先のG7では、メインテーマが中国であった。日本は、G7で海洋進出と一帯一路プロジェクトで世界覇権を狙う中国の危険性を強く主張した。欧州は、地政学的に危機感が薄いので、菅首相はドイツのメルケル首相やフランスのマクロン大統領へ、その危険性と説明して納得して貰った。日本外交が、G7を動かしたと言える。
『日本経済新聞』(6月20日付)は、「対中抑止 けん引狙う日米、G7『台湾』明記で欧州説得 G20・APECへ布石」と題する記事を掲載した。
日米両政府は対中抑止の国際的な議論を主導する。「台湾海峡」を明記した主要7カ国首脳会議(G7サミット)の共同宣言は、日米首脳による「作戦会議」で欧州各国の背中を押した。中国も参加する秋の20カ国・地域首脳会議(G20サミット)やアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に向けた布石となる。
(1)「G7サミットは11~13日に英国で開いた。期間中、菅義偉首相とバイデン米大統領が個別に話す場面が断続的に続いた。「日米首脳会談の成果も踏まえて力強いメッセージを発出すべきだ」。開幕翌日の12日、首相はサミット会場があるホテルの一室でバイデン氏に呼びかけた。バイデン氏は「ともに議論をリードしよう」と答えた。両首脳がこだわったのは対中抑止の意識を醸成することだった。日米首脳会談の共同声明で半世紀ぶりに記した「台湾海峡の平和と安定の重要性」をG7共同宣言に盛り込む狙いがあった」
G7の舞台裏で、日米は密接な協力をしながら、菅首相が独仏首脳を説得するという役回りであった。こうした協調によって、日本はインド太平洋の安全保障で牽引役になった。
(2)「欧州も香港への統制強化や新疆ウイグル自治区の人権問題などを機に、中国への警戒を強めてはいる。地理的に遠い台湾海峡の問題への関心は日米ほど高くない。台湾海峡有事への危機感を強める日米は欧州も巻き込んだ対中抑止を目指した。菅首相はドイツのメルケル首相との会談で、大半を中国問題に割いた。東京五輪・パラリンピックの話題よりも対中政策を優先した。自動車産業など中国市場への依存が大きいドイツが台湾明記で関門とみたためだ」
ドイツのメルケル首相は、これまで中国との経済関係を重視してきた。それだけに、G7共同声明で「台湾」を明記することに反対でないかと危惧されていたが、菅首相の説得でこの難関を乗り切った。
(3)「欧州の独自外交を重視するフランスにも働きかけた。マクロン大統領は10日に「米国と提携せず中国の僕(しもべ)にもならない」と語っていた。首相が個別会談で中国問題への共同対処を訴えると、マクロン氏は「インド太平洋地域で日本と緊密に連携したい」と話した。一連の会談の合間に首相とバイデン氏は話し合いを重ねた。中心は台湾など中国関連の議題だった。菅首相は閉幕後、記者団に「作戦会議みたいだった」と振り返った」
菅首相は、マクロン大統領との会談でも中国の海洋進出の危険性を説得した。その結果、「インド太平洋地域で日本と緊密に連携したい」という認識を引き出した。一方では、バイデン米国大統領と密接な連絡を重ねた。
(4)「台湾海峡に関する文言は3月の日米外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)で盛り込み、日米首脳会談やG7外相会合の共同文書などにも明記した。首相に同行した政府高官はG7共同宣言が「最後まで欧州との協議が続いた」と明かす。文言調整の裏では新興国のインフラ支援を絡めた調整があった。中国の広域経済圏構想「一帯一路(Belt & Road)」への対抗策として米国が打ち出した枠組みの名称は当初、対中色がにじむ「Green
Belt & Road」だった。「これでは欧州の理解を得られない」。首相は米国や欧州と表現を擦り合わせた。名称は「Build Back Better World(世界のより良い再建)」に変わった」
日本が、米国の足らざるところを補い、中国の一帯一路プロジェクトへの対抗策の名称も変えさせた。欧州の理解を得るためだ。
(5)「G7は直後に開催された北大西洋条約機構(NATO)首脳会議や10月のG20サミットに向けた足場となる。NATOの共同声明は「中国の強引なふるまいは国際秩序への挑戦だ」と書き込んだ。ロシアへの対処が中心のNATOで中国を名指しするのは珍しい」
G7に続いたNATO首脳会議では、G7の中国警戒ムードをそのまま引継ぐ形となった。日本はNATOのパートナーになっている。通常から、日本はNATOへのパイプを生かして説明しているはずで、NATOも結束して「中国警戒論」になった。
(6)「10月29日にはG20外相会合が開かれる。G20は中国やロシアなど権威主義的な体制の国も参加し、10月に首脳会議を開く。2022年に5年に1度の共産党大会を控える中国は外交面で譲歩しにくい時期に入る。バイデン米政権が重視する気候変動対策などで揺さぶりをかけてくる可能性がある。日米にはG20の前に国際社会で中国への共通認識をつくるべきだとの判断があった」
日本外交は、7月1日の中国共産党創立100年を前に、その海外膨張政策を食止めるべき貴重な動きをしたことが分かる。G7とNATO、それにEU(欧州連合)が対中国認識で一致したことは大きな勝利だ。今後は、この連合戦線をいかに充実させて、中国の覇権主義行動を断念させるかにある。日本が、歴史的に大きな「仕事」をしたことは間違いない。





