勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2021年12月

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    野党第一党、立憲民主党の新代表に泉健太氏が当選した。代表選の投票状況を見ると、興味深い結果が浮かび出てきた。これまでの党内主流のリベラル派が後退して、保守派が指導権を握ったことである。具体的には、安全保障政策の確立である。旧日本社会党時代から堅持してきた「消極的防衛論」が、「積極的防衛論」を議論できる基盤ができたということだろう。

     

    米国を見ても分かるが、二大政党において政権交代が頻繁行なわれる背景は、安全保障政策において「水と油」の関係でないことである。有権者は、その点で安心していられる。こういう側面を無視して、「政権の受け皿になれる野党」と言っても無意味である。泉氏が、立民代表に選ばれたことは、自民党も褌の締め直しを求められる。

     


    『日本経済新聞』(12月1日付)は、「
    泉氏『野党共闘修正探る』立民代表選、保守票を集約 共産との合意『現在はない』」と題する記事を掲載した。

     

    立憲民主党の代表選は中道から保守系の議員が支持する泉健太氏が勝利した。決選投票でリベラル系のグループを基盤とする逢坂誠二氏との一騎打ちを制した。来夏の参院選に向けて党内をまとめながら共産党との共闘路線の修正を探る。

     

    (1)「泉氏は1回目の投票で国会議員と公認候補予定者の計286ポイントのうち96ポイントを得た。他の3候補は50~70ポイント台だった。党員・協力党員およそ10万人の票でも3割強を取り首位だった。地方議員票のみ143ポイントのうち48ポイントを取った逢坂氏と僅差の次点だった。決選投票で泉氏が得た国会議員のポイントは1回目での小川淳也氏の分を上乗せした数字に近い。両氏は民放番組で共産党との共闘で失ったものがあるかと聞かれて「ある」と回答した共通点がある。中道から保守の票を集約したもようだ。逢坂氏のポイントは同じリベラル系の西村智奈美氏が1回目で得たポイントを足した水準だった。保守系とリベラル系がそれぞれ泉氏と逢坂氏に分かれて投票した可能性が高い。決選投票のポイントは6割を泉氏、4割を逢坂氏がとった」

     


    立民が、決戦投票で保守系とリベラル系の二つに分かれ、勢力分野が明らかになった。泉氏の当選は、保守系の支持を得た結果である。保守系と言っても、「共産党と連携しない」という程度の話である。共産党の安保政策は、日本の支配的な見解から大きく離れており、この政党との連携は、「選挙対策」という目先利益を狙ったものに映る。

     

    (2)「立民は旧社会党系から保守系まで幅広い立場の議員が集まる「寄り合い所帯」で、原発や安保など政策面の食い違いもある。挙党体制を打ち出したのは、まとまりを欠きやすい状況への警戒ともいえる。参院選に向けて党内調整が必要なのは共産党を含む野党共闘のあり方だ。先の衆院選は候補者を一本化して小選挙区で議席を増やした一方、比例代表でそれ以上の議席を減らした。泉氏は記者会見で共闘路線について「単に継続ということではなく、まず(衆院選の)総括をしなければならない。その中で今後のことは考えたい」と慎重な言い回しで修正をにじませた」。

     

    政策の基本綱領が違う政党が、「当選者を増やす」目的で連携するのは、「野合」という非難を浴びても弁解できないであろう。今回、維新が議席を増やしたのは安保政策で自民党と大差なく、自民批判の「受け皿」になれた結果である。「おこぼれ頂戴」でなく、有権者が安心して一票を託せる立民に脱皮する努力が必要だ。それには、目先の「選挙対策」という小賢しいことを止めるべきだろう。小沢一郎的な発想は時代遅れになった。

     


    (3)「政権交代した場合に「限定的な閣外からの協力」を共産党から得ると9月に合意したことに関しては「衆院選に向けて交わしたものと理解している。現時点で何かが存在しているのではない」と指摘。現在は効力がないとの認識を表明した」

     

    立民と共産党との選挙合意は、文字通り、選挙目的である。その目的が、逆効果になった以上、白紙は当然のことだ。

     

    (4)「自公政権との対峙の仕方は変える意欲をみせる。代表選で「政策立案型政党を目指す」と訴えた。「批判ばかりの野党」というイメージの脱却を意識し、公開の場で官僚らを問いただす「野党合同ヒアリング」をいったんやめるとも提唱した。各党は泉氏が党内をまとめて方向性を示せるかを見極める。国民民主党の玉木雄一郎代表は「共産党との関係がべったりであれば連携は難しい。(新執行部の)判断を見定めたい」と話す。共産党の志位和夫委員長は立民との合意について「わが党は誠実に順守したいし、立民にもそういう立場で対応してもらいたい」と共闘継続を呼びかけた。自民党の茂木敏充幹事長は「共産党との関係を明確にしてほしい」と泉氏に求めた」

     

    立民は、政治ショーを止めて地道な政策立案で自民党と競争することだ。例えば賃上げについて、労働分配率のルール化の提唱をすべきである。付加価値の65%を賃上げファンドにする、といった具体的な提案をすれば、国民の見る目が変わるはずだ。ただ、ストライキで賃上げを勝ち取るという「腕力」に訴える前に、「頭脳」を働かせるべきである。

     

     

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    中国の習近平氏は、最も多感な青少年時代の7年間、毛沢東による「下放運動」によって地方の辺鄙な村へ強制的に追いやられた。横穴が住居という古代人並みの生活を送った辛い経験者である。その習氏が、こともあろうに毛沢東と同じ独裁者の道を歩んでいる。

     

    子どもの頃、親に虐待された人は、自分が親になって子どもを虐待するケースがあるという。これについて、心理学的な解釈が下されている。すわち、「刷り込み現象」というもの。

     

    ある生物有機体に、特定の時期に、特定の刺激によって生じた反応が、反復的な学習・経験・報酬がなくても、その後一貫して生じるようになることがある、というのだ。子どもの虐待は、こういう「刷り込み現象」でないか、と説明されている。習近平氏が、自分の辛い経験を忘れて、今や他人に対して同じ辛いことをさせていても矛楯を感じない。習氏にとっては悲劇だが、中国国民にはさらなる不幸な事態である。



    『ニューズウィーク 日本語版』(11月30日付)は、「
    毛沢東の外交は味方よりも多くの敵を生み出す『唯我独尊』だった」と題する記事を掲載した。筆者は、元外交官の河東哲夫(かわとう・あきお)氏である。

     

    毛沢東の起こした革命はフランス革命やロシア革命、そして現代の「アラブの春」などとも共通し、結局のところ大衆をアジって味方に付けると武力も使って権力を奪取。その後に大衆は置いてきぼり、という基本パターンをなぞっただけだ。中国の場合、置いてきぼりどころか毛沢東の「大躍進」政策の失敗で、何千万人もの大衆が餓死する憂き目を見た。

     

    (1)「毛沢東は少年少女たちを洗脳し、「紅衛兵」という暴力装置に仕立て上げた。彼になびかない者たちは軒並みつるし上げられリンチを受けた。家族同士、反革命分子だと密告し合うこともあったため、中国社会は仁義のないものとなった。そんな文革末期の1976年、筆者は北京を訪れた。くすんだ色の人民服を着た無数の人たちが、薄汚れた自転車に乗って雲霞(うんか)のように広い通りを走っていく」

     


    文化大革命(1966~76年)の10年間は、毛沢東が権力を奪回するための党内革命であった。これが可能であったのは、毛沢東が1945年に「歴史決議」を行なって「永世支配者」の地位を得たからだ。習氏が、これを模して自ら共産党100年の中で3回目の「歴史決議」を行い、「永世支配者」になる資格を得た。

     

    (2)「皆が一様に貧乏なら人はけっこう幸せなものだが、社会主義の国でいけないのは経済を仕切るお偉方たちが特権を貪ることだ。1971年に反毛沢東クーデターに失敗して飛行機で亡命を図った林彪元帥は、モンゴルで墜落死するが、現場に林彪夫人のものと思われる赤いハイヒールが転がっていた。毛沢東の4番目の夫人、江青もその傲慢さとプチ贅沢ぶりで大衆に嫌われていた」

     

    旧ソ連へ亡命をはかった林彪は、モンゴルで墜落死した。その現場には、林彪夫人のものと思われる赤いヒールが落ちていたという。国民は、貧乏暮らしをしていた時、最高権力者夫人は、贅沢が可能であった。この流れは、いまも続いている。現在は、元党幹部クラスの子弟が住宅20~30軒を持っているのだ。赤いヒールどころの話でない。桁違いの贅沢が許されている。

     


    (2)「毛沢東時代は外交も唯我独尊で、アメリカだけでなく同じ共産主義のソ連や日本共産党とも対立し、1969年にはソ連と国境で戦争を起こした。途上国を仲間だと称しつつ、東南アジアなどでは反政府のマルクス主義勢力を支援して影響力を拡大しようとした。その結果、インドネシアでは1965年に数十万人もの中国系住民が虐殺された。毛沢東の外交は、味方よりも敵を増やしたのだ」

     

    毛沢東外交は、敢えて敵をつくるものであった。妥協を知らずに「突撃」したからだ。新疆ウイグルや、チベットは毛沢東の占領政策の結果である。異民族を征服したのだ。これが、毛沢東外交の基本である。

     

    (3)「ほかならぬ習近平は文革時代に16歳から7年間も農村に下放され毛沢東思想を徹底的にたたき込まれたため、そのあたりの機微が分からない。これだけ中国が強くなった今は、アヘン戦争で失った国際的な威信を取り戻すとともに、浮ついた西側文化を国内から一掃する好機だと思っている。それは中国自身にとっても非常に危険なことだ。なぜなら中国経済の足腰は実は脆弱で、外国の資本や技術が引き揚げれば経済は逆回転を始める」

     

    習氏は、毛沢東二世を任じている。具体的な成果としては、領土拡大を基本とし南シナ海進出を確固たるものとする。さらに、台湾・尖閣諸島の攻略を目指している。これによって毛沢東の行なった新疆ウイグルやチベット占領に匹敵する業績にしたいと狙っているのだ。こういう200年も昔の領土拡張意識に最大の価値を置いている当たりに、習氏の時代錯誤を感じる。国民の幸せを第一にする政治ができないのは、毛沢東による「刷り込み現象」の結果であろう。

     

    (4)「加えて、習政権は民営ビジネスへの規制を強めて、その活力を奪ってもいる。国王の強い力の下で政府主導の工業化を実現しようとした18世紀のフランスは、民間活力主導のイギリスに敗れたし、20世紀のソ連の計画経済は国民の消費欲を満足させられずに滅びた。そのことを習近平はどう思っているのだろう? 筆者が外交官だった頃、「毛沢東に洗脳されてマルクス主義のバーチャルな世界が、リアルだと思う文革世代が中国を動かすようになる時が心配だ」と、ある中国の識者も言っていたが、今その時がやって来た。これが世界、そして日本にとって吉と出るか凶と出るか──。中国にとっては、多分凶なのだろう」

     

    韓国では、「86世代」が1980年代の「親中朝・反日米」路線を踏襲している。これと同じで、中国の「下放世代」は毛沢東のバーチャル世界をリアルと思い込んでいる。韓国も中国も硬直的外交である。韓国外交はすでに破綻しかかっている。中国も厳しい「孤独外交」を強いられるはずだ。 

     

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    日本もついに、「オミクロン株感染者」が出た。11月30日、ナミビアから成田空港に到着30代男性が、新たな変異株「オミクロン株」に感染していたことが分かった。国内で確認されたのは初めてである。水際作戦で、食止められるかどうかである。

     

    「オミクロン株」の感染源とされる南アでは、どういう状況なのか。遠隔地だけに日本へ情報は入りくいが、米国の情報収集力によって得られた「オミクロン株」の実態によれば、大騒ぎするほどのことではなさそうである。むろん、詳細な「オミクロン株」の遺伝子分析が終わっていない段階で、軽率な結論は慎まなければならない。だが、状況証拠を見ればそういうイメージが湧いてくる。

     


    南アの保健相は11月26日、オミクロン株に対するワクチンの感染予防効果が低下したとしても、重症化や死亡を防ぐ効果はあるとみていると述べた。科学者や医師によると、南アでは現在、入院患者4人につき3人程度がワクチンを接種しておらず、その他は1回しか接種していないという。これでは、急激な感染拡大に見舞われたのも自然という感じを受ける。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(11月30日付)は、「南アのオミクロン株感染者、入院急増も重症化は増えず」と題する記事を掲載した。

     

    新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」が確認された南アフリカで、感染の中心地となっているハウテン州の入院患者がここ2週間で急増している。ただ、重症化した患者は比較的少ないという。南ア国立感染症研究所(NICD)が明らかにした。

     


    (1)「ハウテン州は首都プレトリアや経済の中心地であるヨハネスブルグを含む。NICDによると、感染拡大が始まったプレトリア周辺では2歳未満の子どもの入院急増も目立つ。ただ、予防的な入院のケースも多いもようだという。NICDの公衆衛生専門家、ワシラ・ジャサット氏は、ここ2週間の全体の入院患者のうち、コロナ感染症と診断された人の割合はこれまでに南アを襲った感染の波の場合と同程度だと述べた」

     

    南アの公衆衛生専門家によれば、「オミクロン株」でコロナ感染症と診断された人の割合は

    これまでのコロナ感染者の割合と変わらないという。予防的意味での入院が増えているので、これが理由で感染者急増と見なされている背景かも知れない。

     

    (2)「世界保健機関(WHO)は先週、南アなどで見つかったオミクロンを「懸念される変異株(VOC)」に指定。NICDのデータは、オミクロンの人体への影響や他のコロナ変異株との違いについての初期の手掛かりを与える形となった。ただ、医師や専門家は、報告された患者数がまだ少ないことや、感染が初期段階であることなどから、他の変異株と比較したオミクロンの深刻さなどについて明確な結論を導き出すことは難しいとしている」

     

    「オミクロン株」は、まだ感染初期のために深刻さなどについて明確な結論を出せないという。現状では、予防的意味で入院した者が増えていることから、外部に誇大報道されている面もあろう。

     

    (3)「NICDのデータによると、ハウテン州では11月27日までの2週間で、1日当たりのコロナ感染による入院者数が平均49人に急増。その前の2週間では、1日当たり平均は18人だった。1日当たりの死者数に変化は見られない。南アでは11月11日に初めてオミクロン感染が確認された。コロナ感染者はそれ以降急増し、1日当たり300人程度だったのが28日には3220人に膨らんだ」

     

    NICDのデータでは、感染者が急増していることになっている。実際は、予防的な意味での入院者がいるというから、「正味」の感染者数把握は困難である。

     

    (4)「ハウテン州を中心としたオミクロン流行は、プレトリア周辺の大学生の年齢層で初めて確認された。一般的に若年層は、高齢者層と比べてコロナ感染で重症化する可能性がはるかに低いため、南アでのデータからオミクロン感染に関する結論を出すことは困難だという。多くの国と同様に、南アでは若年層のコロナワクチン接種率が高齢者層に比べて極めて低い。南アの人口6000万人のうち、ワクチン接種を完了した割合は24%強にとどまる。NICDのジャサット氏によると、ハウテン州で入院したコロナ患者の約4分の1がワクチンを接種していた

     

    下線部の記事については、補足が必要である。コロナ患者の4分の3はワクチン未接種者、残り4分の1は、接種が1回だけで2回済ませていないという。この事実は、『ウォール・ストリート・ジャーナル』(11月30日付)の別の記事で指摘している。となれば、ワクチン接種を2回済ませ、かつ3回目を受ける先進国では「オミクロン」に感染する確率が下がるであろう。

     

     

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    韓国の高齢者は、気の毒な存在である。年金受給者は5割強であり、苦しい生活を送っている。その上、政府が11月から「ウィズコロナ」策に踏み切った影響で、感染が拡大している。その影響は、高齢者にしわ寄せされたのだ。

     

    韓国政府は11月29日、段階的日常回復(ウィズコロナ)2次改編を留保し、4週間現在の状態を継続し、特別防疫対策を推進すると発表した。専門家は、この対策に防疫強化方案がほとんど入っていないとして強い懸念を示している。一見、ウィズコロナを中断するようなポーズを取りながら、現状は全く変わらないというのだ。

     

    防疫パス(接種完了・陰性確認制)有効期間を6カ月に設定し、すべての感染者に対して在宅治療を原則としながら、18歳以上の一般成人を対象に追加接種(ブースターショット)を実施するという内容が盛り込まれた。経口用治療薬(飲み薬)の年内導入も推進するというのだ。呆れたことに、「すべての感染者に対して在宅治療を原則とする」というとんでもないルールを作った。これが、「K防疫モデル」と自慢した国のやることか、という批判を呼んでいる。

    つまり、防疫専門家が主張してきた、「私的な集まりと営業時間の制限、防疫パスの拡大適用など」は、今回の対策に含まれなかった。梨大木洞病院呼吸器内科のチョン・ウンミ教授は「自営業者のために防疫を放棄した」と酷評したほど。大統領選挙で自営業者の支持を得たいので、「ウィズコロナ」の抜本的な見直しをしなかったのである。

     

    『聯合ニュース』(11月30日付)は、高齢者の感染拡大懸念、「時間差を置いて重症者が増加―韓国政府」と題する記事を掲載した。


    (1)「韓国政府の中央事故収拾本部の孫映レ(ソン・ヨンレ)社会戦略班長は30日の記者会見で、新型コロナウイルスの感染拡大と関連し、重症化リスクの高い高齢者層の感染増加に懸念を示した。「感染者の総数よりも高齢の感染者の規模と絶対数が非常に重要だ」と述べ、高齢の感染者の割合が下がらず、逆に少しずつ高まることで、1週間程度の時間差を置いて重篤・重症患者の増加につながっていると説明した」

     

    感染者総数に関心が集まっているが、高齢者の感染割合の上昇に注目すべきである。確実に重症者の数が増えるという深刻な事態を迎えている。

     

    (2)「孫氏は、重篤・重症患者の85%以上が60歳以上だが、ワクチンの接種を完了している場合は未接種者に比べ重症化する割合が3分の1ほどに低下するといった効果が依然表れていると伝えた。高齢者層を中心に重篤・重症患者が連日過去最多を更新し、病床の状況も限界に達している。首都圏(ソウル市、京畿道、仁川市)で入院を1日以上待っている患者は、同日時点で887人に達する」

     

    重症者患者の増加で、病床は限界点に達している。この結果、首都圏で1日以上の入院待ちが、887人にもなっているのだ。この状態で、「ウィズコロナ」の抜本的な見直しをしないとは、異常な事態というべきだろう。

     


    (3)「孫氏は、病床の空きを待つ人のうち3分の2は「生活治療センター」、3分の1は感染症専門病院への入院待機者だとし、「優先順位に従い、入院しての治療が必要な患者から入院できるようにしている。重症者に病床が割り当てられないケースが出ないよう、モニタリングと緊急移送を強化している」と説明した。政府は首都圏の上級総合病院と病床の追加確保に向けた議論を続けている。権徳チョル(クォン・ドクチョル)保健福祉部長官は同日、首都圏の上級総合病院の院長らと会合し、病床不足への対応策を話し合った。今月19日には金富謙(キム・ブギョム)首相も同様の会合を開いている」

     

    入院待機者の3分の1は、感染症専門病院という。これは、重症者という意味でないのか。政府は、事態の重大さを隠蔽して大統領選挙で不利にならぬように姑息な手段を取っているという印象を拭えないのだ。

     


    (4)「臨時の病床設置にも取り組んでいる。孫氏は「1~2カ所の病院を対象に、コンテナを利用した臨時施設で診療エリアを設ける方法を試してみる計画だ」と伝え、これは既存の病院の建物と動線を分けられるため感染管理に有利な上、医療従事者の業務の負担も下げられると説明した」


    コンテナを利用して、臨時施設で診療エリアを設けるという。野戦病院並みの緊張状態に置かれている。ここまで、医療陣をてんてこ舞いさせながら「ウィズコロナ」を手直ししないのは、どう見ても選挙対策と見るほかない。

    今回、政府の出した対策は、苦し紛れのものという批判が絶えない。

     

    「ソウル大学医大医療管理学科のキム・ユン教授は、『現在、重篤患者が大幅に増えて入院できず、待機する患者が増えると同時に死亡者も増えているが、とんでもない対策を出した』としながら、『在宅治療は生活治療センターの代替策だが、何かしら(対策を)出さなくてはならないから、対策だと言って出して体面を整えようとした』と批判した」(『中央日報』11月30日付)。


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