勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2022年01月

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    稀代の「策士」であるロシア大統領プーチンは、軍事作戦で頭の中が一杯かもしれない。だが、迎え撃つ側の米国・EUは経済封鎖でロシアに徹底的打撃を与える準備を始めている。

     

    2014年のクリミア半島侵攻以来、米国が科した経済制裁によってロシア経済は大打撃を受けて回復できないままだ。そこへ、新たにロシア・ルーブルの決済が米ドル決済網から外される。さらに、半導体の禁輸措置が加われば、ロシア経済は麻痺するのだ。

     

    米国とEU(欧州連合)は、ロシアとドイツを結ぶ海底ガスパイプライン「ノルドストリーム2(NS2)」(21年9月完成後、未稼働)を停止させる可能性を臭わせている。ロシアの天然ガスは、輸出全体の6割も占めている。それだけに、NS2への期待も掛かっている。

    ロシアにとって、EUが最大の貿易相手だ。モノの貿易の約40%を占め、ロシアへの外国直接投資(FDI)でも最も大きい75%のシェアを握っている。そのEUが、ロシアを締め出す。そうなれば、ゾッとするような光景がロシアに見られるだろう。

     


    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(1月27日付)は、「
    ロシアの守りに死角、経済制裁に対し弱点多く」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアがクリミア半島併合に踏み切った2014年、西側諸国が経済制裁を科すと、ウラジーミル・プーチン大統領はアナリストが「フォートレス・ロシア」と呼ぶ戦略を打ち出した。外貨準備の積み増しや金の購入、対中輸出の開拓を通じて、まさに要塞を構築するかのようにロシア経済を防衛することが狙いだった。

     

    (1)「ロシアがウクライナを再侵攻すれば、足元で浮上している一連の厳しい対ロ制裁措置は、こうした経済防衛策を試すことになりそうだ。米国は1月25日、ロシアへの経済制裁と重要産業への輸出規制を準備していると明らかにした。政権高官によると、米国製の機器やソフトウエア、テクノロジーに基づく超小型電子技術を搭載した多岐にわたる製品について、ロシアへの輸出を禁止する内容で、中国の華為技術(ファーウェイ)に対して行った制裁措置に近い。米当局者はこれまで、ロシアの銀行を対象とするドル資金遮断、ロシアのエネルギー輸出禁止なども検討されていると話している」

     

    後進国経済のロシアが、どう踏ん張って見ても先進国である米国やEUの経済制裁に遭えば、一溜まりもないことは明白。米国・EUは、その弱点を100%突く戦術である。

     


    (2)「ロシアが制裁による影響を低減できていない分野がテクノロジーだ。世界の半導体業界は主に欧米、台湾、韓国の企業が支配している。ロシアにある半導体工場はわずかで、大半は老朽化が進んでおり、西側の企業が持つ部品や特許に依存している。米国が検討しているハイテク技術の輸出規制は、トランプ前政権がファーウェイを窮地に追い込んだ際に使った「外国直接製品ルール(FDPR)」と呼ばれる強力な政策手段を通じて実施される。欧州当局者もハイテク製品などの輸出規制を行うと話しているが、範囲については現在も協議が続いている」。

     

    ロシアの半導体は、西側の部品や特許に依存している。米国は、その脆弱半導体企業に対して、ファーウェイに科したような厳罰主義で臨む。EUも同調すると言う。徹底的に干し上げる戦術だ。

     


    (3)「ハイテク製品の輸出が禁じられれば、ロシアは工作機械やスマートフォンなどの電子製品を購入できなくなるとアナリストは指摘している。そうなれば、経済への打撃は避けられず、経済の近代化に向けた取り組みも阻害されかねない。ロシアは制裁への守りを固めることで、他の産業で一定の成功を収めているが、代償は避けられなかった」

     

    ハイテク製品が禁輸されれば、ロシアは工作機械やスマホなどの電子製品が輸入できなくなって、ロシア経済が止まってしまいかねない重大事態に直面する。

     

    (4)「ロシアのGDP伸び率は2014年以降、世界平均に届いていない。ロシア国民の生活はクリミア半島併合前よりも貧しくなった。2020年末時点の実質賃金は13年比で9.3%落ち込んでいる。さらに、既存の制裁も依然として打撃を与えており、IMFの推定では、2014年から18年にロシアの年間成長率を0.2ポイント下押しした。つまるところ、ロシアによる経済防衛の取り組みは、新たな制裁による衝撃を和らげるには不十分だと指摘されている」

     

    ロシア経済は、2014~18の年間成長率がマイナス0.2%である。この状態で米・EUの経済制裁が加われば、マイナス成長への「引力」は一段と強まる。第二の北朝鮮経済となろう。

     


    (5)「ING銀行の分析では、ロシアの財・サービス輸出のドル決済比率は80%から低下しているものの、なお56%を占める。民間部門はさらに影響を受けやすく、ドルは依然として、現地の為替市場で圧倒的な存在感を持つ。通貨ルーブルとロシア株は数カ月ぶりの安値に沈む一方、ロシアのクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)は新型コロナウイルス禍が始まって以来の水準に跳ね上がっており、国家財政のリスクが高まっていることを示している」

     

    ロシアの財・サービス輸出のドル決済比率は、米欧の制裁下でもなお56%を占める。ここが、米ドル決済網から切断されれば、致命的な損害を被る。すでに、ルーブルとロシア株が売り込まれている。CDSも危険ラインへ跳ね上がったのだ。

     

    (6)「JPモルガン・チェースのストラテジストは25日、地政学を巡る不透明感が「とてつもなく高まっている」として、ルーブルの買い持ち高を手仕舞うよう投資家に推奨した。経済的な痛みはプーチン氏の支持率をさらに押し下げている。独立系の調査会社、レバダ・センターによると、支持率は2015年に90%に迫る勢いだったが、12月には65%に落ち込んだ」

     

    投資銀行は、ルーブル買いへ警告を出している。値下がりリスクが大きいという意味だ。ルーブル暴落を見込んでいるのであろう。

     


    (7)「バイデン政権はこれまで、世界200カ国余りの金融機関1万1000社以上が参加する「国際銀行間通信協会(SWIFT)」からロシアを締め出し、ロシアの銀行がドル資金を使えなくすることを検討してきた。バイデン政権がロシアの銀行によるドル資金へのアクセスを遮断すれば、ロシアが実質的に世界から切り離されることになり、大幅なマイナス成長に陥る可能性がある」

     

    プーチンは、ロシア経済がここまで追い込まれれば、お手上げである。プーチン支持率は現在の65%からさらなる落込みが必至である。国民生活は、ルーブル暴落で物価が高騰し、政治的な危機を迎えるに違いない。

     

    中国が台湾へ侵攻すれば、全く同じケースが当てはまるであろう。中国経済は大混乱である。国内の「反習近平派」は好機到来と動き出すであろう。渦巻く国内の不満を吸収して大きな動きが予想されるのだ。

     

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    中国は、豪州に対して酷い仕打ちをした。自ら発注した石炭輸入を、豪州との政治的対立を理由に陸揚げさせず、中国の港外に放置させたのである。昨年4月以降のことだ。ところが、昨年10月からこっそりと陸揚げ作業を始めさせたという。ただ、中国からは新たな発注がないので、中国の港に停泊する石炭船の陸揚げが済めば、石炭取引も終了となりそうだ。

     

    中国が、豪州産石炭を輸入した最後は2020年11月だった。豪政府が21年3月、新型コロナウイルスの発生源に関する独立調査を求めて以降、中国当局は豪州産石炭などの輸入を禁止した。中国の港では21年10月現在、豪州産コークス約500万トンと一般炭300万トンが理由もなく通関手続きで待たされた。これが、中国の経済制裁である。

     

    『大紀元』(1月28日付)は、「中国税関、一部の豪州産石炭に輸入許可 高官『経済脅迫は効かない』」と題する記事を掲載した。

     

    中国当局による非公式の豪州産石炭に対する禁輸措置は依然として解除されていないが、昨年第4四半期(10~12月期)において、中国の港で1年以上足止めされていた豪州産石炭約1200万トンの輸入が許可されたことが明らかになった。豪全国紙『オーストラリアン・ファイナンシャル・レビュー』(AFR)が27日、同国の石炭輸出業界関係者の話を引用して報じた。関係者によると、中国から新たな石炭の注文は入っていない。「中国当局の禁輸措置が完全に解除されたわけではないことを意味する」と関係者は示した

     

    (1)「昨年第4四半期において、中国当局が輸入を承認した豪州産石炭の量は毎月増加傾向にあった。市場調査会社Fengkuang Coal Logisticsは、中国税関当局のデータを引用し、昨年第4四半期に製鉄用コークス620万トンと発電用の一般炭550万トンの通関手続きが行われたとした。月別で見ると、10月は77.8万トン、11月に267万トン、12月には272万トンとなっている。昨年、中国の豪州産コークスの輸入量は、総輸入量の11.3%を占めた」

     

    豪州炭は、品質も良いことから各国から「引っ張りだこ」である。中国は、豪州炭の輸入禁止をしたことから、国際的な石炭価格の上昇に見舞われ、とんだ「貧乏くじ」を引く結果になった。中国は、感情に任せて行なった暴挙によって、自国の首を締めたのだ。豪州側にして見れば、手を叩いて笑ったはずだ。

     


    (2)「昨年、豪州政府が新型コロナの発生源をめぐって国際機関による独立調査の必要性を訴えた後、最大貿易相手国である中国は、報復措置として、豪州産の石炭やワイン、ロブスター、牛肉、乳製品などを輸入制限の対象に指定した。豪政府機関、オーストラリア貿易投資促進庁(Austrade)は、同国の農業や鉱業における貿易多様化戦略が功を奏し、中国当局の経済報復に対抗できたとの認識を示した。石炭価格の高騰や他国からの強い需要により、豪州産石炭の輸出量はこれまでの2倍以上に増えたという」

     

    中国は、石炭だけを輸入禁止にしたのではない。ワインなどにも制裁を科した。だが、中国に代わる輸出市場が開拓されて、豪州は無傷であった。中国に対して高笑いしたい心境だろう。豪州は、こうした中国の敵意を封じ込めるために昨年9月、「AUKUS」(米英豪)の軍事同盟を結び、新型攻撃型原潜8隻を建艦することになった。中国は、痛い「取りこぼし」となった。AUKUSによって今後、中国封じ込め作戦が展開されるのだ。

     


    (3)「ダン・ティーハン豪貿易相は27日、AFRに対し、「より多くの国が豪州に追随して中国に立ち向かおうとしている」と話し、「多くの証拠から(中国側の)経済的脅迫は全く効かないと示された」と指摘した。貿易相は、中国当局の石炭輸入禁止令は中国国内のエネルギー不足を招き、中国人の生活や企業の生産活動などに悪影響を与えたと非難した」

     

    中国は、豪州へ傲慢な態度を取って手痛いしっぺ返しをされることになった。自らの意思で輸入先を失うことは、代替輸入先を確保するまでに時間もかかり混乱するもの。中国が、この例に該当するのだ。

     

    一般的に、輸出市場を失うのと、輸入先から輸入禁止処分を受けるのでは、どちらが痛手か。輸出は、もともと競争力があるから海外へ進出できるという優位性を持っている。ところが、輸入先を失う(相手国の輸出禁止を含め)ケースは、輸入国にとっては一時的に大きな痛手を受ける。すぐに輸入代替先が見つからないためだ。ましてや、国産化は困難である。

     

    前記のような一般論に立てば、中国は豪州に比べてもともと「劣位の関係」にあったのだ。それを、「買い手」という錯覚で優位に立っていると誤解したのだ。中国は、この錯覚を豪州から突かれ、ものの見事に優位関係が逆転した。ゲームを見ているような可笑しさだ。中国は感情論に突き動かされて、合理的な判断ができなかったのである。


    あじさいのたまご
       

    韓国政府は、これまでクアッド(日米豪印)への参加を求められたことはない、と言い張ってきた。客観的に見て、そんな筈はなかった。米韓外交・防衛「2+2会議」が、昨年春に韓国で開催され、米国から直々に懇請されたのだ。

     

    韓国は、中国の存在が怖くて回答を保留し、「聞かなかった話」にしてきた。米国の外交安保専門家が、この事実を明かしたので韓国政府は大慌てで否定している。とんだ赤っ恥をかかされた形である。韓国のクアッド参加は、韓国の煮え切らない態度から米国が断念。代わって、英国が参加する意向などと報じられたが、英国は、「AUKUS」(米英豪)の軍事同盟で中国へ対抗する。

     


    『中央日報』(1月28日付)は、「米国外交安保専門家『韓国、昨年のクアッド首脳会議招待を断った』 韓国外交部『事実無根』」と題する記事を掲載した。

     

    「韓国が昨年3月の日米豪印戦略対話(QUAD=クアッド)首脳会議の招待を断った」という米国外交安保専門家の主張に、韓国政府が「事実無根」と反論した。これまで韓国政府はクアッドに関連して「加入を要請されたことはない」という立場を維持してきた。

     

    (1)「米戦略国際問題研究所(CSIS)韓国碩座のビクター・チャ氏は、今月26日(現地時間)、米外交専門紙『フォーリン・ポリシー(FP)』に寄稿した「なぜ韓国大統領選挙が米国にとって重要なのか」と題する記事で、「信頼できる消息筋から2021年3月クアッド首脳会議を控えて韓国が出席の提案を受けたが断ったと聞いた」と明らかにした。当時の会議はクアッド構成後に初めて開かれた最高級協議だった」

     


    韓国は、米韓外交・安保「2+2会議」後の共同声明で、米韓同盟の関心領域が朝鮮半島からインド太平洋へ拡大された、と明記している。これは、クアッドへの参加問題を議論した証拠である。韓国は、ギリギリの線でクアッド参加を見合わせたのだ。

     

    (2)「チャ氏はまた、「今年3月の韓国大統領選挙の結果によってクアッド参加推進など韓国の対外政策に大きな変化があるだろう」と展望した。具体的に「韓国の与党大統領候補はクアッド参加への可能性に対して沈黙していて、野党指導部は政権を取った場合、クアッド参加を直ちに推進すると公開的に明らかにしたと聞いた」という」

     

    韓国の次期政権が野党に渡れば、クアッド参加を推進するであろうと指摘している。これは、最大野党「国民の力」のユン候補が示唆していることを指している。現実に、その方向へ進む可能性は大きい。韓国は、このクアッド入りをきっかけにして日韓関係修復を目指す狙いもある。すぐに歴史問題を俎上に上げても無理である。安保問題から協調して、歴史問題への接近を目指す「迂回作戦」である。

     

    (3)「あわせて、「韓国はメモリーチップ、電気バッテリーなど高需要商品関連の主要供給国」としながら、「これほど重要な米国の同盟を(クアッド)連帯の外に置くなら、これは新型コロナウイルス感染症(新型肺炎)ワクチン、次世代無線ネットワーク関連のサプライチェーン(供給網)、気候変化への努力に影響を与えるだろう」と付け加えた」

     

    米国は、韓国の戦略物資製造能力をフルに活用したいところだ。また、「現代版ココム」で中国への禁輸を行なう際に、韓国へ同時行動を求めたいのであろう。

     

    (4)「実際、与党「共に民主党」大統領選候補の李在明(イ・ジェミョン)氏は、今月4日の記者会見で「公式的にはクアッド加入を要求されたことはなく議論したこともないため、前もって何らかの決定をする必要はない」として留保の立場を示した。反面、野党「国民の力」大統領選候補の尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏は24日に外交安保分野の公約を発表しながら「クアッド傘下のワクチン・気候変動・新技術ワーキンググループに参加して機能的協力をしながら今後正式加入を模索する」と明らかにした」

     

    下線部分は、野党大統領候補のユン氏の発言である。クアッド参加を模索するとしている。感情的に中国を恐れることでなく、同盟の力で中国による脅威を防ぐという知的戦略である。



    (5)「韓国政府はこの寄稿文の内容に強く反論した。外交部の崔英森(チェ・ヨンサム)報道官は27日の定例記者会見で「事実と異なる」とし、「我が国はクアッド4カ国のどこの国からも直接的に参加要請を受けたことはない」と明らかにした」

     

    韓国外交部は、これまで「ウソ発言」を繰返してきたので、否定せざるを得ない立場だ。

     

    (6)「これに関連し、バイデン政府はこれまで公式的にはクアッド拡大に線を引いてきた。ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)インド太平洋調整官のカート・キャンベル氏は昨年5月、文在寅(ムン・ジェイン)大統領とバイデン大統領間の初めての首脳会談を控え、国内メディアのインタビューで「現時点でクアッドを拡大する計画はない」と明らかにした。ただし「我々は韓国、東南アジア諸国連合と領域内の他のパートナーとの協力を継続して拡大する方法があるだろうと考える」と述べた」

     

    クアッドを「4ヶ国限定にする」という発言の裏には、英国の存在がある。英国は、今年中にTPP(環太平洋経済連携協定)への正式参加が認められる予定だ。英国がアジアへ経済的に「移住」するとなれば、安保面でも存在感を発揮するであろう。これまで韓国へ期待された役割を、英国が果たす可能性も出て来た。韓国は、頭を下げて「参加させてください」という羽目になっているのだ。

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    韓国で現在、繰り広げられている大統領選は、政治「お笑い番組」である。候補者が土下座をしたり、不法取材による候補者夫人の「生の声」を放送したりと大混戦である。そこまで泥仕合を行なってもなりたい。それが、韓国大統領ポストである。「おいしい」職業なのだ。大統領独裁が保証されているのである。

     

    文大統領は、口を開けば「三権分立論」を唱えている。三権分立論政治の元祖は、米国大統領制にある。司法・立法・行政が完全に独立しており、「チェック・アンド・バランス」が制度的に保障されている。ところが、韓国の三権分立論は米国に似ているが、中身は「大統領独裁」が可能というまやかし制度である。

     


    韓国では、「大統領独裁」が実現できる。大統領本人にとって、これほど居心地のいい制度はないのだ。文氏も大統領制の改革を口にしたが、それは一度だけのポーズであった。天国にいるような「快適」なポストゆえに、文氏が本心から変えようと思うはずもなく立ち消えになった。

     

    『中央日報』(1月27日付)は、「『誰になっても非好感』、大統領権限の縮小を」と題するコラムを掲載した。筆者は、オ・ビョンサン/コラムニストである。

     

    (韓国政治の)問題は「帝王的大統領制」である。大統領が王朝時代の王君のように絶対権力を行使する現行憲法上権力構造が非正常的だ。大統領制の元祖であり教科書は米国である。米国と比較すると韓国大統領制は民主主義の基本原則を超越した権力だ。

    (1)「(米国では)強力なリーダーシップを持ちながらも王政のような暴政になってはいけないというジレンマだ。これを解決した妙手は「牽制(けんせい)と均衡」原則であり、これを実現した権力システムが「3権分立」だ。大統領(行政府)・議会(立法府)・大法院(司法府)が権力を共有して互いに牽制し合うという精神が制度に正確に反映されている。例えば議会は、大統領を牽制するために行政府の人事・予算・立法をすべて左右する権限を有している

     

    バイデン政権は、目玉政策である「教育・医療・気候変動への対策」が成立の瀬戸際にある。約2兆ドル(約228兆円)の歳出法案だ。一人の民主党上院議員の反対で、バイデン政権「ビルド・バック・ベター(より良い再建)3B法案」が宙に浮きそうである。この例が示すように、与党議員の反対で目玉政策の実現が危ぶまれるほど、「三権分立」が見事に成立している

     

    (2)「三権分立論を裏付ける具体論を見ておきたい。第一は人事。長官はもちろん高位公職者に対する任命同意権を有している。公聴会で脱落すれば任命されない。第二、予算。議会が政府予算を事前審議・事後監査する。行政府は主な事業と政策を事前に議会に説明して承認を受けてこそ予算を受けることができる。第三、立法。行政府は法案提出権がなく、議会はすべて法で決めることができる。立法のために行政府は立法府にロビーしなければならない」

     

    米国民主主義は、専制主義と異なり時間を掛けて納得しあう政治を目指していることが分る。敢えて、説明するまでもないであろう。

     


    (3)「韓国は全く異なる。米国議会が大統領を牽制するために保有している主要権限を韓国大統領は本人がすべて持っている。第一、人事。首相の場合には任命の同意が必要だが、長官は国会が聴聞会で拒否しても大統領が任命を強行すればそれで終わりだ。文在寅(ムン・ジェイン)政府で野党の同意なく任命された長官級は30人を超える。第二、予算。国会の審議を受けるが事実上要式行為にすぎない。国会に実質的な予算決算審議能力がないためだ。予算を十分に監査するためには大統領直属の監査院が国会に移ってこなければならない。第三、立法。行政府に法律提出権があって、必要なら与党議員の名前を借りて提出する「請負立法」も多い。ひとたび提出されれば与党が無条件に通過させる場合が多く、事実上、行政府が立法を主導しているのも同然だ」

     

    文大統領は、人事でも強引であった。野党の同意なく任命された長官級(大臣クラス)は30人を超えた。「人権派弁護士」を売にしてきたが、人権無視の「デタラメ政治」を行なった。下線のように、米国議会が大統領を牽制するために保有している主要権限は、韓国大統領本人がすべて持っているという驚くべき仕組みになっている。これなら、「三日大統領をやれば辞められない」筈である。文氏は、外遊も思いのまま実現した。夫人が無類の海外旅行好きであると報じられている。「国費」でその夢も実現した。



    (4)「韓国で議論されている改憲の方向性は大きく3つある。1つ目は内閣制。大統領制の問題を根本的に解決できる代案だが容易ではない。内閣制になるにはまだ政権を担当する政党の水準が相変らず低いためだ。
    2つ目は分権型大統領制。大統領制を維持しつつ、首相に実質的な権限を大幅に譲り渡すやり方だ。例えば大統領は外治、首相は内政を引き受ける方式だ。この場合、首相は国会で選挙してこそ力を発揮する。事実上、多数党の代表が首相になるが、内閣制的な性格が強い。こちらも政党政治の水準が問題になる。最後に、最も現実的な代案は大統領制を維持して権限を分散する部分修正案だ。例えば人事権制限のために長官まで「国会任命同意」を義務化する。実質的な予算監査のために監査院を国会に移す。政府の法律提出権をなくすなどだ」

     

    改憲の方向性は3つある。

    1)内閣制(実現困難)

    2)分権型大統領制(大統領は外交・防衛の権限。議院内閣制で首相は議会が選ぶ)

    3)大統領制の下で権限分散の部分修正(大臣は国会任命制・政府の法案提出権をなくす)

     

    朴前大統領は、2)を提案していた。この案は、大統領の権限を大幅に制限する。

     


    (5)「改憲が難しい最も現実的な理由は、大統領が率先しなければいけないためだ。朴炳錫国会議長は新年会見で「国会議員の93%が改憲には同意しながらも議論しようというと尻込みする。政権初期は改憲がブラックホールになり、政策路線が薄まるからといってせず、政権末期は大統領選挙に影響を与えるからといってやらない。そのようにして35年間、ずっと先送りしてきた」とし「この大統領選挙が終わったら本格的な改憲議論をしよう」と訴えた。帝王的大統領の権力を縮小する改憲の主導権が大統領本人にあるという点は致命的な欠陥だ

     

    文大統領は、退任に当って「レガシー・ゼロ」である。憲法改正案について準備する程度のことを行なうべきだろう。帝王的大統領ポストを最大限に楽しんだのから、「自戒」を込めて書き残しておくべきだ。

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    ウクライナは、ロシアの大軍10万の圧力を受け、NATO(北大西洋条約機構)へ必死の支援要請をしている。米英仏は、対ロシア政策で歩調を合せ軍備の増強を急いでいるところだ。その中でドイツが、ロシアへ気配りして中立を装うという予想外の行動を見せ、顰蹙(ひんしゅく)を買っている。

     

    ドイツは、ウクライナに対してヘルメット5000個を送ること。万一に備えて野戦病院を建設するというのだ。NATO主力メンバー国のドイツが、ロシア軍を前にして「逃亡姿勢」である。これでは、NATO存立の意味が問われる事態だ。ドイツの理由は、ウクライナへの武器供与がロシアとの対立を煽るとして拒否しているもの。ウクライナは、軽武装でロシアへ立ち向かえと言っているに等しい。

     

    ウクライナの首都キエフのビタリー・クリチコ市長は、独日刊紙『ビルト』に対し「言葉を失った」と失望を示した。クリチコ氏は、「われわれが対峙(たいじ)しているのが装備の整ったロシア軍で、いつ侵攻が始まってもおかしくないことを理解していない」とドイツを批判。「ヘルメット5000個なんて冗談もいいところだ」「次は何を送るつもりだ? 枕か?」と皮肉った。以上は、『AFP=時事』(1月27日付)が伝えた。

     


    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(1月24日付)は、「ドイツは信頼できる米同盟国ではない」と題する寄稿を掲載した。筆者のトム・ローガン氏は、米ニュースサイト・週刊誌『ワシントン・エグザミナー』の国家安全保障担当ライターである。

     

    ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナ侵攻に乗り出す気配が濃厚となる中、米同盟諸国の大半はウクライナ政府を支持し、北大西洋条約機構(NATO)加盟諸国の中で脆弱(ぜいじゃく)な国々を安心させる行動を見せている。しかしドイツは、ロシアの利益を欧米側の利益よりも優先するという、異なった対応を示している。

     

    (1)「ドイツ政府の対応からは、厳しい現実が分かる。それは、米国と第2次大戦後の民主的国際秩序が、中国・ロシアという2つの最も重大な安全保障上の脅威に直面する中で、ドイツはもはや信頼できる同盟国ではなくなったということだ。ドイツにとっては、安価なガス、中国向け自動車輸出、そしてプーチン氏を怒らせないことが、民主主義に支えられた同盟諸国の結束よりも重要なように見える。ウクライナの運命は、ドイツが担うべき責任の重さを伝えることになるだろう」

     

    ドイツには、米軍が駐留している。トランプ大統領時代、米独が対立してトランプ氏は、米軍をポーランドへ移転させると発表したことがある。これに困惑したドイツは、米軍の移転撤回を求めた経緯がある。このようにドイツは、米軍駐留の恩恵を受けながら、ウクライナへは軍事支援しないという、身勝手な行動を取っている。何か、韓国と似た面がありそうだ。

     

    (2)「独政府はウクライナへの武器供与を拒否し、さらにエストニアによるウクライナへの武器供与を阻止しようと活発な動きを見せている。英国はここ何日かの間に対戦車用兵器をウクライナに空輸し、ウクライナ情勢に関連した情報収集のため航空機の飛行を行っている。情報収集の飛行は、英国とウクライナを結ぶ最も直線的ルートであるドイツの領空を通過するルートで行われたが、兵器の空輸はドイツを迂回するルートを利用した」

     

    英国防省が、ドイツに領空通過の許可を求めなかったのは、ドイツがそれに応じるか拒否するかの選択を強いられるからだった。オラフ・ショルツ首相が率いるドイツ新政権は、対ロシア紛争から身を退いて、中立を装っている。それは、ロシア産の天然ガスと深い関係がある。ドイツを右顧左眄させている理由は、天然ガス供給である。

     

    (3)「ロシアから欧州に天然ガスを輸送するパイプライン「ノルドストリーム2」に関する独政府の対応も、ドイツの姿勢を明確に示す一例だ。ドイツの規制当局は、同パイプラインについて、関連企業による法令順守基準の達成が確認されるまで、運転開始は認められないと主張している。これは、パイプラインの即時運転開始を望むプーチン氏をいら立たせている。その見返りとして、プーチン氏に操られたロシア国営ガス会社ガスプロムは、既存の「ヤマル・ヨーロッパ」パイプラインでのガス輸送を、4週間超の期間にわたって通常と逆方向の流れに変えている。ロシアはまた、ウクライナ向けの一般炭の供給を3カ月以上にわたって停止している」

     

    ドイツが、ロシアに揺さぶられているのは、ロシア産天然ガス供給が大きな理由だ。ドイツは、脱原発でエネルギー事情が不安定である。原発を止めて天然ガスへ切り変えたので、ロシアの思う壺に落込んでしまった。脱原発という理想論へ走ってしまい、ロシアにまんまと裏をかかれる事態になっている。EUは、原子力をクリーンエネルギーに指定したほど。ドイツにおける脱原発の根拠が失われたのである。すでに、ドイツのエネルギーコストが高騰しており、競争力に陰りが出ている。

     


    (4)「プーチン氏のメッセージは明白だ。そのメッセージとは、ウクライナはロシア支持へと寝返るのが賢明であり、ドイツはノルドストリーム2の運転開始を承認するのが賢明だというものだ」

     

    ロシアは、ドイツとウクライナへ石炭と天然ガスで独占的な供給状態である。これを利用して、意のままに操縦しようとしている。ドイツは、この策略に乗せられている。表面的には、「紛争を好まない」と綺麗事を言っている以上、ドイツ駐留の米軍をウクライナ近辺へ移駐させて、ドイツの目を覚まさせることだ。

     

    (5)「ドイツはまた、国防費を国内総生産(GDP)の2%にするというNATO目標の達成を断念し、1.5%しか支出していないほか、国内でロシアの化学兵器に関する研究が行われることを容認している。そうした研究は、ロシアの反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏や元英国のスパイを標的にした事件のような暗殺計画を下支えする。ショルツ氏はまた、核兵器禁止条約でオブザーバーの立場を追求することを約束しており、NATOの核抑止力を漠然としか支持していない。こうした譲歩は、プーチン氏が長年求めていたものだ」

     

    ドイツが、NATO精神に沿わない動きをしているならばこの際、思い切って駐独米軍の完全撤退をして、NATOに貢献する国々の防衛を優先させるべきであろう。ドイツは、NATOに防衛して貰いながら、義務を果たさないのでは、ますます韓国に似てきた感じがする。

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