勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2021年12月

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    今年の夏、日本は東京五輪をコロナ最悪下で迎えた。世界中の冷たい視線の中で、耐え抜かざるを得なかった。その効果は、その後に現れたのである。コロナ感染者が、ウソのように消えてしまったのだ。これは、ミステリーでもミラクルでもなかった。人流が減った結果である。むろん、ワクチン接種率の急上昇という裏付けがあった。

     

    日本では人流減になった。この間に、韓国はそれほど減らなかった。「ウィズコロナ」を始めると、急上昇したのである。この点が、日本と大きく異なっていた。日本は用心深く、韓国は一挙に羽目を外して感染者を急増させたのだ。端的に言えば、日本の用心深さと韓国の奔放さの違いである。K防疫とJ防疫の徹底的な相違点は、国民の用心深さの違いに帰せられよう。

     


    『中央日報』(12月23日付)は、「韓国の防疫と日本の防疫の違い」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のキム・ヒョンギ巡回特派員兼東京総局長である。

     

    570年の伝統を受け継ぐ京都龍安寺。縦10メートル・横25メートルの庭園には白い砂と15個の石しかない。ところが庭園のどこから見ても石は14個だ。絶妙に1個が隠れる。見る角度を変えてみても同じだ。▼世の中のすべてのものを所有することはできない▼目に見えるものがすべてではない--という人生の道理を象徴している。英国王室が1975年エリザベス女王の訪日に合わせて1カ所だけ訪問する名所として、この小さな庭園を選んだのには理由があった。俗世の自慢や誇張のはかなさは、東西古今を問わず教えであり悟りだ。

     

    (1)「1年を終えて我々は、今回のコロナ対応で何を見て何に気づかなくてはならないだろうか。場面1。青瓦台(チョンワデ、大統領府)は今年5月、文在寅(ムン・ジェイン)-バイデン首脳会談を通じてヤンセンワクチン100万回分を獲得したとし、「ワクチン外交の勝利」として自画自賛した。疾病管理庁の鄭銀敬(チョン・ウンギョン)長官は「効果と便宜性の側面でヤンセンに長所がある。米国が韓国を特に配慮した」と述べた。てっきりそうだとばかり思っていた。ところが米疾病管理予防センターの諮問委員会は先日、全員一致でヤンセンを避けたほうがよいと勧告した。安全性と効能がどちらも落ちるという理由からだ。結果的に「在庫バーゲン処理」だった。感謝してヤンセンを打った予備軍・民防衛隊員は怒り心頭だろう」

     

    韓国は、ワクチン購入交渉が最も遅れて2020年10月以降であった。各国が交渉を終わった後である。その結果、「余りモノ」ワクチンを購入せざるを得なかった。最悪のワクチンを購入したのだ。

     

    (2)「対照的な場面がある。これに1カ月前先立つ4月の日米首脳会談。この時もワクチン外交に関心が集まった。当時、菅義偉首相は「まだ署名をしていない」と言って内容を明らかにしなかった。会談後、担当相が「これで日本国内の16歳以上に対して全員接種できる物量が確保できたもよう」と話しただけだ。その結果は後日に「ファイザー5000万回分」として明らかになった。「ヤンセン100万対ファイザー5000万」という数字の差が韓国国民を腹立たせたとしたら、韓国の大統領と政府の誇張は韓国国民を限りなく恥ずかしくさせた」

     

    日本は、安倍首相(当時)が手早くワクチンを手配していた。これが、ファイザー製ワクチン購入を成功させた理由である。米国が、「クアッド」(日米豪印)参加国へワクチンを優先させた背景もある。

     

    (3)「場面2。5月、韓国政府は接種率を高めるために「水ワクチン」(効能が落ちるワクチン)になってしまったアストラゼネカ(AZ)を高齢層に集中的に投じた。そして文大統領は10月の20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)で「韓国が世界最速で世界最高水準の接種完了率を記録した」とし「ウィズコロナ(段階的日常回復)」を宣言した。世界に向けた勝利宣言だった。「この経験をすべての国と積極的に共有する」とも述べた。見える数値だけを話し、いざAZを打った人々の抗体量がファイザーの5分の1にすぎず、危機が迫っていた事実は無視した。その結果はウィズコロナから45日後の「距離確保Uターン」。文大統領は批判を意識したように21日の国務会議で「試練が成功を導く」と述べた。大統領の自惚れが国民の試練を作り、その対価と侮辱をすべての国民が過酷に支払っているが、そのような悠長なことがよく言えるものだ」

     

    韓国は、文大統領が国内での製剤実現に過剰な期待を掛けすぎて、ワクチン購入が遅れたのだ。昨年前半は、K防疫で自画自賛し過ぎたのである。

     


    (4)「再び対照的な場面。日本はファイザー・モデルナ・AZを、自国民を対象に臨床テストした。その結果に基づき、AZは全量開発途上国に寄贈した。科学を優先した。厳しすぎるのではないかと思うほど、コロナ海外流入とワクチン副作用を先制的に管理した。自慢も、自惚れも、誇張もなかった」

     

    日本では、医療官僚が強すぎる権力を持っていると批判された。だが、ファイザー・モデルナ・AZを臨床テストしていたことは、怪我の巧妙であった。AZを副作用があるとして、国内接種に使わなかったのだ。

     

    (5)「12月22日に発表されたK防疫とJ防疫の一日の成績表をみてみよう。新規感染者7456人(韓国)対249人(日本)、重篤患者1063人対28人、死亡者78人対2人。人口の違い(日本が韓国より2.34倍多い)を考慮すればほぼ100倍に近い。もちろんこの違いだけを以て、韓国は間違えていて日本は正しかったと決めつけようとするつもりはない。ある瞬間に逆になる場合もある。しかも我々が「コロナマラソン」のどの区間を今走っているのか誰も分からない。ただし、すぐに目に見えることや見たいことだけを以て誇張したり自惚れたりするのはやめよう」

     

    日韓の防疫対策では、政治が防疫政策に介入する韓国と、医療専門家に任せた日本とで大きく異なった。韓国は政治介入で全数調査、日本は医療専門家の意見でクラスタ予防に全力を上げた。これが、K防疫とJ防疫の違いである。

     


    (6)「2カ月以上「コロナ清浄」が続いていて、これについて一言何か感想でも言えた岸田首相が、21日の国会でこのように述べた。「ウイルス変異株などの新しい状況に対して、慎重な上にも慎重を期し、先手、先手で対策を打ってまいります」。龍安寺の教えだ」

    防疫対策は本来、地味なものである。韓国のように政治宣伝へ利用するべきでない。この点で、日本は「粛々」と行なっているから、「先手、先手」という対策になるのだろう。

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    中国富裕層は、飽くなき利殖追求に邁進している。これまで「定石」の不動産投機は、習近平氏の「共同富裕」で封じられたと覚ったという。そこで、次なる利殖対象として「高級腕時計」へ注目。今年に入って、中国の高級腕時計の販売は急増している。

    英紙『フィナンシャル・タイムズ』(12月22日付)は、「中国の富裕層、不動産より高級腕時計に注目」と題する記事を掲載した。

    かつては不動産投資に熱心だった中国の個人投資家の多くが、より良い資産逃避先として高級腕時計に目を向けている。背景には中国の景気減速や習近平(シー・ジンピン)国家主席が不動産バブルを封じ込める姿勢を強めていることがある。



    (1)「フィナンシャル・タイムズ(FT)紙の取材に応じた複数の高級腕時計再販業者は、事業がここ数カ月で大きく伸びたと語る。富裕層の個人投資家の多くは住宅を新たに購入するのをやめ、余剰資金をロレックスやパテック・フィリップなどの高級腕時計の購入に充てているという。専門家によると、中国の経済全体が冷えこんでいるにもかかわらず高級腕時計は爆発的な売れ行きで、中国のスイス製腕時計の輸入額は今年1月から10月までの期間で40%増と大幅に伸びた」

    中国には富裕層が「ゴマン」といる。不動産投機が駄目なら、次の投機対象は高級腕時計という。だが、マンションと腕時計では、単価が異なる。高級腕時計が、どこまで不動産投機の「代役」になれるかである。



    (2)「中国・上海を拠点とする市場調査会社、Daxueコンサルティングのアナリストであるカミール・ゴジャック氏によると、富裕層の間では「間違いない投資先」だった不動産市場の減速をきっかけに、代わりの投資先を探す動きが広がっている。「高級腕時計はその答えになり得る」とゴジャック氏は語る。1990年代後半に中国都市部の住宅市場が自由化されて以来、ほとんどの都市で不動産は必ず勝つ賭けのように一本調子で上昇してきた。しかし、習氏が「共同富裕(共に豊かになる)」路線を打ち出したことや中国恒大集団など多額の負債を抱えた不動産開発会社が経営危機に陥ったことで、不動産価格はここ数カ月、異例の下落基調に転じている」

    7月以降、不動産販売高は前年比で落込んでいる。中国恒大の経営不安が、不動産投機に水を掛けた。

    (3)「不動産関連のアナリストや買い手の間では、不動産価格の下落は今後も続くとの見方が強まっている。中国共産党は最近の中央経済工作会議で、経済全般への支援策を打ち出しながらも「住宅は住むためのもので、投機対象ではない」との文言を踏襲した。中国の景気減速の影響で国内の消費者需要が落ち込む一方、富裕層の間では高級腕時計の人気が高まっている」

    不動産がバブルであったことは間違いない。富裕層が、住宅から高級腕時計へ投機対象を変えたことがその証明である。



    (4)「香港を拠点とするコンサルティング会社C S Gインテージは今年10月、年間世帯収入が50万元(約896万円)以上の成人1500人を対象にした調査を実施した。その中で回答者の88%が、今後12カ月間に平均価格7万6700元の高級腕時計への投資額を維持または引き上げる予定だと明らかにした。この調査を担当したサイモン・タイ氏は「高級腕時計市場の地合いは非常に強い」と指摘し、「ロレックスの販売店に今行っても、客に売る商品の在庫は限られているだろう」と語った。高級腕時計は富裕層の買い手の多くにとって社会的なステータスの象徴であると同時にインフレをヘッジ(回避)する手段でもある」

    中国の金融市場が成熟化していれば、実物投資でなく金融資産投資で、経済全体の底上げが可能である。現実は、それが不可能である。資本自由化もされていない現状では、不動産投機が高級腕時計投機に変わる程度である。中国の後進経済の実態をこれほど明らかにした話もあるまい。

    (5)「中国の中古腕時計電子商取引(EC)サイト大手である万表(Watcheco)によると、高級ブランド腕時計の多くはここ数年で価格が高騰している。ロレックスのサブマリーナのような人気モデルは定価の5倍ほどの値段で取引されている。上海の高級腕時計再販業者、デビッド・ワング氏は「高級腕時計の一部モデルには大きな需要があるが供給は限られている」としたうえで、「価格が軟化することは当面ないだろう」との見方を示した」

    高級腕時計は、生産数も限られているので値上り期待も大きいのだろう。第一、かさばらないから、いくら保有しても場所をとらないという有利性がある。



    (7)「高級腕時計ブームが起きている3つ目の要因は、富裕層が必要に応じて資産を海外に持ち出すことができる携帯性の良さだ。ワング氏によると、1人あたりの海外送金を年間5万ドルに制限する規制を逃れるため、顧客の中には腕時計に数万ドルを費やす人もいるという。ワング氏は「税関の職員は腕時計に気がつかないか、値段がいくらなのか知らないだろう」と指摘したうえでこう語った。『だから安全かつ効率的に自己資金を国外に運び出す手段になり得る』」

    税関逃れには高級腕時計が好適という。だが、こういう話がおおっぴらになれば、税関も目を光らすはずだ。「謀は密なる以てよしとする」原則から言えば、今後はどうなるか成功の限りではなかろう。


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    韓国文大統領は、レガシーづくりに必死である。朝鮮戦争の「終結宣言」を出すことによって、歴史に名前を残したいのだ。それには、中国による北朝鮮説得が前提になる。韓国は、中国のご機嫌を損じないように、北京冬季五輪への出席、香港選挙、台湾閣僚による演説拒否という「三点セット」で迎合外交を行なっている。

     

    中国が、北朝鮮を説得して韓国との首脳会談に応じるように仕向けられるだろうか。北朝鮮は、米国よりも中国を警戒していると英紙『フィナンシャル・タイムズ』が報じている。こういう状況下で、韓国は米国との関係を悪化させてまで中国へ馳せ参じるデメリットを忘れている。米国は、すでに韓国へ冷ややかになっていることを知るべきだ。

     


    『中央日報』(12月23日付)は、「五輪・香港・台湾まで 中国の『核心利益』の前で小さくなる韓国」と題する記事を掲載した。

     

    人権と民主主義を媒介に対中攻勢を強化する米国と、これに反発する中国の間で、韓国の外交の軸が中国側に傾く兆候が表れている。香港・台湾問題と北京オリンピック(五輪)など中国の「核心利益」をめぐる米中対立事案について、韓国が沈黙を越えて中国側に同調するような姿を見せながらだ。

    (1)「最近、米中対立様相が表面化した北京冬季五輪「外交的ボイコット」および香港立法会議員選挙に関連し、韓国政府は言葉を控えて中国を刺激しないよう配慮する姿だ。韓国外交部の崔英森(チェ・ヨンサム)報道官は16日の定例記者会見で、北京五輪に対する外交的ボイコットの理由となった新疆ウイグル自治区の人権問題に関連し「普遍的価値として人権と民主主義を重視する」としながらも「外交的ボイコットは検討していない」と一線を画した」

     

    文大統領自身が発言しているように、終戦宣言はあとから取り消せるという形式的なものだ。そういう、拘束性のない終戦宣言にいかなる価値があるのか、という疑問がつきまとっている。南北話合いのルートにしたい思惑であろう。

     


    (2)「事実上、中国の事前検閲下で進行された香港立法会選挙について「関連の動向は関心を持って見守っている」(21日の定例記者会見)という原則的な答弁で一貫した。選挙に対する判断や評価はなかった。先月のニカラグア大統領選挙に対しては質問が出る前から論評を出し「自由かつ公正で透明な形で実施されなかったことを強く懸念する」という立場を表明したが、温度差が明確に感じられる答弁だった」

    文政権は、中国の核心的利益に関わる問題についての言及を避けている。

     

    (3)「大統領直属の第4次産業革命委員会は16日の政策カンファレンスに台湾閣僚級の唐鳳(オードリー・タン)政務委員(デジタル担当)を講演者として招請しておきながら、行事当日に突然これをキャンセルしたのは、中国を意識したものだという分析が出ている。唐鳳政務委員の講演中止事態について、外交部は21日、「諸般状況を総合的に検討して決定したものと聞いている」とだけ説明した」

     

    韓国は、台湾高官を招待して演説まで依頼していた。それが、演説1時間前にキャンセルしたのだ。背後に、中国の圧力があったことは間違いない。

     


    (4)「台湾外交部は、台湾中央通信社に「韓国側が『両岸関係の各側面に対する考慮』を招待キャンセルの理由と明らかにした」と説明した。台湾外交部の主張が事実なら、韓国は中国が唐鳳政務委員の講演に強く反応する可能性があるという点を考慮し、外交欠礼を犯しながら招請をキャンセルしたということだ」

    韓国は、台湾に対して大きな外交的欠礼を冒した。

     

    (5)「米国は最近、北京五輪と台湾・香港問題で中国と激しく対立している。米ホワイトハウスは北京五輪に対する外交的ボイコットの背景に新疆ウイグル自治区の人権侵害問題があることを明示したほか、20日にはウズラ・ゼヤ国務次官(民間人保護・民主主義・人権担当)をチベット問題担当特別調整官に任命し、中国が1950年に武力占領したチベットの人権問題を狙った。また、親中候補が議席を埋めた香港立法会選挙に対しては、ブリンケン米国務長官らG7外相が共同声明で「香港の今回の選挙システムは民主主義の後退」とし「中国が香港の根本的な自由と権利を尊重する国際的義務と一致する行動をすることを促す」と明らかにした。香港立法会選挙の非民主性を指摘すると同時に、その責任が中国にあることを明確にする批判声明だった」

     

    中国は、普遍的な価値である人権を弾圧している。米国が、これを容認しないとする価値外交である。この明白な事実に対して、民主主義国の韓国はどう対応するか、という問題が突付けられているのだ。米韓同盟の韓国が、中国の行動へ賛意を表そうとしているところに、事態の深刻さがある。

     


    (6)「バイデン政権が、普遍的価値の民主主義と人権に関連して中国に問題を提起する中、米国と一線を画するような韓国の態度は中国の立場に同調するように見える余地がある。これはバイデン政権の核心基調「価値外交」路線から韓国が離脱するのではという懸念につながる。一部ではこれを終戦宣言に対する呼応を誘導するための韓国政府の「戦略的沈黙」という分析もある。韓米両国の隔たりが狭まった状況で終戦宣言の議論を一段階さらに進展させるためには、もう一つの当事者である中国の協力が必要であるからだ。中国外務省は14日、終戦宣言に関連し「建設的な役割をしていく」という立場を明らかにしたが、具体的な動きは見せていない」

    韓国は、中国の存在をその「大言壮語」によって惑わされている。北朝鮮は、中国へ警戒心を強めている事実から、中国の影響力は小さいと見るべきだろう。


     

    あじさいのたまご
       

    コロナワクチンが効かないことから始まった中国の「ゼロコロナ」は、ついに国内の移動でも隔離措置をするという事態に追い込まれている。この調子では、来年2月開催予定の北京冬季五輪は、国内観客の入場も難しそうな情勢だ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(12月22付)は、「中国、国内移動でも隔離 年始・春節のコロナ規制強化」と題する記事を掲載した。

     

    中国政府が2022年の正月や春節(旧正月)休暇の帰省や旅行を控えるよう呼びかけるなど、新型コロナウイルスの感染動向に神経をとがらせている。まん延を防ぐ具体策は地方政府が策定しており、多くの地域では国内を移動する人に対し、海外からの入国者並みの本格的な隔離を実施する。人の移動や消費が鈍り、経済の重荷となるのは避けられない。

     


    (1)「中国の正月休暇は22年1月1~3日。2月1日の春節を挟んだ休暇は1月31日~2月6日となる。国務院(政府)は20日に発表した2つの休暇を巡る新型コロナ対策で、感染動向に応じて地域ごとのリスクを「低中高」に分類。市中感染者が多い「中・高リスク地域」の住民は他の地域へ不要不急の移動をしないよう求めた。やむを得ず移動する人には、48時間以内に検査したPCRの陰性証明書の持参を義務付けた」

     

    国内を感染リスクごとにランク付けるという。「中・高リスク地域」の住民は、他地域へ不要不急の移動をしないように止められる。この調子では、北京冬季五輪の観覧など不可能に相違ない。

     

    (2)「縁日や芸術系のイベント、販売・展覧会などの開催も厳しく制限する。会議もなるべくオンラインで開くよう要求した。家族や親族の宴会などの集まりは10人以下にとどめるよう推奨した。詳細な具体策は、地方政府が地域の実情に応じて策定する。「休暇時の帰省や旅行の自粛要請は全国一律ではできない」(国家衛生健康委員会)ためだ」

     

    家族や親族の宴会などの集まりは、10人以下にとどめるよう指導されている。

     


    (3)「特に厳しい措置をとるのが首都・北京市だ。直近14日以内に感染者が1人でも発生した地域から北京に入る人は、PCR検査や2週間の健康観察などを義務付けられる。天津市や河南省鄭州市、江西省南昌市は「中・高リスク地域」からの来訪者に対して、海外からの入国者と同じように2~3週間の隔離を義務付ける。東北部の遼寧省大連市も、感染者が1人でも出た地域からの訪問者に対し2週間の隔離を必須としている」

     

    北京市への移動は、極めて厳しい制限が付けられている。これほど非科学的な「ゼロコロナ」を行なわなければならないのは、「自然感染ゼロ」という真空地帯になっているためであろう。地球最後の「ゼロコロナ」地域になるのは確実だ。

     

    (4)「地方政府が厳しい措置をとる背景には、国家の威信がかかる2月開幕の北京冬季五輪を目前にして感染が広がると責任を問われる恐れがある。今夏の感染拡大時には江蘇省南京市や湖南省張家界市の幹部が対応の遅れを理由に処罰を受けた。大連市でも11月の感染拡大で幹部らが処分された。中国は感染者を徹底的に抑え込む「ゼロコロナ」政策をとるが、局地的な感染拡大が止まらない。7月以降にはデルタ型が広がった。共産党系メディアの健康時報によると、新たな変異型「オミクロン型」の感染者も18日時点で、中国本土で7人が確認された」

     

    免疫専門家から見た中国の防疫対策は、どういう評価になるだろうか。最低点は間違いなかろう。ここまで厳戒体制をとらなければ、医療施設も不備な中国だけに、世界中に馬脚を現すのだろう。

     

    (5)「春節は中国人にとって家族などと過ごす大切な休暇で、例年、大規模な人の移動がみられてきた。コロナ禍前は春節前後40日間の旅客数が延べ30億人程度だった。政府の呼びかけで帰省の自粛が広がった今年は8億7000万人と20年比4割減で、コロナ禍前の水準と比べて7割減だった。経済活動が鈍り、春節がかき入れ時の飲食業や小売業、旅行業は打撃を受けた。春節期間中の旅行収入も新型コロナ前の19年の6割弱にとどまった」

     

    春節は、中国社会最大のイベントである。これも、「ゼロコロナ」で大きく制約される。先ず、故郷へ帰れるかどうか。その後に都会へ戻れるか。「陸の孤島」になっている。

     

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    今年10~12月期のGDPは、前年同月比3%台へ落込むという悲観論も登場してきた。7~9月期が同4.9%増と鈍化した後だけに、弱気派が増えている。これは、中国指導部内で、習近平路線を批判する動きにもなっている。党機関紙『人民日報』(12月9日付)には、習近平氏には一言半句も触れず、鄧小平・江沢民・胡錦濤を称賛する論文が掲載されたのだ。

     

    『日本経済新聞社 電子版』(12月22日付)は、「習近平氏を無視、鄧小平路線絶賛する重鎮論文の不穏」と題する記事を掲載した。筆者は、同紙の編集委員中沢克二氏である。

     

    中国で異変が起きている。揺るぎない権威を固めたはずだった総書記(国家主席)、習近平(シー・ジンピン)の名前を一度も挙げずに無視した不穏な論文が、共産党機関紙である人民日報に堂々と載ったのだ。奇妙なことに、これは「中央委員会第6回全体会議(6中全会)の精神を深く学ぶ」と題した文章なのである。

     


    (1)「論文が習の代わりに最大限、評価したのは鄧小平だった。その名に9回も触れて「改革開放は共産党の偉大な覚醒」と絶賛し、「長期にわたる『左』の教条主義の束縛から人々の思想を解放した」と思想路線面での賛辞も惜しまない。これは悲惨な文化大革命(1966~76年)までの毛沢東路線の誤りを痛烈に批判した表現だ。毛に対する個人崇拝への厳しい視線も感じるが、習への権力集中に絡む敏感な問題だけに「寸止め」になっている」

     

    習近平氏は、毛沢東に比べれば実績も少ないことから、反対派が登場して当然であろう。ましてや中国経済は猛烈な減速過程にある。習氏には歩が悪いのだ。

     


    (2)「注目すべきは、書き手である曲青山のポストである。中央党史・文献研究院院長という共産党の過去・現在の歴史解釈の要となる重鎮なのだ。当然ながら「鄧小平超え」を演出した「第3の歴史決議」取りまとめにも関わっていた。しかも曲青山は現職の中央委員(閣僚級)だ。中央委員197人、中央委員候補151人が大集合した6中全会にも出席している。今の党内の雰囲気を熟知したうえでこの論文を提起した意味は重い。「(共産党内で)今後の中国を左右する2つの考え方がなおぶつかっている。歴史的な観点からみれば、論争があるのはむしろ健全な動きだ」。ある共産党の関係者は、必然性を指摘する」

     

    中国共産党内部には、毛沢東派と鄧小平派が健在で意見を戦わしているという。だが、経済実態がさらなる悪化に見舞われれば、単なる論争では済まなくなる。権力闘争へ発展して当然であろう。危険な予兆が始まっているのだ。

     


    (3)「論争の存在を浮き彫りにしたのは早速、曲青山論文に対する反撃が出たことだ。掲載からわずか4日後、人民日報は同じ理論面に、中央政策研究室主任の江金権による正反対の論調の文章を載せた。タイトルは「党による全面的指導の堅持」。こちらは、習時代より前の分散主義、自由主義を攻撃する第3の歴史決議が醸し出す雰囲気に忠実な習礼賛トーンだ。党の絶対指導、党への絶対忠誠は、突き詰めれば習への権力集中を是とする論理に他ならない。鄧小平、江沢民、胡錦濤の3人は無視。あえて毛沢東を2回登場させ、習の名を6回も挙げた。鄧、江、胡がセットであるように、毛と習もまたセットなのだ。その2グループは思想路線を巡って対峙している」

     

    経済実態が悪ければ、鄧小平の改革開放派の意見が重視される。習近平派が、それを受入れるかどうかである。具体的には、米国と対立緩和策に出るかどうかだろう。

     


    (4)「12月上旬にも、これに絡む重大な発言があった。「中国経済は向こう何年か、かなり厳しい状態に置かれる。これからの5年間は、改革開放から40年余りで最も困難な時期になるだろう。決して楽観すべきではない。第1の問題は内需の後退だ……」。李克強のブレーンである著名な経済学者、李稲葵の経済フォーラムでの発言は、時期が時期だけに波紋を広げた。これから5年間とは習が6中全会を経てトップを維持する方向性が大筋、固まった期間にピタリと重なっている。不動産の構造的な値下がり、地方財政の逼迫、教育・エンターテインメント産業への規制、頭打ちの自動車市場など具体的問題に触れつつ、厳しい予想を公開の席で語ったのは興味深い」

     

    習近平氏は、来年10月から5年間も権力の座に座り続ける予定だ。これからの5年間は、中国経済が最も厳しい時期に当るとも指摘されている。不動産バブル崩壊後遺症が最も強く表面化する時期であるからだ。

     


    (5)「内需喚起に向けた長期的な処方箋として示したのは、李克強式の「都市と農村の一体化」政策だった。58歳になった気鋭の学者、李稲葵は全国政治協商会議委員も務める清華大学中国経済思想・実践研究院院長であり、発言力は強まりつつある。
    もう一つ、気になる発言があった。元財政相の楼継偉による暴露である。「中国の統計数字は経済のマイナスの変化を反映していない」。中央経済工作会議の終了直後だけに反響が大きかった。年明けに発表される21年の成長率といった経済統計もマイナス面が省かれていると言っているに等しいのだ。楼継偉は元首相、朱鎔基の周りを固めていた「改革派」である。その朱鎔基は鄧小平に抜てきされて、1990年代に国有企業改革を断行した実績がある。改革開放路線の系譜を継ぐ楼継偉は、習の経済路線とは微妙な距離があっただけに、今回の発言にも意味があるとみられている」

     

    中国は、経済の足取りがしっかりしていれば批判も出ない。だが、一転して足下がふらつく状態になれば、批判を浴びるようになる。現状は、後者の局面になってきた。

     

    (6)「権力集中を志向する「毛・習」と、改革開放を旗印にする「鄧・江・胡」の路線闘争。野心的な「鄧小平超え」に踏み込んだ第3の歴史決議は、闘いに再び火をつけてしまった。そこには減速著しい現下の中国経済にどう対処するかという主導権争いも絡む。今後5年余りを左右する22年秋の共産党大会に向けた闘いは、簡単には終わらない」

     

    毛・習派vs鄧・江・胡派では、全く思想傾向が異なり、合意は不可能である。分裂する以外に方法はないほど異質である。これを、どのようにしてまとめるのか。妙案はない。対米政策でも意見の食違いが出るに違いない。

     

     

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