なことに、文政権が必死になってユン氏を追い払おうしてきたことが、逆にユン氏を大統領の椅子に近づけるテコになっていた。イソップ物語に出てきそうな話である。

     

    政権が、ユン氏を甘く見ていた背景は、ユン氏が「大統領の第三候補」に終わると見ていたことだ。韓国の過去の大統領選では、保守派・革新派の二大勢力の候補者が勝利を収めてきた。「第三候補」は、支持層が固まらず運動が上滑りになると予測した。それゆえ、ユン氏を虐めて追出せば、政権与党の勝利と踏んでいたことは間違いない。(つづく)

     

     

     

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    中国は、世界覇権へ挑戦すると威勢の良いところ見せているが、電力不足で生産活動に大きな制約を受けている。これでは、とても米国と覇を争う「実力国」になるのが難しい状況である。電力不足の理由は石炭値上り・渇水・環境規制(脱炭素)である。

     

    国内の石炭価格は6月上旬に1トンあたり878元(約1万5000円)と、前年同月比で約7割も上昇している。渇水も例年になく酷い。広東省の今年1月から4月上旬の降水量は前年同期の4割にとどまり、水力発電量がそれだけ低下している。

     

    世界的な環境規制も気になっている。これまでは、「発展途上国の特権」と称して、二酸化炭素排出に気を使わずにきた。それが、EU(欧州連合)では、国境炭素税を準備している。EUよりも環境規制が緩い国からの輸入品に対して、事実上の関税を課して公平な競争を確保する狙いだ。 2026年から全面的に導入されるが、23年から「移行期間」を設ける可能性が出てきた。こうなると、中国は強気ばかり通すことができなくなっているのだ。

     


    『日本経済新聞 電子版』(6月19日付)は、「中国、異例の電力不足 製造業集積の広東省で操業制限」と題する記事を掲載した。

     

    ものづくり企業が集積する中国南部の広東省が異例の電力不足に見舞われている。少雨や石炭の価格上昇で計画通りの発電ができないうえ、内陸部の急速な工業化に伴って電力需要が増加していることが要因となっている。電力の使用制限も導入されており、企業からは長期化することに懸念の声が出ている。

     

    (1)「広東省東莞市の日系金属部品メーカー幹部は6月上旬、地元当局からの停電要請によって頭を抱えた。「前日に通達が来ることもあり、工員の勤務表組み替えに困っている」。この工場は1週間に2日間の停電措置を求められた。停電日には警備などに利用する最低限の電力しか使えず、規定量を超えて使用すれば「罰則」として停電時間が延長される。現在は生産スケジュールのやりくりで生産量を維持しているが、「週2日の停電ならまだ生産量を確保できる。これ以上だと納期遅れになる」(同幹部)」

     

    製造業にとって、週2日間の停電は痛手だ。製造業は、操業度の向上が生産コストを引下げる重要な要因である。それが不可能では、深刻な事態である。

     

    (2)「国家発展改革委員会の報道官は17日に開いた定例記者会見で広東省など南部の電力不足を認めた。その上で、南部の国有送電会社、中国南方電網管内の15月の電力消費は前年同期比23.%増えたと明かした。伸び率は全国平均と比べ5.5ポイント高いという。東莞市などを含む広東省は国内外の自動車や家電、日用品などのメーカーが集まる製造業の拠点だ。広東省は中国の国内総生産(GDP)額の1割を占める稼ぎ頭だ中国経済にとって広東省の産業振興は重要で、安定的な電力供給は生命線といえる。しかし、電力当局は5月、電力不足を理由に、産業や企業ごとに供給を調整する方針を発表した。

     

    広東省は、中国GDP1割を占める稼ぎ頭である。そこで広範な停電では、中国経済に影響が出て当然である。

     


    (3)「電力不足の原因について、当局は「渇水と夏場の電力需要の高まり」と説明する。現地メディアによると広東省の今年1月から4月上旬の降水量は前年同期の4割にとどまり、平均気温はセ氏2.2度高い。水力発電の稼働が落ち、空調や冷蔵設備の電力需要が高まっている」

     

    電力不足要因の一つは、渇水と電力需要の高まりである。今年の長江(揚子江)は、春先から渇水に見舞われていた。三峡ダムは、冬場に放水していたが今は取り止めている。水量不足が原因である。夏場は、三峡ダムに水を貯めて下流の洪水を防いだが、現在は逆である。夏場に放水して下流の洪水を激化させている。三峡ダムは、無駄な存在になってしまった。 

     


    (4)「石炭の価格上昇による在庫不足も影響している。国家統計局によると国内の石炭(1キログラムあたり発熱量が5500キロカロリー)価格は6月上旬に1トンあたり878元(約1万5000円)と、前年同月比で約7割上昇した。石炭採掘を巡る汚職の調査や環境規制への対応で生産量が絞られ、一部業者が値上げや売り渋りに走った。国際エネルギー機関(IEA)によると2020年の中国の電力構成(発電ベース)は6割を石炭火力、2割を水力が占める。中国の証券会社、中信証券は燃料高で「火力発電所の稼働を高める意欲は抑えられている」と指摘する

     

    石炭価格が、6月上旬に1トン当たり約7割も値上りしているので、発電採算に合わず稼働率を上げないという。これは、電力企業として言い訳のできない行為である。豪州石炭の輸入を止めている悪影響が出ている結果だ。豪州に経済制裁を加えることで、中国自身がブーメラン状態に陥っているもの。因果応報である。

     

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