米国バイデン大統領は、日豪印の大使に長年の盟友を指名した。インド太平洋戦略の要である「クアッド」(日米豪印)に、気心の知れた人物を大使として配置した。中韓は、ベテラン外交官を指名して米国とのさらなる関係密接化を図る意図は見えない人事である。韓国の反応はまだ分らないが、文政権の二股外交によって米国の信頼は揺らいでいることを見せつけた。
『日本経済新聞 電子版』(2月3日付)は、「バイデン氏、日豪印大使に盟友 対中抑止へ戦略配置」と題する記事を掲載した。
バイデン米大統領は日本、オーストラリア、インドの米国大使に自らに近い人物を相次ぎ起用した。インド太平洋地域で中国抑止へ協力する国と緊密に連携できる陣容をそろえた。対立する中国や北朝鮮と向き合う最前線になる中国、韓国の大使には職業外交官を据える。
(1)「新たに駐日米大使に着任したラーム・エマニュエル氏は、クリントン政権の政策顧問や下院議員を経て、バイデン氏が副大統領を8年務めたオバマ政権で大統領首席補佐官を務めた。日本側はバイデン氏を含む政権中枢とのパイプを通じ、日本政府の意向を迅速に伝える窓口役を期待する。エマニュエル氏は2月1日、外務省で林芳正外相と面会した際に北朝鮮のミサイル発射やウクライナ情勢に触れて「日米が直面する課題にしっかり取り組む」と話した。中国を念頭にルールに基づく民主主義の秩序が脅かされていると指摘した。林氏は「日米同盟をさらに強固なものにするため率直に議論できる関係を築きたい」と伝えた。両氏は「自由で開かれたインド太平洋」実現に協力を申し合わせた」
米国にとって今や、日米関係は最も重要な関係になった。対中戦略の要として日本が位置づけられているからだ。民主主義の防波堤といっても言い過ぎでない。日本は、尖閣諸島の防衛で米軍の協力を必要とする。一方、米国はインド太平洋戦略において、日本が持つ豪印との親密性がクアッドの基盤を強化するメリットを受けられるのだ。
(2)「これまでの駐日米大使は、①政府・議会の大物、②大統領の盟友・側近、③知日派の学者――に大別できる。知日派といえないエマニュエル氏は他の要素を併せ持つ。軍事・経済両面で台頭する中国をにらみ、同盟国である日本とインド太平洋で民主主義国家の結びつきを広げる責務を担う。2000年代前半までは副大統領や下院議長などを経験した大物が就く例が目立った。最近は大統領との個人的な関係を重視する傾向にある。エマニュエル氏の前任のハガティ上院議員はトランプ前大統領の政権移行チームで政治任用の人事担当の責任者だった」
戦後の駐日米国大使は、いずれも米国の「大物」が赴任してきた。当時は、日米関係の強化発展が眼目であった。現在は、さらに豪印とりわけインドとの関係強化が必要になっている。米印関係は、これまでそれほど親密といえる関係でなかった。インドの「非同盟主義」が立ちはだかったからである。そのインドが、米国との関係強化に乗出した背景には、中国との対立が深刻化している外に、日印関係の良好さが土台になり米印関係も深まったという事情がある。日本がその仲介役を担った。具体的には、安倍元首相の外交力に負うものだ。
(3)「米アメリカン・エンタープライズ研究所のザック・クーパー氏は「関係が良好な日豪印で大使が扱う懸案は比較的少なく、各国は政権に影響力を持つ人物を望むケースが多い」と話す。豪印にもバイデン氏とつながりが深い大使を送る。豪州にはオバマ政権で駐日大使を務めたキャロライン・ケネディ氏を指名した。20年大統領選でバイデン氏を支持し、資金面でも支えた。ケネディ元大統領の長女という名門の出身で、なお民主党内に影響力を維持する。豪州は日米印と構成する「Quad(クアッド)」に加え、米英との安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」の一角。いずれも中国抑止を主眼にバイデン政権が21年に立ち上げた集まりで、豪州の戦略的価値の高さを裏付ける。日米に張るケネディ氏の人脈も使い、円滑に調整する態勢を整える」
豪州が、対中関係で強硬姿勢に転じたのは、中国の対豪経済制裁と「戦狼外交」によるあからさまな「侮辱」にあった。豪州を属国扱いする文書を手渡し、「イエスかノーか」を迫ったのである。これが、AUKUSという軍事同盟を生んだきっかけである。豪州は、「台湾防衛」を広言するほど、中国へ敵意を見せている。
豪州大使のケネディ氏は、駐日大使を務めた人物である。日豪関係の親密さを象徴するような人事である。菅前首相とは昵懇の関係にある。菅氏が首相としての訪米時に、自宅へ招待するほどで日米関係の良好さを見せている。そのケネディ氏が駐豪大使である。クアッドは一層強いつながりに発展するであろう。
(4)「インド大使にはロサンゼルス市長で閣僚への起用も取り沙汰されたエリック・ガルセッティ氏を充てる。米メディアによると、大統領選で「個人的に親しい友人」であるバイデン氏の支持を表明し、陣営を取り仕切った幹部の一人とされる。高校時代に日本に留学した経験もある」
インド大使は、バイデン政権で閣僚起用も話題になった人物である。バイデン氏と親しい関係にある。
(5)「中国と韓国の大使にはプロの外交官を配置する。「最大の競争相手」と位置づける中国にニコラス・バーンズ元国務次官を充てた。必ずしも中国の専門家ではないものの、30年近い外交官生活で携わってきた旧ソ連や中東、欧州は時の最重要テーマの一つだった。バーンズ氏は党派を超えて要職に起用され続けた。民主党のクリントン政権で国務省報道官、共和党のブッシュ政権(第43代)で同省ナンバー3の国務次官などを歴任した。21年12月の上院本会議で与野党議員の賛成で承認されたバーンズ氏の人事は、超党派で中国に対峙するメッセージになる。駐韓国大使には対北朝鮮制裁調整官を務めたフィリップ・ゴールドバーグ氏(現コロンビア大使)が内定した。米メディアが報じた。クーパー氏は「当面は朝鮮半島情勢に精通する実務者を求めている表れだろう」とみる」
中韓の米国大使は、専門外交官である。それぞれ米国との関係を覗わせる人事である。バイデン政権が、中韓をどのように扱っているかを示している。韓国は、明らかに米国の「外様大名」に落ちたことを示している。二股外交による信用失墜が理由であろう。





