勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2021年09月

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    上場企業の発表する決算報告書は、あとから有価証券報告書として監査意見も発表される。現在、話題になっている中国恒大の場合、監査報告書には何らの「注釈」も付かず、経営問題はないとされていた。現実には、大変な事態が持ち上がっていた。悪い兆候を見逃したのか。全くそれもなかったのか。注目されるところだ。

     

    恒大の取締役会は1~6月期(上半期)の決算報告書で、短期債務を返済する能力や継続企業として存続する能力について懸念を表明していたという。こうなると恒大の経営危機は、会計事務所の会計監査時点では大丈夫でも、上半期を過ぎてから悪化していたことが明らかになったのか。これから、話題になりそうだ。

     

    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(9月25日付)は、「中国恒大の会計監査、出されなかった『警告』」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「昨年、中国の不動産開発大手、中国恒大集団(チャイナ・エバーグランデ・グループ)の株式や債券価格が乱高下し、同社は新型コロナウイルス流行下でも売り上げを伸ばすために物件の大幅な値引き販売に踏み出していた。一方、政府は同社の過剰な借り入れに懸念を示していた。それでも、監査法人は恒大が今年の春に公表した2020年の決算報告書にお墨付きを与えていた」

     

    私は若い頃、東洋経済記者で『会社四季報』記事も書いていた。その経験から言えば、市場で悪い噂の出ている企業については、同業の評価も聞いて執筆するものだ。それに、社内に過去、同一企業を担当した記者が何人もいるから、甘い記事を書くとすぐにチェックされる。東洋経済編集局は、こういう無形システムが連綿として続いている。

     

    恒大のような巨大企業の監査ではチームで行うはずだ。参加した公認会計士が全員、同じ判断をしていたとすれば、それなりの根拠があったのであろう。いずれ、監査企業から説明があるだろう。

     


    (2)「恒大は現在、総額3000億ドル(約33兆円)を超える債務を抱え、経営破綻の危機に直面している。中国政府は地元当局に対し、恒大が破綻した場合に備えるよう指示している。監査を担当した大手会計事務所のプライスウォーターハウスクーパース(PwC)の香港事務所は恒大の昨年の財務諸表を承認した際、いわゆるゴーイングコンサーン(継続企業)注記を記載しなかった。それが記載されれば、当該企業が少なくとも12カ月間存続できる能力について、監査法人が疑問視していることを示す警告となる。PwCはコメントを控えた。恒大はコメントの要請に応じていない」

     

    監査報告では、問題があれば「注記」を記載することになっている。恒大の最新監査報告書にはそれがなかったという。

     

    (3)「恒大は野心的な拡大戦略を追求するため、借り入れを膨らませた。中国当局は昨年、不動産開発業者の債務膨張を抑制する措置として「3つのレッドライン」を導入したが、恒大はこの基準を満たすことができずにいる。恒大にとって最も差し迫った財務上の問題は、短期債務の返済だ。直近の決算資料によると、サプライヤーへの支払いなどを除く、銀行などからの借り入れが885億ドルあり、このうち約42%が1年以内に返済期限を迎える」

     

    中国人民銀行(中央銀行)は昨年8月、大手不動産会社に対して負債比率など守るべき財務指針「3つのレッドライン」を設けた。

    「総資産に対する負債(前受け金を除く)の比率が70%以下」

    「自己資本に対する負債比率が100%以下」

    「短期負債を上回る現金を保有していること」

     

    不動産会社は守れなかった指針の数に応じて銀行からの借り入れ規模などが制限される仕組みであった。恒大は、前記の3項目中2項目がパスしなかったという。会計事務所が、この事実にいつ気付いたかである。

     


    (4)「恒大は昨年の秋、資金繰りの行き詰まりを回避し、今年6月には、債務返済ができなかったことは過去に一度もないと表明していた。しかしながら、恒大の取締役会は1~6月期(上半期)の決算報告書で、短期債務を返済する能力や継続企業として存続する能力について懸念を表明していた。監査を受けていないこの報告書は、恒大が財務上の問題を明確に認識していたことを示している」

     

    恒大は、中国不動産開発企業第2位の企業である。その「ブランド」で金融機関から資金を借入れていたのだろう。一方では、グッチや家電などの景品を付けて「理財商品」(利息7~12%)を売って資金集めをしていたことも判明している。資金調達で相当に苦しんでいた事実が、会計事務所に把握できなかったのだろうか。恒大の取締役会の上半期の決算報告書では、短期債務を返済する能力や継続企業として存続する能力について懸念を表明していたのだ。

     

    (5)「米国や香港の会計基準に基づくと、恒大の財務状況に関する懸念は、20年の決算報告書でゴーイングコンサーンの注記を記載するほど大きくはなかったかもしれない。専門家によると、注記の記載に関するハードルは高く、こうした警告が示される前に企業が倒産や事業再編に至るケースは多い。米国会計基準では、ゴーイングコンサーン注記が必要かどうかの判断は、まず会社の経営陣が行う。その後、監査法人が別個に評価を行い、経営陣が同意しない場合でも警告を出すことができる」

     

    香港の会計基準と米国の会計基準では、「注記」の出し方が異なるという。米国式では厳しいが、香港式ではそうでもないのかも知れない。いずれにしても、一件落着後に会計事務所の説明があるだろう。

     

    テイカカズラ
       

    EV(電気自動車)が、世界を席巻する日は目前だ。自動車業界は生き残りを賭けて血眼になっている。そのカギは技術であり特許レベルが、勝敗の帰趨を決める。

     

    『日本経済新聞』(9月2日付)によれば、電気自動車(EV)の技術で日本の車業界が優位に立っていることが、米国における特許の分析から分かった。特許の重要度をスコア化し出願企業を順位付けしたところ、首位はトヨタ自動車だった。日本企業が上位50社の4割を占めたのである。

     

    日本経済新聞が、特許調査会社パテント・リザルト(東京・文京)と共同で、7月初旬の米国でのEV関連特許を調べた。競合他社によって類似特許として引用された回数や、他社から審判を申し立てられた回数などをスコア化した。回数が多いほど競争力のある重要な特許と評価できる。それによると、次のような結果である。

     


    EV関連特許にはモーターや電池など車の構成部品に関するものや、充電設備などインフラの技術も含む。首位はトヨタで3位にホンダが入った。上位50社中21社を日本の車メーカーとデンソーなど部品大手が占めた。

     

    米国企業は2位になったフォード・モーターなど13社が入り、ドイツと韓国がそれぞれ5社だった。中国企業は32位のEV大手、比亜迪(BYD)など2社にとどまった。欧州連合(EU)での特許分析でも、米国と同様に日本企業の技術優位が浮かび上がった。

     

    EV関連技術をスコア化すると、次のような結果となった。

    1位 トヨタ  8363点

    2位 フォード 6564点

    3位 ホンダ  3849点

    4位 GM   3283点

    8位 テスラ  1741点

     


    今、注目のテスラは8位であり、1位トヨタのスコアに比べて約5分の1というレベルである。上記のランクには韓国車は入っていない。欄外だが、現代車が10位、起亜が20位である。

     

    『朝鮮日報』(9月26日付)は、「EV競争力、特許1位はトヨタ 現代・起亜自は5位」と題する記事を掲載した。

     

    GM、フォルクスワーゲン、現代自動車など世界の自動車メーカーが電気自動車(EV)への進撃を宣言し、自動車産業の地殻変動を予告している。韓国の代表走者である現代自動車は今月2日、高級ブランド「ジェネシス」をEVに転換する計画を表明し、青写真だけは業界トップ企業に合流した。しかし、現在のレベルの競争力に安住していては、新たなライバルが無数に登場するEV時代に苦戦しかねないという指摘も聞かれる。

     

    (1)「最近、日本経済新聞は特許調査会社のパテント・リザルトと共同で米国に7月時点で登録されているEV関連特許の保有状況を調べた。ライバル企業の特許使用件数、特許審判の提起件数など特許の重要度を反映して点数化した結果、現代自動車と起亜自動車はそれぞれ1694点、911点で10位、20位だった。現代自関係者は「現代・起亜自が南陽研究所で研究能力を共有しており、特許も共有している点を考慮すると世界5位水準だ」と語った

     

    日経新聞によれば、現代のスコアと起亜自を合計しても2605点になる。このレベルでは、4位のGMが3283点であるから「5位」と称しているのであろう。

     

    (2)「しかし、1位のトヨタの点数(8363)点)との格差はあまりに大きかった。24位はフォード、ホンダ、GMの順で、いずれもEVへの転換を急いでいるメーカーだ。フォードは2025年までにEVに220億ドルを投資すると宣言。GMは25年までにEV100万台の販売を目標に掲げた。EVメーカーのテスラは8位に名を連ねた。自動車業界関係者は、「トヨタはまだEV生産を本格化させていないが、一度に業界地図を塗り替える技術力を持っている」と指摘した。さらに、米国への特許登録・公開が事実上封鎖されている中国の比亜迪(BYD)など中国メーカーを含めると、現代自の特許能力はさらに順位が劣る可能性が高い」。

     

    1位のトヨタが8363点から見ると、現代・起亜自の合計点2605でも3割レベルに過ぎない。これでは、競争にならないであろう。この弱点を何でカバーするのかが問われる。

     


    (3)「EVの競争力で最も重要なバッテリー分野で、LG、SK、サムスン電子など世界最高レベルの韓国企業の存在は大きな競争力だ。EV駆動システムを生産する現代モービス、最近市場に参入したLGマグナなど競争力を持つ部品メーカーも多い。現代自関係者は「現代自のEV専用プラットフォーム(E-GMP)は90%以上、国内企業が協力して開発した国産製品だ。EVの重要な競争力は確保している」と説明した」

     

    韓国は、国内のバッテリーでカバーするというが、トヨタは全固定電池という「次世代バッテリー技術」のパイオニアである。

     


    全固体電池はリチウムイオン電池開発の最終章と位置づけられている。短い充電時間、長い航続距離。それに、火災事故頻度の激減と夢の電池である。
    トヨタが9月7日、全固体電池で走る電気自動車を公開した。公式ユーチューブチャンネルで公開した映像には昨年6月に開発したという説明も付けた。トヨタは、「世界で初めての全固体電池搭載プロトタイプ自動車で正式なナンバープレートも取得した」という英文の説明も付け加える余裕を見せている。

     

    トヨタはまた、2030年までに電動車用電池の生産と研究開発に約1兆5000億円を投資すると発表した。世界で脱炭素の流れが強まる中、ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)などの需要拡大に向けて電池のコスト低減に取り組むとともに、生産体制を整えるのである。韓国は、トヨタが世界で独走態勢を固め始めていることから、夜も安心して眠れない日々が続くであろう。


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    中国恒大集団(チャイナ・エバーグランデ・グループ)は、9月23日の期日までにドル建て債の利払いを実施しなかった。ただ、期日を過ぎても支払いは可能で、債権者によるデフォルト(債務不履行)の宣言が可能になるまで30日間の猶予期間がある。

     

    この裏には、中国政府が恒大集団の銀行口座の管理を強化しているという事実が浮上した。同社が資金を債権者への支払いに回すことなく、未完成の住宅プロジェクトの完工を優先させるようにするためである。政府にとっては、国内優先で外債債権者は後回しという構図がはっきりしている。住宅都市農村建設省は8月、中国全土の関連当局に対し、恒大の不動産プロジェクト向けでエスクロー口座に保管されている資金を監督するよう指示した。以上は、『ロイター』(9月25日付)が報じた。

     


    『ブルームバーグ』(9月24日付)は、「中国恒大のドル建て債利払い、今後の焦点は30日間の猶予期間に」と題する記事を掲載した。

     

    中国の不動産開発大手、中国恒大集団は23日が期限だったドル建て債利払いに関して異例の沈黙を続けており、今後の焦点は30日間の猶予期間に移る。

     

    (1)「中国恒大は計8350万ドル(約92億円)相当のクーポン支払いを実行した兆しを見せていない。これにはデフォルト(債務不履行)が宣言される可能性の前に、30日間の猶予期間が設けられている。過去にはこうした猶予期間に利払いを実施した中国企業もある。例えば、昨年は山東如意科技集団、2019年には青海省投資集団がそれぞれ期間内にクーポンを払った。数年前には不動産の恒盛地産が猶予期間に複数の利払いを行い、そのうち少なくとも1件は最終日ぎりぎりというタイミングだった」

     

    金利支払い期日を過ぎても、デフォルト宣言されるまで30日間の猶予がある。その間に資金繰りを付ければ、デフォルトを回避できる仕組みになっている。

     

    日本では、支払い期日を守れなければ一発で「アウト」、会社更生法扱いになる。高度成長時代は、メインバンク(主取引銀行)が企業金融の面倒を見てきたから、上場企業のデフォルトは数年に一社程度であった。その際、メインバンクの面目も丸潰れという不名誉を被った。日本では「信用第一」であったが、逆に企業の新陳代謝を疎外したという批判もある。だが、中国に見る「デフォルトOK」という雰囲気は、モラルハザードに陥っている証拠でもある。世も末という印象を拭えない。

     


    (2)「一連の前例は、デフォルトを回避する最も明快な方法となる。中国は市場に対してより的確にリスクを織り込むよう促しているが、今年に入り社債の不履行が記録的な水準に増える中で、当局はモラルハザードへの対応と影響の波及拡大防止を両立させる必要がある。これとは別の方法に債務を巡る合意があるかもしれない。19年12月に北大方正集団が猶予期間に20億元(約340億円)規模の債券償還を巡って保有者と2カ月の延長で合意。最終的には裁判所主導の債務再編となる中で延長後の期日までに償還しなかった」

     

    中国では、企業格付けが機能していない。デタラメな格付けをしている結果だ。中国を信用出来ないのは、こういう根幹部分が賄賂で歪められているのである。今回のような、バブル崩壊という大嵐を経て、中国経済に倫理性が植え付けられるかどうかである。

     

    もともと、経済倫理のない国である。中国『史記』の著者である司馬遷は、『貨殖列伝』という中国商人の高い倫理性を書き残したが、出版されたのは死後である。生前の出版を恐れたのは、商業と商人に関する記述が罰せられるためであった。こうして、中国には経済倫理を論じることを御法度にしてきた歴史がある。今なお、「戦狼外交」が幅を効かす裏には、倫理性が欠如していることの証明である。歴史とは、恐ろしいものだ。秦の始皇帝時代の「商業」弾圧精神が、現代まで生き続けている。

     

    (3)「中国恒大は先週、電気自動車(EV)ならびに不動産管理部門の持ち分売却に関して大きな進展が見られなかったと発表したが、猶予期間は資金調達に向けた追加の時間稼ぎになる。事情に詳しい関係者によれば、中国当局は同社担当者との最近の会合で、デフォルト回避に向けて社債保有者との意思疎通を積極的に進めるべきだと伝えた」

     

    下線のように、中国当局はポーズをとるが、現実には何も救済行為はしていない。それどころか、冒頭に既述したように恒大の銀行口座を管理して、身動きできないようにしている。

     

    『ブルームバーグ』(9月24日付)は、「中国政府、恒大の銀行口座を監督ー住宅プロジェクトの完工確保で」と題する記事を掲載した。

     

    (4)「関係者によれば、強化された監督体制の下で、恒大の資金はまずプロジェクト物件を確実に引き渡すよう、建設資金として用いられる。政府が監視する口座からの現金支払い、例えば供給業者への支払いなどは当局の承認が必要になるという。一部の都市では関連当局がすでにこうした措置を実施していると関係者は説明した」

     

    中国当局は、すでに「恒大倒産」の前提で、銀行口座を管理している。現金を金利などの支払いに充てさせず、建築工事を続行させて「倒産」を待つ手法になっている。こういう状態で、次の業者に残りの工事を終えさせて、住宅購入契約者に手渡す段取りなのだ。これが、中国手法による倒産に伴う残務処理法である。最終的に損失を被るのは、資金の出し手である。当局が、外債の金利などを支払うよう斡旋する意思はないと見るべきだろう。 

     

     

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    米国は、覇権争いをめぐって本格的に中国を退ける体制を強化している。同盟糾合による総合力で、中国を圧倒する準備の開始だ。米国には、中国を退けるまでに数十年掛かるという見方も出るほど。強敵という認識である。

     

    だが、こういう議論の立て方は余りにもアバウトに見える。覇権争いの基盤は経済力である。具体的に言えば、GDPの規模がものを言うのだ。中国の実質GDPは、ざっと計算した米国の72%(2019年)である。だが、中国のGDPは6~7%の水増しがある。これを差し引きすれば、中国のGDPは米国の6割強であろう。

     


    この中国経済は、ゴム紐をピーンと引っ張った状態で伸びきっている。具体的には、人口動態が急速に悪化していることだ。生産年齢人口比率は、2010年にピークを過ぎて低下局面に向かっている。はっきり言えば「衰退経済」である。

     

    この中国が、米国と覇権争いするとは正気の沙汰でない。負け戦を挑んできたとも言える。この異常な状態をどうやって中国に理解させるのか。中国が正常感覚でない以上、同盟国が結束して中国へ間違いを知らせることである。同盟国の結束の重要性がここにある。韓国は、中国の法螺話をまともに聞かされて、米中間でフラフラしている状態だ。困ったことである。

     


    『日本経済新聞』(9月25日付)は、「米中対立、数十年続く 『TPP、中国加盟阻むべき』」と題する記事を掲載した。元米大統領補佐官へのインタビュー記事である。

     

    マクマスター氏は、トランプ米政権時代の2017年から18年にかけて大統領補佐官を務めた。元陸軍中将。湾岸戦争やイラク戦争、アフガニスタン駐留など現場経験が豊富で歴史への造詣も深い。近著に『戦場としての世界 自由世界を守るための闘い』

     

    マクマスター元米大統領補佐官(国家安全保障担当)は9月24日、米中の対立は長期にわたり、数十年続くこともあり得るとの予測を示した。中国による環太平洋経済連携協定(TPP)への加盟は阻むべきだと主張。日本の安全保障政策では、自衛隊が敵地への反撃能力を持つことが日本の防衛に有用との見解も示した。

     


    (1)「日本経済新聞のインタビューで語った。米中対立が長期化する理由として「中国の共産党政権は権力の独占に執着し、支配力を失うことを恐れている」と指摘した。共産党が強権体質を改めない限り、米側が融和政策に転じることはないとの姿勢をにじませた。そのうえで「中国共産党が競争に勝てば、世界の自由、繁栄、そして安全は後退してしまう」と警告。米国と他の友好国が結束し、中国が政治、経済の影響力を拡大するのを阻止すべきだと訴えた」

     

    中国共産党は、旧ソ連共産党がそうであったように覇権主義である。ソ連は、軍拡の重みに耐えきれずに「自沈」した。中国共産党にもその兆候がすでに出ている。習氏が、「共同富裕論」を唱えて、テック産業を締め付け製造業に特化させたい意図は明白である。軍拡路線の強化である。この過程で、不動産バブルを引き起した不動産開発企業も邪魔になってきた。だから、破産に追込む姿勢を見せている。こうして、純粋に、軍事力に結びつく産業だけに特化して、労働・資本を集中させる方針をとっている。

     


    この軍拡重点主義は、経済のパイ拡大を限定させる。雇用問題を引き起し、多様化する国民の価値観と齟齬を来たすはずだ。これを抑えるべくさらに強圧的になるという悪循環に陥るであろう。
    マクマスター氏は、米中の覇権競争が数十年続くと見ているが、それ以前に中国経済は瓦解するであろう。

     

    グローバル経済で成長してきた中国経済が、突然の封鎖経済体系に転換して維持できるはずがない。技術もほとんど窃取したものだ。基礎技術から開発したものは、ほぼゼロであろう。こういう中国経済の潜在的発展性に限界があるのは当然である。例えば、半導体技術がそれである。

     

    (2)「中国のTPP加入問題を巡っては、「当然ながら、中国を除外することが極めて重要だ」と力説。中国を迎え入れたら、透明で公正なルールを掲げるTPPの体制が変質してしまうとの懸念を示した。一方で、台湾の加盟は「各国は台湾と通商関係がある。私たちは台湾の半導体などにも依存しており、参加は適切だと思う」と支持した」

     

    中国のTPPへ加入する条件整備は、共産党政権下での国有産業主体では不可能である。それを自覚しながらTPP加入を申請したのは、台湾のTPP加入阻止が目的であろう。あわよくば、中台の同時加盟という僥倖を狙っているだろうがこれもダメ。中国の条件が揃わない結果である。

     

    そこで中国は、「一つの中国論」を持出すはずだ。これも、見当違いである。台湾は、WTO(世界貿易機関)加盟国である。貿易では、関税区域が加盟資格になっているので、台湾はWTOへ加盟しているもの。中国の「一つの中国論」は、貿易面で破綻しているのだ。

     


    (3)「ただ、米国自身のTPP復帰については「可能性は高くない」と明言した。自由貿易へのアレルギーが米国内になお強いためで、米政府としては日米や米・オーストラリアといった2国間の貿易協定を広げることで、インド太平洋への経済関与を深められると語った」

     

    米国が、TPPに復帰するのは時間が掛かるという議論は無責任の極みである。自分でTPPを作りながら、土壇場で脱退した米国は非常識である。米中覇権を勝ち抜くには、自ら世論をなだめてTPPへ復帰するべきだ。それが、同盟国への義務である

     

    (4)「米英豪は今月、新たな安全保障協力の枠組みである「AUKUS」の創設を決めた。この動きについて「排他的なクラブではなく、日本は事実上のメンバーだ」と述べ、これを機に米英豪と日本がさらに安保協力を深めるべきだと訴えた」

     

    AUKUSは、原潜保持のグループである。日本が原潜を保持することは、東南アジア諸国へかつての悪夢(第二次世界大戦)を思い出させることになり得策でない。アジア諸国が、日本へ原潜保持を依頼する時代になればともかく、現状では原潜を持つべきでない。

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    約2年わたって猛威をふるってきた新型コロナウイルスは、あと1年以内に終息する見通しという報道が増えている。モデルナのステファン・バンセル最高経営責任者(CEO)も、このような予想を語った。あとは、定期的なワクチン接種が必要という。インフルエンザ並みの予防が必要になる。

     

    問題は、中国のようにロックダウン(都市封鎖)を厳重に行い、感染抵抗力の小さい国では、過渡的にコロナ感染者の急増というリスクを抱える。中国は、欧米の優れたワクチン受容を拒否しているだけに、どのように対応するのか。

     


    『中央日報』(9月25日付)は、「ワクチン開発者『1年以内にコロナ収束 さらに強い変異株出現は難しい』」と題する記事を掲載した。

     

    新型コロナワクチン開発者の間で1年以内に新型コロナが収束して日常生活に復帰できるという楽観論が相次いで出ている。ただ、高いワクチン接種率、そして富裕国と貧困国のワクチン格差が解消されるという前提である。

     

    (1)「ワシントンポスト(WP)によると、モデルナのステファン・バンセル最高経営責任者(CEO)は23日(現地時間)、スイス日刊紙ノイエ・チュルヒャー・ツァイトゥング(NZZ)のインタビューで「来年は日常生活に復帰できそうか」という質問に対し、「今日から1年以内には可能だと思う」と答えた。バンセル氏は、ワクチン産業全般にわたり新型コロナワクチンの生産が拡大し、ワクチンの十分な確保が可能になったという点を理由で提示した。続いて「来年半ばまでに地球上のすべての人が接種できるほどワクチンを確保できると予想される」とし「ブースターショット(追加接種)も必要な分を接種できるだろう」と述べた」

     


    9月24日開催されたクアッド(日米豪印)首脳会議では、全世界に12億回分を超えるワクチンを供与することで合意した。4首脳は今年3月にオンラインで協議し、10億回分のワクチン製造体制を整えるとしていたので、生産量の上乗せを図る。

     

    世界中でワクチン増産体制が整えば、「来年一杯で新型コロナ終息」の可能性が出てくるのであろう。今後、変種の出現もなさそうだという。

     

    (2)「ブースターショットは、今後1-3年ごとに必要になると予想した。バンセル氏は「結局、新型コロナはインフルエンザと似た水準になるはずで、予防接種を適時にすれば冬を問題なく過ごすことができ、ワクチンを接種しなければ入院するリスクを負えばよい」と話した。新型コロナが一般の風邪レベルで扱われるという見方は、英製薬会社アストラゼネカのワクチン開発者の間でも出てきた」

     

    日本でもブースターショット(追加接種)は、来年から始まると報じられている。日本を例にとれば、「ウイズ・コロナ」も次第に軌道に乗るであろう。

     


    (3)「アストラゼネカとワクチンを共同開発したオックスフォード大のサラ・ギルバート教授とジョン・ベル教授は、デルタ株より強力な変異株は出現しにくいという見方を示した。ギルバート教授は「ウイルスは免疫力が強い人の間で伝播しながら徐々に致命率が低くなる」とし「従来の免疫を突破するほど伝染力が強く致命的な変異株に進化するのは難しいだろう」と述べた。ベル教授もワクチン接種者が増えている英国について「最悪の状況は通過した」と評価し、「ワクチン接種率が高まる中でウイルス拡大は弱まる傾向が表れている」と説明した」

     

    専門家は、デルタ株より強力な変異株は出現しにくくなるとしている。「ウイルスは、免疫力が強い人の間で伝播しながら徐々に致命率が低くなる」結果と判断している。

     


    (4)「これに関し現在、ファイザー取締役のスコット・ゴットリーブ元米食品医薬品局(FDA)局長も「デルタ株が新型コロナ大流行の最後なるだろう」と話した。ゴットリーブ氏は、ワクチン免疫を回避する変異株が出現しないという前提で新型コロナが季節性疾病になるという点に異見を唱えなかった。また、新型コロナが風土病になるためにはワクチン接種率を高めることが最優先課題だと述べた。ゴットリーブ局長は「米国の人口の80~85%まで接種してこそ感染件数が減少し、拡大ペースが落ち始める」とし、新型コロナと共存する未来について慎重に言及した」

     

    デルタ株が、「新型コロナ大流行の最後なるだろう」とすれば、今後の感染津波は回避できるのかも知れない。それにしても、菅首相はこのコロナによって政治生命を左右されることになった。政治家も時の運・不運に左右される運命であることを改めて見せつけている。「首相職、お疲れ様でした」

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