勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2021年11月


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    歴代首相の中で地味な存在であった福田康夫氏が、韓国紙『中央日報』のインタビューに答えた。日本人がなぜ、韓国への気持ちが従来と変わったのかを諄々と説いている。岸田首相は、就任に当り海外要人と順次、電話会談を重ねた。韓国大統領は八番目であった理由について、「話したい順番が八番目だったのだろう」と禅問答である。これこそ、日韓関係が低位になった証拠だ。

     

    『中央日報』(11月22日付)は、「福田康夫氏『日中韓、いがみ合いをやめて疎通チャンネルを整えるべき』」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「(質問)岸田文雄首相は就任後の電話会談として韓国を8番目、第2グループに分類した。関心の無さを示しているのか。

    (答え)順番そのものはそれほど重大だとは思わない。だがいろいろな情勢を総合して考えると、8回目という意味はあると思う。そのためこのような状態を一刻も早く打開しなければならない。気持ちよく韓国と話を交わすことができる状態でないと岸田首相も感じているから、結果的このように(順番が)後回しになったのだと思う。これは日本にも責任があるかもしれないが、そう思われている韓国にも責任があると考えてもらいたい」



    日本が、韓国と気持ち良く話す環境にないことが、日韓の電話会談を8番目にさせたと指摘している。考えて見れば、対馬の山に登れば釜山が見える距離にある。それが、法的に解決して問題でも蒸し返して「謝罪しろ、賠償しろ」と迫ってくる。そういう相手に、いの一番で電話したいと思うはずがない。できれば、電話したくない相手だ。個人も国家の関係も同じであろう。

     

    日本人と韓国人の価値観が、大きくずれていることも日韓問題を複雑にさせている理由だ。米国の世論調査機関「ピュー・リサーチ・センター」が今年、世界17カ国の成人を対象に行ったアンケート調査では、「あなたが人生で最も価値があると思うものは何か」と質問に対して次の結果が出た。韓国の1位は、「物質的な幸せ」であった。日本の1位は、「家族」である。これは、他の先進国共通である。韓国人による金銭への執着の強さが、日本と悶着を起す背景であろう。

     


    (2)「(質問)岸田首相は一貫して「ボールは韓国にある」と言う。その反面、韓国はひとまず会ってから話そうと言う。
    (答え)2015年に岸田首相が当時外相だったとき、一回決着(慰安婦合意)をしたというつもりになり(日本が韓国にボールを)一旦返したと思っている。だから今『ボールは韓国にある』という表現になった。では、その次に韓国がボールをまともに投げてくれるのか、まともなボールを投げてくれるのか、もしくはボールだが何だか分からないようなものを投げてくるのか、そのどれなのかということだ。事実、ここ数年間、韓国は日本にボールのようなものをたくさん投げてきたと思う。例えば今回、竹島に韓国〔金昌竜(キム・チャンリョン)〕警察庁長が上陸したのもその一つだ。私はこれがまともなボールではないと思う。いびつなボールだ。細かいところではあるが、こういうことが日本の国民の心にみんな響いている。だから電話会談を最初に(韓国と)したいと思わせるようなサインが(韓国から)欲しい」

     

    韓国人は金銭を重視する。日本人はそれを超えた家族を大切にする。こういう心のヒダの違いが、問題を複雑にさせている。日本人の価値観は、G7と同じであることが一層、欧米へ親近感を持たせる理由であろう。いったん交わした約束を守ることで,相互信頼感が生まれるのだ。

     


    (3)「(質問)日本側には韓国と何を合意しても「どうせまた白紙に戻される」といった一種の不信感があるように思う。
    (答え)正直に言って、日本人は韓国のいろいろなことを見ていて『どういうふうに対応したらいいか分からない』と思っている。日本の国民はもちろん政府も、おそらくその答えを持ち合わせていないと思う。このような混迷を打開するために、まずは(韓国が日本にまともな)ボールらしいものを投げないということが大事だ。これを通じて環境整備をしていただきたい」

    日本は、韓国への対応で戸惑っている。日本が誠意を持って対応しても、韓国は後から謝罪が足りないと言って、追加謝罪を求める。そういう国家は、韓国以外に存在しないのだ。

     

    (4)「(質問)アジアを相対的に重視していると評価されている林芳正氏(60)が新しい外相に就任したことに対して韓国では期待がある(林外相は2008年福田氏によって防衛相として初入閣した縁がある)。
    (答え)結局は人間同士の話し合いだ。『この人とは話をしてもいい』という気持ちを起こさせるようなものは必要だと思う。怖い顔ではソフトになかなか話しにくい(笑)。韓国の気持ちを受け入れてくれるかもしれないという期待を持って(日韓間で)話ができるのは良いことだ。新しい(岸田・林)体制でどのような変化があるのかという期待を、私もしている」

    韓国が、誠意を込めた対案を用意するのならば、日本もそれなりの対応をするだろう。先ず、日本側が「会って見たい」という環境を整備することだ。



    (5)「(質問)習主席は、「台湾問題をめぐって火遊びをすれば自分を焼くことになる」という強い表現を使ったが、台湾海峡で武力衝突の可能性があると思うか。
    (答え)その可能性はない。衝突があれば台湾だけの問題では済まず、大きな戦争になる可能性がある。最後には極端な武器を取り出してくる可能性がある。そうすれば米中ともに経済的にも大きな損害を被ることになる。自由経済の仕組みを壊してまでそのような決定を(両国首脳が)するだろうか。そうは考えられないし、双方とも考えているはずがない。韓国や日本も同じだ。(米中武力衝突時には)アジアが壊滅してしまう状況になる。だから台湾の危険をあまり大騒ぎしないようにすることが必要だ。日韓関係も同じだ。お互いに刺激し合うような馬鹿なことはやめてほしい」

    このパラグラフは、極めて重要である。福田氏は、日本で数少ない中国へのパイプを持っている人物である。中国も、福田氏に本音を語っているかも知れない。中国の台湾侵攻は、下線部のように自らに破滅をもたらすことを認識している。この事実が、台湾侵攻を思い止まらせる要因になるのかも知れない。私も、こういう認識である。

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    韓国では、旭日旗をナチスの旗(ハーケンクロイツ)と比較している。文政権は、海上自衛艦が釜山港へ入港する際、旭日旗を降ろせと要請するほどだ。自衛艦は、この要請を断わり釜山港へ入港せず引き返した一件があった。

     

    これ以後、自衛隊と韓国軍との関係はすムースに行かなくなっている。軍旗は、軍隊のシンボルである。一斉に敬礼するのはそれを表している。韓国軍が、旭日旗に対して行った行動は異例であり、日本へ対する敵意を示したと言える。友好国ではあり得ない振る舞いだ。

     


    『wowKorea』(11月22日付)は、「
    自殺行為となり得る『旭日旗禁止法』、成立してはいけない理由を韓国知識人が説明」と題する記事を掲載した。

     

    2017年に執権したムン・ジェイン(文在寅)政権は、2020年4月には議席の約60%を確保した。ムン政権としては簡単に出来そうだった「旭日旗禁止法」はまだ制定されていない。2018年10月2日、執権与党である「共に民主党」の所属議員が旭日旗などの使用を禁止する法律の改正案を発議した。

     

    (1)「旭日旗などの象徴物を掲揚した船舶が韓国領海を航行出来ないようにし、旭日旗などを象徴する服や旗、マスコットなどを制作・流布したり身に着けて外を歩いたりする者は、2年以下の懲役や禁固、または300万ウォン以下の罰金に処すというのが主な内容だ。韓国でこの法律が発効されれば、韓半島有事の際、もしも在韓米軍や韓国軍が急きょ外部からの支援を必要とする状況に直面するようになっても、助けてやろうとやって来る日本の自衛隊の接近が禁止される」

     

    世界中の旭日模様にまで目を光らせている。旭日模様は、日本古来の風習に由来すると説明しても無駄である。聞く耳を持たないのだ。韓国メディアでは、保守系『中央日報』が率先して報道しているから不思議である。頭の凝り固まった記者がいるのだろう。

     


    (2)「これだけではない。空軍と海軍中心の在日米軍が保有する火力は強大だ。ところが在日米軍の各部隊の象徴物(マーク)をよく見れば、旭日旗の模様が入っているケースが非常に多い。であれば、いくら在日米軍の火力が強大でも、韓半島(※朝鮮半島)有事の際、在日米軍が在韓米軍や韓国軍を支援するために韓国の地に進入すること自体が禁止される。加えて韓国国内に居住するあらゆる人は誰であれ、日差しが四方に伸びていくデザインや、それに類似する模様をいくら個人的に好きでも、今後はこのようなデザインや類似した模様を身に着けたり持って歩き回ったりしたら、逮捕されて2年間の懲役生活を送りうるようになる。これでは北朝鮮と大きく異なることの無い社会になるのだ」

     

    在韓米軍の後方基地は日本にある。在日米軍では、肩章などにマスコット模様を使っている。それに旭日模様が入っているというのだ。こうなると、韓国の「旭日模様禁止令」に抵触するので、在日米軍は韓国へ入れないことになる。

     


    (3)「韓国人はえてして、旭日旗をナチスの旗(ハーケンクロイツ)と比較する。しかし、この二つは互いに性格がとても異なる。ナチスの旗は人種虐殺という人類最悪の犯罪を犯したナチスと言う一介の政党の象徴物ゆえ、当然、憎悪の対象とされるべきであり、今日当然禁止されるべきだ。しかし、旭日旗は違う。犯罪集団の象徴物ではなく、過去においては日本海軍の正式な軍艦旗であり、今日においては日本の海上自衛隊の正式な艦旗として合法的に存在する。世界の人々がナチスの旗には一様に怒りの声を上げるが、旭日旗には全く怒らない理由は基本的にこのような理由だからだ」

     

    ナチスの旗であるハーケンクロイツは、人種の抹消を狙った犯罪である。旭日旗は、日本軍の戦闘で兵士の士気を鼓舞する目的で使われただけだ。韓国は、それを曲解して大騒ぎしている。2年前であったか、自衛隊がフランスに招待されパリ市内を行進した。その際に当然、日章旗と旭日旗が掲げられた。これについて、前記の『中央日報』は口を極めて酷評した。自衛隊を招待したパリ市まで非難したほど。病的な感じさえ与えたのである。

     


    (4)「旭日旗に向かって何ら根拠もなく「戦犯旗」だと言って烙印(らくいん)を押すことに忙しい韓国人は、であれば日章旗に対してはどうして何も言わないのか、とても疑問だ。「日章旗は構わないが、旭日旗はダメだ」という韓国人の認識は論理的矛盾に当たる。太平洋戦争当時、日本軍は旭日旗より日章旗をはるかにたくさん掲げて戦争に臨んだ。米軍の老兵がかつて、戦争当時、日本軍からろ獲した物品を、今日、日本の遺族や子孫に返還するケースがしばしばあるのだが、返還する物品の大部分が「日章旗」だ。旭日旗ではない」

     

    韓国人は、日章旗には一切、批判がましいことを言わないのだ。批判するとすれば本来、旭日旗でなく日章旗であろう。太平洋戦争では、日本軍の駐留する場所に、すべて持込まれていたからだ。兵隊と軍旗は一体である。むろん、この世から戦争が消えれば軍旗も消える。残念ながら、そういう社会の来るのは、現状において望み薄である。

     


    (5)「このような現実を勘案すれば、今日の韓国人は旭日旗よりはむしろ日章旗に更に大きく怒って初めて正常となる。でなければ最小限、旭日旗に怒るくらい、日章旗にも全く同じ水準で怒ってこそ初めて、論理的であり常識的だ。結局、日章旗には何も言わず、旭日旗に向けてのみ怒っている今日の韓国人の心理は「日章旗の禁止は現実的に到底不可能なことなので、代わりに旭日旗にでも噛みついて初めて、怒りが少し収まるだろう」というつもりではないのか?」

     

    日本憎しが、矮小化されて旭日旗批判に向かっているに違いない。

     

    (6)「21世紀に、特定の国、それも自由陣営の友邦国が保有する合法的な艦旗に向かって、これほど汎国家次元で正常でない過敏な反応をするケースは、偏に「人種主義」の発露の為だということ以外には説明が付かない。「旭日旗禁止法」は、一言で言って、人種差別的な属性を反映した時代錯誤的(前近代的)で時代に逆行する法律である。この法律は韓国自らを困難な状況にも陥れ得る自殺的性格(有事の際、外部からの支援を遮断)を有する「自殺行為」ともなりうる」

    韓国の有識者が、ここまで自国の矛楯した行動を批判している。旭日旗批判が人種差別に通じるという視点である。

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    韓国は非情である。コロナ感染で高齢者の死亡急増でも「ウィズコロナ」は継続するというのだ。直近の1週間の新型コロナによる死者の数が、第3波を超える171人を数えている。首都圏で病床の空きを1日以上待っている人の数も21日は800人を超え、過去最大規模となるなど緊迫感が高まっている。

     

    文大統領は、次のように曖昧に答えている。

     

    文大統領は段階的な日常回復(ウィズコロナ)が始まり、新規感染者と重症患者が増えている状況については「少し不安な部分がある」と述べた。「ウィズコロナは、新規感染者が増加しても中止しない」としつつも、「重症患者を受け入れられないほど医療体制が逼迫した場合は、やむを得ず非常措置や日常回復の一時的な中止、距離措置(ソーシャル・ディスタンシング)の強化などが必要になるかもしれない」と述べた。『ハンギョレ新聞』(11月22日付)が報じた。

     

    下線のような事態がすでに起こっているのだ。ここで、「ウィズコロナ」を中止すれば、大統領選は与党が決定的に不利な状況に追い込まれる。それだけに、高齢者の犠牲者が増えても「やむを得ない」とすれば、余りにも国民を無視したことになろう。次の記事に見るように事態は、一刻を許さない状況である。

     


    『ハンギョレ新聞』(11月22日付)は、「韓国『コロナによる死者』第3波より深刻 首都圏の病床待機者804人で最多」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中央防疫対策本部(防対本)の集計によると、21日午前0時現在、過去24時間以内にコロナにより死亡した人の数は30人。15日からの7日間のコロナによる死者の数は12→22→21→29→28→29→30人と推移している。週間死者数は171人で、1日平均で24.4人にのぼる。先週(11月8日~14日)の1日平均死者数(19.4人)から5人の増である」

     

    死者数が激増している。先週(11月8日~14日)の1日平均死者数(19.4人)から5人の増である。事態を放置できない。新規感染者の増加を食止めるのが、最善の方法であろう。

     

    (2)「最近7日間の国内のコロナによる死者の数は、第3波よりも多い。第3波がピークに達していた今年1月第1週(1月4日~10日)の国内のコロナによる週間死者数は163人だった。翰林大学聖心病院呼吸器内科のパク・ソンフン教授は、「10月以降、60歳以上の患者が2倍に増えている。高齢の患者が増えるにつれ死者が増えている」とし「ウィズコロナ(段階的日常回復)開始以降にコロナ感染者が増加したことが影響している可能性もある」と説明した」

     

    今年1月の第3波のピーク時の週間死者数は163人。1日平均では23人だ。現在は、24人である。60歳以上の高齢者の患者は、10月以降に2倍になっているという。ウィズコロナの影響と見られる。

     

    (3)「首都圏では、病床の配分など、医療対応システムにかかる負担が大きくなっている。政府が最近相次いで病床確保命令などの対策を発表しているにもかかわらず、病床不足問題は解消されていない。保健福祉部中央事故収拾本部(中収本)の集計によると、21日午前0時現在、首都圏で病床の空きを1日以上待っている人の数は804人。コロナ拡散以降で最大の規模で、特に18日(423人)から19日(520人)、20日(659人)にかけて急増している。2日以上待っている人も478人にのぼり、70歳以上の高齢層が全体の半数を超えている(421人)

     

    自宅待機の感染者が急増している。2日以上待っている人が478人もいる。70歳以上の高齢層が全体の半数を超えている(421人)状況である。

     

    (4)「首都圏を中心とする感染者の増加で、この日(3120人)まで5日連続で1日の新規感染者が全国で3000人を超えているため、病床の配分に時間がかかっていると分析される。パク教授は「適時に受けるべき治療が遅れる恐れのある『空き待ち』が多くなれば、重症患者の発生が増えるのではないかと懸念される」と述べた。医療界からは、現在の流行の規模が縮小しなければ、2~3週間後も病床不足問題は解消されないだろうとの見通しとともに、集中治療室への隔離基準などを細分化して集中治療室を確保すべきだとの指摘が出ている」

     

    現状の感染者急増状況が続けば、病床不足問題は今後も続く見通しである。病院によっては、余りの過労で医師が止めざるを得ない状況という。医師の「職場放棄」である。医師も人間である。自分の生命の危機を感じながら、職務継続は不可能であろう。

     


    (5)
    「現在、首都圏の重症患者病床は「満室」に近づいている。前日午後5時現在のソウル、京畿道、仁川(インチョン)からなる首都圏の病床稼動率は81.5。特にソウルでは全345床の重症患者病床のうち286床、82.%が稼動している。残る病床は52床。全国では、重症患者専門病床は1127あり、約67%が埋まっている。政府は非常計画の発動基準の一つとして稼働率75%以上を提示している

     

    政府の重症患者専門病床稼働率は、75%以上が危険ラインとなっている。首都圏は、すでにこの危険ラインを大幅に上回っている。全国でも67%である。危険ラインまでわずかしかない。ウィズコロナを中止するには最後の段階に来ている。

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    中国の資産家の感覚がようやく正常化されてきた。不動産に最大の関心を寄せていた投資家が、中国恒大のデフォルト騒ぎに先行きを不安視している結果だ。この動きが、定着すれば、中国の投資感覚が「国際化」してきたと言えるかも知れない。

     

    『ロイター』(11月21日付)は、「中国投資家の『不動産愛』に変化、株や債券にシフト」と題する記事を掲載した。

     

    不動産関連投資への愛着が強い中国の投資家が、長年の慣習を脱して株式など他の資産に資金を移している。当局が不動産セクターへの取り締まりを強めたからだ。不動産開発大手、中国恒大集団の債務危機が深刻化した9月以来、信託会社が発行する不動産投資商品への資金流入は落ち込んだ。不動産開発企業は国内で厳格な融資規制に遭い、国外の債券市場では借り入れコストが過去最高水準に上昇。投資家からの資金流入は、残る数少ない資金調達ルートの1つだったが、それが断たれようとしている。

     

    (1)「上海のビジネスマン、デズモンド・パンさんは、「かつての投資の鉄則が崩れてしまった」と語る。不動産投資信託につぎ込んでいた数百万元を、ヘッジファンド会社ブリッジウォーターの中国マルチアセット型ファンド「オール・ウェザー・エンハンスト・ストラテジー」に移そうかと思案中だ。ブリッジウォーター創業者で大富豪、レイ・ダリオ氏の笑顔が載ったパンフレットをめくりながら、パンさんは年率リターン19%のこのファンドなら代わりの投資先にふさわしいと考えている」

     

    不動産バブル崩壊は、投資資金の流れを変えている。新たに、年率リターン19%のファンドに乗り換えたという。今時、こんな高利の金融商品があるとは驚き。リスクも高いのだろう。

     

    (2)「中国の投資家は長年、不動産投資商品を愛好してきた。しかし政府が2017年にシャドーバンキング(影の銀行)を取り締まり始めて以来、こうした商品への資金流入は縮小傾向に。中国恒大が今年9月、理財商品でデフォルト(債務不履行)を起こし、多くの都市で投資家が抗議した一件が、この傾向に拍車をかけた。中国受託者協会によると、不動産に投資する信託資金は6月末時点で2兆1000億元(3293億ドル)と、前年比17%減少。対照的に、債券や株に投資する信託商品は35%増の2兆8000億元となった」

     

    不動産投信が減って、株式や債券の投信が人気を得ているという。利回りは落ちても、安心感を買っているもの。

     


    (3)「資金移動は足元の数カ月間で加速している。ユーズ・ファイナンス・アンド・トラスト・リサーチ・インスティテュートによると、不動産関連信託商品の資金調達は、9月に前月比38%、10月には同55%、それぞれ減少した。申萬宏源のFoFマネジャーは、「このごろは不動産関連の信託商品が売れない。顧客はリターンが比較的安定したファンド、例えばファンド・オブ・ファンド(FoF)やクオンツ・ファンドへの資金移動を強化している」と話した。最近、中国でマルチ戦略ヘッジファンドを立ち上げたレイリアント・グローバル・アドバイザーズのジェイソン・シュー会長は、「中国政府の政策は、不動産からの資金移動を後押ししている。これは資産運用業界にとって間違いなく朗報だ」と言う」

     

    不動産関連信託商品は、人気が落ちている。売れ行き不振は、それだけ資金調達額が減るので不動産開発企業の資金調達の道は細くなっている。これが、資金の流れを変えており、正常化され始めたと評価しているのだ。不動産が、途端に厄介者扱いである。市場の流れは速い。

     

    (4)「中国恒大のデフォルト懸念や佳兆業集団の資金繰り危機以来、不動産投資は信託商品だけでなく、銀行や独立系資産運用企業を通して販売される理財商品も打撃を被っている。不動産に特化した資産運用会社の幹部は、不動産開発企業の社債から資金が流出してハイテク・新エネルギー関連の株式にシフトする流れは不可逆的だと語る

     

    下線のように資金の流れが、不動産開発からハイテクや新エネルギー関連へ向かっているという。不動産バブルでせき止められていた資金が、ようやく他産業へ流れ始めた。良いことである。これで、不動産バブル復活の道は消えた。

     


    (5)「
    中国国際金融(CICC)の資産運用サービス責任者、リアン・ドンチン氏は10月の会合で、中国家計のバランスシートにおいて不動産は今後とも最大の構成要素であり続けるとした上で、不動産の強気サイクルを引っ張ってきた人口動態と流動性は消え去ったとの見方を示した。「今も不動産にとどまっている顧客資産の一部を、中国の将来の経済成長を享受できる資産に再配分するよう導くことは、資産運用会社にとって今後10年間で最大のチャンスになる」とドンチン氏は語った」

     

    下線のように、人口動態の変化と人口移動の流動性は消えたと判断されるに至った。約10年もの認識遅れであるが、過去を間違いと分かっただけでも大した変化である。

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    台湾と絡む習氏の終身皇帝

    還暦過ぎた中国経済の悩み

    トゥキディデスの罠を曲解

    米国は米中会談後に強気へ

     

    中国共産党は、結党100年を期して3回目の「歴史決議」を行った。過去2回の歴史決議をテコに、毛沢東(1回目:1945年)、鄧小平(2回目:1981年)が終身の最高権力者になったように、習近平氏もその座を保証される形である。

     

    中国共産党が、習近平氏に終身最高権力者の座を与えた裏には、過去の歴史決議が党内危機の高まった時期に決められた共通点を持つ。その意味で、今回の背景をつぶさに見ることで、中国共産党の危機感が炙り出されるはずだ。

     

    毛沢東の歴史決議は1945年であるから、第二次世界大戦が終結して新たな世界情勢が生まれるという混乱期であった。鄧小平の歴史決議は1981年で、毛沢東による10年間の文化大革命の大混乱が収束されて、中国の政治と経済の再建を目指す時期であった。

     


    台湾と絡む習氏の終身皇帝

    習氏による歴史決議は、中国が経済・外交で行き詰まった段階で、将来を模索する「決意表明」である。経済は、すでに下り坂に入っている。これからは、さらに厳しい急坂を下る段階に差し掛かった。外交的には、「戦狼外交」によって周辺国を敵に回してしまった。その中で、台湾をいかにして取り戻すかであろう。

     

    習氏が、歴史決議によって終身国家指導者の座を与えられた動機は「台湾統一」であろう。むろん、習氏が手を回して得たポストは明らかで、台湾問題をエサに上げていることは間違いない。実は、台湾統一問題が習氏にとって「諸刃の剣」である。失敗すれば、習氏は終身国家指導者のポストを失うリスクを抱えている。中国国内に潜む「反習派」は、その失敗を待って失脚させる企みも散見されるのだ。

     

    人民解放軍には、「台湾侵攻命令」が出れば、台湾へ出兵せず北京へ向かう動きがあると指摘されている。習氏は、これまで行なってきた政敵の追放によって、多くの敵をつくって恨みを抱えているのだ。「義理と恩情」という中国の伝統的徳目は、習氏と無縁な存在と指摘されている。反習派は、中国にゴマンと潜んでいるのである。

     


    私は日々、中国の経済危機を細大漏らさずに追っているが、もはや昔日の輝きがないことは繰返すまでもない。ここで、その経済的危機の根源を示せば、次の3点に要約できる。

     

    1)不動産バブルの後遺症がこれから本格化すること。

    2)住宅投資やインフラ投資主体の経済成長により、非効率投資が負担になっていること。

    3)出生率低下に伴う人口動態の急速な悪化で、潜在成長率が急悪化すること。

     

    前記の3点について、手短にコメントしておきたい。

     

    1)「共同富裕」を疎外している要因の一つに、住宅価格高騰がヤリ玉に上がっている。不動産バブルは、習政権が意図的に行いGDPを無理矢理、押し上げた原動力である。それが、行き過ぎたので、不動産開発企業に3つの財務比率の制約を設け、銀行融資規制を行っている。これをきっかけにして、例の中国恒大のデフォルト(債務不履行)が持ち上がっている。不動産開発企業の整理淘汰は不可避である。

     


    2)GDPを押し上げる目的だけで行なってきた住宅・インフラの投資が、中国経済の生産性を著しく引下げている。換言すれば、過剰債務を背負っていることだ。これが、他産業での必要投資を阻んでいる。中国経済の底上げに対して、大きな圧力になった。遅まきながら、この圧力を取り除かなければならない段階を迎えている。

     

    3)人口動態の悪化は、2011年から進んでいる。合計特殊出生率の低下だ。日本もそうであったが、最初はマイナス効果が目立たないものである。それが、10年を経過すると、「ガクッ」と落ちてくる。人間だって60歳の還暦時の体力はピンピンしている。それが、70歳を過ぎれば「やっぱり歳かな」と弱気を漏らす。人口動態も、全くそれと同じ現象である。

     

    還暦過ぎた中国経済の悩み

    以上のような要因によって、もはや中国経済に過大な期待を持つことは危険ですらある。潜在的な経済成長率は、急速に低下して当然になってきた。日本経済を顧みれば分かるように、国民全体が2000年前後から「異常」であることを認識した。金融機関の倒産が珍しくなくなったのだ。中国もこの状態へ突入するのは不可避である。

     


    中国は、2020年代に3%成長へ落込むと予測されている。前述の3要因が逆回転するのだから当然の話である。そうなると、中国では国民全体が共産党への忠誠心が薄れてくる。これが、中国共産党の最大危機である。忠誠心が薄れれば、共産党批判を始める。人権思想も生まれてくる。選挙で選ばれない政権が、銃剣で言論を弾圧している現状に不満を持って当然である。

     

    今回の「歴史決議」では、欧米式民主主義を採用しないと明記してある。選挙で選ばれた訳でもない中国共産党が、自らの権力基盤を守るため普遍的な政治制度である民主主義を拒否したのだ。この辺りに、中国経済の抱える矛楯がいかに大きいかを示している。

     

    習氏の「歴史決議」が、中国経済の危機を100%示したものであることは間違いない。このことから何が言えるか。「トゥキュディデスの罠」で注目された覇権国と新興国の争いの構図が、全く逆転することである。「トゥキュディデスの罠」を著書にしたアリソン教授によれば、覇権国の国力が低下し新興国が繁栄する結果、覇権戦争が起こったとされる。

     

    このアリソン説が、世界的に流布し最大の「信者」は中国であった。「米国の衰退:中国の繁栄」を信じて、「米国弱し」とする妄念に突き動かされ「戦狼外交」を行うまでになっている。(続く)

    外の記事もご参考に

     

    2021-11-04

    メルマガ307号 「衰退期」へ入った中国、コロナ禍さらなる重圧 「最後の藁」に気付かない

    2021-11-18

    メルマガ311号 習近平の「ジレンマ」、経済失速で立ち往生 台湾侵攻は「返り血浴びる」

     

     

     

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