勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2022年02月

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    ロシア全土でATM(現金自動預払機)の前に外貨を引き出そうとする人の長い列ができた。ウクライナ侵攻に対する制裁措置が西側諸国によって強化され、通貨ルーブル急落懸念が広がっている結果だ。『ブルームバーグ』(2月28日付)が伝えた。

     

    一部の銀行は25日終値を3割余り上回る高値でドルを売却した。ロシア中央銀行が、利上げする重要な水準とされる1ドル=100ルーブルをかなり上回る、ドル高=ルーブル安にもかかわらず、外貨購入意欲は衰えなかった。ロシア国民は、矢継ぎ早に繰り出される金融制裁措置の内容消化が追いつかない状況だという。

     


    『ロイター』(2月28日付)は、「SWIFTでの制裁、ロシア経済に壊滅的打撃も」と題する記事を掲載した。

     

    西側諸国が26日、ロシアの「一部」銀行をSWIFT(国際銀行間通信協会)から排除すると決めたことは、同国経済に深刻な打撃をもたらす一方で、西側の企業と銀行にも大きな痛みを及ぼす。西側が制裁をさらに拡大する余地を残している点も重要だ。

     

    (1)「SWIFTは国境を越えた迅速な決済を可能にするメッセージシステム(ネットワーク)で、国際貿易の主要な決済手段となっている。SWIFTから排除されたロシアの銀行は、友好国の中国などを含めて国外銀行とのやりとりが困難になり、円滑な貿易取引が難しくなり決済手続きコストが上昇するとみられている。西側諸国は、ロシア中央銀行によるルーブルの買い支え能力を制限する措置も約束している。ただ、SWIFTの排除対象となる銀行名はまだ明らかにされていない。専門家は、どの銀行を対象にするかによって、この措置の効果は大きく左右されると言う」

     


    下線部のように、ロシア中央銀行(ロシア銀行)をSWIFT排除に指定している。ドル資金調達にくさびが打ち込まれているのだ。用意周到である。SWIFTの排除対象は、「一部の銀行」とぼかされている。これが、不安を増幅している。

     

    (2)「『悪魔は細部に宿る。どの銀行が選ばれるか見守ろう』と言うのは、アトランティック・カウンシルのユーラシア・センターに所属する経済制裁専門家、エドワード・フィッシュマン氏だ。同氏は、ズベルバンクやVTB、ガスプロムバンクといったロシア最大級の銀行が対象に入れば「決定的な大打撃となる」とツイッターに記した。金融情報についての訓練プログラムを提供する企業を営むキム・マンチェスター氏は、SWIFTからのロシア排除について「まさにロシアの銀行の急所に切り込む」対応だと指摘する。マンチェスター氏によると、バイデン米大統領はこれまで制裁対象を選別してきたため、今後さらに多くの銀行を排除し、最終的には一律排除して制裁を強める余地がある。「移動弾幕射撃」のようなものだという」

     

    下線のような二大銀行を外したSWIFT排除などあり得ない。常識であろう。対外的な送金取引の窓口(コルレス)である。「ロシアの銀行の急所に切り込む」のがSWIFT排除の狙いである。

     


    (3)「SWIFTからのロシア排除は、同国の経済と市場に壊滅的な打撃をもたらす可能性がある。ロシア中銀の元副会長で今は米国在住のセルゲイ・アレクサシェンコ氏は、28日に市場が開くと通貨ルーブルは暴落し、ロシアへの多くの輸入が途絶えることになると予想。「(ロシア)経済の大きな部分が終わりを迎える。最終消費に関連した市場の半分が消滅するだろう。支払いができないとなれば、消費財は姿を消すことになる」と語った」

     

    下線部は、極めて暗いロシア経済を見通している。プーチン氏が、SWIFT排除に激怒して、「高度防衛」と核戦争を予想するような発言をするほど衝撃を受けている背景であろう。

     

    (4)「もっとも、あるロシアの元銀行幹部は、排除の対象が既に制裁を受けている銀行に限られたり、ロシア中銀が資産を別の場所に移す時間的余裕を与えられたりすれば、制裁の効果は鈍りかねないと言う。「既に制裁を受けている銀行であれば、これまでと大して変わらない。しかし、ロシアの上位30行が対象となれば、話は全く違ってくる」と説明。先に米国が発表したズベルバンクやVTBなど数行への制裁は、ロシアの金融機関による外為取引(1日460億ドル程度)の大半に直接照準を定めた対応だ。ロシアにある銀行資産の約8割が標的となる」

     

    下線のように、ロシアの上位30行がSWIFT排除となれば、「絨毯爆撃」のような影響を受けるとしている。ズベルバンクやVTBなど数行が、SWIFT排除でも対外取引の8割程度に達する。

     

    (5)「ロシアの銀行をSWIFTから排除することは、苦渋の決断だった。過去数日間、ウクライナは西側諸国に排除を要請し、英国などの国々は賛意を示したが、ドイツなどの国々は自国の経済や企業への影響を懸念していた。フランスのルメール経済・財務相は25日、SWIFTからのロシア排除は「金融版の核兵器」だと発言。「あなたがもし核兵器を手にしていたら、使う前によく考えるはずだ」と記者団に述べた。しかし、ロシア軍がウクライナの首都キエフへの攻撃を開始し、外交的解決の希望が薄れると、潮目は変化した。ドイツは26日に態度を軟化させ、「巻き添え被害」の抑制に務めながらロシア銀をSWIFTから排除する方法を探る姿勢を示した」

     

    欧州が、ロシアをSWIFT排除する決断をするまでにいかに悩んだか。その苦渋の上の決定である。ロシアのウクライナ侵攻を止めさせ、原状復帰を目指す強い意志の表明である。プーチン氏は、このプロセスを理解すべきである。

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    ドイツ政府はこれまで、対ロシア経済関係を重視して、ウクライナ問題で逃げ腰姿勢を見せてきた。だが、2月24日から始まったロシアによるウクライナ侵攻で、ウクライナへの積極支援に変わっている。以前は、ウクライナの武器供与の要請を断わり、ヘルメット5000個を送り、嘲笑されるほど危機に鈍感であった。

     

    『ロイター』(2月27付)は、ドイツのベーアボック外相が、中国の王毅外相との電話会談で、ウクライナに関する中国の「特別な責任」を強調した。ドイツ外務省が26日にツイッターで明らかにしたもの。

     

    ドイツ政府が、中国に対して間接的に中国政府の責任を問う姿勢にまでなっている。プーチン氏が、ウクライナを「ヒトラー」呼ばわりしていることへの反発も手伝い、中国へ間接的な異議を伝えたのであろう。

     


    ドイツはこれだけでない。ドイツ運輸省は、自国の空域からロシアの航空会社を締め出す準備を進めていることを明らかにした。ARDが複数の関係者を引用して報じたところによれば、EU全体でこれに追随する可能性がある。『ブルームバーグ』(2月27日付)が報じた。ロシア航空機をドイツ空域から締め出すとは、思い切った行為である。EU全体が、このドイツの措置に追随すれば、ロシア航空機はEUへの乗り入れが困難になる。

     

    『ブルームバーグ』(2月27日付)は、ドイツは紛争地帯に兵器を送らないという従来の方針を転換し、ウクライナに携行式地対空ミサイル「スティンガー」などを送ると発表した。外国への兵器供給は長年維持してきたドイツの方針を転換するもので、ロシアのプーチン大統領が指示したウクライナ侵攻に対する憤りを浮き彫りにした。ドイツ政府の26日声明によれば、ドイツ製ロケット推進手りゅう弾(RPG)400本と装甲兵員輸送車14台がオランダ経由で、1万トンの燃料がポーランド経由でウクライナに供給される。追加供給も検討中だという。

     


    ドイツ政府は、ウクライナへドイツ製ロケット推進手りゅう弾や装甲兵員輸送車装甲兵員輸送車を供給する。さらに追加供給も検討中という。ロシアの野望粉砕に全力投球である。

     

    『ブルームバーグ』(2月27日付)は、「ドイツ首相、国防費の大幅増額を表明ーウクライナ危機で歴史的転換」と題する記事を掲載した。

     

    ドイツのショルツ首相は27日、国防費を大幅に引き上げる計画を発表した。ロシアのウクライナ侵攻を受け、歴史的な政策転換に踏み込む。

     


    (1)「同首相は連邦議会(下院)で演説し、軍の強化に向けた基金に今年1000億ユーロ(約13兆円)を振り向ける方針を示すとともに、政府は2024年までにGDPの少なくとも2%相当を国防費に毎年充てると表明した。北大西洋条約機構(NATO)は国防予算についてGDPの2%相当を目標としているが、ドイツは未達に終わることが多かった」

     

    ドイツは、これまで防衛費のGDPの2%目標を達成せず、米軍駐留に依存してきた。今回のロシアによるウクライナ侵攻で、目が覚めた感じである。ウクライナへの積極支援が、ロシアの野望を阻止する試金石と見ているに違いない。

     


    (2)「ポーランドのドゥダ大統領は同日、ショルツ氏の演説について、ウクライナ支援と国際銀行間通信協会(SWIFT)の国際決済ネットワークからのロシアの一部銀行排除とともに「ロシアによる侵攻の阻止に向けた重要な一歩」だとツイート。「共に行動することだけが、ロシアのプーチン大統領の帝国的野心と戦争を止めることができる」とコメントした」

     

    ポーランドは、これまでロシアの暴政を経験しているだけに、対ロ姿勢では厳しい姿勢だ。ドイツも旧東ドイツは、旧ソ連の占領地であった。だが、ロシアに対して経済的利益優先で妥協しすぎたと言える。その「反省」が今、ドイツを襲っているのであろう。

     


    (3)「ポーランドのヤブウォンスキ外務次官はワルシャワでの記者会見で、プーチン大統領を孤立化させることが侵略を止める唯一の手段であるため、ロシアへの圧力を続ける必要があると指摘。「われわれにはまだなすべき多くのことがあるが、その一つがベラルーシを制裁対象とすることだ。ベラルーシはロシアの同盟国だ」と述べた」

     

    ポーランドはベラルーシをロシア衛星国と見ている。このベラルーシを、制裁対象に加えるように主張している。

     


    (4)「ポーランド政府のムラー報道官は同じ記者会見で、同国のモラウィエツキ首相がショルツ独首相と26日にベルリンで会談し、ロシアからの天然ガスパイプライン「ノルドストリーム」の「2」に続き「1」も停止するよう主張したことを明らかにした。ポーランドは「ロシアのプロパガンダ」拡散が疑われるウェブサイトを閉鎖する方針。ポーランド首相府トップのドボルチク氏は、人道支援でウクライナに1日当たり2本の列車を向かわせ、帰還する列車に難民を乗り込ませることを明らかにした

     

    ポーランドは、ウクライナ避難民を積極的に受入れる方針だ。ウクライナへ、1日当たり2本の列車を向かわせ受入れる。国連では、40万人程度の避難民が出ると予想している。ポーランドが、ベラルーシ制裁を主張するのも当然であろう。

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    沸点に達した米欧の怒り

    米ドル決済網排除で窮地

    ロシアに騙された習近平

    台湾侵攻で重大障害現る

     

    ロシアのウクライナ侵攻前、海外ではプーチン・ロシア大統領の硬直化した戦術に危惧の声が上がっていた。英国宰相で「鉄の女」と言われたサッチャーの現役最後と同様に、極めて独り善がりな行動と指摘したのだ。サッチャーは後に認知症を患うが、プーチン氏にそうした病的な影がないだろうか。しきりと「ロシア帝国」時代を懐かしんでいるからだ。

     

    プーチン氏は、2月21日にロシア大統領府で行った好戦的なテレビ演説が、数十年にわたる歴史的な不満を1時間近くにわたって述べた。それは、冷戦後に西側諸国が中心となってつくった国際秩序に対するロシアの挑戦状でもある。プーチン氏は、ウクライナが歴史の偶然によって、ロシアを攻撃する米国の拠点になったとする持論に触れていたのである。

     


    プーチン氏は、1991年の旧ソ連崩壊後の世界地図が、どのように変化しているかを無視している。ロシアの実質GDPは、すでに米国のテキサス州並に落込んだ。この現実を認めずに、かつての「米ソ時代」を夢見ているのである。ちなみに、最近の米ロのGDPを見ておきたい。

     

    米国  19兆2470億ドル(2020年)

    ロシア  1兆4161億ドル(  同  )

     

    ロシアは、米国の7.35%にしか過ぎない規模である。テキサス州並と言われる理由である。日本は、4兆3807億ドル(2020年)であり、ロシアは日本の32%の規模だ。プーチン氏は、こうした経済力の格差が生じていることを率直に認めれば、ウクライナの背後に存在する西側を認識して、侵攻を取り止めたであろう。

     


    ロシアは、ウクライナを安全保障上の「中立国」にさせたければ、互いに「不可侵条約」を結べば済むことだった。それを行なわないで、上から目線でウクライナを軍事力により屈服させるという、前時代的行動に打って出た。プーチン氏の認識が、大きくずれているのだ

     

    平和的手段を用いずに、「ロシア帝国」認識でウクライナを属国扱いするのは、正常な感覚の持ち主であれが行なわないはず。プーチン氏の「異常性」を指摘せざるを得ない背景だ。

     

    沸点に達した米欧の怒り

    ロシア軍が、ウクライナ侵攻を開始したのは、2月24日早暁である。この日は、米ロ外相会談を予定していた日である。ロシアは、外交交渉の予定を反古にして侵攻に踏み切った。これは、裏切り行為である。米国バイデン大統領が、激しい言葉でロシアとプーチン氏を非難したのは当然である。バイデン氏は、次のように演説した。

     


    「プーチン大統領は壊滅的な人命の喪失と苦しみをもたらす計画的な戦争を選んだ」。「この攻撃のもたらす死と破壊の責任はロシアのみが負う。米国と同盟国、パートナー国は一致団結して断固たる対応を取る。世界がロシアの責任を問うだろう」と述べた(米『CNN』報道)

     

    この言葉を、形式的なものとして聞いてはならない。米国は、日本の真珠湾攻撃の際も、厳しい言葉で対抗する決意を見せつけた。米国人には、開拓者精神である「ヤンキー魂」が宿っている。強い報復心で対抗する不気味さは、日本人なら最もよく理解しているところだ。プーチン氏による、度重なる「ウソ」に裏切られた怒りは、予想を超える経済報復としてロシアへ襲いかかるはずだ。ロシアが、最も恐れている「金融切断」である。

     

    それは、ロシア金融機関を国際銀行間通信協会(SWIFT)の決済ネットワークから排除する問題である。一旦は、余りにも影響が大きく欧州の銀行にも影響が及ぶとされ、「お蔵入り」した報復策だ。詳細な内容は後で説明する。これがついに、2月26日(現地時間)欧州などの賛成を経て実施すると発表された。ロシア金融は、世界の米ドル決済網から切離され「孤島」に追いやられるのだ。第二の「イラン経済化」という暗い予測が飛び交っている。

     


    ほんの数日前まで、ロシアをSWIFTから排除する可能性は小さいと受け止められてきた。この制裁案に対し、慎重であった欧州が賛成に回ったのである。欧州は、ロシアが二度と再び、近隣国へ侵攻ができないよう、経済的に手足を縛る決意を固めるにいたった。「金融の核爆弾」の炸裂である。

     

    ロシア経済が、経済制裁に対する耐久性のないことは、24日のウクライナ侵攻前に立証済であった。プーチン氏が、ウクライナ東部のドンバス地域へ兵力投入を発表した21日、ロシアの株価指数は10%以上も暴落したからだ。これだけでも十分に経済制裁の潜在的威力を示したのである。さらに、SWIFTからの排除が加わるので、ルーブルは2月28日からの週に大暴落し、固定相場制復帰も囁かれている。

     

    ルーブル暴落は、物価上昇率へ直接響く。1月の消費者物価上場率は8%台だが、すぐに10%以上へ跳ね上がるはず。そうなれば、民心がプーチン大統領から離れる。米欧は、プーチン氏を制裁対象にも加えている。一国元首であるプーチン氏が、経済制裁対象になったことから、プーチン氏の財産が凍結される。ロシア全体にとっても不名誉この上ない話だ。米欧の怒りがいかに大きいかを示すものであろう。(つづく)

     

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    テイカカズラ
       

    ウクライナ大統領府は、27日同国の代表団がロシア側とベラルーシ国境で交渉すると発表した。ウクライナのゼレンスキー大統領が所属する政党の議員が語ったところでは、同国代表団は既に首都キエフを出発した。『ブルームバーグ』(2月27日付)が報じた。

     

    ロシアは、ウクライナへこれまで二度もベラルーシでの話し合いを提案し拒否されている。三度目になる今回は、ウクライナとベラルーシの国境で行なわれるもの。ロシアが、休戦交渉を焦っているのは、国際社会がロシア批判で沸き立っているからだ。時間が経てば経つほど、ウクライナへの同情が集まっることも背景にあろう。

     


    ウクライナのゼレンスキー大統領は2月27日、ロシアによる攻撃を巡り国際司法裁判所(ICJ)に提訴したとツイッターの投稿で明らかにした。「ロシアはジェノサイド(大量虐殺)の概念を巧みに使い侵略を正当化した責任を取らなければならない。ロシアに軍事行動をすぐにやめさせるよう命じる緊急決定を求めており、来週審理が始まることを見込む」と述べた。『ロイター』(2月27日付)が報じた。

     

    IJCは、ウクライナから提訴されたとすれば、事態の緊急性に鑑み、早急な判断を下さなければならない。「ロシア敗北」の判断が下されれば、ロシアにとって面目丸潰れになる。中国は、南シナ海で敗訴したが居座っている。ロシアも同じことをするのだろうが、イメージは地に墜ちる。

     


    ウクライナは、世界に向けて募金活動を始めている。

     

    『ブルームバーグ』(2月25日付)は、「ウクライナ、クラウドファンディングで軍資金調達-大国ロシアに対抗」と題する記事を掲載した。

     

    ウクライナ国立銀行(中央銀行)は2月24日、世界各地からウクライナ軍に対して主要通貨で送金可能な特別口座を開設したことを明らかにした。

     

    (1)「首都キエフに本部を置く非営利団体「カムバック・アライブ」は、ウクライナ軍を支援するため1日で2050万フリブナ(約7760万円)を集めたと、フェイスブックへの投稿で明らかにした。「アーミーSOS」のフェイスブックへの投稿によると、寄付を受け付けており、軍にタブレット端末など新たなテクノロジー備品を提供する支援を行っている」

     

    1日で約7760万円もの募金があったという。世界中で、ウクライナの悲劇に胸を痛めている人たちから浄財が集まったのであろう。

     


    日本では、楽天グループの三木谷浩史会長兼社長は2月27日、ロシアから侵攻を受けているウクライナを支援するため、ウクライナ政府に10億円を寄付する考えを明らかにした。

     

    『ブルームバーグ』(2月27日付)は、「三木谷氏はツイッターで、ゼレンスキー大統領宛ての手紙とともに「僕達にできることは本当に限られていますが、家族と相談し10億円を寄付することにしました」と投稿。25日には、同大統領とキエフで撮影した写真も投稿し、「日本政府も毅然とした態度を取ってもらいたい」とウクライナを支援する姿勢を示していた」

     

    楽天オーナーが、率先してウクライナへ10億円もの巨額資金を寄付した。ウクライナが、ロシアから言われなき理由で戦争を仕掛けられるとは、現代においてあってはならぬ話である。世界中で、義憤に駆られている人々は無数いることであろう。

     


    (2)「集まった支援金は、ウクライナの2021年国防予算約39億ドルと比べると極めて少ない額にとどまっている。同国の議員らは、今週に入り国防費を約8億7000万ドル増額することで合意した。ロシアの国防費はウクライナの10倍あまりとなっている」

     

    ロシアからの理不尽な戦争は、信じられない話である。「気に食わないから戦争する」とは、暴力団抗争そのものだ。ロシアへは、正しい裁きを与えなければならない。

     

     

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    米国、英国、欧州、カナダは2月26日、ロシアの大手銀行を国際銀行間の送金・決済システムのSWIFT(国際銀行間通信協会)から排除することで合意した。ウクライナへの侵攻を続けるロシアへの新たな制裁措置の一環。制裁にはロシア中央銀行の外貨準備に関する規制も含まれ、数日中に実行する。

     

    ロシアをSWIFTから除外する問題は、「金融の核爆弾」とも称せられるほどの威力を発揮する。すでに、イランがその対象になっている。イラン経済は、他の経済制裁も加わって疲弊したまま。ロシアがその二の舞いを演じることになりそうだ。

     


    ウクライナは、悲惨な状況に追い込まれている。ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、まだ44歳の若さだ。過去に政治的経験ゼロの演劇人である。そのゼレンスキー氏が、必死に米欧に軍事的救援を求めている。命を賭けて国を守る気迫に、これまでの政敵も拍手を送り、共に武器を取りロシアと戦う姿勢を見せている。

     

    ゼレンスキー氏は、26日も電話でNATOへ即時加盟を訴えたが、答えは沈黙であった。欧米首脳は、こういう事態の中で唯一、ウクライナを救えるのは、ロシアをSWIFT排除するだけである。西側諸国が、示した最大の「誠意」であり「謝罪」であろう。

     


    ロシアのSWIFT排除は、西側諸国も影響を受ける。だが、ウクライナの苦しみに比べれば、万分の一にも値しない。ウクライナ侵攻後、一挙にロシアのSWIFT排除がまとまった背景である。

     

    『ロイター』(2月27日付)は、「ロシアのSWIFT排除 ウクライナ侵攻の資金源遮断が目的ー米高官」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「米バイデン政権の高官は26日(現地時間)、ロシアを国際銀行間の送金・決済システムのSWIFT(国際銀行間通信協会)から排除する欧米諸国による追加制裁について、プーチン大統領がロシア中央銀行の外貨準備6300億ドルをウクライナ侵攻や通貨ルーブル防衛の資金に使うことを阻止するのが目的だと明らかにした。高官は「プーチン政権は国際金融システムから排除されつつある」と語った」

     

    下線部に、西側諸国が休日にもかかわらず緊急決定した理由がある。ロシアの外貨準備高は、原油や天然ガスの値上りを背景に、6300億ドルにも達している。プーチン氏がウクライナを侵攻できた経済的なゆとりは、ここにもあったであろう。それだけに、ロシアの「宝物」を簡単に移動できぬようにするには、ロシアをSWIFTから排除することだ。米高官は、「プーチン政権は国際金融システムから排除されつつある」と進行形で指摘している。すでに、手が打たれたのだ。

     

    明日(2月28日)から、世界の外国為替市場は「激動」に見舞われることは確実。為替関係者は、どう見ているかを紹介したい。

     


    『ロイター』(2月27日付)は、「ロシアの一部銀行をSWIFTから排除へ:識者はこうみる」と題する記事を掲載した。

     

    <ブライト・トレーディングのトレーダー、デニス・ディック氏>

    (2)「世界中が物理的な介入を行わずに、ウクライナで起きていることを是正、または少なくとも食い止める方法を模索している。派兵を避けるためにできるどんな対応も、米金融市場はおそらく肯定的と見なすだろう。ウォール街にとって最悪期は過ぎ去ったのかという点では、そうかもしれないと思う」

     

    ロシアの蛮行を抑えるには、武器に代わるものとしてSWIFTからの排除しかない。不透明な条件が消えたので、株価的には最悪期を過ぎたと見られる。

     


    <元ロシア中央銀行副総裁、セルゲイ・アレクサシェンコ氏>

    (3)「(SWIFT排除は)週明けのロシア通貨市場に大惨事が起こることを意味する。取引を停止し、ソ連時代のように為替レートが人為的に固定されるだろう。この制裁がどのような条件で全て解除されるのかが明確でないため、1991年のロシア金融危機よりはるかに悪い状況と言える。最も強力な決定で、間違いなく正しいと考える」

     

    ロシア通貨市場は大惨事となろう。自由変動相場制を停止して固定雄場制に戻る可能性もある。輸入物価の高騰は避けられず、1991年のロシア金融危機よりはるかに悪い状況が見込まれるという。プーチン批判が一挙に高まろう。

     


    <OANDAのシニア市場アナリスト、エドワード・モヤ氏>

    (4)「イランに起きたこと、イラン経済への壊滅的な影響と比較されることになるが、週明けの世界の金融市場に大きな衝撃を与えるだろう。多くのトレーダーは、米国と欧州が強硬姿勢を取らず、目先の経済的状況を守ることに集中し、金融システムに大きな打撃を与えないと、ある意味確信し始めていた。今回の措置は消化するのがかなり難しく、多くのトレーダーは神経質になるだろう。先週後半に起きたリバウンドの大部分が試されることになる」

     

    これまで、ロシアをSWIFTから除外すれば、西側諸国もその「返り血」を浴びることが大きく報道されてきた。それだけに、今回の決定は大きな衝撃を与えよう。改めて、イラン経済とロシア経済の比較論が賑わうと見られる。ロシア悲観論の展開である。

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