人口1300万人を抱える中国陝西省の省都西安市が、コロナ感染症拡大阻止でロックダウン(都市封鎖)している。だが、封鎖してすでに9日目を過ぎたが、新規感染者は増え続け、食糧不足が深刻になっている。
12月30日に発表された公式データによると、29日に確認された市中感染者(発熱などの症状のある患者)は155人で、前の日の151人から増加した。現在の感染拡大局面が始まった12月9日以降の市中感染者は合計1100人に達している。
西安市は感染経路を追うため市内全域で検査を実施しており、30日には6度目の検査に着手した。市当局者は29日、記者会見で「新型コロナとの闘いで、生きるか死ぬかの段階に来ている」と語った。以上は、『ロイター』(12月30日付)が伝えた。下線のように、事態の深刻さが分かるが、いくらPCR検査をしても予防にはならない。米英製のワクチン接種と、完備した治療体制が整っていれば、こうした無益なロックダウンをしなくても済むはず。非科学的防疫の典型例が見られる。
『中央日報』(12月31日付)は、「『コロナはとにかく食糧がない』、封鎖8日目迎えた中国西安の絶叫」と題する記事を掲載した。
「何も食べられなくて寝られないなんて今まで想像もできなかった」。中国政府が新型コロナウイルス感染症(新型肺炎)の拡大を防ぐために陝西省西安市を封鎖して8日目。西安市内の食糧が底をつき、住民が微博を通じて不満を表出していると30日、香港サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)などが報じた。
(1)「SCMPによると、「スキニー」というハンドルネームのネットユーザーは「徐々に(状況が)おかしくなってきている」とし「何も食べられなくて寝られないなんて今まで想像もできなかった」と綴った。地域当局の供給網の管理が杜撰だと指摘する声もあがった。別のネットユーザーは「中国が(昨年)初めて都市を封鎖したときに供給が不足したのは理解できるが、すでに何回も封鎖を経験した状況で今回の供給不足は理解できない」と一喝した。米紙ワシントン・ポスト(WP)によると、微博で「西安で生活必需品を手に入れにくい」という文面のハッシュタグ掲示物はこの日まで3億回の照会数を記録した」
食糧不足が深刻なのは、市民の買い出しまで完全に禁じた結果である。東京都の人口(1400万人)より、100万人少ないだけの西安市が、全市民の外出禁止とは信じ難い「暴挙」である。
(2)「当局も食糧供給問題を認めた。台湾中央通信(CNA)によると、29日、西安市商務部当局者は記者会見を行って「市内の食品購入が難しいのは労働者不足のせいで配達がまともに行われていないため」としながら「西安政府は必需品供給のためにすべての努力を傾ける」と約束した。西安市当局は現在住民たちの家を訪問して直接食料品を伝達している」
食糧不足は、配達員不足が原因である。ロックダウンという非常手段に訴える前に、シミュレーションをしないのだろうか。行き当たりばったりの政策発動である。
(3)「1300万人が居住する大都市の西安は23日0時から封鎖に入った。市内に新型コロナ感染者が大量に出てきて西安市を通して他の地域に拡散するのではないかという中国当局の判断のためだった。今月9日から29日まで西安の累積感染者数は1117人だ。封鎖から1週間経過した29日、新規感染者数は156人で前日(151人)より5人増加した。これは中国武漢で新型コロナが拡散して以来2年ぶりの最高水準の拡散傾向という。ただし、西安でオミクロン株感染者が出てきたかどうかについては中国当局が明らかにしていないとWPは伝えた」
中国当局は、来年2月の北京冬季五輪開催を前に、是が非でも感染拡大を阻止したいところだが、厳寒期に向かうだけに思惑通りに進むまい。
(4)「封鎖初期には世帯あたり1人が2日に一度、生活必需品を購入するために外出できたが、27日からは都市のすべての外出が禁止された状態だとSCMPやWPなどが伝えた。市当局はこの地域の24歳の男性が封鎖令を破って工業地帯で運転している姿を摘発し、10日に懲役刑を言い渡したと発表した。中国中央政府は来年2月の北京冬季オリンピック(五輪)開催を控えて厳格な「ゼロコロナ」政策を防疫の基調としている。だが、新型コロナ変異株ウイルスの伝染性がますます強くなっていて、「ゼロコロナ」政策の実効性に対して疑問が提起されているとWPなどは伝えた」
封鎖当初は、世帯あたり1人が2日に一度、買い物に出られた。それを禁じて、混乱が広がっている。いくら、食糧配給計画を立てても、短期間に1300万人へ十分に行き渡るはずがない。愚かなことを考えたものだ。