勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2021年12月

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    文大統領は、任期末の接近で大慌てである。大統領としての「レガシー」が一つもないからだ。ライフワークの南北問題解決で、朝鮮戦争の「終戦宣言」を出して何とか形を整えようとしている。だが、朝鮮戦争の当事国である米国は、この問題で冷淡である。

     

    この7月、任務を終えて米国に戻ったロバート・エイブラムス前在韓米軍司令官は、次のように語っている。「韓国政府の終戦宣言推進について、『私の疑問は終戦宣言をして何を得ようとするのかが明確でない点』とし、『終戦宣言を性急にすれば、戦争が終わったので1950年夏に通過した国連安保理決議を見直すべきという主張が出てくる可能性が出てくる。そうなれば急速に流れていくはず』と懸念を表した」(『中央日報』12月25日付)

     

    こういう事情を知りながら、文氏は遮二無二、「終戦宣言」工作を中国へ仕掛けている。

     


    『中央日報』(12月26日付)は、「北京五輪控えて韓中密着、オンライン首脳会談の可能性も」と題する記事を掲載した。

     

    文在寅(ムン・ジェイン)政権任期末に韓国と中国が高官級交流を強化し、オンライン首脳会談の可能性にも言及されている。特に終戦宣言の進展を望む韓国と北京オリンピック(五輪)の成功を望む中国の立場が重なり、首脳会談の議論に入る姿だ。お互いに対する両国のこうした内心は23日の韓中外務次官戦略対話で幅広く議論された。

     

    (1)「韓国外交部の当局者は24日、「両国はコロナ状況という困難の中にもかかわらず、首脳間の交流の重要性について認識を共有している」とし「(韓中外務次官戦略対話でも)多様な形で戦略的意思疎通を続けていくことにした」と述べた。文大統領と中国の習近平国家主席のオンライン首脳会談が開催される場合、その時期は来年1月が有力視される。来年2月には北京冬季五輪が予定されていて、3月には韓国で大統領選挙があるからだ。もちろん文大統領の退任を控えた時期に両首脳の会談(オンライン)が開催される可能性もあるが、来年1月を越せば形式的な会談に終わるというのが外交関係者らの一般的な見方だ」

     

    韓国は、中国と話を付ければ北朝鮮が自動的に中国の意向通りに動くという錯覚をしている。北は中国を信頼せず、むしろ米国へ関心を向けているほど。こういう北の微妙な心理を読まずに「独り相撲」している感じが強い。中朝関係は、一枚岩でないと指摘されている。

     


    (2)「外交筋は、「具体的な時期を決める段階ではないが、青瓦台(チョンワデ、韓国大統領府)の徐薫(ソ・フン)国家安保室長の訪中と韓中外務次官の戦略対話で首脳会談関連の議論が熟した状況」とし、「新型コロナとオミクロン株拡大の余波で対面首脳会談が難しいだけに、オンライン方式でも首脳会談を開催しようという共感が形成されている」と伝えた」

    韓国は中国への「異常接近」によって、米国がどのように反応するか、全く考えていないようである。韓国は、オンライン形式の中韓首脳会談を希望している。これで、ますます中国に軽視されることになろう。韓国は、米中双方から軽い存在に見られるだけだ。

     

    (3)「実際、韓中は高官級で幅広い交流を継続中であり、首脳会談に進む姿だ。先月、張夏成(チャン・ハソン)駐中韓国大使が中国外交トップの楊潔チ共産党政治局員に会ったのに続き、2日には青瓦台の徐薫国家安保室長が訪中して楊局員と会談した。韓中外務次官戦略対話も2017年以来4年6カ月ぶりに復活した。韓中が最近、お互い融和ジェスチャーを持続的に交換しているという点も、首脳会談開催へのステップになるという分析だ。まず韓国は米中間の人権問題の延長線上にある北京五輪「外交的ボイコット」に参加しないという立場だ」

    韓国は、法的に何の保証もない「終戦宣言」を出させたくて狂奔している。すべて、文氏の「レガシー」にしたいだけで後々、大きな安全保障問題に繋がるリスクを弁えない行為である。米国が、強く警戒している点だ。

     

    (4)「中国は最近、韓中友好を強調しながら親近感を表している。中国外務省の汪文斌報道官は13日、文大統領が「外交的ボイコットを検討していない」と一線を画したことについて「五輪の精神に基づく韓中友好の実現」と強調した。また、終戦宣言など文在寅政権の韓半島平和プロセス再稼働の意志に応じるかのように「朝鮮半島問題の政治的解決を推進し、朝鮮半島の長期的な安定実現に寄与することを望む」という立場を明らかにした」

     

    米国は、朝鮮戦争で国連軍を率いた立場である。中国は、北朝鮮とともに侵略軍である。韓国は、防衛軍である米国の了解を得ないで、侵略軍と話合いができるだろうか。こういう形式論からみても、韓国の中国詣では異常に映るのである。

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    およそ非科学的と言うほかない。陝西省の西安市(人口1300万人)は12月22日、コロナ感染者が52人(12月9日からの累計患者数143人)出たので即、都市封鎖(中国では「閉鎖式管理」と呼称)へ踏み切った。

     

    西安市の人口は、東京都(1400万人)とほぼ同規模である。これだけの大規模都市が、累計143人の患者が出てロックダウンになった。東京都の対応から見ると、想像もできない事態である。医療施設が完備していないことから、超早期のロックダウンである。経済への打撃は凄いものだろう。

     

    『大紀元』(12月24日付)は、「中国西安市、感染拡大で都市封鎖 出血熱も同時流行」と題する記事を掲載した。

     

    中国北西部の大都市、西安市で現地政府は22日午後、新型コロナウイルスの感染拡大防止策として、23日午前零時から「閉鎖式管理(実質上の都市封鎖)を実施する」と緊急通達した。中国衛生部の発表では、22日に西安市のウイルスの新規感染者は52人、12月9日からの累計患者数は143人、すべて「デルタ株」の感染で、「オミクロン株」の感染例はまだ見つかっていないという。 


     (1)「1世帯につき2日に1回、1人だけが外出して生活用品を購入できる。西安市内への出入りは禁止される。フライト情報サイトによると、西安発着便の85%以上が欠航している。緊急通達が発表された直後、市民が買い占めに走るなど市内は一時混乱状態だった。公共の場への出入りに必須の「健康コード」は、アクセスが殺到してシステムクラッシュが起こった。大紀元に寄せられた市民の情報によると、同市のPCR検査システムが21日に故障し、当日に採取したサンプルが全部無効になった。同市民は「寒風の中、5時間待ち続けた数百人は検査を受けられないと告げられて、大変なショックを受けた」と話した」

    1300万市民が、1世帯につき2日に1回、1人だけが外出して生活用品を購入できるという。大変な不便を強いられる。米英製のワクチン接種をしていれば、こういう極端な「巣ごもり」を強制されるはずもない。基礎科学力の劣る中国では、こういう防疫対策しかとれないのであろう。

     


    (2)「同市では最近、出血熱の感染も急激に増えているとみられる。市当局は、「予防可能、コントロール可能」としている。地元市民と名乗るネットユーザーから、「大勢の農民が感染して死亡した」「出血熱の治療指定病院は軒並み満床」「イチゴのビニールハウスはネズミだらけだ」といった投稿があった。同市当局は今回、「閉鎖式管理」であることを強調し、「都市封鎖」という従来の表現を避けた」

     

    出血熱感染も増えている。出血熱は、出血を特徴とする重篤なウイルス感染症である。出血熱は、多種多様なウイルスにより引き起こされる。この感染症は、ウイルスの種類により、感染者の皮膚や体液に触れたり、感染したげっ歯類の糞尿に触れたり、虫に刺されるか咬まれたり、汚染された食べものを食べたりすることで感染する可能性があるという。この出血熱の感染が拡大すると、中国の経済活動はさらに萎縮するはずだ。

     


    『ブルームバーグ』(12月24日付)は、「
    中国、西安市の当局者26人を処分-コロナ対策不十分で責任問われる」と題する記事を掲載した。

    中国当局は、新型コロナウイルスの感染拡大防止で十分な対策を怠ったとして、陝西省西安市の当局者26人を処分した。人口1300万人を抱える同市ではコロナ感染が広がっており、23日から大規模なロックダウン(都市封鎖)が始まった。

     

    (3)「コロナ根絶を対策の中心に据えている中国では、兵馬俑で有名な西安市が新たなホットスポットとなっている。来年2月に北京冬季五輪を控える中で、中国当局はデルタ株の一掃に手間取っているほか、これよりもはるかに感染力が強いとされるオミクロン株にも警戒を余儀なくされている。24日発表された西安市のコロナ新規感染者数数は49人と、前日の60人余りからは減少した」

     

    西安市は12月23日から、大規模なロックダウン入りである。24日は、新規感染者が前日の60人余から49人へと減った。ドックダウンの効果ではない。

     


    (4)「西安の感染拡大は、パキスタンからの航空便までたどれる感染から始まったもようだ。同市の空港から市中に広がり、感染のつながりは複数あるとされる。このため、接触者追跡の担当者も突き止めることに手間取っている。隣接する山西省のほか、北京でも西安に関連した感染が散発的に確認されており、全国的な感染拡大再燃を巡る懸念が強まっている。地元メディアが24日報じたところによると、西安市の当局者26人が規律検査・監察部門からコロナ対策の責任を問われ、処分を受けた

     

    西安市への航空便も大幅に運航停止となっている。当局者26人が処分されたという。大変な騒ぎである。

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    習近平氏は、絶対的権力基盤を固めていると見られてきた。先には、中国共産党100年において3回目の「歴史決議」を出すなど、毛沢東・鄧小平に次ぐ権力者の地位を手に入れたと見られてきた。だが、中国共産党機関紙『人民日報』(12月9日付)で、鄧小平の経済路線を賛美する論文が掲載されたのだ。この論文では、習近平氏に一度も言及せず、鄧小平についてはなんと9回も名前を挙げた。

     

    このことから、党内において経済路線をめぐる争いが起こっているとの憶測を生む事態になった。今年後半からの経済減速が、中国経済の屋台骨を揺るがしていることが原因である。習氏は、「共同富裕論」を掲げて、不動産投機抑制に動いている。これが、地価下落をもたらし地方政府の財源窮迫を招いているのだ。

     


    習氏は、不動産バブル抑制で経済減速の生む政治的摩擦を押さえ込める自信があれば、22年のGDPを5%強と低めに設定できる。だが、地方政府から反対が出て、高目のGDP成長率を要求されれば、5.5~6%成長率という高めに設定しなければならないと見る向きも出てきた。こうして22年の成長率目標が、習氏の政治権力の強弱を占う材料になるというのである。

     

    『ロイター』(12月22日付)は、「来年の中国成長率目標、習氏の『権力』知る手がかりに」と題するコラムを掲載した。

     

    中国は、世界金融危機以降で最も重要な国内総生産(GDP)成長率目標を設定する態勢に入った。かつて経験がないような一連の経済的試練に直面する中国は、成長率目標を今年の「6%以上」から、不良債権問題の重圧が持続的にかかり続けることを意味する水準まで、大きく下方修正する意向を示唆している。習近平国家主席が選択する目標は、中国をより効率的な発展の道筋に持っていくために、同氏がどれだけの力を備えているかを探る手掛かりになるだろう。

     


    (1)「先のコロナ禍で受けた痛手が消えていく中で、中国共産党には、実態以上に高まっている経済へのさまざまな期待を押し下げるべきあらゆる理由がそろっている。中央政府は、新変異株の脅威の先まで見据えて、既に不動産セクターの金融リスク抑制に乗り出した。中国の経済活動の25%から3割強を担う不動産セクターが、中国恒大集団などによって動揺する中で、当局はその崩壊を防ぐために全力を注いでいる。2兆5000億ドルに上る販売前物件の工事完成を見届け、消費者信頼感の急低下を避けるというのも対策の1つだ」

     

    習氏は、住宅が住むためであり投機対象でない、と分かりきったことを繰返している。ここまでしながら不動産バブル抑止に取り組んでいる。当然、来年のGDP成長率は低下する。

     

    (2)「ロックダウン(都市封鎖)の下で、小売売上高や国内観光、サービス部門は低迷が続いたが、そうしたマイナスをある程度帳消しにしたのが、海外からの医療機器と電子商取引関連の需要だった。だが、貿易相手の経済正常化に伴って、この流れがいつまでも続くかどうか不確かだ。また、生産性に関して言えば、中国の経済成長に貢献するどころか足を引っ張ってきた。国有企業優先の政策も、生産性低下に拍車をかけている。今年第3・四半期の成長率が4.9%にとどまった中国経済は、来年減速するとの見方が広がっている。あるいは単なる減速よりもひどい状況になってもおかしくない」

     

    今年10~12月期のGDPは、前年同期比4%台を割込むとの見通しが出はじめている。こうなると、22年のGDP成長率は5%強に止まる公算が強まろう。習氏は、不動産バブル抑制のため、低い成長率を甘受すべきとしている。この低成長路線が、党内で受入れられるには、習氏の政治基盤が強いことが前提になろう。そうでなければ、妥協を余儀なくされる。

     

    (3)「習氏は、「洪水のような景気刺激策」が当面実施されることはないと、投資家を納得させる努力を続けている。当局が融資や債券のデフォルト(債務不履行)を甘受しながら、大幅な利下げは差し控える姿勢だとうかがえる。これは成長率が4%近くと、政府顧問が提言している来年目標の5.5%程度よりはるかに低くなることを意味する。より保守的な成長率目標が採用されれば、中国経済の構造転換に対する習氏の本気度が示される。その場合の危険は、2015年の反汚職運動時のように、官僚機構が動かなくなることだ。地方政府の資金繰り圧迫にもつながる

     

    中国経済の構造転換には、住宅投資・設備投資・公共投資といった総固定投資比率の引下げが条件である。だが、そうなるとGDP成長率は低下する。この狭間にあって、中国経済は耐えられるかどうか。卑近な言葉で言えば、中国は手術(構造転換)する体力(GDP成長率)が問われる。地方政府は、低成長になれば財源不足で動けなくなると、指摘しているのだ。

     


    (4)「
    一方で、住宅とインフラの投資に再び寛容な顔を見せると、GDPの不均衡は解消せず、債務の対GDP比は一段と限界に迫る上に、当局による厳しい債務圧縮の掛け声は表面だけだと投資家に見くびられるだろう。習氏が金融システムに今後も与信縮小路線を維持させ続けることができるとすれば、同氏の権力の絶大さを物語るこれまでで最も強力なサインになる」

     

    地方政府の要求に従い、高目のGDP成長率を目標に掲げれば、不動産バブル抑制という構造改革は後退する。問題を先送りするだけなのだ。習氏は、こういう切実な要請を退けて、中国経済の改革を実現できるのか、である。その政治力が問われている。低めのGDP成長率=権力基盤は不動。高目のGDP成長率=権力基盤が動揺、という方程式が生まれるであろう。

     

    中国経済が、ついに手術台へ上がった。この状況で、米国と世界覇権を争うなど、白昼夢である。現実の厳しさに目を覚ますことだ。

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    文大統領は、今年1月時点では二人の元大統領の赦免について「絶対拒否」の姿勢であった。それが、次第に軟化した裏には朴槿惠(パク・クネ)氏の病状、特に精神面でのダメージが顕著になってきたことが影響したようである。

     

    次期大統領選が本格化すれば、野党候補は二人の元大統領の赦免問題を持出すはず。その際、文大統領が「政治的報復」で行なったということに話が発展すれば、文氏はもちろんのこと、与党候補者にも波及する。こういう事態を恐れたのであろう。だが、朴前大統領だけを「選別」赦免した。李明博(イ・ミョンビャク)元大統領への断罪継続は、「李明博が盧武鉉(ノ・ムヒョン)を殺した」という親盧派の怒りから始まった政治的な弾圧であることを自ら認めるものである。



    ここで次の例を見れば、文氏がいかに政治的「小者」であるかが分かるであろう。

     

    「金大中(キム・デジュン)氏は1997年に大統領に当選した直後、金泳三(キム・ヨンサム)大統領に建議して全斗煥(チョン・ドゥファン)、盧泰愚(ノ・テウ)元大統領を赦免させた。金氏は、全時代に「死刑」判決を受けている。この「敵」を許したのだ。金大中大統領は就任後、四半期に一度以上、元大統領夫妻を青瓦台に招請した。金大中大統領が「敵」を国家元老として礼遇したのは、個人的な解冤の次元を超越する。和解と統合だけが、分裂した分断国家を率いていく動力であるため政治報復を中断するという信念の結果だった。金大中大統領は、これを通じて進歩と保守、地域対立の和解という政治的信頼資産を蓄積した」(『中央日報』(2021年1月11日付

     

    金大中・元大統領は、政敵であった全斗煥、盧泰愚両氏を赦免させ、大統領へ就任後、四半期に一度以上、元大統領夫妻を青瓦台に招請し、国家元老として礼遇したという。涙の出るほど度量の大きい政治家であった。それに比べて、文氏の振る舞いはどうか。朴槿惠氏の病状悪化の責任を回避したい赦免である。

     

    『ハンギョレ新聞』(12月25日付)は、「文大統領が朴槿恵電撃赦免 なぜ? 大統領選で争点化する前に決断か」と題する記事を掲載した。

     

    文大統領は、今年初めには前職大統領の特別赦免に否定的だった。強硬だった態度は、今年5月の就任4周年特別演説後の質疑応答で若干軟化した。「高齢で健康も思わしくないということで、なおいっそう気の毒」だとし「国民統合に与える影響、韓国司法の正義、公平性、また国民の共感などを考えながら判断していきたい」と述べたのだ。

     

    (1)「与党の関係者たちは、年末が近づく中で朴前大統領に対する赦免提案が相次いだことが、文大統領の決断に影響を及ぼしたと説明する。文大統領に近い市民団体の複数の重鎮は「高齢の女性前大統領をあまり長く拘束しておけば、徳が薄いとの評価を受ける恐れがある」、「できるだけ年を越す前に朴前大統領を赦免し、次の大統領の負担を軽くすべきだ」との意見を伝えたという」

     

    文氏は、与党関係者の働きかけで、朴前大統領の赦免へ心が傾いた。「高齢の女性前大統領をあまり長く拘束しておけば、徳が薄いとの評価を受ける」という殺し文句で決断したのであろう。朴氏の病状は逐一、報告されているはず。病状の進展に怖くなってきたのだ。

     


    (2)「前職大統領の赦免は、いずれにせよ文大統領が在任中に処理すべき課題であるうえ、大統領選挙で政治争点化するのを防ぐために「結者解之(自分の行いは自分で決着をつける)」の観点から実行したとの分析も示されている。民主党選対委の幹部は「文在寅政権は積弊清算要求に従って捜査を行ってきたが、そのせいで『報復政治』のイメージが残ってもいた」とし「次の政権に持ち越すこともできるのに文大統領が決断したのは、こうしたイメージを本人が決着をつけるという意志を示したもの」と述べた。来年3月の大統領選後に大統領当選者の提案を受けるというかたちの赦免も可能だが、文大統領は問題を避けて通らずに年末特赦に踏み切ったというのだ」

     

    文政権は、積弊清算によって捜査を行なわせてきた。そうでなければ、責任を感じなくて良いはずである。「報復政治」を行なった以上、次期政権が保守派に移れば、今度は文氏が捜査のターゲットになる。任期切れが接近するとともに、自身へ刃が向けられることを気にするようになったのであろう。

     


    (3)「朴前大統領が在任期間より長い49カ月間にわたって服役し、健康状態が悪化していることも影響を及ぼしたようだ。椎間板ヘルニアなどで先月22日にサムスンソウル病院に入院した朴前大統領は、持病のほかにも歯科や精神健康医学科などでの治療も受けているという。与党の幹部は「精神健康医学科の治療が重要だ。具体的に明らかにはできないが、所見書には目立つほどの内容があった」と述べた。朴前大統領の健康が急速に悪化した場合に直面することになる政治的負担も考慮したということだ」

     

    下線部は、重要である。朴氏の健康が急速に悪化した場合、批判の矢面に立たされるのは文大統領である。病状悪化を事前に知って責任回避行動に出たとも言えよう。

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    韓国は、「K防疫モデル」の成功と自画自賛してきた。現在は、全く異なる局面に追いやられており、深い反省に沈んでいる。この韓国が、日本の防疫対策を愚弄して、政府が意図的に感染者を少なくするために、PCR検査対象者を絞っているなどとデマを飛ばしてきた。

     

    韓国が、11月1日から始めた「ウィズコロナ」は、日本への対抗目的であった。感染者が十分に減らない段階で「ウィズコロナ」へ踏み切ったので、「残り火」に火がついて一気に感染を急拡大させ、44日目にはこれを撤廃する事態へ追い込まれた。重症患者が急増して1000人を超えている。医療崩壊を招いたのである。

     

    こうした状況から、韓国では自らの思い上がりを反省している。愚弄対象にした「Jモデル」の成功に学ぶという姿勢を見せているのだ。

     

    『朝鮮日報』(12月25日付)は、「文政権が自画自賛していたK防疫はなかった、大ピンチを招いた5つの原因」と題する記事を掲載した。

     

    文在寅(ムン・ジェイン)大統領は今月21日、現在の状況について、K防疫は失敗したのではなく、一時的な試練に見舞われているだけだという発言をした。だが、専門家らの評価は冷ややかだ。「今の危機は政府が自慢していた『K防疫』の失敗が積み重なった結果だ」と口をそろえる。かつて「防疫失敗」と嘲笑された日本は最近、新型コロナ感染状況が急速に好転しており、「J防疫を再評価すべきだ」という声も上がっている。いったいK防疫はどこからおかしくなっていったのだろうか。

     

    (1)「昨年初めに大邱市・慶尚北道から流行が始まって以降、専門家の間では「新型コロナ長期化に備えなければならない」という声が上がっていた。政府は突然、公立医科大学新設や医師定員拡大などを骨子とした公共医療従事者拡大政策を発表した。専門家らは「当面の新型コロナ危機に対応できる政策でもなく、医療界が長年反対している事案であることもよく分かっていながら、新型コロナを口実に政治的宿願である事業を押し通したものだ」と批判した。医療界とケンカするのではなく、民間医療資源をどのように動員・活用するかを医療界と協議すべきだったということだ。昨年夏、政府と医療界が衝突している間に欧州の先進国や日本などは海外の製薬会社と新型コロナワクチン購入契約を結んでいた」

     


    文政権は、混乱時に乗じて懸案事項を持ち出すという性癖がある。コロナ感染者急増の際、公立医科大学設置問題を持出して医師会と対立する騒ぎを起した。医師側は、ストライキで抗議する事態となって、この医大新設問題は沙汰止みになった。この裏には、政権支持者の子弟を面接で入学させようという「悪巧み」があったのだ。この騒ぎも手伝って、ワクチン輸入作業が遅れ、「効かない」ワクチン輸入問題を引き起こした。

     

    (2)「専門家らは昨年11月から今年初めまで続いた流行第3波を「K防疫に対する国民の信頼が崩壊した決定的な時期」と見なしている。一日新規感染者が1000人を上回り、感染源を追跡・検査する「3T」システムも事実上、無用の長物になった。専門家らは「今は疫学調査よりもハイリスク群保護を中心にした現実的な防疫を検討すべきだ」と言った。しかし、政府は逆に検査数をさらに増やし、強度の高い防疫対策措置を長期間維持する「新型コロナ・ゼロ」政策を固守した。新型コロナ危機が短期間で終わるという根拠のない楽観と「少ない感染者」を成果として掲げたK防疫への執着だった」

     

    下線部分は、最もオーソドックスな防疫対策とされている。日本は、この感染ハイリスク群(集団感染)予防に全力を挙げていた。疫学の基本では、中国が行なっているような全数調査を否定している。それよりも、集団感染予防が重要である。

     


    (3)「翰林大学聖心病院のチョン・ギソク教授は、「政府が定めた防疫対策措置基準を政府自ら守らないのが最大の問題だ」と指摘した。政府は昨年11月上旬に防疫対策措置の段階を改編し、同段階を突然引き下げた。そうした中で感染者が急増し、医療体制がひっ迫する「第3段階」に相当する状況に達したが、政府は「第3段階を施行すれば社会的・経済的被害が大きくなる」として、「第2.5段階」「第1.5段階」といった「0.5」刻みの措置を繰り返した。今回の危機でも同様のことが繰り返されている。先月末から首都圏の医療体制が事実上ひっ迫状態に達しているが、政府は公言していた「非常事態計画」を発動していない。ただ「総合的に判断する」というあいまいな回答ばかりだ」

     

    韓国政府は、事前に決めた予防対策をルール通りに実行せず、先へずらせるという政治判断を優先させた。政治の介入が、感染者を増やす結果になった。日本は、ルール通りに行なって予防効果を上げたのである。

     


    (4)「防疫失敗で世論が悪化すると、政府は遅ればせながらワクチン導入を急いだ。国産ワクチンの開発に根拠のない期待をかけた分、契約合戦参入が遅れたせいで、契約したワクチンのほとんどが今年下半期に届いた。チェ・ジェウク教授は「重要な防疫決定が科学や医学に基づいておらず、その都度、世論の様子をうかがった政治的判断で行われた、というのがK防疫の実体だ」と言った」

     

    下線部は、重要な指摘だ。防疫対策は専門家に任せるべきである。韓国は、大統領府が介入して歪んだものにした。日本とは大きな違いである。「餅は餅屋」なのだ。

     

    (5)「かつて一日新規感染者が2万人以上発生し、嘲笑された日本のJ防疫が最近になって再評価されているのも、こうした脈絡上にある。『K防疫はない』の共著者である関西外国語大学のチャン・ブスン教授は、「韓日間の防疫の違いは成績よりも戦略にある」「日本は選択的に検査して重症者に医療資源を集中させるなど、初めから総合的な安定性を重視した」と指摘した。現在の危機はハイリスク群保護と日常生活と防疫のバランスではなく、感染者数を減らすことにあくせくしてきたK防疫の断面が表面化した結果だということだ」

     

    韓国は、全数調査という目先の成果を焦った。日本は、異常を訴える人を中心にPCR検査を行い、医療資源を重症者の治療に向けた。こういう基本戦略の差が、日韓防疫面の成果に表われている。韓国は今、この「急がば回れ」という日本のルール通りの防疫対策に脱帽している。

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