文大統領は、任期末の接近で大慌てである。大統領としての「レガシー」が一つもないからだ。ライフワークの南北問題解決で、朝鮮戦争の「終戦宣言」を出して何とか形を整えようとしている。だが、朝鮮戦争の当事国である米国は、この問題で冷淡である。
この7月、任務を終えて米国に戻ったロバート・エイブラムス前在韓米軍司令官は、次のように語っている。「韓国政府の終戦宣言推進について、『私の疑問は終戦宣言をして何を得ようとするのかが明確でない点』とし、『終戦宣言を性急にすれば、戦争が終わったので1950年夏に通過した国連安保理決議を見直すべきという主張が出てくる可能性が出てくる。そうなれば急速に流れていくはず』と懸念を表した」(『中央日報』12月25日付)
こういう事情を知りながら、文氏は遮二無二、「終戦宣言」工作を中国へ仕掛けている。
『中央日報』(12月26日付)は、「北京五輪控えて韓中密着、オンライン首脳会談の可能性も」と題する記事を掲載した。
文在寅(ムン・ジェイン)政権任期末に韓国と中国が高官級交流を強化し、オンライン首脳会談の可能性にも言及されている。特に終戦宣言の進展を望む韓国と北京オリンピック(五輪)の成功を望む中国の立場が重なり、首脳会談の議論に入る姿だ。お互いに対する両国のこうした内心は23日の韓中外務次官戦略対話で幅広く議論された。
(1)「韓国外交部の当局者は24日、「両国はコロナ状況という困難の中にもかかわらず、首脳間の交流の重要性について認識を共有している」とし「(韓中外務次官戦略対話でも)多様な形で戦略的意思疎通を続けていくことにした」と述べた。文大統領と中国の習近平国家主席のオンライン首脳会談が開催される場合、その時期は来年1月が有力視される。来年2月には北京冬季五輪が予定されていて、3月には韓国で大統領選挙があるからだ。もちろん文大統領の退任を控えた時期に両首脳の会談(オンライン)が開催される可能性もあるが、来年1月を越せば形式的な会談に終わるというのが外交関係者らの一般的な見方だ」
韓国は、中国と話を付ければ北朝鮮が自動的に中国の意向通りに動くという錯覚をしている。北は中国を信頼せず、むしろ米国へ関心を向けているほど。こういう北の微妙な心理を読まずに「独り相撲」している感じが強い。中朝関係は、一枚岩でないと指摘されている。
(2)「外交筋は、「具体的な時期を決める段階ではないが、青瓦台(チョンワデ、韓国大統領府)の徐薫(ソ・フン)国家安保室長の訪中と韓中外務次官の戦略対話で首脳会談関連の議論が熟した状況」とし、「新型コロナとオミクロン株拡大の余波で対面首脳会談が難しいだけに、オンライン方式でも首脳会談を開催しようという共感が形成されている」と伝えた」
韓国は中国への「異常接近」によって、米国がどのように反応するか、全く考えていないようである。韓国は、オンライン形式の中韓首脳会談を希望している。これで、ますます中国に軽視されることになろう。韓国は、米中双方から軽い存在に見られるだけだ。
(3)「実際、韓中は高官級で幅広い交流を継続中であり、首脳会談に進む姿だ。先月、張夏成(チャン・ハソン)駐中韓国大使が中国外交トップの楊潔チ共産党政治局員に会ったのに続き、2日には青瓦台の徐薫国家安保室長が訪中して楊局員と会談した。韓中外務次官戦略対話も2017年以来4年6カ月ぶりに復活した。韓中が最近、お互い融和ジェスチャーを持続的に交換しているという点も、首脳会談開催へのステップになるという分析だ。まず韓国は米中間の人権問題の延長線上にある北京五輪「外交的ボイコット」に参加しないという立場だ」
韓国は、法的に何の保証もない「終戦宣言」を出させたくて狂奔している。すべて、文氏の「レガシー」にしたいだけで後々、大きな安全保障問題に繋がるリスクを弁えない行為である。米国が、強く警戒している点だ。
(4)「中国は最近、韓中友好を強調しながら親近感を表している。中国外務省の汪文斌報道官は13日、文大統領が「外交的ボイコットを検討していない」と一線を画したことについて「五輪の精神に基づく韓中友好の実現」と強調した。また、終戦宣言など文在寅政権の韓半島平和プロセス再稼働の意志に応じるかのように「朝鮮半島問題の政治的解決を推進し、朝鮮半島の長期的な安定実現に寄与することを望む」という立場を明らかにした」
米国は、朝鮮戦争で国連軍を率いた立場である。中国は、北朝鮮とともに侵略軍である。韓国は、防衛軍である米国の了解を得ないで、侵略軍と話合いができるだろうか。こういう形式論からみても、韓国の中国詣では異常に映るのである。