勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2022年01月

    a0960_008567_m
       

    中国恒大集団は、もはや経営再建が不可能であり「終戦処理」を急いでいる。最終的には、国有不動産企業が買収する説も流れているほどだ。こうした中で、中国は恒大集団の国内債権者を重視する一方、海外債権者を無視する動きをみせている。これが、現実のものとなれば、中国企業の信頼性に大きな傷がつき今後、海外投資家から敬遠されるだろう。中国の身勝手な振る舞いが、自分の首を締めるのだ。

     

    中国恒大集団の海外株主グループは1月20日、同社が実行可能な再建計画の策定を目指すと繰り返してきたが、海外債権者と実質的な交渉を行っていないと指摘した。同グループは、強制措置を真剣に検討する以外の選択肢はなく、法的権利を守るために必要なあらゆる行動を取る用意があるとの声明を発表した。

     

    具体的には、破産申し立てである。この事態になると、全債権者は平等な権利が保証され、現在行なわれている「国内債権者優先」は認められなくなる。これに驚いた中国恒大集団は、海外債権者との話合いの応じるとしているが、ただの時間稼ぎという側面も見え隠れしている。

     

    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(1月31日付)は、「中国では『二級市民』?外国人投資家はご用心」と題する記事を掲載した。

     

    経営危機に陥っている中国恒大集団(チャイナ・エバーグランデ・グループ)の資産を巡る争いが熱を帯びてきた。ほとぼりが冷めた時に誰が生き残っているかは、投資先としての中国の将来を決定づけるだろう。

     

    (1)「香港市場に上場する恒大集団はすでにオフショア債券の一部についてデフォルト(債務不履行)に陥っており、債券は額面を大きく割り込んだ水準で取引されている。だが、ここ1週間には二つの重要な出来事が起こった。まずは、オフショア(海外)債の保有者が法的措置をちらつかせる書簡を送ったことを受け、恒大が26日、今後半年以内に「暫定的な再編計画」の公表を目指すと発表したことだ。二つ目は米オークツリー・キャピタルが香港にある推定10億ドル(約1150億円)相当の恒大の不動産について、有担保融資がデフォルトしたことを理由にその大半を差し押さえに動いたとの英紙『フィナンシャル・タイムズ(FT)』報道だ。この不動産は恒大のオフショア債の再編で重要な役割を果たす可能性があった。FTによると、オークツリーはこれとは別に、恒大の国内大型プロジェクトに絡み、有担保融資を行っている」

     

    海外債権者でも、有担保融資はデフォルト同時に担保の処分によって債権の回収を行える。だが無担保債は、企業の経営力を信じるというだけ。債権回収に当っては、不確実性が壁になるのだ。同じ海外債権者でも、有担保と無担保ではこのように債権回収で大きな差が生まれる。

     


    (2)「一方で、恒大はオンショア(国内)債券については、本土の債権者――最終的には当局から何らかの支援が得られると見込んでいる可能性がある――との協議により、厳密な意味でのデフォルトを免れた。そのため、事業継続に資金が振り向けられ、恒大は引き続き仕掛かり物件の完工に充てている。その結果、オークツリーのような有担保の外国人債権者も回収に入り、恒大集団の正式な再編案が届く頃には、争うものが何も残っていない状況に陥るリスクが高まる」

     

    結局、無担保債権者が経営危機時に、最も酷い扱いを受ける。恒大集団のケースでも、現実にはその方向にあるようだ。中国企業が今後、ドル債を発行したくても恒大集団の「踏倒し」が壁になって、海外での資金調達が困難になろう。現在は、その瀬戸際にある。

     

    (3)「そもそも、オフショア債保有者の悲劇は自ら招いたところがあるのも事実だ。格付け会社ムーディーズによると、子会社に認められる借り入れ規模の上限や配当支払いの抑制といった恒大債の債務条項は、過去10年に著しく弱められた。しかも、極めて借金が多く、オンショア資産の大半が本土子会社の下に置かれている恒大のような会社の無担保債券を保有することは常に多大なリスクを伴う。とはいえ、恒大のオフショア債権者が厳しい仕打ちに遭えば、投資先としての中国の評価が突出してひどいことは否定し難くなる。過去1年に米市場に上場する教育サービス、ネットテクノロジー関連の中国企業の株主が経験したことを踏まえればなおさらだ」

     

    中国政府は、海外企業との契約不履行をなんら気にしていない驚くべき錯誤がある。最近の事例では、カナダと結んだ新型コロナウイルスのワクチン共同研究による「製品」ができても、カナダへの輸送を認めないという契約違反を冒している。

     

    海外債権者の無担保債について、国内債権者よりも不利な扱いをすれば、今後のドル債発行に大きな障害となる。そればが、中国経済の成長の芽を摘むことになるのだ。

     

    (4)「中国の一般企業および、地方政府傘下の投資会社の双方にとって、重要な資金調達源だった中国のドル建て社債に対する需要は、深刻かつ恒久的な打撃を受ける恐れがある。オークツリーが中国の裁判所を通じて恒大の本土プロジェクトについても追及し、失敗したとすれば、外国人にとってのビジネス環境全般が痛烈に非難されることになるだろう。しかしながら、中国の借り手や債券投資家は今のところ、少なくとも不動産を除けば、外国人の扱いに対する代償を払っていないようにみえる。これでは外国人投資家の多くが激怒しているのも無理はない」

     

    中国経済自体が、急減速に直面している。今後の中国経済の動向を考えれば、海外投資家との関係を良好に保つことが不可欠である。その命綱を、自ら目先の損得計算で断ち切れば、自沈速度を早めるだけだ。

     

     

     

    a0960_006628_m
       

    北京冬季五輪(2月4~20日)の開幕が今週となった。米国では今回、国際オリンピック委員会(IOC)や米オリンピック委員会(UOC)などの公式スポンサー企業約20社はいずれも異例なまでに影をひそめているという。米国のテレビ視聴者は開幕日どころか、開催地が中国であることすら忘れている様子である。1月26日までに放映が始まった関係広告はわずか2本。どちらも開催国に触れておらず、選手に焦点を絞った内容だという。

     

    北京冬季五輪は海外で不人気でも、中国政府は、北京冬季五輪をきっかけにウインタースポーツの振興を図ろうと躍起になっている。国内経済を振興させる目的だ。この波に乗ろうと、日本のスポーツ関連製品メーカーは売り込みに躍起である。

     


    『日本経済新聞 電子版』(1月26日付)は、「
    北京五輪で輝く日本の技 ミズノやデサントのウエア」と題する記事を掲載した。

     

    24日に開幕する北京冬季五輪で日本の技術がアスリートの活躍を支える。関西にはミズノなどスポーツ用品大手のほか、独自の強みを持つ中小企業も集積する。新型コロナウイルスの感染防止対策など課題はあるものの、五輪でブランドをアピールし、成長の期待できる中国のウインタースポーツ需要を取り込む。

     

    (1)「白い生地を彩る赤と黒のストライプ。デサントのアルペンスキーウエアは派手なデザインに目を奪われるが、よく見ると、表面に縦の溝が入っている。「イルカの皮膚をヒントに開発した」と企画担当の宮下征樹氏は話す。斜面を高速で滑るアルペンスキーは空気抵抗を受けやすい。デサントは、イルカが泳ぐ際、皮膚が凸凹に変化して、水の抵抗を減らすことに着目。筋肉の動きにあわせて凸凹が浮き出る素材を開発した。日本代表のほか、強豪のスイス代表が着用する」

     


    スポーツウエアでは、北京五輪で中国スポーツメーカーの製品が注目され以後、トップメーカーへ急成長した例がある。TVによる宣伝効果は抜群であるだけに、冬季五輪でも同様の期待が掛かっている。

     

    (2)「ミズノも素材にこだわる。スピードスケートのウエアはニットにウレタンフィルムを貼り付けた伸びにくい素材を使う。前傾姿勢を保ちやすく、空気抵抗を減らせる。北京五輪モデルはニットの新素材を採用し、前回の平昌大会モデルより抵抗を約3%減らした。高木美帆選手ら日本代表に提供する。関西には古くから繊維や金属加工の産業が集積する。こうした土地柄を生かし、ミズノをはじめとしたスポーツ用品メーカーが育った。異業種からスポーツ用品へと事業を広げた企業もある。化学素材メーカーを源流に持つ日新企画(大阪府吹田市)は、スキーやスノーボードで使うプロテクターを手掛ける。天然ゴムやポリウレタンなどを組み合わせて、転倒時の衝撃を和らげる緩衝性と通気性を高めた」

     

    スポーツ用品では、デザイン・素材などの総合性が勝負のカギを握る。しかも、メダルを取る選手が着用したとなれば、宣伝効果は満点だ。日本メーカーは、素材大国・日本という有利性に恵まれて、「スポーツ用品」で金メダルを狙っている。

     


    (3)「平昌では、出場選手の6割超が採用したモーグル板を手掛ける企業がある。「ID one」ブランドで知られるマテリアルスポーツ(大阪府守口市)だ。板の横の金属製エッジに細い切れ目を入れて曲がりやすくした。元モーグル選手の上村愛子さんが現役時代に愛用した。平昌では使用選手が金を含む4つのメダルを獲得した。藤本誠社長は「北京でも最大6個は狙える」と自信を見せる」

     

    量産効果はなくても、選手に採用される器具は、その後に根強い人気が得られる。中小企業にとっては、大切なビジネスチャンスになる。

     

    (4)「世界が注目する五輪は、自社製品をPRする絶好の機会だ。ミズノは有力選手に製品を提供し、認知度を高めてきた。水野明人社長は「ブランド価値の向上が期待できる」と話す。中国のウインタースポーツ産業は、現地調査会社によると、2025年には1兆元(約18兆円)と20年の2.6倍に拡大する見通しだ。中国で今季からスノボウエアの展開を始めたデサントは「高機能品で需要を取り込む」と意気込む」

     

    中国のウインタースポーツ産業は、2025年の市場規模を18兆円(20年の2.6倍)と見込んでいるという。日本メーカーにとっては、突然の大市場が現れることになる。こちらでメダルを取ることもますます重要になってきた。

     

    a0960_004876_m
       


    カナダは、中国科学者に自国バイオ技術を利用させ、ワクチン開発を行なってきた。ようやくカナダで治験すべく中国から輸送しようとしたところ、中国関税当局に差し押さえられたのだ。これにより、開発計画は宙に浮いてしまい、カナダでの製造計画も消えてしまった。カナダの基礎技術をまんまと利用して「ドロン」という悪質な詐欺同然の事態だ。改めて、中国と契約しても「紙切れ」になるという厳しい現実を突付けられた形だ。

     

    『大紀元』(1月30日付)は、「カナダ、中国バイオ企業とのワクチン開発は『失敗だった』」と題する記事を掲載した。

     

    カナダ政府が中国バイオ企業との間で進めていたワクチン開発プロジェクトは失敗に終わった。カナダ放送協会(CBC)が1月27日に伝えた。

     


    (1)「中国天津市に本部を構える康希諾生物股份公司(カンシノ・バイオロジクス、以下はカンシノ)は2009年、カナダの留学経験を持つ中国人科学者によって設立された。同社はカナダの研究機関に太いパイプを持ち、カナダのバイオ技術を使って、エボラ出血熱のワクチンや中共ウイルス(新型コロナウイルス感染症、COVID-19)のワクチンを開発した。2020年5月、カナダにCOVID-19ワクチンが迅速に供給されるよう、カナダ政府が所管する国家研究評議会(NRC)はカンシノ社との間で契約を結んだ」

     

    中国人科学者が、カナダのバイオ技術を使って中国でワクチン研究を行ないカナダで治験を行えるまでこぎつけた。現在、最先端の「mRNA」ワクチンの開発に関する協力契約であった。中国税関が、「試作品」ワクチのカナダ輸送を許可しなかったのだ。契約違反であることは言うまでもない。「無法国家」中国と契約すると、契約は履行されず基礎技術を無断利用されるという取り返しのつかない結果となる。自由国家では、中国人・中国企業と契約しても無効になるという恐ろしい事実を知らされることになった。

     


    (2)「同報道によると、20年5月、中国軍の研究機関とカンシノ社が開発したワクチンカナダで臨床試験(治験)を行う計画だった。治験が成功すれば、同年夏にモントリオールの工場で生産開始予定だった。NRCのレポートによると、同工場は毎月7万~10万回のワクチン生産を見込んでいた。NRCはこの生産施設に4400万カナダドルを投じるなど、生産体制を構築しようとしていた。しかし、5月にカナダに到着予定だったカンシノ社のワクチンは、中国税関当局によって差し押さえられた。カナダの駐中国大使館は中国の税関当局に対して働きかけたが、拒まれたという」

     

    中国のやりそうな手口である。カナダは、まんまと一杯食わされたのだ。その後、mRNAワクチンが中国で開発されたものの、治験による効能は50%前後と報じられたことがある。このワクチンが、カナダの基礎技術を利用したものかどうかは不明である。それにしても、中国は詐欺まがいのことを行なった訳である。目覚めはよくあるまい。

     


    (3)「マギル大学の安全保障問題専門家、ベン・ファン氏は昨年10月、CBCに対して、「カンシノ社は中国軍と中国政府とつながっている」と指摘した。同氏は、中国当局の命令でワクチンが税関当局に差し押さえられたと推測する。当時、カナダの上級裁判所は、2018年12月に逮捕した中国通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟被告(当時)の審理で、被告の「起訴内容はカナダで罪に当たらない」とする主張を退け、同被告の米国への身柄引き渡しに向けて審理を続けるとした。ファン氏は、「中国共産党がカンシノ社の真の上層管理者である」と非難した」

     

    契約の履行は、国家間の最低の義務である。中国は、いかなる事情があろうともそれを守らなかった。契約義務の履行は、民主社会の前提である。中国のような専制主義国家には、そういう契約義務の履行という概念が存在しないのだ。中国は改めて、それを世界に知らしめたのである。自分の首を自分で締めている状況である。

    あじさいのたまご
       


    政権が司法へ報復人事

    文の溺愛が生んだ介入

    北への異常な執着ぶり

    換骨奪胎した大統領制

     

    ゲームにはルールがある。ルールに反すれば「反則負け」だ。戦争にはルールがない。勝てば官軍、負ければ賊軍の汚名を着せられる。韓国の大統領選はルールなき争いであり、戦争と同じである。勝てば権力の「総取り」であり、韓国社会を100%牛耳れる。皇帝なのだ。

     

    韓国大統領選が、日本人から見て興味津々なのは、その無秩序な暴露戦にある。TVのワイドショーにうってつけの内容なのだ。恥も外聞もなく、ライバルのプライバシーを暴露しているのは、韓国大統領制によって広範な権力を握れる魅力にある。

     


    司法・行政・立法の三権分立が、韓国では建前だけの話である。すべての権限は、大統領に帰属する。全人事権を握っているからだ。「チェック・アンド・バランス」こそ、独裁を防ぐ唯一の方法だが、韓国にはその不可欠のブレーキが存在しない。再言すれば、全人事権を握っている韓国大統領制は、政治腐敗の最大要因である。

     

    政権が司法へ報復人事

    最近、韓国大統領がいかに恣意的な司法人事を行なっているか。それを証明する話が、明るみに出た。

     

    チョ・グク元法務部長官を巡る事件の捜査を指揮した韓東勲(ハン・ドンフン)司法研修院副院長(検事長)は1月27日、名誉毀損の罪で起訴された元盧武鉉(ノ・ムヒョン)財団理事長、柳時敏(ユ・シミン)被告の裁判に証人として出廷した。その際、被告人に対して悲痛な叫びを吐露したのだ。

     

    「柳氏や今の権力者(注:文政権)は、どんなことをしても自分たちのことを捜査してはならないという超憲法的な特権階級かのように行動した」(『朝鮮日報』1月28日付)

     


    柳被告は2019年12月と20年7月、動画投稿サイトのユーチューブで、「検察が盧武鉉財団の口座をのぞいたという事実が分かった」「当時、韓東勲がいた(検察の)反腐敗強力部が(口座を)見た可能性がある」とウソの発言をしたことが発端だった。

     

    文政権は、このウソ発言を真に受けて敏感に反応した。文氏の政治師匠・盧武鉉財団の理事長発言である。捨ててはおけないと当該の捜査責任者である韓東勲氏を即刻、左遷したのである。まさに人事権100%を握る文大統領だからできる芸当だ。

     

    韓氏は、法廷で次のようにも陳述した。

    現職検事である私は唯一、4回も左遷された」とした上で、「柳元理事長が謝罪(注:発言がウソであったと認める)するまで1年半の間、私は捜査権を個人的に乱用した悪者の検事とさせられた。元司法長官チョ・グク氏の捜査など、文政権に関わる不正捜査を行ったことに対する報復だと思う」

     

    韓氏は、19年に大検察庁(最高検察庁)反腐敗強力部長として、「チョ・グク」事件の捜査を指揮したが、20年1月に釜山高検次長検事に異動。同年6月以降は法務研修院研究委員に異動し、京畿道の竜仁分院と忠清北道の鎮川本院で勤務後、21年6月に司法研修院副院長に任命された。これらの人事異動のコースを見れば、文大統領が韓氏を左遷したことは明らかだ。最高検察庁幹部が、地方の検察庁へ「島流し」され閑職に追いやられたのだ。

     

    こういうケースは、文大統領だけが行なった訳でない。朴槿惠(パク・クネ)前大統領は、政権に不利な捜査を行なったとして、現在の最大野党「国民の力」の大統領候補である、尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏を左遷したのである。韓国大統領は、こういう報復人事を平気で行える権限を持っている。

     


    この尹氏は、弾劾罪で逮捕された朴氏を皮肉にも捜査することになった。これを見た文大統領は、尹氏を高く評価して検察総長に抜擢した。尹氏はその際に発した言葉である、「権力に奉仕せず罪を憎む」という名台詞通り、司法長官チョ・グク氏の捜査を命令した。そのときの捜査担当者が、前記の韓氏である。

     

    文政権は、尹検察総長を酷く憎み2020年中、「辞任させる」圧力を二度も掛けたほど。一方では、韓氏も左遷させる扱いをした。尹氏は、朴・文の両政権から不当な扱いを受ける結果になっただけに、韓国大統領制がいかなる矛楯を持っているか、身を以て体験させられた貴重な証人である。

     


    文の溺愛が生んだ介入

    日本でも知れ渡った「チョ・グク事件」(タマネギ男)は、連座したチョ元司法長官夫人の最終判決が先に出た。

     

    韓国大法院(最高裁)は、チョ・グク元法務部長官の妻のチョン・ギョンシム被告に対する起訴事実15件のうち12件について有罪判決を言い渡した。この判決によって、検察は政権側の「公訴権の乱用」だとする批判をかわすことができ、捜査の正当性も認められた。大法院判決後、捜査を指揮してきた前記の韓氏は、「正義と常識に見合う結果」と述べたという。(つづく)

    次の記事もご参考に

    2022-01-10

    メルマガ324号 李在明は「ポピュリストで激情家」、韓国大統領になれば国を潰す

    2022-01-17

    メルマガ326号 文在寅外交の「破綻」、北のミサイル発射で解決策は日米主導「確立」

     


     

     

    あじさいのたまご
       

    韓国政府は、旧正月(1月30日)を前に、恒例の外交ギフトを国内のほかに各国大使館やメディアに贈った。そのギフトの箱のデザインが、竹島であったことから日本側が反発。在韓日本大使館や韓国駐在日本記者が、揃って受取り拒否する事態になった。

     

    竹島は日本領である。韓国初代大統領の李承晩が、勝手に「李承晩ライン」を引いて、韓国領に編入したものだ。これについては、米国が日本との講和条約締結の際、竹島を韓国領に含めなかったことで明らかにされている。

     

    サンフランシスコ平和条約では、日本が放棄すべき地域を「済州島、巨文島及び鬱陵島を含む朝鮮」と明記。これに対して韓国は3島だけでなく「独島も含まれる」と解釈し、領有権を主張している。日本政府の委託事業で見つかった新たな資料では、条約の作成過程で、英国が竹島を日本領とする米国案に同意したことをオランダ代表との会合で示した公文書(1951年5月)や、オーストラリア外務省が釜山駐在の外交官に宛てた電報(同年7月)などで明らかになっている。以上は、『山陰中央新報』(21年10月2日付)が報じた。

     


    『中央日報』(1月30日付)は、「気持ちの表示? 意図された象徴?…『外交的ギフト』」に隠れた意味」と題する記事を掲載した。

     

    独島(ドクト、日本名・竹島)が描かれた文在寅(ムン・ジェイン)大統領の旧正月ギフトを在韓日本大使館が拒絶した。韓国固有の領土である独島の図柄を青瓦台(チョンワデ、大統領府)がギフトに活用するのは極めて正常だが、日本側は「他意がある」とひねくれて受け止めた。実際に国と国の間でやり取りする「外交的ギフト」は言葉通りのギフトでないケースもある。

    (1)「21日に相星孝一駐韓日本大使が送り返したギフトは青瓦台が旧正月を迎えて内外の人たちに贈るため準備したものだった。梅エキス、ムンベ酒、五味子エキス、栗などが入った箱に独島の日の出の場面が描かれた。ところが在韓日本大使館は独島に対するこじつけの主張をしてギフトを送り返した。日本だけでなく韓国国内すべての駐韓外交使節団に送ったギフトだが異例の抗議までしたという」

     


    韓国外交部が、竹島デザインの外交ギフトを日本へ贈ったのは、日本側の反応を見るためであったろう。黙って受取るかどうかを試したと見るべきだ。以前に、竹島近くで獲れるエビを、トランプ前米国大統領の歓迎夕食会のメニューに加えて、日本側が抗議した例があったからだ。韓国は、日本が竹島問題に神経を使っていることを百も承知のはず。

     

    (2)「韓国国内世論は、「日本に『サイダー』(スカッとする)ギフトをあげた」という意見と、「また反日行動をするのか」という意見に分かれた。今回のギフト返送は、これに先立ち2017年11月のトランプ米大統領訪韓時に青瓦台が晩餐に「独島エビ」をメニューに上げ日本が反発したことを思い出させるという反応もある。ギフトを受け取った時の日本側の反応が明らかに予想されるのに青瓦台が韓国のさまざまな美しい風景の中でもあえて独島の風景を選んだという点からだ」

     

    韓国大統領府の「反日」秘書官グループが、秘かに企んで竹島デザインを決めたのであろうが、外交的配慮の足りない行為である。敢えて、日本を怒らせる道を選んだ理由は、日本への鬱憤晴らしという単純なものだ。



    (3)「外交的ギフトが、非難と議論を生んだのは韓日間だけのことではない。2007年にドイツのメルケル首相はフランスのシラク大統領(いずれも当時)にマグカップを贈った。ところがこのマグカップのふたにはオスマン帝国(トルコの前身)の軍隊がフランスのナポレオンにより敗北する場面が描かれているとしてトルコが反発した。当時トルコのギュル外相は、「欧州連合(EU)はこれ以上過去にとどまらず未来を見なければならない」と指摘したという」

     

    ドイツがフランスへ贈ったマグカップに、オスマントルコの敗北場面があったという。これに、トルコが敏感に反応して抗議した。韓国大統領府には、こういう外交儀礼上で欠かせない配慮がなかったのだ。

     

    (4)「中国と台湾の間ではパンダをめぐる神経戦が広がった。2005年に当時の胡錦涛中国国家主席は両岸分断後初めて開かれた国共会談で台湾側にパンダを贈ると約束した。だが当時の台湾政府与党である民進党は中国の一方的な統一工作だとして反発した。パンダを台湾に送ることを「トロイの木馬」のように考えたのだ。その後2008年に親中性向の馬英九総統が就任した後、台湾は中国からパンダ2頭を贈られた。名前も「離れていたが再会する」という意味の中国語「団円」から取り、オスは「団団」、メスは「円円」にした。

     

    中台間では、パンダをめぐる騒ぎが起こっている。パンダが平和の使者か。「トロイの木馬」かである。二国関係が平穏であれば問題ないが、そうでなければ、細やかな神経が求められるのだ。

     


    (5)「首脳間で本を贈る場合、特にその中に込められたメッセージにさらに関心が傾く。2006年に胡錦涛中国国家主席はジョージ・W・ブッシュ米大統領(いずれも当時)に孫子兵法を贈った。これと関連し、「戦わないで敵を屈服させることが最善」という教訓が含まれた孫子兵法を通じて2003年のイラク戦争など米国の対外政策を皮肉ろうとしたとの分析が出された」

    2006年に胡錦涛氏が。米国へ『孫子の兵法』を贈ったのは適切でない。意図があからさまであるからだ。それよりも、当たり障りのないのが一番である。メッセージを送りたければ、外交手段はいくらでもあるからだ。外交的ギフトは、単純なものに限る。

     

    このページのトップヘ