韓国大統領選は、「何でもあり」である。最低限、守らなければならないルールが存在しないのだ。相手候補者への身辺攻撃もそうだが、最大の問題は反米主義を煽るというポピュリズムに走っていることである。反日もその一環である。コリア・ポピュリズムが満開した形であり、不幸な国である。
『朝鮮日報』(7月31日付)は、「『韓国の一部大統領選候補、人気集めに反米主義を使い続けている』」と題する記事を掲載した。
ビンセント・ブルックス元在韓米軍司令官は7月29日(現地時間)、韓国の大統領選挙に関連して「既に人気迎合的な候補らが、反米主義と反同盟政治を続けようとする兆しが明らかになっている」と語った。
(1)「ブルックス元司令官はこの日、米外交専門誌『フォーリン・アフェアーズ』にイム・ホヨン元韓米連合司令部副司令官と共同名義で掲載した「北朝鮮との一括妥結」という寄稿記事で、「トランプ前大統領、文在寅(ムン・ジェイン)大統領時代に韓米同盟が悪化したが、これは人気迎合的民族主義を満足させようとする『国防の政治化』が主たる原因だった」として、このように指摘した。文在寅政権の継承を打ち出す一部与党候補が、反米主義・反同盟の流れを引き続き堅持するとみられる、というのだ」
ブルックス元司令官は、「国防の政治化」という言葉を使っているが、誠に言い得て妙である。その通りである。「外交の政治化」も行っている。党派を超えて継続すべき問題が、政権維持の手段に利用されている。文政権は、それが顕著なのだ。「政治化」とは、支持率を高める手段に利用することである。
韓国の国防問題は、対北朝鮮防衛である。在韓米軍は、常に演習をして防衛力を高めなければならないのだが、文政権はそれを中止、ないし規模縮小をさせている。人気取りに汲汲としている。
(2)「ブルックス元司令官は、2016年4月から文在寅政権初期の2018年11月まで在韓米軍を率いた。米バイデン政権の駐韓米国大使候補の1人として取り沙汰されたこともある。ブルックス元司令官は「韓米同盟は韓国の大統領選挙期間とその後も、その連続性を必ず維持しなければならない」としつつも、「統合航空ミサイル防衛システムや指揮統制システムの現代化といった『ホット・イシュー』がポピュリズム的民族主義政治に弱いということもあり得る」と懸念を示した」
防衛力維持には、不断の努力が求められる。指揮統制システムの現代化という言葉に集約化されるだろうが、文政権は、それをポピュリズムによって中断させている。文大統領の出自が、北朝鮮(両親は北朝鮮出身)にあるという感情論がもたらしているのであろう。
(3)「現役時代に訓練の重要性を強調してきたブルックス元司令官は、「韓国は在韓米軍が主な訓練施設にアプローチできないようにしている政治的障害物を除去すべき」とし、「機動や弾薬使用が可能な少数の訓練施設は準備態勢の維持において核心的」「それになのに訓練場へのアプローチが制限されてきた」と批判した。これは、慶尚北道浦項の水城射撃場において、近隣住民の反対で今年2月に在韓米軍のアパッチ・ヘリの射撃訓練が中断された状況などを念頭に置いているものとみられる。韓国陸軍のアパッチ・ヘリの訓練も、2018年の南北首脳会談以降、半分に減った。主な韓米合同演習の実機動訓練も首脳会談後に中断した」
韓国住民が、在韓米軍のアパッチ・ヘリの射撃訓練を中断させることは異常である。韓国陸軍のアパッチ・ヘリの訓練も、2018年の南北首脳会談以降、半分に減ったという。こういう背景を考えれば、文政権が在韓米軍の演習に干渉しているに違いない。文氏の利敵行為と見られても仕方ない。
(4)「ブルックス元司令官は、「このせいで米軍は、アパッチ攻撃ヘリ部隊など韓国国内の特定兵力を、訓練のため日本やアラスカに再配置することを検討している」と語った。直接の言及はしなかったが、慶尚北道星州のTHAAD(高高度ミサイル防衛システム)基地問題も念頭に置いたものという解釈も出た」
米軍は、アパッチ攻撃ヘリ部隊など韓国国内の特定兵力を、訓練のため日本やアラスカに再配置することを検討しているという。こういう苦労をさせられる在韓米軍は、文政権が潜在的に反米主義を取っていると判断せざるを得まい。米国が、韓国を低評価するのは当然であろう。
(5)「ブルックス元司令官は、韓米同盟の障害物として中国を挙げた。2016年のTHAAD配備決定後、中国が韓国へ経済報復を加えたことに言及し、「米国と韓国が近づくほど、中国は韓国をいじめるだろう」「韓米の指導者は中国の経済的強圧に対する具体的な対応案を用意すべき」と語った。ブルックス元司令官は、韓米は伝統的な軍事同盟を越え、中国・ロシアに対抗して経済・政治分野にも及ぶ共同防衛体制を確立すべきと指摘するが、中国など外部勢力は韓国の大統領選挙に介入する可能性も示唆した。ブルックス元司令官は、「韓国は選挙運動の局面に入りつつあり、巧妙かつ陰険な影響力の標的になる可能性が高い」とも語った」
文政権は、二股外交を標榜している。これが、中国へ「韓国与しやすし」という誤解を与える原因である。ブルックス元司令官は、中国による大統領選挙への干渉を危惧しているが、すでに現実化している。駐韓中国大使が、公然と野党系大統領候補への批判発言や寄稿をしているからだ。文政権は、こういう行為を黙認しており抗議しないのだ。韓国は、「風見鶏外交」で漂流している。不幸なのは、韓国国民である。