勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2021年12月

    テイカカズラ
       

    人口1300万人を抱える中国陝西省の省都西安市が、コロナ感染症拡大阻止でロックダウン(都市封鎖)している。だが、封鎖してすでに9日目を過ぎたが、新規感染者は増え続け、食糧不足が深刻になっている。

     

    12月30日に発表された公式データによると、29日に確認された市中感染者(発熱などの症状のある患者)は155人で、前の日の151人から増加した。現在の感染拡大局面が始まった12月9日以降の市中感染者は合計1100人に達している。

     


    西安市は感染経路を追うため市内全域で検査を実施しており、30日には6度目の検査に着手した。市当局者は29日、記者会見で「新型コロナとの闘いで、生きるか死ぬかの段階に来ている」と語った。以上は、『ロイター』(12月30日付)が伝えた。下線のように、事態の深刻さが分かるが、いくらPCR検査をしても予防にはならない。米英製のワクチン接種と、完備した治療体制が整っていれば、こうした無益なロックダウンをしなくても済むはず。非科学的防疫の典型例が見られる。

     

    『中央日報』(12月31日付)は、「『コロナはとにかく食糧がない』、封鎖8日目迎えた中国西安の絶叫」と題する記事を掲載した。

     

    「何も食べられなくて寝られないなんて今まで想像もできなかった」。中国政府が新型コロナウイルス感染症(新型肺炎)の拡大を防ぐために陝西省西安市を封鎖して8日目。西安市内の食糧が底をつき、住民が微博を通じて不満を表出していると30日、香港サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)などが報じた。

     


    (1)「SCMPによると、「スキニー」というハンドルネームのネットユーザーは「徐々に(状況が)おかしくなってきている」とし「何も食べられなくて寝られないなんて今まで想像もできなかった」と綴った。地域当局の供給網の管理が杜撰だと指摘する声もあがった。別のネットユーザーは「中国が(昨年)初めて都市を封鎖したときに供給が不足したのは理解できるが、すでに何回も封鎖を経験した状況で今回の供給不足は理解できない」と一喝した。米紙ワシントン・ポスト(WP)によると、微博で「西安で生活必需品を手に入れにくい」という文面のハッシュタグ掲示物はこの日まで3億回の照会数を記録した」

     

    食糧不足が深刻なのは、市民の買い出しまで完全に禁じた結果である。東京都の人口(1400万人)より、100万人少ないだけの西安市が、全市民の外出禁止とは信じ難い「暴挙」である。

     


    (2)「当局も食糧供給問題を認めた。台湾中央通信(CNA)によると、29日、西安市商務部当局者は記者会見を行って「市内の食品購入が難しいのは労働者不足のせいで配達がまともに行われていないため」としながら「西安政府は必需品供給のためにすべての努力を傾ける」と約束した。西安市当局は現在住民たちの家を訪問して直接食料品を伝達している」

     

    食糧不足は、配達員不足が原因である。ロックダウンという非常手段に訴える前に、シミュレーションをしないのだろうか。行き当たりばったりの政策発動である。

     

    (3)「1300万人が居住する大都市の西安は23日0時から封鎖に入った。市内に新型コロナ感染者が大量に出てきて西安市を通して他の地域に拡散するのではないかという中国当局の判断のためだった。今月9日から29日まで西安の累積感染者数は1117人だ。封鎖から1週間経過した29日、新規感染者数は156人で前日(151人)より5人増加した。これは中国武漢で新型コロナが拡散して以来2年ぶりの最高水準の拡散傾向という。ただし、西安でオミクロン株感染者が出てきたかどうかについては中国当局が明らかにしていないとWPは伝えた」

     

    中国当局は、来年2月の北京冬季五輪開催を前に、是が非でも感染拡大を阻止したいところだが、厳寒期に向かうだけに思惑通りに進むまい。

     


    (4)「封鎖初期には世帯あたり1人が2日に一度、生活必需品を購入するために外出できたが、27日からは都市のすべての外出が禁止された状態だとSCMPやWPなどが伝えた。市当局はこの地域の24歳の男性が封鎖令を破って工業地帯で運転している姿を摘発し、10日に懲役刑を言い渡したと発表した。中国中央政府は来年2月の北京冬季オリンピック(五輪)開催を控えて厳格な「ゼロコロナ」政策を防疫の基調としている。だが、新型コロナ変異株ウイルスの伝染性がますます強くなっていて、「ゼロコロナ」政策の実効性に対して疑問が提起されているとWPなどは伝えた」

     

    封鎖当初は、世帯あたり1人が2日に一度、買い物に出られた。それを禁じて、混乱が広がっている。いくら、食糧配給計画を立てても、短期間に1300万人へ十分に行き渡るはずがない。愚かなことを考えたものだ。

     

    a0960_004876_m
       


    中国は、習近平氏の「永久政権論」に合せて、台湾侵攻を必要条件とする見方が多い。習氏の永久政権が認められるには、台湾を侵攻して中国へとり戻す能力がなければ、「終身皇帝」になれないだろうという推測である。

     

    この議論は一般論として成り立つとしても、いざ開戦となれば中国が反撃されると同時に、経済封鎖されて食糧やエネルギー輸入を杜絶されるリスクと隣り合わせになる重大なブーメランを忘れた議論である。

     

    もう一つ、中国人民解放軍内部にくすぶる「反習近平派」が動き出す危険性である。出動命令が出れば、空軍は自由自在となる。台湾を空爆せず、北京を空爆するという「危険な想定」も出ているほど。

     


    以上のような二つの「アクシデント」を考えれば、台湾侵攻は言われるほど簡単に起こる事態ではないが、開戦への備えをしておくことは絶対に必要である。備えがなければ、容易に突き崩されるからだ。

     

    韓国紙『東亞日報』(12月29日付)は、「日米、台湾で戦争が起きれば在日米軍投入へ」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「日本の自衛隊と米軍が、台湾で戦争など緊急事態が発生する場合、在日米軍を投じる内容を含めた日米共同作戦計画を作成しているという。12月28日(現地時間)、ロイター通信などによると、日米両国は、このような内容を1月7日に開かれる日米安全保障協議委員会(2プラス2)で議論する予定だ。韓米が、国防相会談の共同声明に初めて台湾海峡問題を明示した中、日米の作戦計画の変化が在韓米軍にも影響を及ぼすか注目される。ロイター通信は、「米政府関係者らは、台湾の有事の際、近い日本に駐留する数万人規模の米軍が重要な役割を果たす可能性が大きいと、これまで言及してきた」と伝えた」

    中国が台湾侵攻の際、台湾本島を狙うのか。あるいは、中国沿岸に近い金門・馬祖という小島を狙うのか。見方は分かれている。だが、台湾が実効支配している金門・馬祖を攻撃することは台湾本島への攻撃と性格か変わらない。

     


    これまでの想定では、まず台湾軍が応戦し、かなりの時間を置いて米軍が支援するというシナリオが描かれていた。これでは、中国軍の思う壺であり、台湾軍が劣勢に立たされることは間違いない。そこで、中国軍の不穏な動きを察知すれば同時に、日米軍の出動態勢になるのであろう。

     

    この際、日米潜水艦部隊が縦横無尽の動きをする。これに、豪州の最新鋭原潜が加わるとなれば、中国は迂闊に手が出ないであろう。大火傷を負うのは必至である。その際、習近平氏は敗北責任を負って辞任せざる得まい。こういう危険を冒してまで、習氏は台湾侵攻を決意するだろうか。常人であればまず、台湾侵攻を諦めるはずだ。

    (2)「これに先立ち、共同通信は12月23日、複数の日本政府内の匿名の関係者を引用して、日米共同作戦計画の原案に、在日米軍の海兵隊が、九州南部の南西諸島に臨時攻撃拠点を設置する内容が含まれたと報じた。有事の際には、自衛隊が弾薬や燃料など物資輸送と後方支援任務を遂行する。特に、自衛隊は2014年7月、憲法解釈で、「集団的自衛権」(同盟・友好国が攻撃を受ける場合、反撃する権利)を行使でき、中国と台湾間の武力衝突の発生時、米軍と共に自衛隊が介入する余地を開いたとみられている」

    自衛隊は、南西諸島に武器弾薬を貯蔵する計画を発表している。ミサイル基地も設けている。自慢してはならないが、自衛隊は旧日本軍の歴史があるから、米軍と一体化した戦略を展開するのであろう。



    (3)「米国防総省は最近、海外駐留米軍の配置見直し作業を終え、中国の潜在的・軍事的攻撃を抑止するために、インド太平洋域内の同盟協力を強化すると明らかにした。韓米両国は12月2日、定例安保協議会議(SCM)の共同声明に台湾海峡問題を明示しただけでなく、韓米連合作戦計画を最新化することを決めた。政府内外では、新たな韓米作戦計画に中国に対する牽制、対応が含まれる可能性があるという観測が流れている」

    韓国軍も米韓同盟として、台湾海峡問題をとり上げている。ただ、韓国進歩派が政権を握っている限り、台湾海峡への出動命令に賛成するとは思えない。邪魔をするであろう。

     

    中国軍の台湾侵攻は、絶対に阻止しなければならないが、台湾自体も「独立論」を掲げてはならない。これは、自ら「侵攻してください」と言うに等しいことだ。戦争を起させてはならないが、口先だけの「平和論」では防げない。防衛をしっかり固めなければならない。安保体制の構築が、戦争を防ぐ近道である。戦争を防がなければならないのだ。

    a0960_008567_m
       

    中国は、世界を騒がせた不動産開発企業の経営不振に対処すべく、中国人民銀行(中央銀行)が先頭に立って「解体作業」を始める。経営不振企業の資産を、国有企業へ切り売りをするというもの。信用不安の連鎖を絶つ目的である。

     

    この荒業によって、問題の禍根を取り除こうという狙いだが、不動産バブルの終焉を鮮明にしている。「土地本位制」によって、中国財政の約5割を捻出してきただけに、中国経済に与える影響は甚大だ。すでに、公務員給与の3割前後のカットが通告されており、不動産バブル崩壊のもたらす影響が出始めている。

     


    『ロイター』(12月30日付)は、「中国不動産業界、再編が債務削減に寄与―人民銀高官」と題する記事を掲載した

     

    (1)「中国人民銀行(中央銀行)金融市場局の鄒瀾局長は30日、国内不動産市場でのM&A(合併・買収)は企業債務の圧縮に寄与するとの認識を示した。鄒局長は記者団に「不動産会社間のプロジェクトのM&Aは、不動産企業のリスク解消方法として最も効果的で市場原理に沿った手段だ」と述べた。中国不動産業界は今年、当局の規制強化を受けて流動性問題が顕在化し、特に債務の多い企業でデフォルトが起きている」

     

    人民銀行高官は、経営不振の不動産開発企業をM&Aによって吸収合併させると発表した。「不動産企業のリスク解消方法として最も効果的で市場原理に沿った手段だ」と自画自賛しているが、これによって経営不振企業の過剰債務が消える訳でない。吸収合併した側が新たに背負い込む形になる。一時的な糊塗策に過ぎないであろう。

     


    『日本経済新聞 電子版』(12月30日付)は、「振の中国不動産、人民銀が事業売却支援 恒大など念頭」と題する記事を掲載した。

     

    中国人民銀行(中央銀行)などは、経営危機に直面した不動産開発会社の事業売却を支援する。国有企業など財務体質が安定した企業が、資金繰り難の会社の優良な資産や建設中の物件を買い取るように促す。政府の規制強化で大手の中国恒大集団などは資金不足に陥り、社債の利払いに苦慮している。資産の切り離しで現金化を加速させ、債務リスクを軽減させる。

     

    (2)「12月30日に記者会見した人民銀金融市場局の鄒瀾局長が明らかにした。金融監督当局の銀行保険監督管理委員会とともに取り組む。売却の対象は資金繰り難の企業が建設中の物件のほか、子会社の株式や資産だ。中国メディアによると、優良物件とセットにした不良資産の購入は支援対象にしない。買い手は財務体質が安定している企業に限る。民間企業も買収に名乗りを挙げられるが、当局は信用力が高く低利の資金調達が容易な国有企業を有力な買い手とみているもようだ。買い手が買収資金を調達しやすいよう、人民銀などは銀行に融資や債券の引き受けに積極的に応じるよう要求した。銀行が直接、買収取引に参画することはできない」

     


    売却対象は、「資金繰り難の企業が建設中の物件のほか、子会社の株式や資産」とされている。建設中の物件の売却は、買い主へ確実に建物を引き渡す目的である。それと子会社の株式や資産が売却対象である。「無傷」な部分を売り渡せば、経営不振の本体は「丸裸」にされ、最終的に倒産という形をとるのであろう。返済できない債務は、債権者の泣き寝入りとなるのか。

     

    (3)「営難に陥った不動産開発企業が資産の現金化を進めれば、債務の利払いや返済に充てられる。過剰に膨らんだバランスシートの圧縮につながる。人民銀は、財務体質が安定した企業が建設中の案件を引き継いで完成まで責任を持つことで、住宅を買った人への物件の引き渡しもスムーズに進められるとみる

     

    住宅を買った人たちが無事、建物の引き渡しが済めば、経営不振企業は「消える運命」のように見える。

     


    (4)「中国の習近平(シー・ジンピン)指導部はマンションバブルが金融リスクを膨らませていると警戒し、投機の抑制を重視している。ただ規制強化で不動産開発企業の資金繰りが逼迫したほか、住宅需要の縮小が景気の足を引っ張った。中国共産党が2022年の経済運営方針を決めた12月の中央経済工作会議は「新たな成長モデルを模索し、不動産業の好循環と健全な発展を促す」と強調した。業界内の事業再編を促し、不動産市場の安定につなげたい考えだ」

     

    一度、傷ついた不動産企業のイメージ回復は困難であろう。これまでは、民間企業であったから積極的な経営を展開したが、国有企業ではそういう冒険をするはずがない。中国の不動産ブームは終焉したと見るべきだ。

     

     

    a0001_000268_m
       

    文在寅氏ほど、学生時代からの理想主義に拘っている政治家は珍しい。理想主義を批判しているのではない。その理想が実現できるかどうか、という客観情勢の分析が文氏にないのだ。子どもが、オモチャをねだるような趣きである。

     

    文氏の理想主義とは、朝鮮戦争の「終戦宣言」を出すことだ。北朝鮮が喜ぶことすれば、それが平和主義に繋がると信じているからだ。

     

    「文在寅政府は、何よりも北朝鮮が望むことをすれば平和がやってくると認識している。現政権が推進する韓半島(朝鮮半島)平和体制構築の大義そのものを否定する者は少ない。だが、これを実現しようとする方法論は北朝鮮の望みを聞き入れてこそ平和がやってくるという根拠のない理想主義に傾いている」 

     


    前記の指摘は、朴チョル熙(パク・チョルヒ)ソウル大教授が、『中央日報』(3月17日付コラム)で指摘した点である。文氏ほど、ナイーブな人間はいないだろう。

     

    『中央日報』(12月30日付)は、「韓国『終戦宣言に合意』、米国『対北朝鮮外交に専念』…韓米の温度差」と題する記事を掲載した

     

    鄭義溶(チョン・ウィヨン)外交部長官が12月29日、「韓米間(終戦宣言)文案について事実上合意に至った状態」と述べたが、米国側はこれを認める発言をしないまま「対北朝鮮外交に専念している」という原論的立場のみ示した。北朝鮮側の反応がないうえ、ワシントンの朝野で終戦宣言の波及効果に対する懸念が少なくない点などを意識した可能性があるという指摘だ。



    (1)「崔英森(チェ・ヨンサム)外交部報道官は、12月30日の定例記者会見で終戦宣言に関する韓米の温度差が感じられることについてコメントを求める質問に、「韓米両国はこれまで終戦宣言の推進に対する重要性に関する共感の下、終戦宣言の文案について既に事実上合意に至った状態」という点を強調し、「ただし、具体的な終戦宣言推進案については、引き続き協議中にある」と述べた」

     

    朝鮮戦争の終戦宣言は、韓国が一方的に宣伝している問題だ。米国バイデン政権は、韓国の強引な「終戦宣言論」に困り果てている様子である。韓国は、なぜここまで執拗なのか。それは、文大統領が「レガシー」にしたいだけである。


    (2)「米国務省は11月11日、鄭長官が国会外交統一委員会全体会議で「韓米間で(終戦宣言関連の)相当の調整が終わった」と述べた時も同様の反応を見せた。プライス報道官は当時も「北朝鮮との対話・外交を通じて韓半島の恒久的な平和を達成することに専念している」という今回と全く同じ立場を紹介した。鄭長官は「相当な調整」「事実上の合意」など徐々に表現の水位を高めて韓米の終戦宣言共助を強調しているが、米国は異見調整および文案合意を認めずに機械的な回答ばかり繰り返していることになる」

     

    米国は、終戦宣言を出すには国内の意見調整が必要だが、与野党ともに反対姿勢である。「終戦宣言」してみても、北朝鮮に利用されるだけという見通しを持っている。日本も同様な姿勢である。文在寅氏だけが、狂ったように騒いでいるのだ。

     


    文氏が、中国へ低姿勢である理由も北朝鮮がらみである。中国へペコペコしていれば、北朝鮮を説得してくれると間違った期待感を持っている。北朝鮮は、中国を信用せずむしろ米国を信用する「歪な」関係にある。

     

    (3)「現在、米議会内でも終戦宣言に対する確実な支持は確保されていない状況だ。したがって、バイデン政権の立場では、来年11月の中間選挙を前に終戦宣言を急激に進展したり、関連の立場を公にすることは政治的負担につながりかねない。高麗(コリョ)大学統一外交学部の南成旭(ナム・ソンウク)教授は、「終戦宣言議論の過程で韓国はこれ以上米国の異見が出てこないため『合意』と評価しているが、米国は韓国の立場をただ聴取しているだけでこのような状況を合意や同意とみなさない、同床異夢に陥っている可能性がある」とし、「バイデン政権は特に米議会内でも終戦宣言に対する意見が交錯する状況で、韓米の協議経過や文案合意の有無などに言及すること自体が政治的リスクになりかねないとみている」と述べた」



    米議会は、与野党ともに終戦宣言を支持していない状況だ。来年秋の米中間選挙を控えて、バイデン政権がそうした負担になるような問題で韓国へ同意するだろうか、と疑問視されている。韓国が、バイデン政権の対中政策へ格別の協力をしているものでもない。米国が、二股外交という身勝手な韓国を支援するメリットがない。文氏は、身から出た錆というほかない。

     

    (4)「一部では、鄭長官が「北京五輪(オリンピック)を南北関係改善のきっかけにするのは事実上難しくなった」と是認しつつも、韓米間で終戦宣言の文案に合意したという内容を公開したのは、国内政治的な「成果広報用メッセージ」の意味合いの方が大きく見えるという分析も出ている。鄭長官の発言は国内メディアの記者懇談会で出たものだが、質問は「北朝鮮に終戦宣言に関して具体的提案をする計画があるか」であって、韓米間の協議経過を問うものでもなかったためだ」

    鄭外交部長官も、終戦宣言を自らの手柄にしたい衝動に駆られている。日韓関係が、完全にブロックされているので、活路を終戦宣言に求めていると考えられるのだ。



    a0960_008407_m
       

    RCEP(東アジアの地域的な包括的経済連携)が、明後日の22年元日から発効する。これまで、RCEP最大の受益国は中国でないかと見られていた。だが、実際は日本であることが判明した。

     

    UNCTAD(国連貿易開発会議)は12月15日、次のような試算結果を発表した。RCEPによる関税引き下げの恩恵は、参加15カ国で日本が最も大きく、域内への日本の輸出が19年比で5.%増とみているのだ。この背景には、日本企業が東アジア全体へ広く進出しているので、「累積原産地基準」により域内での部品生産などが、すべて関税無税化する結果である。

     

    日本は、長いこと製造業の海外移転によって国内空洞化のマイナスが雇用に影響した。この悩みがRCEPによって花開くわけで、22年は経済面で幸先の良い年になりそうだ。

     


    『日本経済新聞』(12月30日付)は、「巨大経済圏、日本の輸出5%増へ RCEP1日発効 中韓と初のFTA 車・農産品に追い風」と題する記事を掲載した

     

    日本、中国、韓国や東南アジア諸国連合(ASEAN)などが参加する東アジアの地域的な包括的経済連携(RCEP)協定が2022年1月1日に発効し、国内総生産(GDP)で世界の約3割を占める巨大経済圏が誕生する。日本にとっては中韓と初めて結ぶ自由貿易協定(FTA)で、日本の域内向け輸出を19年比で5%超押し上げるとの試算もある。

     

    (1)「RCEPは12年11月に交渉を開始した。インドが途中で離脱するなど協議は難航したが、20年11月に署名が完了した。品目ベースでみた関税撤廃率は91%で、環太平洋経済連携協定(TPP)の99%には及ばないが、日本政府はGDPの押し上げ効果を約15兆円とTPPの2倍に上ると試算する」

     

    俗説とは恐ろしいものだ。中国が、RCEPを牛耳るという報道が多かった。中国のGDPの規模から推し量った記事だが、中国経済の「中身」を調べることをしない結果である。中国経済は、「張り子の虎」なのだ。不動産バブルで膨張したに過ぎない経済である。

     

    (2)「RCEPの方が経済効果の大きくなるのは、平均関税率が高い国が多く参加しているためだ。世界貿易機関(WTO)によると農産品と工業品を合わせた平均関税率は韓国(13.6%)、中国(7.5%)、ベトナム(9.5%)、インドネシア(8.1%)などいずれも高水準だ。日本にとって最大の貿易相手国の中国、3番目に大きい韓国と初めて結ぶFTAになることも背景にある。みずほリサーチ&テクノロジーズによると、現行無税の品目を含めた即時撤廃率は中国で25%、韓国で41.1%。発効時点で無関税になる品目は多くはないが、10年ほどかけて中韓ともに約7割の品目で関税が撤廃される」

     

    平均関税率の高い国々(韓国・中国・ベトナム・インドネシア)が、RCEP発効で関税率を下げる。日本は、韓国と中国とはFTA(自由貿易協定)を結んでいなかったので、日本が最大の受益国になる背景だ。

     


    (3)「国連貿易開発会議(UNCTAD)の試算によると、RCEPで域内の貿易額は2%、約420億ドル(約4兆8000億円)拡大する。このうち関税引き下げで競争上有利となる域内国が域外国から輸出需要を奪う効果を250億ドル、関税低下による貿易拡大効果を170億ドルと見込む。

     

    RCEP発効で、域内貿易額は2%(約420億ドル)増加するという。

     

    (4)「国別では日本の恩恵が最も大きく、域内向け輸出は19年比で5.%、金額で約200億ドル増える。中国や韓国も2%程度の輸出増を見込む。一方、インドネシアやベトナムなどは他の域内国に輸出需要を奪われてマイナスとなる。米国や欧州連合(EU)、インドなど域外国のRCEP向け輸出はいずれも減少する見通しだ」

     

    RCEPの国別恩恵では、日本が最大で域内向け輸出が19年比で5.%、金額で約200億ドル増えるという。日本企業の多国籍化が、「累積原産地基準」で大きなメリットを受けることになった。

     


    (5)「日本製品の輸出促進で特に期待が高まるのは自動車分野だ。中国向けの自動車用エンジンポンプの一部の関税率は交渉時で3%だったが、発効と同時に撤廃される。エンジン部品のほとんどで最大8.%の関税がかかっていたが、11年目または16年目までになくす。韓国でも自動車用電子系部品やエアバッグなどにかかっていた8%の関税が、10年目または15年目までに段階的に削減される」

     

    日本の工業品輸出では、自動車分野が大きな恩恵を受ける。日本の自動車産業は、トヨタを中心にした技術開発連合を築いている。一社も脱落することなく民間「護送船団」を組んでいる。それが、雇用を守るという強い信念だ。

     

    次世代自動車技術開発では、EV(電気自動車)はもちろん、水素自動車(水素を内燃機関で使う)開発やFCV(燃料電池自動車)でも共同歩調をとっている。これは、日本独特の協調路線が生み出した成果であろう。他国には見られない「美談」である。トヨタのリーダーシップによるものだ。

     

    (6)「農林水産品の輸出にも追い風となる。中国で人気が高いパックご飯やホタテにいずれも10%の税率がかかっていたが、段階的に減らす。日本酒や焼酎も関税率が低下すれば輸出増が見込まれる。日本への輸入量が多い品目では関税撤廃で価格引き下げ効果が見込まれる。衣類の関税は遅くても16年目までに撤廃する。農産品では芽キャベツやアボカドなどが即時撤廃されるほか、中国の紹興酒、韓国のマッコリなども21年目までに段階的に関税をなくす。一方、日本の生産者の反対が強いコメや牛肉・豚肉など重要5品目は関税削減の対象から外れた

     

    RCEPは、日本の得意産業が大きく伸び、不得手な農産品5品目は関税削減対象から外れた。工業品の競争力が抜群で関税撤廃する代わりに、重要農産品を守るのだ。日本的なかばい合いである。

    このページのトップヘ