中国政府が10月23日、不動産税を試験的に「5年間」導入の検討を決めた。時期や実施都市は未定である。せいぜい、1~2都市と予想されるが、早くも住宅暴落説が出るなど、騒ぎが広がっている。
住宅バブルをここまで拡大させ、その頂点での不動産税導入とは、タイミングとして悪いことは事実だ。これまで無税であった住宅に対して課税されるとなれば、その衝撃が広がるのは当然である。10年前に実施すべきであったのだ。そうすれば、住宅バブルの拡大を防げたはずである。今になって、「共同富裕」という所得分配の不平等是正と目標を突付けられ、二進も三進も行かなくなっている。政策予見能力が、ゼロであることを示している。
『大紀元』(10月25日付)は、「中国当局、不動産税を試験的に導入 専門家『経済的不確実性が高まる』」と題する記事を掲載した。
中国の全国人民代表大会(国会に相当、全人代)常務委員会は10月23日、国務院(内閣に相当)に対して、一部の都市で不動産税を試験的に導入する権限を与えると決定した。試験期間は5年。専門家は同税制度の導入により、不動産バブルは崩壊する一方で、中国経済への大打撃が必至だと警告した。国営新華社通信によると、全人代常務委員会は、課税対象となるのは「居住用」と「非居住用(商業用など)」の各種類の不動産物件と定めた。また、同委員会は「条件が揃った時に、タイムリーに(不動産税関連)法律を制定する」と明示したという。
(1)「習近平国家主席はここ数年、国内不動産市場の過熱化を巡って、「住宅は住むためのもので、投機活動の対象ではない」と複数回発言し、市場の沈静化を図った。習当局は8月、国内の格差是正を目指し「共同富裕」方針を掲げた。10月16日、習近平氏は共産党理論誌「求是」で、『共同富裕を推進する』と題した評論記事を掲載し、「不動産税の立法と(不動産税制度)改革を推し進め、試験導入に取り組む」と主張した」
習氏が、不動産税について試験的導入に取り組むと表明するほど、所得分配の不平等是正が避けて通れない問題になっていることを覗わせている。
(2)「中国国内で不動産税の導入に反対する人が多い理由は、「法的根拠がないため」だと米サウスカロライナ大学の謝田教授は示した。「中国共産党は土地を国有化している。住宅を購入した市民は、住宅使用権を持つが、土地の所有権を有しない。当局の不動産税徴収は『筋が通らない』と主張する人が多い」。反対者は、不動産税は各家庭にとって大きな負担になることも強調している。謝教授は、「不動産税率は不動産相場の約1%にあたるという米国の基準で試算したところ、一世帯が支払う年間不動産税の金額は1万元(約18万円)以上という結果を得た。中間層にとって大きな負担であることがわかる」と述べた」
不動産税の導入に反対する人の理由は、「法的根拠がないため」とするが、それは屁理屈である。ならば、消費税にも「法的根拠」はないのだ。ただ、財源をつくる必要上、課税するもの。住宅という最大の資産に課税せず、日々の暮しに必要な物品に消費税を課す方がはるかに不条理である。
一世帯が払う不動産税が、1%の税率でも約18万円になるという。これまで、これを無税にして消費税をかけてきた。「ジニ係数」が上昇して、社会的不平等を増幅する原因になってきたのである。
(3)「教授によると、反発が最も強いのは、複数の物件、あるいは数十軒、数百軒の物件を持つ党内の既得権益集団だ。「当局が不動産税を本格的に導入すれば、彼らは税金逃れのため、物件を次々と売却することが容易に想像できる」。今年1月、収賄罪などで、当局に死刑判決を受けた国有不良債権処理大手、中国華融資産管理股份有限公司の頼小民元会長について、中国メディア「財新網」は、「100軒余り」の住宅物件を持っていたと報じたことがある」
不動産の無税は、「金持ち優遇」の最たるケースである。共産党を名乗る政権が行うべき政策でない。
(4)「台湾の経済評論家、黄世聡氏は、今、不動産税の試験導入を他の都市に拡大するのは「タイミング的に悪い」と指摘した。同氏は、不動産市場の中国経済に対する貢献度が大きいとし、不動産企業の過剰債務問題に加え、「不動産税の導入は市場への打撃が大きく、中国経済の不確実性がさらに高まる可能性があると述べた。中国不動産市場に詳しい評論家、鄭義氏は、当局が不動産税を導入することに2つの目的があると分析した。「1つは国内の不動産価格、住宅価格の高騰を抑える狙いがある。もう1つは、税収を増やすためだ」と話した」
下線部が、不動産税導入の目的であろう。ここへ来て、試験的にでも不動産税導入を決めたのは、財源不足対策が主なものだろう。土地売却収入に依存する中国財政が、行き詰まってきたにちがいない。習氏によれば、共同富裕実現は2050年頃と先延ばしされた。その前に、財政を立て直す必要があるに違いない。
(5)「鄭氏は黄世聡氏と同様に、市民に不動産税を納めさせることで「不動産市場はさらに低迷する恐れがある」との見方を示した。同氏によると、現在の中国の不動産市場において、取引件数はすでに減っているだけでなく、住宅ローンを払えず物件を手放す人も増えている。謝田氏は、習近平当局の政策で不動産バブルが崩壊すれば、「購入者らの住宅ローン返済の延滞や不動産企業の債務返済困難が予想され、金融機関の資金回収は一段と悪化する」と示した。恒大集団を含む不動産企業の過剰債務が解決されていない今、不動産税の導入は中国経済に「重大な影響をもたらす」と同氏は警告した。「習近平政権がこの悪影響に気付き、不動産税政策を棚上げする可能性はある」
この段階での不動産税導入が、窮余の一策であることは確かである。それだけに追詰められている。凶と出るか吉と出るか。凶の公算が大きい。中国人は、利を見るに敏な民族である。これを忘れてはならない。民衆は、中国4000年の歴史が繰り返す「興亡史」を肌で知っているはずだ。





