勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2021年12月

    ムシトリナデシコ
       


    中国に向かって、人権を説いても無駄とする見方がある。そもそも、中国思想には、「人権」という認識は存在しないからだ。力でねじ伏せて社会秩序を形成する上意下達の国である。実力のある者には従うが、そうでなく説教だけ垂れる人間を軽蔑するのである。

     

    こういう中国人の本質を理解すれば、西側諸国は、防備の固さを見せつけ、中国の弱点を突く戦略がより効果的と言えそうだ。

     

    『ニューズウィーク 日本語版』(12月29日付)は、「中国に道徳を説いても無意味、それでも『核拡散』を防ぐ方法はある」と題する記事を掲載した。筆者は、ケビン・ラッド(元オーストラリア首相・外相)である。

     

    中国は2021年の7月と8月、核弾頭搭載可能な極超音速ミサイルの発射実験をしたとされる。中国側は認めていないが、事実だとすれば戦略核兵器の均衡を脅かすものであり、現に米中間の緊張を一段と高める結果になった。

     


    (1)「同じ時期に、中国が北部の砂漠地帯で最大300ものミサイル格納庫を新たに建設中であることが衛星写真で確認された。敵の目を欺くためのダミーもありそうだが、全体の半分が本物になるだけでも中国の核弾頭数は現状の3倍近くに増える。事態を憂慮する米国務省は10月、「中国核戦力の急速な増強は懸念すべきであり、国家間の安全保障と安定を脅かしている。......中国政府がわが国との協議に応じ、現実的な対策で不穏な軍拡競争と紛争のリスクを減らすよう求める」と警告を発した。すると中国の軍縮担当大使である李リー・ソン松がすぐさま反論し、オーストラリアに原子力潜水艦を供与するために米英豪の3国が結んだ新たな安全保障の枠組み「AUKUS(オーカス)」こそ核拡散の「教科書的事例」であり、軍拡競争を加速するものだと非難した」

     

    中国が、AUKUSを懸念していることは確か。豪州が、米英から攻撃型原潜技術を導入して、8隻を建艦する予定だ。これは、中国にとって想定外の事態が発生したことになろう。また、インドネシアが潜水艦基地を建設する。ここへも米原潜が寄港するようになれば。中国はジワジワと追詰められる形になる。

     


    元を質せば、原因をつくったのはすべて中国の「戦狼外交」に始まる。豪州やインドネシアを脅したことが反発を呼び、自ら包囲網をつくらせた。

     

    (2)「今のところ、中国は戦略兵器の削減に関してアメリカとの交渉を拒み、アメリカの保有する4000発近い現役核弾頭数の大幅削減が先だと主張している。だが中国も現に核戦力の増強を急いでいる以上、この理屈は通らない。9月には中国のベテラン外交官で元軍縮大使の沙祖康が声を上げ、相手より先に核兵器を使わないという従来の政策は「もはや時代にそぐわない」と論じた。アメリカは「新たな軍事同盟を結んで中国周辺での軍事的プレゼンスを高め、中国に対する戦略的圧力が強まっている」からだという。そうである以上、「核兵器の先制不使用について中米が交渉で共通理解に達し、あるいは中国の戦略兵器の有効性を損ねるような否定的施策をアメリカがやめない限り」、先制不使用政策を維持すべきでないと沙は説いた」

     


    中国は、これまで周囲に敵らしい敵が存在しないことが、「やりたい放題」の戦術を可能にさせた。南シナ海進出は、その最適例である。中国の底意が、領土拡張にあることがはっきりした以上、これを放置せず包囲することが、中国が危機感を深め軍縮への道を求めるきっかけになる。経済制裁もちらつかせれば、食糧やエネルギーの自給不可能な中国が、軍拡を思い止まるようになろう。

     

    韓国が「二股外交」をしていることは、その意味で極めて障害になる。米同盟国が一体化して中国へ対抗することが、軍拡を防ぐ道になるのだ。韓国は、小賢しく「出し抜け」を狙っている。

     


    (3)「この発言は重い。中国政府の高官が個人的見解を述べることはない。全ては当局の許可があっての発言だ。事が核戦略という重大事に関わるとなれば、なおさらだ。こうした強硬姿勢は現状の危険な変更につながりかねない。だが沙の発言からは、今日の米中対立のルーツも見える。中国政府は自国の核戦力と世界戦略の脆弱性に深刻な懸念を抱いている。そのことをアメリカ側は理解すべきだ。習近平国家主席も繰り返し、これは中国の台頭を何としても阻止したい大国との数十年来の「闘争」だと述べている」

     

    米同盟国は、中国に対して自国国力が「なんぼのもの」であるかを理解させることだ。習氏は、過剰評価しているだけに、徹底的な技術遮断して、裸の力を浮き彫りにさせるべきだろう。

     

    (4)「ここには現状を打開するヒントもある。戦略的世界観に関して、中国は徹底してリアリストだ。彼らに道徳的な正義を説いても何も得られない。だが、冷徹かつ現実的な議論には乗ってくる。両国の競争関係の深化は、むしろ中国を交渉の席に着かせる好機となり得る。そのためには、軍縮合意があれば自国の脆弱性を減らせると、中国に信じさせなくてはならない。どうすればそれが可能か。本格的な交渉には、中国も簡単には応じにくい。しかしアメリカの軍事力を気にしているのは確かで、そうであれば戦略的透明性や危機管理に関する実務者レベルの協議には応じるだろう」

     

    中国が、米同盟国と戦っても勝算のないことをはっきり認識させるべきである。それは、中国経済の破綻が明白になる時期と重なるであろう。この点からも、技術封鎖は不可欠である。

     

    (5)「そうした非公式協議は以前にもあったが、19年に中断された。これを再開し、あるいは新たに対話の場を立ち上げること。それが第一歩ではないか(時期としてはバイデン政権が核戦略の見直しを終える22年春以降になるだろう)。次に必要なのは、相互の信頼構築に向けて予測可能性や互恵性を確保していく手続きだ。これには弾道ミサイル発射実験の事前通告システムやミサイル防衛能力の合同技術評価などが含まれる。できれば、新しいSTART」(戦略兵器削減条約)体制には中国も参加させたい」

     

    西側諸国の団結が、中国を軍拡に誘う必須条件である。韓国の二股外交は、その邪魔になっている。

     

    あじさいのたまご
       

    韓国で現在、繰り広げられている大統領選候補者の家族に関わる非難中傷合戦は、常軌を逸している。一々、書くのも憚れるほどの低級な内容である。韓国の大統領=元首が、こういう騒々しい中から生まれるのかと思うと、絶句せざるをえない。

     

    この韓国社会が、二言目には日本へ真摯な謝罪をせよと迫ってくる。韓国の内情が分かれば分かるほど、「反日」騒ぎをする前に、自国の乱れた人倫を糺す方が先決であろうと言いたくなる。それほど乱れているのだ。

     


    『中央日報』(12月29日付)は、「
    リプリー症候群のない社会」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のキム・ドンホ論説委員である。

     

    リプリー症候群とは自ら作り出した嘘を信じる精神状態を意味する。米国の犯罪小説『リプルリ』(1955年)での主人公リプリーの偽善的人格障害に由来する。「リプリー病」「リプリー効果」ともいう。リプリーは富豪の友人を殺害した後、自身がその友人であるかのように生きていく。身分を偽るために果てしなく嘘をつく。これを原作に1960年にアラン・ドロン主演の映画『太陽がいっぱい』が作られ、1999年にはより原作に忠実な『リプリー』が再映画化された。

    (1)「このリプリー症候群が最近、韓国の政界にも現れている。虚偽履歴疑惑がふくらんだ「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領候補の妻キム・ゴンヒ氏と関連してだ。ある与党議員は、2007年に世間を騒がせた申貞娥(シン・ジョンア)氏の学歴偽造事件を引き合いに「キム・ゴンヒ氏の(虚偽)回数はもっと多い。本当に慎重であるべきだが、もしかしてリプリー症候群ではないのかと思うほど」と話して反発を受けた。大統領選挙を控え無差別な政治攻勢を展開する渦中であってもリプリー症候群に例えたのは常軌を逸したものだ」

     

    韓国社会自体が、リプリー症候群である。日韓併合時代を噓で固めた歴史観で覆い隠し、韓国の発展は自立によるものと噓を重ねている。真実を真実として受入れない国民性ゆえに、現在の大統領選候補者家族の噓が生まれたのであろう。これは、民族の業病である。

     


    (2)「(前記の)キム氏は、国民向け謝罪で「よく見せようと経歴を膨らませ間違って書いたものがあった」と明らかにしたように総体的偽造というには難しい。リプリー症候群でも偽の人生とはちょっと距離がある。だが、反対陣営の嘲弄と攻勢は激しい。膨らませた経歴がだれかに被害を与えたなら責任を取るべきという論理だ。それが公正と常識でないかと問う。嘘になった言葉の代価はこれほど大きい。「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)大統領候補も変わらない。息子の疑惑は政治攻勢だと振り払っても、土地開発をめぐる疑惑は違う。核心関係者が相次いで死亡し真相糾明は難しくなったが、特検要求を消せるだろうか。李候補自ら「事実、大壮洞(テジャンドン)は私が設計した」と話しており、疑惑が沈静化するか疑問だ」

     

    「共に民主党」候補の李氏は、息子の問題だけでなく、土地開発をめぐる疑惑まで背負い込んでいる。凄い人物が、大統領候補者になったものだ。得意の弁舌で疑惑を乗り切ろうと作戦を練っているが、すでに二人の関係者が自ら命を絶っている。それでも、大統領候補を辞退しない。欲得が絡むとこうなる見本である。

     


    (3)「こうして見ると、現実を誇張し膨らませるのは政治権力では日常茶飯事である。失敗と判明しても謝罪すら惜しむ。国が行った政策は、大統領候補の妻の履歴虚偽記載や一介の自治体の宅地開発不条理とは比較にならない。国民の暮らしと国の未来に莫大な影響を及ぼすためだ。(不動産)価格を統制できるという傲慢さこそ、リプリー症候群と似ている。住宅価格を原状回復するという住宅政策、生活給を与えるという最低賃金の急激な引き上げ、非正規職をなくすという雇用政策、原発の恐怖を解消するという脱原発などは現実と乖離した「希望拷問」だ。その余波で住宅価格が急騰し、バイトの仕事がなくなり、電気料金が上がり、暮らし向きが厳しくなったが責任を取る人はいない」

     

    文政権も、リプリー症候群である。大統領就任後、いくつかの失政を重ねながら、任期を全うしようとしている。「人権派弁護士」という触れ込みだったが、国民生活を破壊した張本人である。最低賃金の大幅引上げ、不動産政策の間違い、強引な原発廃止に伴うデータ偽造。多くの失敗を重ねた大統領である。

     

    (4)「11月まで従業員のいる自営業者が、3年連続で減少したのは最低賃金の急激な引き上げによるところが大きい。36カ月間減少したのはこの2年間の新型コロナの衝撃の前からの傾向だったということを傍証する。脱原発を強行して世界最高水準の炭素中立を達成するというのも誇張された約束だ。抗体形成と関係なく接種率だけ掲げて世界の模範になったという「K防疫」もやはり虚像と明らかになっている」

     

    文大統領の歩いた跡は、すべて間違いの連続である。一つぐらい良いことしたのでないかと探すのだが、あいにくゼロである。「安っぽい正義感」が、招いた失敗の連続である。記憶力だけ優れている「学校秀才」が、免れなかった悲劇である。文氏は、真の政治家でなかったのだ。 

     

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    日韓慰安婦合意が成立したのは、2015年12月28日である。安倍首相(当時)が訪韓して、朴大統領(当時)と「日韓間の慰安婦問題の最終的かつ不可逆的な解決を確認した」筈である。それが、その後の文政権登場で破棄されてしまったのだ。

     

    韓国外交部長官は、今になってまだ「日本の誠意ある謝罪を求める」と見当違いの発言をしている。日本は、謝罪し賠償金も10億円支払い済みである。「今さら何を言っているんだ」というのが日本の本音であろう。

     

    『中央日報』(12月29日付)は、「韓国外交部長官、『慰安婦問題関連で日本の前向きな対応期待』」と題する記事を掲載した。

     

    韓国外交部の鄭義溶(チョン・ウィヨン)長官は29日、慰安婦問題に関して「日本がもう少し前向きかつ合理的な対応をすることをわれわれは期待している」と話した。

    (1)「鄭長官はこの日、ソウルの外交部で行われた記者懇談会で「韓国政府としては(慰安婦)被害者らと対話を継続してこの問題の解決に向けた現実的な案を日本側に提示し続けている」としてこのように明らかにした。文在寅(ムン・ジェイン)政権は、韓日慰安婦合意で作られた和解・癒やし財団を2018年に解散し、政府予算で103億ウォンを編成して男女平等基金に出資した。財団の残余基金などの処理方向をめぐって日本と協議を進めているが数年にわたり足踏み状態だ」

     


    日韓慰安婦合意は、日韓政府間で交わされた協定である。条約と異なり、国会で批准されたものでないが、これに準ずる扱いを受けるべき性質のものだ。それを、政権が変わったという理由で一方的に破棄した。「革命政権」でも、対外的に交わされた協定類は遵守する。これが国際的な習わしだ。文政権は、国内政治の視点だけでそれを破ったのである。日本を軽視した結果である。

     

    日本としては、韓国から軽視・侮辱された以上、「はい、そうですか。次に案を出します」などと言うはずがない。これが、外交上のメンツという問題である。協定を破壊した韓国政府が、自らの責任で「残務整理」すべき義務を負っている。
     



    (2)「鄭長官は、「多くの被害者が和解・癒やし財団からの支援を拒否しており、財団をこれ以上運営するのは現実的に不可能だった。多くの被害者が真に願うのは日本の真正性ある謝罪だ。お金を望むのではない」と強調した。その上で「韓国政府が最小限の慰労をするため政府予算から別途の基金を設けて支援する案などを検討して男女平等基金を作ったが、被害者はまず日本の真正性ある謝罪から受けるよう求めてきた。日本は最後まで韓国が2015年の合意をそのまま守るべきという立場を頑強に守っており、(韓日間の協議が)全く進展をせずにいる」と話した」

    下線部分は、明らかな虚偽発言である。なぜなら、大半の元慰安婦とされる人々は、日本が提供した資金を受取っているのだ。

     

    日本は、慰安婦合意に基づき和解・癒やし財団に10億円を拠出した。合意時点で生存していた47人中34人、死者199人中58人に計44億ウォン(約4億2600万円)が支給され、約56億ウォンが残っている。

     


    生存者(当時)のうち72.3%の人々は、日本提供の資金を受取った。死者の家族は29%が受領した。これは、日韓慰安婦合意に反対する市民団体が、強烈に行なった「受領拒否運動」にもかかわらず、受取った人たちである。

     

    外交部長官による、「多くの被害者が和解・癒やし財団からの支援を拒否した」という発言は、真っ赤な噓である。それにも関わらず、さらに「真摯な謝罪」要求とは何ごとか。日本政府が、「聞く耳持たぬ」態度を取っているのは当然である。韓国は、深く反省すべきである。

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    中国はコロナの「真空地帯」である。感染者が一人でも出ると都市封鎖(ロックダウン)している。自然免疫は、形成される余地がないのだ。こうして、限りないロックダウの連鎖が続いている。

     

    北京大学所属の数学者4人で構成された研究チームは、11月27日に「中国疾病予防統制センター週報」で論文を発表した。その中で、「中国がウィズコロナを導入した場合、1日の新規感染者は最大63万人を超えるだろう」とし、既存の「ゼロコロナ」政策を続けなければならないと主張しているほど。中国は、地球最後の「ゼロコロナ」実践国になろう。

     


    『日本経済新聞』(12月29日付)は、「
    中国感染拡大、生産に影 五輪控え対コロナ強化」と題する記事を掲載した。

     

    中国で新型コロナウイルスの感染拡大に対し、企業が警戒を強めている。事実上のロックダウン(都市封鎖)が実施された中部の西安市では電気自動車(EV)大手などが対応を急ぐ。東北部の大連市では100社以上の水産加工場が停止した。

     

    (1)「中国政府は2022年2月開幕の北京冬季五輪に向け、感染そのものを抑えこむ「ゼロコロナ」政策を強めており、経済の重荷となるのは避けられない。西安市は23日、約1300万人の全市民の外出を制限し、不要不急の外出や市外への移動を禁止した。市中感染者は9~27日で800人を超えた。27日には感染対応や生活用品を運ぶ車両を除き、企業や市民の運転を禁じた」

     

    東京都の人口は1400万人である。これと同規模の西安市1300万市民が、1世帯につき2日に1回、1人だけが外出して生活用品を購入できるという。想像を絶する不便を強いられている。米英製のワクチン接種をしていれば、極端な「巣ごもり」を強制されるはずもない。基礎科学力の劣る中国では、こういう防疫対策しかとれないのであろう。

     


    (2)「日本経済新聞に対し、西安市の物流会社社員は「規制がとても厳しく、貨物車を使えない。電子製品などあらゆる工業製品が運べない」と語った。西安市に工場を構えるEV大手、比亜迪(BYD)は27日のコメントで「西安の拠点で生産に一部影響が出ており、積極的に対応を調整している」と説明した。中国メディアによると、BYDの西安市の工場は車両生産能力が年60万台程度。プラグインハイブリッド(PHV)では同社の主要生産拠点だ。納期の遅れなどで今後の販売に影響する可能性があるという。韓国のサムスン電子が西安市にもつ半導体工場は緊急時の運営体制を整えた。従業員らを工場の宿舎に寝泊まりさせるなどの方策で新型コロナの流入を防ぐ構えだ。韓国の聯合ニュースなどが報じた」

     

    西安市民だけが、籠城生活を余儀なくされているのでない。西安に工場を置く企業も同様の苦役を強いられている。

     


    (3)「大連市の荘河地区では11月上旬、感染拡大を受けて100社以上ある水産加工場がすべて生産を停止した。「いまでも再開時期は見通せない」(水産会社幹部)といい、各社の経営を圧迫している。大連市では最近、新たな感染が確認されていないが、同市政府は水産加工場の再開に慎重だ。「(新たな変異型の)オミクロン型の拡大で再開許可は遅れるのでないか」と危惧する水産会社の幹部もいる」

     

    中国では、感染者が増えると地域の党幹部が辞任させられている。こうなると、党幹部は自分の身を守るためにも一層厳しい「ゼロコロナ」をやらなければならない。自然免疫形成を阻止する意味で悪循環である。

     

    (4)「南部の東莞市(広東省)でも12月中旬以降、感染者が相次いで見つかり、市中感染は13~26日の累計で26人になった。いずれも同市中南部の大朗鎮地区で発生した。東莞市政府によると、この地区に集積する毛織物などの工場の操業に影響が出ている。北京市に近い天津市は15日、海外からの入国者のすべてに3週間、ホテルでの隔離を義務付けた。それまでの2週間から延長した。天津市では9日、中国本土で初めてオミクロン型が確認された。中国国営中央テレビ(CCTV)によると、天津市の防疫担当幹部は「空港や港湾で入国者や輸入貨物の監視・管理を強化する」と語った」

     

    下線部のように、北京に近い天津では防疫に躍起となっている。この状況で、北京冬季五輪は開催できるのか懸念される。これから厳冬期を迎える。「ゼロコロナ」政策の真贋が問われている。

     

    ムシトリナデシコ
       

    日本政府は、来年2月の北京冬季五輪へ高官を送らないと発表した。注目されていた中国外交部は、日本がJOC(日本オリンピック委員会)会長を送ることに対して、「歓迎する」という拍子抜けの反応をした。

     

    韓国政府は、日本が「外交ボイコット」と言わなかったことで、中国を刺激しなかったと見たのか、これまでの「出席ムード」が揺らぎ始めている。急に、文在寅氏が出席した場合の米国の出方を気にし始めているのだ。

     

    『中央日報』(12月21日付)は、「北京冬季五輪への政府代表派遣に悩む韓国」と題する記事を掲載した

     

    韓国政府が日本、英国、オーストラリアなど米国の核心同盟国とは違い2022年北京冬季五輪に対し、選手団だけ参加し政府代表団は送らない「外交的ボイコット」とは事実上距離を置きながらも政府代表の派遣に対しては苦心を繰り返している。特に北京五輪を文在寅(ムン・ジェイン)大統領が直接参加する首脳外交の機会にすることと関連しては得失を確認するのに慎重にならざるをえない雰囲気だ。



    (1)「大韓体育会は、まず五輪開会式出席者名簿に文化体育観光部の黄熙(ファン・ヒ)長官を上げているが、これは通常の仮登録にすぎない。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長出席の可否、終戦宣言成功の可能性などによって文大統領が訪中する可能性も開かれているという意味だ。だがすぐに「公平」の問題が提起される。文大統領はすでに任期中2度にわたり中国を訪問している。2017年12月の単独訪中に続き、2019年12月には韓日中首脳会談出席のため中国を訪れた。2回の機会にいずれも韓中首脳が会っており、そのたびに韓国政府は習近平国家主席の答礼訪問で双方が認識を一致したと明らかにしてきたが訪韓はまだ実現していない」

     

    文氏の「終戦宣言」への執着は異常である。大統領としての「業績」にしたいと焦っているもの。だが、文氏が訪中すれば3回目になる。この間、習氏は一度も訪韓していないのだ。これでは、バランスを欠くという議論が起こってきた。

     


    (2)「韓国政府は、高官級協議などが行われるたびに習主席の訪韓を打診しているが、中国側は「条件が整い次第推進する」という立場だけ繰り返している。特に2018年の平昌(ピョンチャン)五輪当時、中国は習主席だけでなくナンバー2の李克強首相すら訪韓しなかったという点を考慮すれば、文大統領の北京五輪出席は首脳間の相互訪問という側面でバランスが取れない。韓国政府はボイコットを避ける論理として、「前回大会開催国としての役割」を強調するが、平昌五輪閉会式で次回開催国首脳の習主席はビデオメッセージだけ送った

     

    韓国は、文氏の訪中の理由付として、頻りに「平昌冬季五輪」への返礼を理由にする。だが、習氏が訪韓したわけでない。たかが、ビデオメッセージにすぎない。とすれば、韓国もこの手で済ませる方法もある。

     

    (3)「それでも文大統領の訪中が、「有効なカード」として残っている理由は、金正恩委員長の五輪出席とこれを契機にした終戦宣言進展の可能性のためだ。韓国政府は2018年の平昌五輪当時、南北が合同チームを組んで韓半島(朝鮮半島)平和の雰囲気を作り、連鎖的な南北・米朝首脳会談が開催された状況を今回の北京五輪で再演する「アゲイン平昌」を念頭にしている。韓米間での協議が事実上終えられた終戦宣言にまた別の当事国である中国が呼応するならば北朝鮮もやはり自然に協議のテーブルに誘導できるというのが韓国側の希望だ。北朝鮮が、韓米両国の対話提案と終戦宣言協議経過に対し何の反応も見せていない対立局面が続くだけに、韓国の立場では中国の援護射撃が切実な状況だ」

     

    このパラグラフは、完全に韓国の「期待」に基づく話である。金正恩氏は、任期少ない文氏と会っても、約束を履行してくれる保障がない。それよりも、次期大統領と会談した方がプラスであろう。金氏が、「嫌い」な文氏へ花を持たせる意味はないと見ているのだ。

     

    北朝鮮が、中国の指示で動くことは先ずない。このことを忘れてはいけない。中国よりも米国へ親近感を持っているとされるだけに、文氏は訪中について冷静に判断すべきであろう。

     


    (4)「米国が、公式にボイコットを宣言して同盟を糾合中の北京五輪に、文大統領が直接訪問するのは誤解を受ける恐れがある。韓国政府としては、韓半島平和プロセスを重視した決定だとしても、国際社会では「韓国が中国に完全に傾いた」という誤ったシグナルと解釈する可能性が大きいためだ。また、これは外交的ボイコットの根拠だった中国の人権侵害を問題視しないという態度に映る懸念さえある」

     

    文氏が、北朝鮮問題解決で北京冬季五輪へ出席するという目的としても、米同盟国は違う目で見るだろう。韓国が、中国の人権侵害を容認していると受取らるからだ。

     

    (5)「一部では、韓米同盟に及ぼす影響を事前に最小化するなど緻密な戦略なく韓半島平和プロセスと終戦宣言だけを叫んで文大統領が訪中する場合、2015年に朴槿恵(パク・クネ)前大統領が中国戦勝節に参加したのと同様の状況が発生する可能性があるとの懸念も出ている。北京五輪に首脳が参加することにした国はロシアとアルゼンチンなどまだ少数にすぎない。2015年に当時の朴大統領は習主席とロシアのプーチン大統領とともに北京の天安門広場の城楼で閲兵式を見守ったが、これは内外で韓国の「中国傾斜論」に対する懸念につながった」

     

    文氏にとって最悪ケースは、訪中しても金正恩氏に会えないことだ。「終戦宣言」は実現せず、韓国だけが笑い者になるだろう。この際、大恥をかくことで、韓国外交も「大人」になるだろう。

     

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