勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2022年02月

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    パンデミック下で米中経済は、対照的な動きをしている。中国は、「ゼロコロナ」対策である。米国は「ウィズコロナ」対策によって、経済とのバランスを取っている。

     

    米国の場合、パンデミック対策として十分な個人補償を行なったこともあり、失業しても暮しに困らないという恵まれた環境にある。これが、求職動機を弱めている。求人が増えても必要な労働力を確保できない、という珍現象を生んでいるのだ。こうして、時給を引き上げざるをえず、これが価格に転嫁されている。この結果、消費者物価上昇率は約40年ぶりのレベル(昨年12月、前年比7.0%)へ押し上げられた。

     

    この事態が、米国経済の足腰を強めることになりそうだ。企業は、足りない労働力をカバーすべく、生産性向上に取り組まざるを得ない。転んでもタダで起きない、そういう事業展開が予想される。中国は、習近平氏の鶴の一声で「ゼロコロナ」である。創意工夫する米国企業と、漫然と休業するほかない中国企業では、こうして大きな差がついて当然だ。

     


    英紙『フィナンシャル・タイムズ』(2月2日付)は、「『大退職時代』 企業に変化迫る」と題する社説を掲載した。

     

    米国の労働力に一体なにが起きているのか。米国におけるインフレの要因になっている賃上げの問題だけではない。新型コロナウイルスの世界的感染拡大(パンデミック)が始まってから何百万人ものアメリカ労働者が退職し、「大量退職時代」として大きな議論を呼んでいる。米国における退職者数は昨年11月にピークに達した。求人数が非常に高水準にあるなか、2000年以来で最も多い450万人のアメリカ人が職場を去った。

     

    (1)「マイクロソフトのリポートによれば、全世界の労働者の41%が退職を考えているという。長期化するパンデミックに伴う「デジタル燃え尽き症候群」や孤立感、人とのつながりが失われたことなどが原因とみられている。しかし、米国の労働市場は他の多くの国よりもひっ迫しており、その状況は当分続くとみられる。米国の労働参加率は、他の先進国よりも低下が著しく、際だって低い水準にある。企業の間で労働力を確保するための競争が激しくなっており、一定の生産に必要な労働コストは、コロナ前の水準と比べて大幅に上昇している。対照的に、他の先進国では、労働コストは下落傾向にある」

     

    下線部で、米国企業は労働者不足をカバーすべく賃上げしているので「賃金コスト」が上昇している。この実態解消で、米国企業は生産性向上に取り組まざるを得ないのだ。

     


    (2)「この状況を生んだ一因は、パンデミックに対する米国の対応の方法にもある。欧州が雇用を守ることを優先したのに対し、米国は成長の維持に主眼を置いた。米国は、企業が自由に従業員を解雇することを許し、失業者に手当を支給する政策を取った。結果的に、特に大きく落ち込んだ米国のサービス部門が急回復するにつれ、企業は慌てて新たに労働者を雇い入れる必要に迫られた。この解雇・転職の大波に、コロナ対策の一環としての特別失業給付が加わり、何百万もの労働者にとってかつてないほど有利な状況が生まれた

     

    米国は、パンデミック下の従業員解雇を認めた。これが現在、労働力不足となったはね返っている。従業員は、たっぷりと解雇手当を手に入れたので失業していても裕福である。これが、求職活動を消極化させている。

     

    (3)「転職率は、レジャー、接客、外食産業などで特に高くなっている。こうした業界で働く労働者の多くは、低賃金で長時間労働を強いられていた以前の職に戻る気はない。売り手市場で、企業が賃金や手当の引き上げを迫られている状況を利用して、より好条件の仕事を探す労働者も少なくない。アトランタ連銀のデータによると、昨年の8月から10月までの期間に転職した労働者の賃金上昇率は、中央値で5.%だった。これに対して、転職しなかった労働者の賃金上昇率は3.%にとどまった。転職している労働者の多くは低賃金層に属するが、この層の賃金が上昇することで、企業は、高賃金の労働者の給与も引き上げざるを得なくなりつつある。これが転職ブームにさらに拍車をかける要因になる」

     

    転職率の高い業種は、レジャー、接客、外食産業などだ。この業種では、時給を引き上げねば労働力を確保できなくなっている。これが、他産業にも波及している。ここに、企業側は抜本的な対策を打つはずである。労働生産性向上の投資などだ。

     


    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2月4日付)は、「米労働生産性、コロナ収束後に大きく上昇も」と題する記事を掲載した。

     

    米労働省が2月3日発表した2021年10~12月期の非農業部門の労働生産性は前期比年率換算で6.6%上昇した。大きな伸びではあるが、5%もの低下を記録した7~9月期から持ち直したにすぎない。21年通年の伸びは1.9%で、20年の2.4%や、新型コロナウイルス流行前の19年の2%を下回った

     

    (4)「米国は今、生産性の向上を必要としているということだ。時間当たりの生産高が増えれば、生産にかかる労働コストはそれだけ下がる。生産性の伸びが高ければ、企業は価格を据え置いたまま販売量を増やすことができ、利益の拡大や労働者の賃上げが可能となる。「賃上げが利益率を圧迫するのではないか」とか「持続的なインフレを受けて米連邦準備制度理事会(FRB)が経済にブレーキをかけるのではないか」などと投資家が懸念している時に、生産性の伸びが拡大すれば大歓迎されるだろう」

     

    米国経済は、時ならぬ「労働力不足」に直面している。これを乗り切るには、設備投資を増やすこと。また、仕事の流れを抜本的に変えて在宅勤務を取り入れるなど、種々の方法が試されるだろう。これが、米国経済の足腰を強くするはずだ。

     


    (5)「都合に応じて在宅勤務と出社を切り替えたり、オンラインと対面の会議を適宜使い分けたりできるようになれば、人々の効率性は飛躍的に高まる。オンラインでメニューを選び注文するシステムは多くのレストランが導入しているが、それが生産性に及ぼすメリットを実感できるようになるのはレストラン事業が完全に回復してからだろう。また、需要は強いが労働者の確保は難しいという状況を受け、企業の間では生産性向上策を見いだそうという機運が数年ぶりの高まりを見せている。賃金が、停滞し経済成長がさえなかった時代に考えられなかったような効率化を図る企業が多く出てくるだろう」

     

    米国企業は、人手不足という「危機」を「ビジネスチャンス」に変えるであろう。今、その機会がめぐってきたのだ。

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    韓国の文政権は進歩派を名乗っているが、実態は民族主義グループである。極めて強い保守的志向に固まっているにも関わらず、自らをリベラル派と称する矛楯した存在である。リベラル派であれば、反対派の存在を認めて議論するのが本筋であろう。そういう真摯さはなく、世論に高まる政権交代論を「クーデター」と捉えるあたり、中国共産党と同じである。危険な存在と化している。

     

    文政権支持派は、高まる政権交代論に強い危機感を抱いている。最大野党「国民の力」の候補者、尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏を危険思想の持ち主のように忌避している。さらに、この尹氏を大統領候補に押し上げたのは、文大統領の「失策」とまで断じている。尹氏でなくても、別の野党候補が出て政権交代論を盛上げたであろう。それほど、文政権はすべての政策で失敗したのだ。そういう反省もなく、政権交代論をクーデター呼ばわりするのは片手落ちである。

     

    『ハンギョレ新聞』(2月4日付)は、「文在寅の暗い遺産、ユン・ソクヨル」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のシン・スングン政治エディターである。

     

    (1)「ソウル大学のピョン・ヒョンユン名誉教授ら民主改革政権を願う長老市民の会の130人の関係者は、旧正月連休の始まる1月28日、「反歴史的・反民主的勢力が時代を転覆させようとしている」とし「韓国の民主主義の今日のために献身した2017年ろうそく市民が再び立ち上がり、投票で守り抜かなければならない」と主張した。大統領選挙まで残すところ30日あまり。国民の力のユン・ソクヨル候補は本人・夫人・義母に疑惑があるにもかかわらず、依然として強い。非常に心配なことだろう」

     

    候補家族をヤリ玉に上げているが、民主党候補の李氏に一点の曇りもないのか。李氏にまつわる多くの疑惑に加え、李夫人が公用クレジットカードを使い、大量の私的買い物をしている実態や息子の問題。李候補の方がはるかに「疑惑のデパート」である。こういう問題を抱えている候補者が、進歩派から立候補していることを忘れてはならない。

     

    (2)「実のところ、ろうそく市民がユン・ソクヨル候補に投票しない理由は探すまでもなくあふれている。しかし20~30代男女を分裂させ、中国憎悪や南北対決を煽るなどの同氏の時代錯誤的な認識と言動、「女性家族部廃止」、「THAAD(終末高高度防衛ミサイル)追加配備」のように数文字で意思を表す単純さにもかかわらず、同氏の支持率が保たれているのは、政権交代への熱望を抜きにしては考えられない」

     

    進歩派の文大統領が期待に添えぬ政権であれば、国民の間から政権交代論が高まるのは当然である。それが、民主主義のルールである。政権交代論に異議があってもそれに従わざるを得ないのだ。5年後に、「捲土重来」を期すことである。理屈は簡単であり、クーデター論などと騒ぎ立てること自体、政権を「私」にする進歩派の傲慢である。

     


    (3)「文大統領が約束した「光化門(クァンファムン)時代」はどうか。結局、ユン・ソクヨル候補が、自分が大統領になれば就任初日から光化門の政府ソウル庁舎で執務を開始すると改めて公約する。大統領選挙のたびに必ずなされる「お約束公約」となってしまったようだ。大統領府は、文大統領の支持率が歴代のどの大統領よりも高いことを誇りに思っている。しかし「文在寅大統領はレームダックのない大統領という見栄えの良い迷いごとにとらわれていずに、絶望した明日のない若い世代に謝罪すべきだ」という長老市民の会の指摘を深く肝に銘じるべきだ」

     

    文大統領は、就任演説で約束したことは一つも実現させる意思がなかった。韓国大統領の「帝王的権力」に溺れた5年間である。人権派といわれる弁護士であったのだから、「帝王的権力」に一番、違和感を持ち憲法改正に起ちあがるべきだった。現実には、検察に最高権力者の犯罪捜査をさせないバリアの「高位公職者犯罪捜査処」(公捜処とつくって、文氏のガード役に仕立てたのである。

     


    (4)「「ユン・ソクヨル候補は、私たち民主党政権の暗い遺産です。私たちのごう慢と、外に厳しく内に甘い態度の反射効果です」。ソン・ヨンギル(民主党)代表のこのような告白は、せめてもの厳正な診断だ。暗い遺産が最高権力を握り、自ら光を放つ発光体になろうとしている。もし現実化すれば、検察改革を使命とした「ろうそく政権」の最悪の皮肉となるだろう。彼を検察総長に超高速出世させた文大統領の過ちとして記録せざるを得ない」

     

    下線部は、真実を突いている。こういう与党の反省が2年前にあれば、事態は変わったであろう。検察改革と称し「公捜処」という時代に逆行するものをつくってまで政権に恋恋とした。新政権は、これを廃止することだ。

     


    (5)「聖公会大学のキム・ドンチュン教授は先日、フェイスブックにこのように書いた。「文在寅と民主党には初めから、この社会を変えるきちんとした青写真や準備はほとんどなかったのです。しかし、国民の力と守旧勢力に審判させてはなりません。文在寅が嫌いだからと言って状況に冷笑し、守旧勢力のクーデターに同調することはできないからです。大統領選挙の時代精神? 非常に残念ですが、そんなことを論ずる段階は過ぎました。クーデターは防がねばなりません」。選挙による政権交代をクーデターだとみなす同氏の見方は物議を醸すだろう」

     

    下線部は、進歩派の傲慢ぶりを示している。「敵・味方」論で政治を行なう極めて狭量な精神だ。韓国進歩派の実態が、民族主義者の集団であることを立証している。重ねて言う。真のリベラル派でないのだ。仮面を被っているだけである。 

     

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    韓国大統領選は、非難中傷合戦の中から次第に政策論争が始まっている。外交政策では、文路線を守るかどうかが、焦点になってきた。最大野党「国民の力」尹錫悦(ユン・ソクヨル)候補が、中国けん制姿勢をはっきりと示したが、与党は「親中朝路線」堅持である。国論の統一ができないのだ。

     

    文政権支持メディア『ハンギョレ新聞』は、尹氏の主張に対して李明博・朴槿恵両政権の失敗した政策と類似している」と批判。文政権の外交路線が、最善と言わんばかりの論調である。韓国では、与野党で外交政策が真反対であり、対外的な韓国イメージを弱体化させている。

     


    『中央日報』(2月3日付)は、
    「『中国人の健保制限、THAAD追加』尹錫悦候補、中国けん制路線を強化」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「国民の力の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領選候補が旧正月連休期間に中国牽制路線の強化に出た。尹候補は1月30日、フェイスブックに「国民が整えておいた食卓にさじだけをのせる外国人健康保険問題を解決する」として中国人を問題事例に言及した。「外国人の健康保険給与支給上位10人の中で8人が中国人で、特定国籍に偏っている。最も多い恩恵を享受した中国人は被扶養者資格で約33億ウォン(約3億円)の健康保険給付を受けたが、約10%だけが本人負担だった」という指摘だ」

     

    尹候補は、韓国で根強い「反中国意識」に焦点を合わせている。世論では、「反日論」よりも「反中論」が強いのだ。中国が宗主風を吹かして、韓国文化はすべて中国由来という話を吹聴することへの反発である。

     


    ここでは、健康保険をめぐる問題提起である。中国人が、健康保険で得しているという話である。だが、保険制度から言えば、こういう議論は成り立たない。病気になりたくてなる訳でないから、決められた保険料を負担している限り、問題はない。尹候補の勇み足というべきだ。ただ、中国批判を堂々と始めている点は、これまでにないことである。

     

    (3)「尹候補が言及した事例は昨年国政監査で国民の力の李容浩(イ・ヨンホ)議員(当時無所属)が健保公団から受けて公開した内容だ。資料によると、血友病(遺伝性第8因子欠乏)患者である中国人は2017~2021年健保給与29億6301万ウォンを支給された。本人負担金は3億3200万ウォンだった。尹候補は同日、フェイスブックに「THAAD追加配備」という6文字を掲載したこともある。THAAD体系は中国をけん制するために米国が推進したミサイル防御体系の核心要素だ。尹候補は1日、仁川市江華郡(インチョンシ・カンファグン)最北端に位置した江華平和展望台を訪ねて「THAADを含む重層的ミサイル防御網を構築する」と話した」

     


    特別の病気を持出して、患者負担と医療費の比較は無意味である。保険料は、大数の法則(確率論)によって決められる以上、総合的な視点で論じるべきである。尹氏の勇み足だ。

     

    THAADは、韓国の自衛権に関わる問題である。中国からの制約を受ける問題でない。文政権の「三不政策」は自衛権の放棄であり批判されて当然である。尹氏の指摘が正しい。

     

    (4)「尹候補側は、「『反中』とは関係がない」(選挙対策委員会本部関係者)と明らかにしているが、政界は反中感情が大きい20・30世代を狙ったメッセージと捉えている。中央日報がソウル大学アジア研究所と共同で昨年11~12月世論調査を実施した結果、20・30世代の中国非好感度(好感度100点満点で50点未満の割合)は63.5%で、全体平均より9.7%ポイント高かった」

     

    尹氏は、選挙戦略から言って20~30代に強い反中意識に焦点を合わせている。ただ、健康保険のような間違った意識で、中国批判をすると後から反批判が出るだろう。理屈に合った批判でないと的外れになる。

     


    (5)「共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)大統領選候補は1日、フェイスブックを通じて尹候補が提起した外国人健保問題について「外国人嫌悪助長で得票する極右ポピュリズムは国と国民に有害だ」と批判した。THAAD追加配備の主張に対して李候補は「無責任だ」と話した。しかし、国民の力選挙対策委員会のイ・ヤンス首席報道官は2日「(尹候補のメッセージは)健康保険制度をより公正にするという趣旨」として、「現行医療制度の問題点を改善しようとの主張を極右ポピュリズムに追い込むのは出任せ」と反論した。THAAD追加配備に対する李候補の批判をめぐっても、「事実関係が間違っている」として反論資料を出した。4日開幕する北京冬季オリンピック(五輪)が、反中感情の変数になる可能性も提起される」

     

    与党大統領候補の李在明氏は、これまで「反日発言」で人気を上げてきた。尹氏を批判できる立場にない。ただ、文政権5年間で、徹底的に「親中朝・反日米」トーンで外交問題が取り上げられてきたことの反動が現在、起こっているという認識で見ることも必要であろう。要は、揚げ足を取られない内容であることが前提になる。間違った内容の批判では、逆効果になる。

     

     

     

     

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    今日から開催される北京冬季五輪は、主要民主主義国首脳の「外交的ボイコット」で侘しい開会式となる。雪が、ほとんど降らない土地での「冬季五輪」であり、100%人工雪に頼る。その結果、自然雪よりもスピードが出て、選手に思わぬ転倒者が出ないか懸念されているほどだ。1月31日発売のフランス『ル・ポアン』誌は、「呪われたオリンピック」と題する記事を掲載した。

     

    『ブルームバーグ』(2月3日付)は、「北京五輪、多数の強権国家首脳迎え開幕へ-08年と様変わり」と題する記事を掲載した。

     

    中国の習近平国家主席は4日開幕の北京冬季五輪に出席する21人(正しくは20人)の外国首脳を迎える。そのうち過半数が非民主主義国家を率いている。最も注目をされているロシアのプーチン大統領ら12人は、エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)の民主主義指数によれば、「強権」もしくは「ハイブリッド」国家の指導者だ。

     

    民主主義国家の首脳は8人。EIUが分析していないモナコは、米フリーダム・ハウスによって「自由」な国に分類されている。2008年の北京夏季五輪は当時のブッシュ米大統領が出席するなど、欧米の民主主義国家首脳が多数参加した。

     

    (1)「中国が新疆ウイグル自治区で少数民族に対するジェノサイド(民族大量虐殺)を続けているとして、バイデン米政権は昨年12月に北京冬季五輪に政府使節団を派遣しない「外交ボイコット」を行うと発表。人権を巡る懸念からこうした動きが広がり、各国首脳の北京五輪参加は政治的に大きな問題となっている」

     

    世界の外交基軸は、「価値観外交」と「利益外交」に二分される時代となった。この分類によれば、強権国首脳は目先の利益を求めて北京冬季五輪へ出席した「利益外交」だ。中国から経済支援を受けようという思惑を秘めた出席である。

     


    (2)「世界銀行のデータに基づく集計によると、北京冬季五輪に首脳を派遣する国々の国内総生産(GDP)を合わせると、世界全体の6%。アルゼンチンのフェルナンデス大統領は北京滞在中に2カ国間の通貨スワップ協定延長を中国側に要請する見通し。中央アジア5カ国は中国政府による5億ドル(約570億円)の支援と新型コロナウイルスワクチン5000万回分提供の表明を受け、首脳参加を発表した」

     

    北京冬季五輪に首脳を派遣する国々のGDPは、世界全体の6%に過ぎないという。アルゼンチンは、中国との通貨スワップ協定締結を目指している。中央アジア5カ国は、中国政府から5億ドルの支援と「効かない」ワクチン5000万回分の提供を受けるという。北京冬季五輪開会式へ出席する「非民主主義国」10ヶ国のうち、4ヶ国は経済がらみの見返り期待での出席である。「民主主義国」では、アルゼンチンが通貨スワップ狙いである。

     


    (3)「オーストラリア国立大学(ANU)台湾研究プログラムの宋文笛講師は、「米国の『価値観外交』が中国の『戦狼外交』と重なり、リベラルな民主主義に対する北京の外交的影響力をいかに弱めたかを冬季五輪の来賓名簿が示している」と指摘。「米国と連携しないことで外交的に失うものが比較的少なく、中国政府から経済的利益を得ることのできる」国々が首脳を北京に送り込んでいると語った」

     

    今回の北京冬季五輪へ出席した各国首脳は、奇異の目で見られている。親中国派が勢揃いした感じである。中には、「お付き合い」という軽い気持ちでの参加もあろう。韓国は、国会議長が参加するが、中国政府は「外国首脳」として発表している。この『ブルームバーグ』の記事には韓国出席を含めていない。

     


    『大紀元』(2月3日付)は、「北京五輪 呪われたオリンピックー仏誌」と題する記事を掲載した。

     

    2月4日に開幕する北京冬季オリンピックについて、仏誌『ル・ポアン』は「史上もっとも白けている冬季五輪」と形容した。諸国の外交ボイコットに加え、国民も盛り上がらず、開催コストから環境保護、新型コロナ対策、人権問題まで国際社会に糾弾されているからだという。

     

    (4)「1月31日発売のル・ポアン誌は、「呪われたオリンピック」と題する記事を掲載した。北京市市は、夏季と冬季の五輪を催した唯一の都市である。記事は中国政府がその権力を誇示するために、代償を顧みず冬季五輪の開催に固執したと評した。同記事はフランスのアンドレ・ガトラン上院議員の見解として、「オリンピック精神うんぬんよりも、北京(中国)を世界の中心に仕立てようという企みは明らかだ」と伝えた」

     

    米紙『ウォールストリートジャーナル』(2月2日付)は、「北京五輪の演出では覆い隠せない中国経済の現状」と題する社説を掲載した。その結論で、次のように結んでいる。

    習氏の政治的および経済的支配は、従来(2期)10年とされた国家主席の任期について、習氏が今年後半に(3期目の)任期延長で承認を得るのに十分なものかもしれない。しかし、表面的には政治的に安定しているとみられる状況にもかかわらず、中国の寅(とら)年は、習氏にとって波乱含みの年となる可能性がある

     

    下線部では、不気味な予告をしている。国家主席3選への疑問符である。経済混乱が、3選を許さないという示唆だ。

     

    (5)「雪不足という北京特有の天候条件も相まって、今回の冬季オリンピックでは史上初の100%人工雪を使用し、約1億8500万リットルの人工雪を投入した。水や電力を大量に費やすため、環境保護論者から批判が上がっている。また、人工雪は比較的硬いため、滑走のスピードが出やすく、選手にとって転倒リスクが高くなる」

     

    水資源の不足している北京が、大量の水消費である。環境保護論の立場か言えば、問題の冬季五輪となろう。まさに、「呪われたオリンピック」である。

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    中国は、ハノイで行われた2022サッカーW杯アジア最終予選最終戦でベトナムに1-3で敗れた。予選の結果は、これで8戦して1勝5敗2分けと惨憺たるものだ。ベトナムは、史上初めてW杯最終予選に進出し7連敗中だった。最後に、中国戦で勝利して意地を見せることになった。

    中国代表の敗戦から2時間後、ウェイボーで1128万件以上のコメントが書き込まれ、「恥ずかしい」などの非難の声が多かったという。代表的なものを上げると、「今回の敗戦は中国サッカーファンに許されるものではない」、「選手もコーチも必要ないので早く家に帰って旧正月を過ごせ」、「生きている間にW杯本大会に進出するのを見ることができるだろうか」などと書き込んだという。

     

    あるファンはテレビをハンマーで壊して投げつけ、足で踏む映像を載せた。サッカー中国代表チームの解散を要求する声もあった。「中国に帰ってくるな。選手はもう根性を失っているのでチームを解散すべきだ」と批判した。以上は、『中央日報』(2月3日付)が伝えた。

     

    中国は、香港が英国領であった関係もあり、目の肥えたサッカーフアンが多い。習近平氏も大のサッカーフアンである。さぞかし落胆したことであろう。

     

    人口14億人を数える中国が、なぜサッカーという団体スポーツに弱いのか。これには、中国民族の抱える構造的な脆弱性が隠されている。実力で競争せず、賄賂を贈って選手に抜擢されるという「賄賂漬け」が災いしているという指摘が多い。

     


    そう言われれば、中国人民解放軍での昇格でも賄賂が横行している。賄賂によって昇進した司令官が、いざ戦争の場面で、実力を発揮した指揮ができるか疑問視されている。習近平氏が、人民解放軍内での汚職追放に努力した背景に、これがあったのだ。

     

    中国軍も賄賂に毒されているとすれば、サッカー敗北の比ではない。中国という国家が消えてしまうのだ。サッカー連敗の背景と、中国人民軍には共通した面がある。それに十分、注意しなければならない。

     


    『朝鮮日報』(2月3日付)は、「『現代スポーツのミステリー』中国サッカー」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のヤン・ジヘ・スポーツ部記者・論説委員である。

     

    中国が2月1日、ベトナムで行われた2022年W杯カタール大会アジア最終予選でベトナムに13で敗れ、またもや本選出場がかなわなかった。2002年以外は一度も本選に出場したことがない。FIFAランキングも中国(74位)の方がベトナム(98位)より上だし、中国は1956年以降、66年間にわたりベトナム戦で無敗だった。

     

    (1)「中国人は自分たちの言葉で、サッカーができない理由をいろいろと分析している。ある人は「賭け事が好きで八百長が多いから実力が上がらない」という。事実、中国リーグでは大きな八百長スキャンダルが頻繁に起こる。「中国代表選手は高額の年俸をもらっているから、これ以上努力するわけがない」とも言う。年俸10億ウォン(約9500万円)の選手になるには、小さいころから監督にわいろを渡し、出場機会をたくさん得なければならない。実力ある有望選手はお金がなくて外されるという。「中国人の個人主義的な性格と、チームワークが重要なサッカーは相性が合わない」という分析もある。だが、バスケットボールやバレーボールなどでは中国がアジア最強と言われている」

     


    全日本サッカー監督を務めた人の話によれば、中国サッカーチームの練習では、定刻に選手は集まることがないという。そういう団体行動の習慣がないところで、厳しい練習を課してみても、強くなるはずがない。英領香港時代から、サッカーが中国で楽しまれた経緯を考えると、中国古来の悪習にどっぷりと浸かっているにちがいない。

     

    バスケットボールやバレーボールなど「新参スポーツ」には、賄賂という悪習に染まる時間がなかったのであろう。サッカーや軍隊など古い歴史を持つ組織は、旧中国の悪習をたっぷりと吸い込んでいるのだ。

     

    (2)「中国は、「サッカーは2400年前の古代中国の『蹴鞠』が起源だ」と主張する。「習皇帝」と言われる習主席が自らサッカーをたしなんでいるだけでなく、サッカー人口も多い。人口14億人がサッカーに熱狂し、中国企業はとてつもない金をサッカーに注いでいる。それにもかかわらず、中国のサッカーが低迷しているのは、まさに「現代スポーツのミステリー」(米時事週刊誌タイム)だ」

     

    多額の給料が、中国サッカー選手を「駄目」にしている面もあろう。日本でも、一流プロ野球選手は億単位の待遇を受けている。だからと言って、練習をサボっているという話を聞いたこともない。成績が上がらなければ翌年、更改時に給料ダウンである。中国のサッカーマネジメントにも大いに問題がありそうだ。中国社会の縮図であることは間違いない。

     

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