勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2021年07月

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    韓国大統領選は、「何でもあり」である。最低限、守らなければならないルールが存在しないのだ。相手候補者への身辺攻撃もそうだが、最大の問題は反米主義を煽るというポピュリズムに走っていることである。反日もその一環である。コリア・ポピュリズムが満開した形であり、不幸な国である。

     

    『朝鮮日報』(7月31日付)は、「『韓国の一部大統領選候補、人気集めに反米主義を使い続けている』」と題する記事を掲載した。

     

    ビンセント・ブルックス元在韓米軍司令官は7月29日(現地時間)、韓国の大統領選挙に関連して「既に人気迎合的な候補らが、反米主義と反同盟政治を続けようとする兆しが明らかになっている」と語った。

     

    (1)「ブルックス元司令官はこの日、米外交専門誌『フォーリン・アフェアーズ』にイム・ホヨン元韓米連合司令部副司令官と共同名義で掲載した「北朝鮮との一括妥結」という寄稿記事で、「トランプ前大統領、文在寅(ムン・ジェイン)大統領時代に韓米同盟が悪化したが、これは人気迎合的民族主義を満足させようとする『国防の政治化』が主たる原因だった」として、このように指摘した。文在寅政権の継承を打ち出す一部与党候補が、反米主義・反同盟の流れを引き続き堅持するとみられる、というのだ」

     


    ブルックス元司令官は、「国防の政治化」という言葉を使っているが、誠に言い得て妙である。その通りである。「外交の政治化」も行っている。党派を超えて継続すべき問題が、政権維持の手段に利用されている。文政権は、それが顕著なのだ。「政治化」とは、支持率を高める手段に利用することである。

     

    韓国の国防問題は、対北朝鮮防衛である。在韓米軍は、常に演習をして防衛力を高めなければならないのだが、文政権はそれを中止、ないし規模縮小をさせている。人気取りに汲汲としている。

     

    (2)「ブルックス元司令官は、2016年4月から文在寅政権初期の2018年11月まで在韓米軍を率いた。米バイデン政権の駐韓米国大使候補の1人として取り沙汰されたこともある。ブルックス元司令官は「韓米同盟は韓国の大統領選挙期間とその後も、その連続性を必ず維持しなければならない」としつつも、「統合航空ミサイル防衛システムや指揮統制システムの現代化といった『ホット・イシュー』がポピュリズム的民族主義政治に弱いということもあり得る」と懸念を示した」

     

    防衛力維持には、不断の努力が求められる。指揮統制システムの現代化という言葉に集約化されるだろうが、文政権は、それをポピュリズムによって中断させている。文大統領の出自が、北朝鮮(両親は北朝鮮出身)にあるという感情論がもたらしているのであろう。

     

    (3)「現役時代に訓練の重要性を強調してきたブルックス元司令官は、「韓国は在韓米軍が主な訓練施設にアプローチできないようにしている政治的障害物を除去すべき」とし、「機動や弾薬使用が可能な少数の訓練施設は準備態勢の維持において核心的」「それになのに訓練場へのアプローチが制限されてきた」と批判した。これは、慶尚北道浦項の水城射撃場において、近隣住民の反対で今年2月に在韓米軍のアパッチ・ヘリの射撃訓練が中断された状況などを念頭に置いているものとみられる。韓国陸軍のアパッチ・ヘリの訓練も、2018年の南北首脳会談以降、半分に減った。主な韓米合同演習の実機動訓練も首脳会談後に中断した」

     

    韓国住民が、在韓米軍のアパッチ・ヘリの射撃訓練を中断させることは異常である。韓国陸軍のアパッチ・ヘリの訓練も、2018年の南北首脳会談以降、半分に減ったという。こういう背景を考えれば、文政権が在韓米軍の演習に干渉しているに違いない。文氏の利敵行為と見られても仕方ない。

     


    (4)「ブルックス元司令官は、「このせいで米軍は、アパッチ攻撃ヘリ部隊など韓国国内の特定兵力を、訓練のため日本やアラスカに再配置することを検討している」と語った。直接の言及はしなかったが、慶尚北道星州のTHAAD(高高度ミサイル防衛システム)基地問題も念頭に置いたものという解釈も出た」

     

    米軍は、アパッチ攻撃ヘリ部隊など韓国国内の特定兵力を、訓練のため日本やアラスカに再配置することを検討しているという。こういう苦労をさせられる在韓米軍は、文政権が潜在的に反米主義を取っていると判断せざるを得まい。米国が、韓国を低評価するのは当然であろう。

     

    (5)「ブルックス元司令官は、韓米同盟の障害物として中国を挙げた。2016年のTHAAD配備決定後、中国が韓国へ経済報復を加えたことに言及し、「米国と韓国が近づくほど、中国は韓国をいじめるだろう」「韓米の指導者は中国の経済的強圧に対する具体的な対応案を用意すべき」と語った。ブルックス元司令官は、韓米は伝統的な軍事同盟を越え、中国・ロシアに対抗して経済・政治分野にも及ぶ共同防衛体制を確立すべきと指摘するが、中国など外部勢力は韓国の大統領選挙に介入する可能性も示唆した。ブルックス元司令官は、「韓国は選挙運動の局面に入りつつあり、巧妙かつ陰険な影響力の標的になる可能性が高い」とも語った

     

    文政権は、二股外交を標榜している。これが、中国へ「韓国与しやすし」という誤解を与える原因である。ブルックス元司令官は、中国による大統領選挙への干渉を危惧しているが、すでに現実化している。駐韓中国大使が、公然と野党系大統領候補への批判発言や寄稿をしているからだ。文政権は、こういう行為を黙認しており抗議しないのだ。韓国は、「風見鶏外交」で漂流している。不幸なのは、韓国国民である。

    あじさいのたまご
       

    文政権になってから発表される政府計画は、ことごとく実現しないというのが通り相場になっている。希望を持っても、最後は失望させられることから「希望拷問」という言葉まで生まれている。

     

    韓国で「希望拷問」なる新語が登場する背景には、脆弱な官僚制度の存在を指摘しなければならない。近代官僚制という一本芯のあるものでなく、李朝時代の「家産官僚制」に逆戻りしていることだ。日韓併合時代は、日本式の「近代官僚制」であったが、韓国になってから李朝時代の「ヤンバン」へ戻っているのだろう。

     

    こういう有言不実行の政府でも、政権維持だけには恋恋としており、醜態を曝け出している。次期大統領選で与党は、ユン前検察総長夫人のでっち上げ醜聞をバラマキ、あたかも真実のごとく流布させているのだ。最低の政権与党である。

     


    『中央日報』(7月30日付)は、「その多くの住宅とワクチンはどこにあるのか」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のハ・ヒョンオク金融チーム長である。

     

    高騰する不動産価格に緊張した政府が国民向け談話を通じて「口先介入」に入った7月28日、盧炯旭(ノ・ヒョンウク)国土交通部長官は「首都圏180万戸、全国205万戸の供給計画を迅速に進める」と明らかにした。205万戸は莫大な量だ。1990年の盧泰愚(ノ・テウ)政権当時の「住宅200万戸建設計画」以来の最大だ。当時、一山(イルソン)・盆党(ブンダン)など第1期新都市の供給物量が29万戸だったことを考えると、どれほどの規模かは見当がつく。

    (1)「市場に物があふれれば価格は下落ちる。経済の基本原理だ。205万戸の住宅を供給すると言ったが、市場は反応しない。むしろ住宅価格はさらに値上りしている。何かおかしな流れだ。実際、205万戸は信頼できない数字だ。覆ることもある候補地の物量までかき集めて作り出した数字だからだ。205万戸のうち最も比率が大きい第2・4供給対策(83万6000世帯)だけを見ても、その道ははるか遠い。盧長官は「5カ月間で12万6000世帯を供給できる都心候補地を発掘した」と述べたが、実際の推進のための住民の同意を受けたところは10カ所(1万5000世帯)にすぎない」

     

    優秀な官僚制であれば、こういう実現不確かなものまで、あたかも実現しそうに扱うはずがない。韓国官僚制の質的な問題に帰着する。

     


    (2)「供給が確定した第3期新都市も、「希望拷問(相手に希望を抱かせて苦痛を与えること)」になるかもしれない。事前申し込みを進めているが、まだ用地補償金の支払いも終わっていない状態だ。用地補償手続きが終わらなければ、2023年予定の本申込み日程も延期される可能性がある。入居の時期がはるか先になることもあるということだ。事前申込みの当選が足かせになることが懸念される理由だ。本申込みまで無住宅要件を維持しなければならないうえ、工事が遅れれば「住宅難民」で苦難の行軍が予想される。用地補償の遅延ですべての日程が延期された2010年の先例もある」

     

    建物が建築されていない青写真段階で、住宅購入申し込みを受け付けるとは驚きである。これぞまさに、朝鮮李朝の出鱈目さを受け継いでいる。他国のことながら、「しっかりせよ」と叱り飛ばしたくなる。この韓国政府が、一丁前の顔で「反日」を叫んでくる。日本としては複雑な感情に陥るのだ。

     

    (3)「このため、「第3期新都市の事前申込みは物をいつ渡せるか確答できないがひとまず契約金を出してお金を先にくれというのと同じだ。物を受ける時期は5年後になるか10年後になるか分からない」という声まで出てくる。「仮想アパート」「仮想申込み」「しん気楼分譲」という新造語が出る理由だ。それだけではない。開発制限区域(グリーンベルト)解除の代わりにソウル泰陵(テルン)ゴルフ場と龍山(ヨンサン)整備倉、西部免許試験場など、ある土地ない土地をすべてかき集めて(遊休敷地)4万8000戸の住宅を供給するという計画も座礁の危機を迎えている。住民と自治体の反発のためだ」

    このパラグラフの実態を見ると、明らかに「近代官僚制」になっているとは思えない。近代官僚制なる言葉は、官僚機構が恣意性を持込まず原理原則通りに機能することを指す。家産官僚制とは、王朝に仕える官僚で恣意的な判断をする、とされる。マックス・ヴェーバーの分類である。韓国は、未だに家産官僚制である。

     

    (4)「政府の数字遊びに実体が五里霧中なのは住宅だけでない。新型コロナワクチンも同じだ。計画がないからではない。計画と現実の差が生み出す混沌だ。疾病管理庁が発表した今年のワクチン導入現況と計画によると、7月29日基準で確定した今年のワクチン導入物量は1億9300万回分だ。ファイザー(6600万回分)、モデルナ(4000万回分)、アストラゼネカ(2000万回分)、ノババックス(4000万回分)などを含む数値だ。このうち7月までに導入が完了した物量は2770万回分にすぎない」

     

    ワクチンという緊急性を伴う問題でも、計画と実態がかけ離れている。計画はあるがワクチンはない状況の中でも、政府は四半期別・月別の供給に問題はないという立場だ。11月までの集団免疫形成を目標に、9月までに全国民の70%の3600万人に対する1回目の接種を完了すると強調する。29日現在、接種を完全に終えた人は全国民の13.7%にすぎない。1回目の接種率は35.8%だ。政府への信頼は落ちるばかりである。

     

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    1980年代の日本は、世界の半導体を支配したが、米国の巧妙な日米半導体戦争で輸出割り当て制を呑まされた。バブル経済崩壊という状況に加えて、米国から急激な円高を仕掛けられ「日の丸半導体」は、大きく後退した。この間隙を縫って登場したのが、韓国半導体である。日本の技術が窃取されたのである。

     

    因果応報と言うべきか、「コリア半導体」が米国の巻き返しで、「第二の日本」という苦しい立場に落込もうとしている。今度は、輸出割り当て制のごとき「くつわ」はないが、米インテルが大掛かりな企業買収戦術を始めているのだ。

     

    インテルは、半導体受託製造大手グローバルファウンドリーズの買収に向けた予備協議を始めた。これがまとまれば、自社製造と受託製造に取り組むという方針で、500億ドル(約5兆5000億円)を超える巨額資金が投入される。インテルは、これによって半導体製造機械から半導体製品までを握る「巨人」に生まれ変わる。この裏には米国バイデン政権の有形無形の支援がありそうだ。米国は、これまで禁句であった「産業政策」に大々的に乗出し、打倒中国を打ち出している。

     


    『中央日報』(7月30日付)は、「半導体の第3次大転換時代に備えてほしい」と題する社説を掲載した。

     

    永遠だと思っていた大韓民国の「半導体神話」が、転換点を迎えている。米中の技術覇権競争に触発された第3次半導体の覇権転換の時代に直面しながらだ。その流れを振り返ると、第1次半導体覇権転換は米国から日本に主導権が移る時だった。日本は1970~80年代、世界トップレベルの素材・部品・装備産業の後押しに力づけられ、米国から半導体産業の主導権を奪ってきた。しかし、この覇権は米国が日本の半導体企業の輸出クォーターを規制して力を失い始めた。

    (1)「その反射利益は、韓国に戻った。日本が米国の規制で力を失い始めたころ、ちょうどサムスン電子は試行錯誤を繰り返した末に世界で初めて64メガDRAMを開発した。この便りが伝えられた1992年9月25日から半導体覇権は韓国に移ってきた。日本企業が追い上げたが、チキンゲームを辞さないサムスン電子のスピード経営にひざまずいた。それから韓国は30年間、半導体宗主国の地位を享受した。第2次大転換で韓国は技術力と市場シェアを掌握した」

     

    日本の半導体企業の技術者は、毎週金曜日の最終便でソウルへ飛び、日曜日の最終便で東京へ帰るという「アルバイト稼業」をしていた。虎の子の技術をサムスンへ指導していたのだ。一回の「出張」で一ヶ月分の手当を得ていた。こういう違法行為が、日本の半導体産業を潰すことになった。このアルバイトに手を染めたのは特定企業でなかった。ほぼ、主要企業の技術者が「甘い汁」を吸ったのだ。この話はウソでない。私が東洋経済編集長時代、サムスン創業者の李秉喆から直接聞いたものだ。彼は、なんら悪びれず淡々と語った。



    (2)「米国と台湾が始動をかけた第3次大転換が本格化すれば、サムスン電子が過去最大の売り上げを達成したというニュースが続くという保障がない。何より台湾TSMCの疾走が脅威だ。第4次産業革命がカスタマイズ型非メモリー(システム)半導体の生産需要を触発し、当初のファウンドリー(半導体委託生産)に注力してきたTSMCは翼をつけることになった。米国に工場6カ所の建設に乗出す。さらに、脅威となるのはその間、日本・韓国企業に順に明け渡した失地回復に出るというインテルの半導体生産の本格化だ」

     

    インテルは、世界最初の半導体を世に送ったメンツにかけて、主導権の奪回へ動き出す。米国バイデン政権の後ろ盾を得ている。日本もTSMCと組む方針をとっている。



    (3)「インテルは半導体の宗家だった。中央処理装置(CPU)などコンピュータの核心装置生産に注力し、メモリー半導体の生産に消極的だった。だが、米中覇権戦争と第4次産業革命で高性能メモリーの需要が増え、再び直接生産に出ると宣言した。米政府が半導体インフラに500億ドルを投資して支援する。技術力がカギだが、米国の力を総動員してサムスン電子の先端技術を跳び越える超格差戦略を駆使することにした。米国が本格的に出れば、1990年代日本のように韓国も半導体の覇権を守ることが難しくなる。日本の二の舞を踏むのに5年もかからないかもしれない。政府と企業はもちろん、国民も悲壮な覚悟で半導体大転換の時代に備えてほしい」

     

    下線部は、注釈が必要である。日本は、現在でも半導体製造設備や半導体素材で世界一流の位置にあるが、半導体製品で遅れをとった。韓国は、半導体製品にしか競争力がなく、ここで後退すれば、後がないというマジノ線である。韓国が、危機感を滲ませる理由である。この半導体で競争力を失えば、韓国経済そのものが「終わり」になる。韓国の浮沈がかかった「世紀の一戦」だ。改めて、韓国経済の底の浅さを認識させる。

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    中国は、新型コロナウイルスで3度の世界的な失敗をした。最初は、ウイルスの感染発症地である。次は、不良マスクを世界へ輸出して顰蹙(ひんしゅく)を買った。最後は、不良ワクチンを高値で輸出して「効果ゼロ」という事態を招いている。醜態の極みである。改めて、新興国・中国の技術レベルと経済倫理の低さを世界に暴露することになった。

     

    『大紀元』(7月30日付)は、「東南アジアに広がる中国製ワクチン不信 使用中止相次ぐ」と題する記事を掲載した。

     

    東南アジア諸国で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の中国製ワクチン使用を中止する動きが続いている。 各国政府は表向きに「在庫切れ」と説明しているが、その効果の低さが反映されたものとみられる。発展途上国を中心に「ワクチン外交」を繰り広げていた中国共産党の計画は、暗礁に乗り上げている。

     

    (1)「マレーシア保健省は16日、「米ファイザー製ワクチンは十分に供給できる。中国シノバック製ワクチンは在庫がなくなり次第、接種を中断する」と表明した。それによると、中国から約1600万回分を注文したシノバックのワクチンは、これまで半分程度接種された。残りは2回目に使用する予定という。今後は米ファイザー製ワクチン約4500万回分(2250万人分)を接種することを明らかにした」

     

    マレーシアが、体よく中国製ワクチンと縁切りを宣言した。「在庫がなくなり次第、接種を中断する」と発表したのだ。こうして、中国製ワクチンは遠ざけられる。

     

    (2)「当局の説明とは裏腹に、マレーシアは、中国製ワクチンを使用しても止められない感染拡大の現状を突きつけられている。クアラルンプール郊外のワクチン接種センターでは13日、スタッフ453人のうち45%に当たる204人の感染が確認された。この多くは接種済みにもかかわらず感染したが、当局は接種したワクチンについては言及しなかった。以降マレーシアは数回の厳格なロックダウン(都市封鎖)の措置を取ったが、1日の感染者数は4日連続で1万人を超えている

     

    マレーシアは、厳格なロックダウン措置を取ったが、1日の感染者数は4日連続で1万人を超えている。中国製ワクチンが「水ワクチン」であった証拠である。

     

    (3)「中国製ワクチンへの不信は、東南アジア諸国を中心に広がっている。インドネシアはデルタ株(インド型変異)の拡散で連日感染者数が急増し、一日5万人を上回った。15日までの接種率は、全人口の5.%に過ぎず、うち90%以上がシノバック製を接種した。最近では中国製ワクチンを接種した後に死亡した医療従事者の数まで報告されている。このため、インドネシア当局は7月上旬、中国製ワクチンを接種した医療従事者に、米モデルナ製ワクチンを追加接種するよう要請した。引き続きタイ政府も同様に、英アストラゼネカ製ワクチンを追加接種する計画を発表した」

     

    インドネシアは、中国製ワクチンの犠牲国である。中国は、詳細な治験データの未公表のままでワクチンを売りつけた罪は重い。当の中国は、知らん顔をしている。酷いものだ。責任を感じないのだろう。

     

    (4)「中国は、発展途上国に自国のワクチンを安価で提供する「ワクチン外交」に力を注いでいることで知られる。最近では、東南アジアを中心にその動きが著しい。昨年8月に中国を訪問したインドネシア外相に中国ワクチンの供給を約束したほか、東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国のうち8カ国のワクチン供給を直間接的に管理し、パンデミックという情勢の不安定さを利用して、地域における影響力の拡大を狙っている」

     

    中国ワクチンは、ASEAN10ヶ国中8ヶ国と供給契約結んでいる。マレーシアのように、まずお断りの国が出てきた。「ワクチン外交」どころか、逆効果になっている。

     

    (5)「最近、東南アジア諸国で都心部を中心に感染者数が急増し、中国製ワクチンの効果を疑う声が強まっている。中共が関係構築のための外交カードに使ったワクチンだが、むしろ反中感情を助長させた」

     

    皮肉なことに、中国の「ワクチン外交」は、反中感情を植え付ける逆効果をもたらしている。基礎科学の遅れている中国が、背伸びして失敗したのである。

     


    (6)「中国ワクチンを巡る議論は、南アメリカまで広がっている。ブラジル・ボウソナール大統領は自身のSNSに「シノバックは予防効果がほとんどない」と主張し、中国ワクチン接種者に対する追加接種を計画中であると述べた。来年のブラジル大統領選挙の有力候補であるジュアンドリア・サンパウロ州知事もまた、自身のSNSにシノバック製ワクチン接種を6月に完了したが、最近受けたPCR検査で陽性判定を受けたと公開した」

     

    中国ワクチンの悪名は、ブラジルまで広がっている。こういう汚名を招いたのも、米国と張り合うという無理な競争を挑んだ結果である。この名誉挽回は、できないだろう。生命に関わる問題であるからだ。

    テイカカズラ
       

    韓国経済が暗転している。文大統領は一月前、今年のGDP成長率は4%超えもと強気姿勢を見せていた。その後、コロナの感染拡大で個人消費マインドが急激に落込んでいる。異常気象に伴う世界的な農産物高騰もあり、インフレ警戒が高まってきた。

     

    こうして、今年の4%成長論に陰りが広がっている。悪いことに、来年の最低賃金引き上げ幅は5%に決まった。こういう悪条件が重なってくると、スタグフレーション(物価上昇下の景気停滞)という最悪事態になろう。来年3月の大統領選を控えて、文大統領にはまた一つ頭痛の種が加わった。

     

    『東亞日報』(7月30日付)は、「コロナ・物価・金利の3重苦、スタグフレーションに備えるべき時だ」と題する社説を掲載した。

     

    (1)「文在寅(ムン・ジェイン)大統領は昨日、大統領府で「民生経済閣僚会議」を主宰した。大統領が6月末、下半期の経済政策方向を定めながら予測したものとは異なる方向へと展開される経済状況に対応するためと見られる。1カ月前、大統領は「経済回復のテンポが予想より一段と速い。今年の成長率が当初目標の3.2%をはるかに超え、4%超過が期待できるようになった」とし、景気回復に自信を示した」

     

    韓国では不思議なことに、文大統領が楽観論を喋ると直後に、事態が暗転するケースが多いい。これは、株を高値で買い、その後に値下がりすると同様に、「先が読めない」典型例である。文氏が、煽動型の政治家であることを証明してもいる。

     

    (2)「その後、第4次大流行が本格化し、経済は再び不確実性の中に落ちている。何よりも消費の落ち込みが深刻だ。6カ月連続上昇していた消費者心理指数は、7月に急激に落ち込んだ。午後6時以降、3人以上の会合が禁止され、夜の商売ができなくなった自営業者らは、次々と廃業に追い込まれている。半導体の不足で、第2四半期の輸出の伸び率も1年ぶりにマイナスに落ち込んだ」

     

    韓国の消費者心理指数は、急激に変化することで有名である。特に、政治的な動向に敏感である。それだけ過去に、苦しい経験をしてきたことが反映しているのであろう。消費の環境が悪化していることは、今後の韓国経済に影響を与えることは確実だ。個人消費の対GDP比は48.55%(2019年)と約半分を占める。

     

    この状態で、来年の最低賃金の引き上げ幅は5%に決まった。過去最低だった前年(1.5%)から見れば、大幅な引き上げになる。自営業者や零細企業の支払い能力を直撃するので、解雇の増加は不可避となろう。これが一層、末端景気を冷やすであろう。

     


    (3)「さらに、景気回復に弾みがついた米国の連邦準備制度(FRB)が、緊縮時期を繰り上げるだろうという展望が強まり、国内銀行の6月の住宅ローンの金利が2.74%で、1カ月で0.05%上昇した。韓国銀行が予告した通り、年内に基準金利を引き上げ始めれば、「無理して」「借金」で住宅を購入し、株式に投資した家計、特に20代や30代は急激な利息負担の増加で「負債爆弾」を抱えることになる。弱り目に祟り目で、新型コロナ、異常気象で各国の農業生産に影響が出たことから始まった「アグフレーション」(農業:agriculture+インフレーション)のため、野菜、肉類、ラーメンなどの消費者物価が高騰し、政府の政策失敗による住宅価格や伝貰価格の上昇も止まる気配がない」

     

    米国では、4~6月期のGDPがコロナ前を回復したことから金融政策が引締め基調へ転じる見込みが強くなっている。従来は、22年まで金融緩和を続けるとしてきたが、是正方向だ。こうなると、韓国の金融引き締めがより強まる方向である。韓国銀行は、来年3月までに2度の引締めを「予告」しているが、この確率が一段と高まる。

     

    韓国では、野菜、肉類、ラーメンなどの消費者物価が高騰している。即席メンが、韓国の食卓では大きな比重を占めるのは、生活水準が発展途上国型であることを示している。

     

    (4)「経済専門家の間では、現在のような状況が長引けば、韓国経済は「スタグフレーション」に陥るだろうという懸念が高まっている。同日、大統領も国際通貨基金(IMF)が韓国の今年の成長率予測値を4.3%に引き上げたことを紹介しながらも、「防疫に成功できなければ保障できない」と述べた。現在の状況が期待通り「短くて太く」終わらない可能性もあるという意味だ」

     

    韓国の経済専門家は、スタグフレーションへの警戒を強めている。韓国の家計債務は対GDP比で100%を上回っている。金利の引き上げと所得停滞の両面で、消費は一段と冷え込もう。

     


    (5)「状況がこのようなだけに、政府は長期戦を準備しなければならない。自営業者の営業制限が終わらない時に備えて、財政余力を残しておかなければならない。今のように補正予算を繰り返し、国民に災害支援金をばら撒いても、消費は蘇らず、国の借金のみ膨らみかねないからだ。中小企業・小商工人向け融資の元利金返済猶予期間が終わる9月には、限界企業の構造調整も推進しなければならない。何よりも最後の砦である国の財政が政界の影響に振り回され、不良化しないよう財政準則の導入を急がなければならない」

     

    韓国の財政は、文政権の人気取り政策でバラマキを強めており、財政支出の余力がなくなっている。ここで、さらなる財政出動を迫られれば今後、起るかも知れない三度目の「通貨危機」への対応力がぐっと落ちるはずだ。時限爆弾を抱える経済である。

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