勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2021年08月

    あじさいのたまご
       

    中国は、新型コロナウイルス感染では完全な都市封鎖を行って封じ込めた。形の上では、防疫成功のイメージだが、市民の免疫度はインドやインドネシアを下回っているという。この結果、常に「コロナ臨戦態勢」を敷いて都市封鎖しなければ、感染拡大を防げないという代償を払うことになった。

     

    中国製ワクチンは、インド型の感染予防力が低いので、インドネシアでは死者が出るなど、評価を落としている。中国政府は、メンツを保つために中国製ワクチンしか認めていない。米英製のワクチンを無視している。

     

    以上のような二つの理由で、今や中国は新型コロナの再感染に最も敏感に対応せざるを得なくなっている。これが、経済的なコストを大きく膨らませる結果になった。

     


    英誌『エコノミスト』(8月21日号)は、「中国でもデルタ型、世界揺さぶる」と題する記事を掲載した。

     

    唐時代の8世紀以降、中国東部の寧波港(浙江省)は貿易港として栄えてきた。21年上期には貨物取扱量で世界首位になった。しかし8月11日、寧波港でも有数の貨物取扱量を誇るターミナルが突然稼働を停止した。34歳の港湾作業員が新型コロナの変異ウイルスのインド型(デルタ型)に感染していることがわかったからだ。作業員は中国科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)製ワクチンを2回接種していたが、ターミナルを訪れていた船員と接触していた。中国政府は感染者をたった1人確認しただけでターミナルの操業を停止し、濃厚接触者254人に加え、濃厚接触者と接触していた396人も隔離した。今回のターミナルの閉鎖は3つの点を浮き彫りにしている。

     

    (1)「デルタ型を水際で食い止めることがいかに困難であるかを改めて示しただけでなく、中国はどんなに難しくとも、もう一度全力で新型コロナの感染拡大を抑え込もうとしているということだ。さらに中国のデルタ型との闘いがいかに世界中に波紋を広げるのかということも明らかにしている。貨物輸送のオンラインマーケットプレイスを運営する香港の情報会社フレイトスによると、中国の港から米国の最終目的地までの海上での輸送期間は昨年8月に47日だったのに対し、現在は70日前後になっているという。貨物輸送が遅れているだけでなく、今後も港湾施設が閉鎖されかねないとあって、欧米のクリスマス商戦にもしわ寄せが及びそうだと懸念する専門家もいる」

     


    コロナ感染の水際防止が、いかに難しいかを示している。中国は、都市封鎖で「コロナ真空地帯」をつくってきた。瞬間的に感染防止で成功しても、その効果は長期に続かないという根本的な弱点を抱えている。その意味では、コロナ脆弱国家といわざるを得ない。

     

    (2)「8月10日時点で中国国内の隔離者は5万808人に上り、現感染者(累計感染者から回復した人と死者を除いた人数)1人につき20人以上が隔離されていることになる。政府は市や省をまたぐ不要不急の移動を制限し、感染拡大が最も深刻な南京市と河南省鄭州市は新学期の開始を遅らせた。米金融大手のゴールドマン・サックスが開発したロックダウン(都市封鎖)の指標によると、中国の現在の行動制限は20年4月に匹敵する厳しさだという」

     

    感染者1人につき20人以上が隔離されている計算だ。中国の現在の行動制限は、20年4月に匹敵する厳しさだという。これが、経済的に大きな代償を払う結果になっている。

     


    (3)「行動規制の影響がすでに表れている。中国のオンライン旅行プラットフォーム、航班管家(フライト・マスター)によると、空港稼働率は8月12日時点で38%にとどまっている。感染拡大が最も深刻な12都市の渋滞量中央値が感染前の基準値を12%下回った。移動規制は、すでに進行している景気減速に追い打ちをかけている。鉱工業生産指数、小売売上高、固定資本投資、不動産販売はいずれも7月に予測を下回った。政府が環境対策として鉄鋼生産を抑制しているほか、金融の安定性確保に向け住宅投機を抑え込んでいることも影響している」

     

    下線のように、主要経済活動に影響が出ている。これは、不動産バブル崩壊による信用創造能力の低下という「信用不安」が根底にある結果であろう。金融構造の脆弱性という視点を忘れてはいけない。

     


    (4)「野村国際の陸挺氏は、79月期の国内総生産(GDP)の前期比伸び率がわずか0.%にとどまるとみる。同氏は21年通年のGDP伸び率の予測を8.%から8.%に引き下げた。それが現実のものとなれば、住宅購入規制が続いたとしても、中国人民銀行(中央銀行)が追加緩和に動く理由となりそうだ。中国景気の減速は、国内外の金融市場を揺るがしている。上海・深圳の主要銘柄で構成される「CSI300」指数は8月10日以降4%下落している。鉄鉱石価格は7月末から21%下落し、銅価格は5%を超える値下がりとなった」

     

    前年同期比というベースで、米中のGDP成長率を見れば、これから数四半期、米国が中国を上回るという予測が米国人エコノミストの間に広がっている。それが、現実の数字になれば、世界のエコノミストは驚愕するであろう。

     

    (5)「中国にはデルタ型の感染拡大を抑え込む強大な力がある。加えて、感染を抑え込まなければならないという動機も強い。他国と違い、中国には感染力の強いデルタ型に厳しい対策を取らざるをえない理由が2つある。まず、中国では過去に新型コロナに感染した人が比較的少ない。そのため、感染が拡大した時期に自然に免疫を獲得した人も少ない。一方、ワクチンを2回接種した人はかなりの割合に上る(政府発表では55%を超える)が、中国製ワクチンの有効性は欧米製ワクチンを下回るとみられている」

     

    このパラグラフに、中国がデルタ型コロナの感染防止に対して必死になる理由二つがあげられている。自然免疫を獲得した人が少ないこと。中国製ワクチンが効かないこと、である。

     

    (6)「ゴールドマン・サックスによると、ワクチン接種率では中国が格段に上回っているにもかかわらず、中国で何らかの免疫を獲得している人の割合はインドだけでなくインドネシアすら下回っているという。仮に中国が対策を緩め、欧米で一般的な感染率を容認すれば、重症患者数が増えて警戒すべき水準に上昇しかねない

     

    中国は、「コロナ真空地帯」だけに感染が拡大すれば、一挙に重症者が増える懸念をかかえているのだ。コロナ脆弱国家である。

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    中国機が、台湾海峡へ越境する回数が増えることで、日米は「台湾有事」を現実問題として議論しなければならなくなってきた。これまでの日本は、そういうきな臭いことに首を突っ込みたがらなかったが、もはやそういう綺麗事を言っていられない状況になっている。

     

    一番恐ろしいのは、中国軍人が米国に勝てると誤解することだという。自衛隊元最高幹部によれば、近代戦争を経験していない中国軍が、何かの弾みで開戦への引き金を引くと、中国に悲劇が起ることは確実とされている。自軍の未熟さを知らずに戦いを挑まれるリスクが、最も大きいというのだ。

     

    そういう間違った中国の「引き金」を引くことを避けさせるには、台湾有事の際に、日本がどういう役割を果たすか。それをはっきりさせておくべきだというのだ。

     


    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(8月30日付)は、「
    中台緊張で動き始めた日本、紛争の可能性に備え」と題する記事を掲載した。

     

    日本政府が先月公表した防衛白書は、中国が台湾周辺で軍艦や軍用機による活動をこれまで以上に活発化しており、「一層緊張感を持って注視していく」と述べた。日本の政府関係者や元政府関係者は、来月開始する自衛隊の大規模演習によって、台湾を含む地域の紛争への備えが進むことを期待している。

     

    (1)「日米協力は、軍事力の行使を自衛に限定する日本の国内法と、国外の問題に巻き込まれることを警戒する日本国民によって制限されている。台湾を巡る衝突が差し迫っていることを示す兆候はなく、一部の軍事ストラテジストは衝突のリスクは依然として低いと考えている。中国政府が力による台湾再統一に動けば国際社会は猛反発するだろう。中国が台湾に侵攻すれば、中国経済に欠かせない台湾製半導体の供給が途絶える恐れがある。それでも緊張は高まっている。中国の習近平国家主席は7月、台湾の完全統一を改めて誓い、台湾独立に向けたいかなる動きも「粉砕」すると述べた。一部の米軍幹部は、香港の管理強化に成功した中国が、今後数年のうちに台湾を支配しようとする可能性があると警告している」

     

    習氏は、台湾統一を言わなければ「終身国家主席」になることはできない。その意味では、絶えず、台湾問題を言い続けるはずだ。

     


    (2)「台湾を巡る武力衝突のリスクは小さくても、日本にとっては大きな懸念材料だ。与那国島からは天気が良ければ70マイル(約112キロメートル)離れた台湾の沿岸部が見える。南部の島嶼部で最大の島である沖縄本島には、在日米軍の複数の主要基地があり、5万人の在日兵力のほとんどが集中している。関係者によると、日本で間もなく実施される演習の一環として、数千人の兵士が9月から11月にかけて兵器や補給品を日本の南部地域に輸送する。こうした全国規模の演習が行われるのは30年近くで初めてだという

     

    下線のような大規模演習は必要である。不意打ちを食わされたとき、慌てないように準備万端整えておくべきだ。

     

    (3)「日本の当局者は、この自衛隊の大規模演習は1年以上前から計画されており、台湾を巡る最近の緊張の高まりに直接対応するものではないと述べた。しかし元陸上自衛隊陸将で国際大学国際関係学研究科教授の山口昇氏は、大規模演習が台湾を巡る衝突への準備態勢を改善することに役立つと指摘した。日本の政府関係者や元政府関係者によると、台湾に関する中国政府の狙いについての懸念と日米間の調整不足から、台湾情勢の緊張は喫緊の事態だという。山口氏は「(この地域で)何か起きることは、イコール日本の防衛ということに否応なしにならざるを得ない」と話した。中山泰秀防衛副大臣はインタビューに対し、台湾海峡の緊張について、日本の安定を揺るがす最大の脅威の一つだと述べた。中山氏は「防衛省と自衛隊は適切に対応できるよう、さまざまなことを不断に検討している」と述べた」

     

    日本は、ある意味で対中国の最前線に立っているという緊張感を持つべきだろう。日本の最南端の与那国島から台湾まで、約112キロメートルしか離れていないという地理的感覚が必要である。

     

    (4)「それでも日本政府が台湾を巡る対立に最前線で関わる可能性は低い。日本の憲法は武力の行使による紛争解決を禁じているからだ。しかし南部の島嶼部は台湾に近い上、米軍基地が駐留しているため、この地域で紛争が起きれば日本はほぼ確実に巻き込まれることになる。ここ数年の法改正で、日本の周辺で同盟国が攻撃された場合、日本は同盟国を守るために武力を行使したり物資を提供したりすることが可能になった」

     

    不幸なことだが、日本は中国の存在に神経を尖らせる関係になってしまった。習氏という希有の民族主義者が、最高指導者として登場した結果だ。

     

    (5)「元自衛隊統合幕僚長の河野克俊氏によると、米軍が台湾危機に関与した場合、日本が果たす可能性のある支援任務には米艦艇への給油、警戒監視活動と情報の共有、在日米軍基地の防衛、台湾からの避難者の退避支援が含まれる。現在空母に改修中の日本の護衛艦2隻は米軍の戦闘機F35Bの給油にも使用できる可能性がある。米国が台湾を支援して介入すれば、沖縄の米軍基地は現場に最も近い最大規模の拠点になる。防衛アナリストによれば、米軍基地は中国のミサイル攻撃の標的になる可能性があり、攻撃があれば、日本は自衛権の行使として報復することが可能になる」

     

    米軍には「見えない空母」と言われる巡航ミサイル原子力潜水艦(SSGN)が4隻ある。1隻でトマホークを154発積むことができる。中国の最大の弱点は対潜能力で、潜水艦を見つけ出す能力が低い。600発の巡航ミサイルを積んだ「見えない空母」が、第1列島線の内側に入り込み、ピンポイントで中国のレーダーや宇宙監視の地上施設を攻撃して、まず「目」を奪うだろう。そうなれば、中国は米空母などがどこにいるか把握できず、ミサイルを当てようがない。これは、『毎日新聞』(8月2日付)で、伊藤俊幸元海将が語った言葉だ。中国は、こういう現実を知ったならば、台湾有事など起こせなくなるであろう。

     

     

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    中国政府は、危険な青少年管理に動き出している。その一環として、未成年者(18歳未満)のゲームを週末の1時間に限定するという。学習塾規制にも本格的に取り組んでいる。小学生5~6年生の定期試験科目は、従来の「英数国」から英語を外し、習近平思想を必修科目にする。徹底的な民族教育に乗出す決意であろう。

     

    社会的な判断で、右も左もよく分からない幼年期から民族教育を行う。ここで浮かび上がるのは、第二次世界大戦前に始まったドイツの「ヒトラー・ユーゲント」(ナチス青少年団)の先例である。1933年に権力を掌握したヒトラーは、ボーイスカウトなど少年少女の団体をすべてナチス傘下の青少年団=ユーゲントに統合した。キャンプ合宿やスポーツ大会などを通じて、1939年にはドイツの若年層の98%が団員になった。

     


    こうして、第二次世界大戦中のドイツ兵は、占領地のポーランドなどで数々の残虐行為を行う結果になったが、その基盤は青少年期の歪んだ民族教育にあった。習氏は、この
    「ヒトラー・ユーゲント」を参考にして、習近平「親衛隊」をつくる積もりだろうか。

     

    『日本経済新聞 電子版』(8月30日付)は、「中国、ゲームは『週末11時間』 強まる青少年管理」と題する記事を掲載した。

     

    中国のメディアやゲーム産業を管轄する国家新聞出版署は8月30日、未成年者(18歳未満)によるネットゲームの利用を厳しく制限する方針を発表した。ゲーム企業に対し、未成年者へのサービス提供を週末や祝日などに限定して時間も11時間までとするよう求める。学校での教育内容に加え、家庭の生活でも青少年の管理が強まる。

     

    (1)「未成年者のネットゲーム利用は金曜、土曜、日曜と祝日の夜8時から9時までに限定する。実名による利用登録も厳格化するよう求める。国家新聞出版署は2019年に未成年者のネットゲーム利用に関して、祝日に1日3時間、それ以外の日は1時間半を超えてはならないとするといった規制を打ち出していた。その規制をさらに厳格化する」

     

    国家権力が、未成年者のゲーム時間まで介入するという前代未聞のことを始める。何が何でも、共産党の指揮下に組み込んで、愛国主義を吹き込む算段である。ここまでしないと、「反習近平」が生まれると懸念しているのであろう。

     

    (2)「中国政府は、青少年に対する思想教育を進めている。上海市では9月の新学期から習近平(シー・ジンピン)国家主席の思想を題材にした教材を使う授業を小・中・高生の必修科目として新設する。北京市も今月、当局の認可を受けていない外国教材を義務教育で使用することを禁ずる方針を打ち出した」

     

    戦時中の日本を思い起こさせる「椿事」である。習氏は、明らかに「終身国家主席」を務める気持ちである。冷静になれば、分かりそうなことだが、「個人崇拝」は、追詰められた事態に生まれるもの。危険この上ない。この狂った時代がいつまで続くのか。世界中が、自然崩壊を待つしかない。

     


    (3)「教育内容に加え、しつけなど家庭内の教育を充実させる法律についても政府は議論しており、子供の生活を細かく管理する方向に動いている。生活面の管理や思想教育の強化を通じて、若者の共産党への関心を高める狙いがある

     

    中国は、幼稚園から勉強主体である。日本は情緒教育と躾が主体である。これは、英国の幼稚園教育の伝統を取り入れたものだ。人間性の涵養が目的である。下線は、まさしく「ヒトラー・ユーゲント」育成であろう。

     

    (4)「ゲーム企業は当局方針をくみ、先手を打って未成年者の利用時間や課金の制限など自主規制を敷いていた。例えばネット大手の騰訊控股(テンセント)は8月3日にも未成年者のゲーム利用を祝日は12時間まで、それ以外は1時間までに順次制限する方針を発表していた。国家新聞出版署の新ルールはさらに厳格なものだ。テンセントは8月30日、日本経済新聞の問い合わせに対し「当局の最新の要求を厳格に順守する」とコメントした。テンセントは今月実施した2021年4~6月期決算の発表の場で、同社の中国におけるゲーム売上高のうち16歳以下の利用者の比率は2.%だと明かした。各社ともゲーム事業の収益における子供の比重はそれほど大きくはないとみられるが、当局の監視の目が厳しくなる中で難しい対応を迫られる」

     


    ゲーム会社は、すでに手を打っているが、さらに政府から規制の指令が出るであろう。住宅ローンの返済など生活コストが高い都市部では、夫婦が共働きで祖父母が幼い子の面倒をみることが一般的である。親の関心が薄い結果、ネットゲームによる生活リズムの乱れや未成年の常識欠如を問題視する声は多いという。その尻が、ゲーム会社に持込まれる構造である。

     

    最大の問題は、家庭へ高額な住宅ローンを押し付けた政府の不動産バブル政策にある。そういう根本政策の反省がなくて、現象面だけを取り上げて批判している。暢気な政府である。

     

     

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    中国経済にとって輸出は大きな柱である。その主柱がぐらついている。これまで、指摘されてきたサプライチェーン再編成や、相手構わず威嚇する「戦狼外交」の弊害が、輸出成約の悪化となって現れ始めている。「世界の工場」と言われた全盛時代は、明らかに終わったと言える。

     

    『大紀元』(8月30日付)は、「中国対外貿易の見通しが悪化、厳しい封鎖措置や戦狼外交などが影響」と題する記事を掲載した。

     

    中国の王文濤商務相は23日の会見で、来年の対外貿易について、ベース効果の剥落などを踏まえると、これまで以上に複雑な状況になる可能性があると述べた。今年下半期にはすでに複雑な状況に直面しているという。専門家らは、新型コロナウイルスの感染防止で実施した厳しい封鎖対策、そして製造業の海外移転、強硬な外交姿勢などの要因が、中国の対外貿易を鈍化させていると指摘する。

     


    (1)「米国営放送『ボイス・オブ・アメリカ』(VOA)は8月26日、専門家の意見として、港や工場の閉鎖といった中国の新型コロナ感染防止策は代価が高すぎると指摘した。世界第3位のコンテナ港である寧波舟山港の従業員1人が新型コロナに感染したことで、当局は8月初めに港全体を閉鎖した。25日に再開したが、こうした物流の中断は対外貿易に混乱を招く。また、新型ウイルスの感染拡大により、中国最大の経済都市・上海市周辺の海上および航空貨物の一部を停止し、物流は深刻な渋滞を起こした。オランダの大手総合金融機関INGグループの報告書は、その影響は9月末から10月にかけて続くと予想した」

     

    コロナ感染による物流への混乱が起っている。この影響が、9月末から10月にかけてつづく。

     

    (2)「物流が滞った結果、国際貨物運賃の上昇は続く可能性がある。オンライン貨物市場会社Freightosによると、中国からアメリカ東海岸までのコンテナ1個あたりの運賃は、8月初旬にはじめて2万米ドル(約22万円)の大台に、前年比5倍増だった。中国からヨーロッパまでの最新運賃も14000米ドル(約154万円)に上昇した」

     

    物流への混乱が、国際貨物運賃の上昇にはね返っている。5倍にも高騰している。

     


    (3)「
    ウイルスの感染が、収まりつつある東南アジアなど近隣諸国の生産能力は回復基調に乗り、一時中国に流れていた発注は戻りはじめている。なお、人件費が中国より低いため、労働密集型製品の生産は中国からこれらの国にシフトしつつある。中国政府の資料によると、インフレ率を示す生産者物価指数は7月に前年比で9%上昇した。原材料価格と物流コストの高騰により、中国製造業にとって、新規受注がたとえ増えてもコストの増加により、利幅は小さい」

     

    労働集約型製品の生産は、人件費の中国より安い、東南アジアへシフトしつつある。中国製造業にとって、新規受注が増えてもコスト増により、採算が悪化している。

     


    (4)「東南アジア諸国の工場再開と、欧米諸国のサプライチェーンの再編成(メキシコ、東ヨーロッパなどの生産ライン増設など)により、中国の製造業への依存度は低下する傾向だ。そのため、中国の製造業者にとって、大幅な値上げは難しい。一方、原材料と物流コストは下がらないため、利益率はさらに圧迫される。各国は政治的リスクを避けるため、対中ビジネスモデルの見直しは必至で、製造業の中国離れに拍車をかけている。これもまた、中国の対外貿易に影響する要因だといわれる」

     

    欧米諸国は、サプライチェーンの再編成でメキシコや東ヨーロッパなどへ生産ラインをシフトしている。この結果、中国製造業への依存度は低下傾向だ。こうした悪条件下で、中国製造業はコスト増を価格に転嫁できず、採算を圧迫している。製造業の中国離れが進んでおり、中国の対外輸出に悪影響している。

     


    (5)「オーストラリア議会はこのほど、強制労働による製品の輸入を禁止する決議案を可決した。中国への対抗措置とみられる。すでにアメリカ、イギリス、カナダは中国からの強制労働製品の輸入禁止を発表した。アメリカは、強制的な技術移転や知的財産権侵害など中国の長年にわたる不公正な貿易慣行に対して、年間3700億米ドル(約41兆円)の中国製品に追加関税を課している。この政策は、トランプ政権からバイデン政権に引き継がれている」

     

    中国の新疆ウイグル自治区における強制労働問題は、製品輸入の禁止問題へ発展している。米英豪加がすでに、中国からの強制労働製品の輸入禁止を発表した。このほか、米国は中国に対して強制的な技術移転や知的財産権侵害などの長年にわたる不公正な貿易慣行を理由に、年間約41兆円の中国製品に追加関税を課している。中国には、大きな輸出障害になっている。

     

    (6)「米シンクタンク、ブルッキングス研究所中国センターの研究員デビッド・ドーラー氏はVOAに対して、「不確定要素は企業にリスクをもたらし、その投資と計画に影響を及ぼす。中国と一部の国との状況はさらに悪化し、新たな制裁または経済問題が発生する可能性がある。 政治的緊張は間違いなく経済関係にダメージをもたらす」と述べた」

     

    中国が、直面する西側諸国との政治的な緊張関係は、経済にとって不利な条件である。中国の関連企業は、投資計画を立てられないからだ。

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    民主主義国の米国では、対外政策において世論の動向が大きなかぎを握る。中国民族派は、こういう米国の特殊性を理解しないで、民主主義を見くびってきた。中国世論の一本化に比べて、米国はバラバラという誤診をしてきたのだ。

     

    民主主義は、世論が一体化して一つの目標を設定すると、大きな力を形成する。台湾問題についても同様である。米国では、中国が台湾の民主主義を圧殺する危機感を高めている。それが、最近の世論調査の結果に表われたのだ。

     

    『大紀元』(8月30日付)は、「米国人の過半数『中共が台湾侵攻するなら防衛するべき』―世論調査」と題する記事を掲載した。

     

    米国のシンクタンクが実施した調査によると、半数以上の米国人が、中国共産党軍の台湾侵攻に対して米軍の派遣を支持していることが分かった。米軍のアフガン撤退表明以降、中国共産党は米国の国際的な優位性を引き下げ、台湾への関与を排除しようとプロパガンダを発信しているが、米世論は真逆の結果を導き出した。米国人はメディア報道などを通じて、台湾の窮状について認識を深めており、中国共産党による台湾への脅迫に嫌悪感を抱いていると専門家は分析している。

     

    (1)「シカゴ・カウンシル・オン・グローバル・アフェアーズが8月26日に発表した世論調査によると、回答者の52%が、中国共産党軍の台湾侵攻に対して、米軍を派遣し台湾を防衛することを支持すると答えた。 これは、1982年に同じ質問をして以降、最も高い割合になった。さらに、この調査では、7割近く(69%)の回答者は、米国が台湾を独立した国家として認め、65%が台湾の国際機関への加盟を、57%が米台自由貿易協定の締結を支持していることもわかった。また、回答者の53%が米台間の正式的な国交を、46%が中国共産党の侵攻に対して台湾防衛を明文で約束するのを支持していることも明らかになった」

     


    シカゴ・カウンシル・オン・グローバル・アフェアーズは、1922年に設立された著名なシンクタンクである。そこが行った世論調査だけに信頼度が高い。米国民の52%が、中国の台湾侵攻に対して、米軍を派遣し台湾を防衛することを支持するとした。これは、過去にない画期的な世論調査結果である。米国世論が、中国の台湾侵攻に強い警戒観を示している。

     

    (2)「ドイツ・マーシャル基金のアジアプログラムのディレクターであるボニー・グレイザー氏は、米ボイス・オブ・アメリカに「中国の台湾に対する軍事的、外交的圧力は、米メディアでかなり取り上げられている。このため、米国人は台湾の窮状に同情し、台湾の民主主義の強さをより認識している」と 語った。グレイザー氏によると、米中関係の影響もあるという。 「米中の対立激化に対する全体的な懸念から、台湾に対する意識や将来への不安も高まっている」としている」

     

    中国は、台湾に対してプロパガンダを行えば行うほど、不利になるという悪循環に入ってきた。「中国は悪玉」という認識が、米国で定着している証拠だろう。

     


    (3)「調査によれば、共和党員は民主党員や無党派層よりも台湾の軍事防衛を支持する傾向にある。台湾防衛のために米軍を派遣することに賛成したのは、共和党では60%、民主党では50%、無党派層では49%だった。回答者が台湾を支持する大きな要因は、中国への不信感だった。61%が中国を競争相手または敵対者と見なしているのに対し、60%が台湾を同盟国または必要なパートナーと見なしている。この調査は、2021年7月7日から26日にかけて、米国の全50州とコロンビア特別区に住む18歳以上の成人2086人を対象に実施された」

     

    台湾防衛で米軍派遣に賛成したのは、共和党60%、民主党50%、無党派層49%である。極端なバラツキがないことに気付く。米国の世論は、中国への怒りを見せている。

     

    (4)「シカゴ・カウンシルは、過去にも同様な調査を実施している。1982年の調査では、中国共産党の侵攻があった際に台湾防衛に加わることを支持する人は19%に過ぎなかった。2021年5月の同様の調査では40%だったが、7月には52%にまで上昇した。米軍がアフガニスタンから撤退を表明してから、中国共産党当局は「今日のアフガニスタンは、明日の台湾」と題した世論工作を広げ、米国の国際的立場の失墜を印象付けようとした。しかし、米国の世論は中国共産党の思惑を真逆から否定し、中国共産党の脅威に相反して台湾への関心が一層高まっていることを示した」

     

    1982年当時は、米中蜜月を反映して米国の台湾防衛賛成論は19%に過ぎなかった。今年5月でも40%と過半にならなかった。それから2ヶ月後には、ついに52%が台湾防衛に賛成したもの。中国脅威論の高まりが背景にある。中国共産党は、民主主義政治の強靱さを理解すべきである。中国が脅せば、何倍かのエネルギーになってはね返るのだ。 

     

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