勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2021年11月

    テイカカズラ
       

    韓国警察庁長官が、11月に竹島(独島)へ上陸して日韓関係はさらに悪化している。最大の問題は、日韓が所有をめぐって意見が異なる以上、日本の感情を刺激する行動を慎む配慮がゼロであることだ。一方、韓国の中国への態度は卑屈そのもの。旧宗主国へ恭順の意を示した格好である。こういう違いが、日本政府には釈然としない理由であろう。

     

    日本は、尖閣諸島へは国旗も掲げず無人島のままだ。日本国内では公務員(警官か自衛隊員)の常駐を主張する意見もある。そうなると、中国へ軍事行動を誘うようなもので下策である。だから、海上保安庁の巡視艇が警戒しているに止めている。

     

    韓国には、こういう配慮がゼロである。日本へこれ見よがしに観光客を上陸させたりしている。警官まで常駐しており、日本の感情を逆なでしているのだ。デリカシーのない振る舞いである。

     


    『中央日報』(11月28日付)は、「独島『報復チーム』まで設置した日本 『外相間の電話もなく』岸田首相の本性」と題する記事を掲載した。

     

    岸田文雄首相の就任以降、韓日懸案をめぐる日本の態度が徐々に強まっている。強制徴用被害など過去の問題に関連して一方的に「韓国側の先制的な解決策提示」を要求する立場を再確認したうえ、独島(ドクト、日本名・竹島)領有権問題を紛争化しようという意図まで露骨に表しているからだ。岸田内閣が韓日関係改善には関心を向けず、むしろ悪化した両国関係を国内政治的に活用するのに主眼点を置いているという分析も出ている。

     

    (1)「日本は金昌龍(キム・チャンリョン)警察庁長官の独島訪問(16日)以降、韓国側がきっかけを提供するのを待っていたかのように反感を表し、むしろ葛藤を増幅させた。17日(現地時間)、米ワシントンで開催された韓日米外交次官協議の後、一方的に共同記者会見に不参加の意思を通知したのは、事実上、独島をめぐる葛藤のすべての責任を韓国側に転嫁しようという意図と解釈される。特に日本はこうした動きを通じて国際的に独島を紛争地域化する効果を出した。シャーマン米国務副長官が単独で記者会見をすることになった理由を説明する過程で「かなり長い間、日本と韓国の間に異見が続いている」と述べたのは、それだけでも独島が紛争地域という意味として受け止められる可能性があるからだ」

     


    韓国は、竹島帰属が国際法的に正しいと吹聴しているが、全くの噓話である。李承晩大統領(当時)が、勝手に李承晩ラインを引いて韓国領に奪取したものだ。戦前から、島根県管轄であったのだ。米国は、日本領と理解しているほど。こういう問題である以上、韓国は、これ見よがしに政府高官が上陸したり、警官を常駐させる行為を止めるべきだ。それが、友好国への礼儀であろう。

     

    (2)「さらに自民党は、金長官の独島訪問に抗議するため対抗チームを設置することにし、独島領有権の主張を本格化する準備に入った。25日の読売新聞などによると、自民党内の政策立案組織である外交部会と外交調査会は合同会議で、対抗チームの新設に合意し、こうした提言を林芳正外相に伝える予定だ。こうした構図は、独島を実効的に支配している韓国の立場では最悪の状況となり得る。韓国はその間、日本の独島領有権主張にいちいち対応すること自体が紛争の余地を与えるという判断から無対応で一貫してきた。外交部の当局者が26日、自民党の対抗チーム新設および独島訪問推進計画などについて「日本側の根拠のない主張にはこれ以上論評する価値を感じない」と述べたのもこうした理由からだ」

     

    韓国が、日本の感情を踏みにじる行為を続けるならば国際司法裁判所で白黒を付けるべきだ。韓国の主張に自信があれば、日本の提訴に韓国も応じるべきである。裁判結果が出れば、それに従うという約束を互いに交わすべきである。

     

    (3)「問題は、独島問題をめぐる日本の強硬対応と韓国の無対応原則が続く場合、両国関係改善の環境は形成されにくいという点だ。特に韓日両国は葛藤を調整して関係改善の呼び水となる高官級の意思疎通までが事実上断絶した状態だ。2日に英グラスゴーで開催された国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で、文在寅(ムン・ジェイン)大統領と岸田首相は儀礼的なあいさつを交わす時間も持たなかった」

     

    日本政府は、文政権を相手に交渉することに絶望している。それよりも、来年の大統領選を経て、協議したい気持ちであろう。文政権の間には、何らの信頼感もないのだ。

     

    (4)「10日に就任した林外相もまだ鄭義溶(チョン・ウィヨン)外交部長官と就任あいさつ目的の電話もしていない。林外相が13日に米国、18日に中国、23日にインド側のカウンターパートと電話をした点を勘案すると、鄭長官との通話を意図的に先延ばししているとみられる。一部では12月10~12日に英リバプールで開催されるG7外相会合で韓日外相間が会うという見方もあるが、これも実現するかは未知数だ」

     

    福田元首相は、上手い表現を使っている。日本が、話合いたいと思う相手であれば、すぐに電話するもの。日本側に、そういう意思を起させるような動きが韓国にないことだ。日韓関係は、こういう状態でいた方が良い感じもする。互いに相手国へ気を配って、「静の構え」でいればいいであろう。そのときに、何かひらめくはず。それが今、最も必要な時期である。 

     

     

     

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    見えてきた中国経済の困窮度

    米が音頭取る五輪ボイコット

    EUが脱中国へ舵切る理由は

    台湾は半導体で足場を固める

     

    去る11月16日の米中のオンライン首脳会談は、3時間半にわたって行なわれた。多くの点で不一致であったと伝えられている。米高官は、この会談について「中国は相当に胸焼けを起していた」と評した。「胸焼け」とは、食後に消化が悪く気分がすぐれないことを指す。中国は、米国から難問を突付けられ苦戦したのであろう。

     

    非公式情報だが、習氏は「世界を米中で二分割しよう」と提案したとされる。これが本当であれば、中国が「守りの姿勢」に入っていることを示している。多分、中国のアジア覇権を認めろというものだ。この提案は、「休戦案」であろう。台湾を中国へ取り戻して、いずれ米国覇権へ挑戦する狙いであることは間違いない。「罠」である。

     

    米国は、米中オンライン首脳会談以後、中国へ積極的な姿勢を取っている。一つは、北京冬季五輪への外交ボイコットである。政府高官が出席しないのだ。もう一つは、台湾問題である。台湾の国際的な認知度を引き上げ、国際機関へ復帰させる狙いである。いずれも、中国にとっては難題である。著しく、中国のメンツを汚される問題であるからだ。これらについては、後で取り上げたい。

     

    見えてきた中国経済の困窮度

    米国が、ここで中国の足元を見透かしたような戦術に出ている裏には、中国経済の「困窮」がはっきりと見えてきた結果であろう。不動産バブルが、中国の骨格である人口動態(出生率低下と高齢化)を揺さぶっている現実に、習氏がようやく気付いたのだ。昨年、10年に一度行なう国勢調査によって、中国の根本的な弱点を思い知らされたのである。

     

    中国の合計特殊出生率が、「1.3」と日本より低い現実に目を覚ましたのだ。その原因の一つは、不動産バブルによる住宅高騰である。これが、結婚・出産にブレーキをかけていること。また、住宅ローンが個人消費を抑制していることなど、明らかにマイナス要因になっているのである。

     

    こうした事実に基づき、「共同富裕論」を唱えカムフラージュしている。不動産開発企業に三つの財務指標改善点を示して、クリアできぬ企業には融資規制を行なった。この網に掛かったのが、中国恒大である。33兆円以上の巨額債務を抱えているのだ。再建は不可能とみられ、最終的には規模を縮小し分割される運命である。

     


    本格的な難題は、これ以降に始まる。不動産開発が下火になれば、中央・地方の重要な財源である土地売却収入減に見舞われることだ。中国財政は、不動産バブルを「打ち出の小槌」に利用してきた。その、便法がもはや使えないのである。

     

    中国が莫大な国防費を使いながら、公式的には対GDP比1%台に止まっている。非公式の国防費を含めれば、その2倍の費用が投じられていると推計されている。その「隠れ財源」は、この不動産バブルから「掠め取った」土地売却収入であろうことは間違いない。「闇の税収」であったのだ。

     

    土地売却収入減は、すでに地方財政を直撃している。中国財政部(財務省)は11月23日、地方政府の債券発行量および債務残高を公表した。これによると、今年10月までの地方政府債務残高は約30兆元(約540兆円:前年比6%増)に達し、過去最高となった。注目すべきは、借り換え債が51兆円(前年比75%増)になった点である。従来であれば、地方債を発行してもすぐに土地売却収入で返済できた。それが、不可能になったのだ。

     

    今後の不動産バブル鎮火を考慮すれば、借り換え債発行は一段と増えるであろう。中国の経済学者である鞏勝利氏は、米『ラジオ・フリー・アジア』(RFA)に対して、地方政府の「金欠状態」は「前例のないほど深刻化している」と指摘した。同氏はまた、地方政府債務残高は今年、30兆元(約561兆円)を上回る可能性が大きいとした。『大紀元』(11月24日付)が報じた。

     

    地方政府債務残高が約561兆円に達するとすれば、日本の年間GDP規模である。地方政府は、この金欠状態で年金・インフラ投資・エネルギー輸入(石炭・石油・天然ガス)まで賄わなければならない。財政破綻は目に見えてきた。中国は、こういう経済状態へ追い込まれている。不動産バブルの火を消しかけたら、早くもこの始末なのだ。これを以てしても、「中国経済強し」などと言っているのは論外である。

     

    米が音頭取る五輪ボイコット

    米国による、北京冬季五輪への外交ボイコット問題をとり上げたい。オリンピック精神(オリンピズム)は、周知のように「文化・国籍などさまざまな差異を超え、友情、連帯感、フェアプレーの精神をもって理解し合うことで、平和でよりよい世界の実現に貢献する」である。中国が現在、新疆ウイグル族や香港で行なっている人権蹂躙は、オリンピズムに違反している。この視点で、米国が先ず「外交ボイコット」を検討している。「外交ボイコット」では、選手が出場する。ただ、政府高官が欠席するというもの。

     

    米国が、中国の人権蹂躙を理由にして「外交ボイコット」策に出れば、他の先進国もこれに倣って同じ行動に出る可能性が高まる。すでに、英国と豪州が賛同する動きを見せている。米英豪三ヶ国は、「AUKUS」(軍事同盟)を、今年9月に結成したばかりである。この三ヶ国は、人権蹂躙のほかに中国へ格別の対抗心を燃やしている。(つづく)

     

    次の記事もご参考に。

    2021-11-04

    メルマガ307号 「衰退期」へ入った中国、コロナ禍さらなる重圧 「最後の藁」に気付か

    2021-11-18

    メルマガ311号 習近平の「ジレンマ」、経済失速で立ち往生 台湾侵攻は「返り血浴びる」

     

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    中国の振る舞いは、200年前の清国を彷彿とさせる暴挙である。フィリピンのEEZ内の座礁船へ食糧運搬する民間船へ、中国海軍が自国領海を理由に放水銃を浴びせるという「強盗行為」を行なっている。米国からも強い抗議を受けた件だ。米比相互防衛条約を発動させるとまで怒らせたのである。

     

    『ニューズウィーク 日本語版』(11月28日付)は、「中国、南シナ海で横暴続々とフィリピンのEEZ内座礁船の撤去を要求」と題する記事を掲載した。筆者は、大塚智彦である。

     

    中国とフィリピンの間で領有権を巡る争いが続く南シナ海で、フィリピンが拠点として実効支配し海軍兵士が駐留している南沙諸島(スプラトリー諸島)の岩礁にある座礁船を中国側が撤去するように求めていることが明らかになった。

     


    (1)「フィリピンの排他的経済水域(EEZ)にある同拠点を巡って、11月16日に食料などの物資を座礁船に補給するフィリピンの民間船舶が、中国公船により進路妨害や放水銃による放水を受けるなどの妨害を受けた。フィリピン政府が、抗議するとともにマニラにある中国領事館に抗議の活動家や漁民が押し寄せるなど両国関係が緊張する事態となっていた。中国外交部の趙立堅報道官は11月24日、南沙諸島のアユンギン礁(中国名・仁愛礁)にフィリピンが海軍艦艇を座礁させてそこに兵士が常駐し続けて「実効支配」の状況を作り出していることに不快感を示し、同座礁船の撤去を求めた」

     

    中国は、不法占拠している南シナ海を自国領海と宣言し、正規のフィリピンEEZ内での行為を不法として迫害する「強盗行為」を行なっている。こういう200年前の感覚である中国が、アジア覇権を握ったらどうなるか。世も末というのが実感だろう。ともかく、野蛮国である。

     


    (2)「アユンギン礁は、中国が南シナ海のほぼ全域を自国の海洋権益が及ぶ海域と一方的に主張している「九段線」に基づき領有権を主張している。これに対し、フィリピンはEEZ内の岩礁アユンギン礁の浅瀬に1999年海軍の揚陸艦だった「シエラマドレ」を意図的に座礁。兵士を常駐させることで「領有権」を国際社会に主張し続けているのだ。アユンギン礁の座礁船に常駐するフィリピン海軍兵士に定期的に食料などを補給する船舶がフィリピン本土との間を定期的に往復している。ところが11月16日にアユンギン礁に向かっていたフィリピンの民間船舶2隻が中国海警局の公船3隻に進路を妨害され、放水を受ける事案が発生した。民間船舶は放水により一部が損傷したためこの時はアユンギン礁への補給を断念して本土に戻ったという」

     

    この放水銃事件で、中国は米国防相から強い警告を受けることになった。11月15日(現地時間)の米中オンライン首脳会談と同時に起こった事件だが、米国は中国に対して安易な妥協をしないというシグなるを発した形だ。



    (3)「こうした中国側の「威嚇妨害」に対して、フィリピン政府は外交ルートを通じて中国側に抗議するとともにドゥテルテ大統領は22日に嫌悪感と重大な懸念を表明した。しかし、中国側は「自国の管轄圏で法を執行しただけである」としてその行動を正当化。これを受けてテオドロ・ロクシン外相は「中国はこの海域で自国の法を執行する権利はなく、今回の事態は違法行為である。中国によるこうした自制心の欠如は2国間関係を脅かすものである」と述べて中国を厳しく批判した。さらにマニラ首都圏マカティにある中国領事部が入った建物の前では11月24日に活動家や漁民による抗議活動が繰り広げられ、フィリピン国民の間で対中感情が悪化していることが明らかになった」

     

    中国は、フィリピンを舐めきっている。ガツンと一発やらないから、好き勝手を許すことになったのだ。日本が、中国に対して毅然とした姿勢を取り続けること。それが、中国を対日姿勢で慎重にさせるコツである。

     

    (4)「16日の中国公船による「放水事件」について中国外交部の趙報道官は、「フィリピンの船舶2隻が中国の同意を得ずに南沙諸島に侵入した」とアユンギン礁があくまで自国の海洋権益が及ぶ範囲との姿勢を強調していた。フィリピンにしてみれば自国のEEZ内のアユンギン礁に接近するのに「中国側の同意」など不必要という立場であり、両国の主張は全く相容れない状況がこれまで続いている。そうした状況のなか24日に中国は「座礁船の撤去」を求めるというさらなる要求を持ち出して事態をエスカレートさせているのだ」

     

    中国は、さらに笠に着た要求を出している。フィリピンEEZ内の座礁船を撤去せよとエスカレートさせているのだ。こういう中国の行動を見ていると、絶対に許してはいけない相手であることを強く認識させられる。

     


    (5)「中国は、1999年のフィリピンによる座礁船での常駐開始後も何度か補給船への執拗な追尾や妨害行為を行っているほか、2021年3月以降は南沙諸島のパグアサ島周辺やユニオンバンクと呼ばれる冠状サンゴ礁周辺海域に中国漁船200隻以上が長期間に渡って停泊を続けるなどの「示威行動」も確認されている。こうした中国の動きの活発化には、2022年5月に予定されているフィリピンの大統領選という政治的背景も関係しているのではないかとの観測がでている

     

    下線部は、理解しにくい点である。なぜ、中国はフィリピン大統領選前に圧力をかけるのか。経済援助を増やして中国に親和的政権樹立を目指すならば理解可能だ。逆に、フィリピン国民から嫌われることをすれば、野党候補を有利にさせるはずである。

     

    あるいは、中国の意に沿わぬ政権ができれば、もっと酷いことになると予告しているのか。となれば、台湾への圧力と同じスタイルである。いずれにしても、200年前に通用した野蛮外交の踏襲である。習近平氏は、この程度のことしか思いつかぬとすれば、米国への太刀打ちは不可能だ。へたくそな外交である。

     

     

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    世界的な半導体不足が続いている。これまで、パンデミック下で半導体需要構造が変化している結果とみられてきた。それも理由の一つであろうが、中国が大量に買い占めていたという調査結果が出てきた。

     

    米国は、中国への半導体の技術と製品輸出に踏み切っている。これを受けて、ファーウェイなどが、買い占めに動いているというもの。米国は、外資企業の中国での半導体増産にも目を光らせている。韓国の半導体大手SKハイニックスが、半導体をより効率的に製造するために中国の設備を改修する計画の先行きが不透明になっている。米政府が、高度な製造機器が中国国内で使われることを望んでいないためという。

     

    米国が、対中半導体政策をきびしくしているが、一方では、中国企業の買い占めを誘発するという新たな事態を生んでいる。さすがは中国だ。抜け穴探しの名人である。

     


    『大紀元』(11月28日付)は、「世界的半導体チップ不足、中国企業の買いだめが主因―独シンクタンク」と題する記事を掲載した。

     

    2020年末から世界的に半導体チップの供給不足が深刻化している。 最近の調査によると、新型コロナ感染症の大流行のほか、米中ハイテク戦争に備えた中国企業が半導体チップを備蓄したことも需給バランスに影響したという。

     

    (1)「独シンクタンクの新責任財団が11月下旬に発表した報告書によると、米国が2019年に中国大手通信機器メーカー・ファーウェイへの輸出禁止措置を発動し、一部の中国企業は先行き不安に駆られてチップの過剰注文を始めた。中国は、半導体チップ製造の分野で輸入に大きく依存している。 世界最大の半導体消費市場である一方、自給率が低く、半導体は原油を上回って中国最大の輸入品目となっている。同報告書によると、ファーウェイのほか、深圳方正微電子(FMIC)、双威集団などの中国企業が、米国の輸出禁止措置の拡大を念頭に半導体チップの確保に走っており、需要を押し上げている」

     

    中国の半導体自給率は、中国企業と外資企業の半導体生産で計算される。昨年は、中国企業生産分が10%、これに外資企業生産分の10%が加わり、合計の自給率は20%になる。残り80%は輸入依存である。中国が「半導体後進国」であるのは、紛う方なき事実である。それだけに、米国からの半導体制裁によって大きな影響を受けている。

     

    (2)「ファーウェイのホームページに公開された動画では、同社の徐志軍・輪番会長は、一部の中国企業が「従来の在庫ゼロから3カ月、6カ月、ひいてはもっと長いサイクルの在庫を用意している」と発言した。米商務省は2019年5月、ファーウェイと関連企業70社を事実上の禁輸リストにあたる「エンティティ・リスト」に追加した。ファーウェイは米政府の承認なしに米企業から半導体チップを含む部品を仕入できなくなった。翌年5月に禁止令が拡大され、ファーウェイと米国以外のサプライヤーとの取引も禁じた」

     

    下線の部分は、中国企業が半導体を買い占めて在庫補充していることを証明している。とんだ所に抜け穴があったわけだ。こうなると、半導体企業は、ユーザーと直接取引しない限り、中国への「横流し」防止が不可能になろう。そういう取引仕組みができるかどうか。対中禁輸制度の「チンコム」(1952~57年)の復活しかない。

     

    (3)「ファーウェイは昨年に備蓄した半導体チップの規模を公表していないが、徐志軍・輪番会長は、今年4月に開催された同社のグローバル・アナリスト会議で、米国の厳しい規制にもかかわらず、ファーウェイがチップニーズに対応できたのは在庫があったからだと発言した。中国税関のデータからも中国企業の半導体チップ買いだめが進んでいることがわかる。中国は2018年に4175億枚の半導体チップを輸入した、2019年には275億枚増の4451億枚となり、昨年はさらに約20%増となり年間で過去最高の5435億枚となり、2021年1〜10月の輸入量は前年同期比でさらに20%増えた」

     

    ファーウェイは、半導体在庫が減れば売上が落ちるとみられていた。それが、逆に輸入を増やしている。こうして、中国全体の半導体輸入量は激増した。今年1~10月で前年比20%増と増加ペースに衰えはない。

     


    (4)「最新のデータによると、世界の半導体売上高および出荷量はここ数カ月間、増加傾向にある。このことから、チップ不足は出荷量の減少によるものではないと報告書は指摘した。米半導体工業会(SIA)の今月初めの発表によると、2021年第3四半期の世界の半導体売上高は1448億ドルで、前年同期比27.6%増、今年の第2四半期に比べて7.4%増だった。2021年第3四半期の半導体出荷量は史上最高だった。半導体の受託生産で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)のマーク・リュー会長は、米タイム誌に対して、販売された半導体は製品に使用されておらず「明らかに買いだめしている人がいる」と述べた

     

    TSMCの経営トップが認めているように、納品した半導体が製品に組み込まれていないという。これは、明らかに仮需を生んでいる。だが、中国の在庫手当も無限に続くものでない。一定の在庫ラインに到達したら、発注を止めるはず。そのとき、半導体市況は、ドーンと崩れかねない。危ない橋を渡っているところだ。

     

     

     

     

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    来年2月の北京冬季五輪開催を前に、米国が「外交ボイコット」を検討している。欧州も同調の動きを見せている。英国と豪州は、「AUKUS」結成し対中軍事戦略で団結しているので、米国と同一行動の可能性が論じられている。この三ヶ国の外に、高度諜報機関「ファイブアイズ」(米英豪加NZ)に加入するカナダやNZ(ニュージーランド)も加わり、5ヶ国が声明を発表して外交ボイコットするとの説も伝わっている。

     

    こういう状況を前に、中国はどういう姿勢を取るかである。「幸い」とでも言うのか、最近は南アを発生源にする新たなコロナ変種「オミクロン株」が発見された。強い伝染力を持つとされるので、中国はこれを理由にして、「外国賓客を招待しない」という決定をして肩すかしを食わすのでないか、という予測が出て来た。

     


    『ニューズウィーク 日本語版』(11月27日付)は、「北京五輪の外交ボイコットに対抗する中国が打つ『先手』」と題する記事を掲載した。筆者は、サム・ポトリッキオ ジョージタウン大学教授である。

     

    アメリカは、中国の人権問題を理由に2月の北京冬季五輪をボイコットするのか。五輪のボイコットに前例がないわけではない。歴史を振り返ると、正式なものだけでも、1956年メルボルン大会、64年東京大会、76年モントリオール大会、80年モスクワ大会、84年ロサンゼルス大会、88年ソウル大会の6つの大会を一部の国がボイコットしている。しかし前回の五輪ボイコットは34年も前のことだ。しかも、大会の規模も昔とは比べものにならないくらい大きくなっている。もしアメリカが北京五輪のボイコットに踏み切れば、激震が走るだろう。

     

    (1)「もっとも、五輪のボイコットは象徴的な意味しか持たない。80年代にアメリカと当時のソ連が互いの国で開かれた大会をボイコットしたときも、五輪に向けて生涯を懸けて準備してきたトップアスリートたちの努力が台無しになる一方で、世界秩序が大きく変わることはなかった。もしアメリカが今回の北京五輪をボイコットすれば、新たな超大国によって地位を脅かされている旧超大国が恐怖心を募らせ、いら立っているという印象を与えかねない。アメリカの国際的な威信と相対的な経済力が低下していることは、ボイコットを思いとどまらせる要因になるかもしれない。中国が報復措置を取った場合にアメリカが被るダメージは昔よりも大きい。五輪スポンサー企業の多くにとって、中国市場の重要性が増していることも無視できない」

     


    この記事は、かなり中国へ偏重した内容である。米国が衰退していると決め付けているが、実態は逆である。中国経済は不動産バブルの崩壊で、経済成長の主柱を欠いた状態だ。この筆者は多分、経済分析では不得手であり、中国包囲の国際情勢についても無関心である。あるいは、中国サイドの学者かも知れない。それほど、経済分析の素養を感じさせないのだ。

     

    中国が、米国へ与えるダメージはない。中国の「借り物技術」の限界が明らかに露呈している。半導体という戦略部門が、未だ「離陸せず」という状態だ。ここで、さらに米国が締め付ければ、中国経済は瀕死の重傷を負うほど追い込まれている。

     

    外交ボイコットは、米国単独で行なうのではない。最低限、米英豪の三ヶ国が行なう。これに、欧州などが中国の人権弾圧反対で起ちあがる。こういう、国際情勢の変化を全く見落とした記事である。

     


    (2)「
    アメリカでは、米国オリンピック・パラリンピック委員会も大多数の選手も、五輪への不参加には強く反対している。それよりも無難で実行しやすいのは、いわゆる「外交ボイコット」だ。選手団は派遣するが、政府高官は派遣しないという形の対応である。このアプローチは開催国である中国に屈辱を与える一方で、80年のモスクワ五輪をボイコットした際の失敗を繰り返さずに済む。アメリカがモスクワ五輪への選手団派遣を見送ったことは、当時のソ連政府に絶好のプロパガンダの機会を与えてしまったという見方が根強くあるのだ。80年のソ連や今の中国のように政府が厳しく情報統制を行っている国では、アメリカが五輪に参加しなければ、アメリカの衰退の表れだと自国民に印象付ける材料に使われかねない

     

    中国は、必死で「米国衰退・中国繁栄」というプロパガンダを行なっている。だが、この「嘘宣伝」をどれだけの中国人が信じるだろうか。パンデミック下で雇用不安を抱え、不満足なワクチンで「ゼロコロナ」に付合わされ、都市封鎖させられている中国に先進性は全く見られないのだ。中国人は、意外に裏情報に精通している民族である。「小話」の多いことが、それを証明している。

     


    (3)「
    アメリカの国際的な地位が低下していることを考えると、アメリカ政府が北京五輪の全面的なボイコットに踏み切ることはおそらく難しい。では、外交ボイコットで落ち着くのか。中国は、非常にプライドを重んじる国だ。アメリカが政府高官を派遣せず、自国のメンツがつぶされる事態は、避けようとするだろう。つまり、アメリカ政府が正式な決定を下す前に先手を打つ形で、新型コロナウイルス対策を口実にして外国政府高官の参加を全て拒否する方針を打ち出すのではないかと、私は予想している」

     

    コロナ変種「オミクロン株」が発見された以上、有効ワクチンを持たない中国は、さらに窮地へ追詰められる。「海外要人招待」を中止は、メンツの問題でなく実利的であるかも知れないのだ。

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