昨年、過去最高の業績となった韓国「半導体2トップ」のサムスン電子とSKハイニックスが、今年初めて「売上高100兆ウォン~50兆ウォン」に挑戦するという。「好事魔多し」の喩えの通り、世界的な金利引上げムードと半導体の過剰生産が重なり、これから下り坂に入るという予測が出てきた。要注意である。
半導体は韓国輸出を支えているだけに、風が止んだら大きな影響を受ける。今の韓国には、そういう警戒感はゼロである。半導体好景気で浮き足立っているのだ。
『中央日報』(1月29日付)は、「韓国半導体の過去最高業績を築いたサムスンとハイニックス」と題する記事を掲載した。
関連業界によると、昨年のサムスン電子半導体部門の売上高は94兆1600億ウォン(約9兆円)と、半導体スーパー好況期だった2018年(86兆2900億ウォン)を上回った。SKハイニックスも昨年の売上高が42兆9978億ウォンと、過去最高を更新した。新型コロナパンデミックとサプライチェーン問題にもかかわらず、昨年1~9月の半導体価格上昇と非対面情報技術(IT)の需要増加が業績上昇につながった。
(1)「サムスン電子メモリー事業部のハン・ジンマン副社長は、2メモリー半導体価格の反騰時点について、「過去と比べて業況サイクルの変動幅と周期が縮小している傾向は確実に感知される」とし、「半導体の在庫も健全な水準が続き、市場は安定化していると考えられる」と話した。半導体価格の上昇時点が予想より前倒しになるという金融投資業界の見通しと一致する。これに関連しユアンタ証券のイ・ジェユン研究員は、「メモリー半導体価格の反騰時点が今年7~9月期から4~6月期に早まり、サムスン電子の業績成長の可視性が高まるだろう」と予想した」
ここでは、今後さらに半導体価格の上昇があると見ている。だが、後述の世界的半導体市況の予測によれば、今年後半から値下がりリスクが高まるとしている。サムスンは、かなりの楽観論である。危険だ。
(2)「SKハイニックスも28日、カンファレンスコールで自信を表した。SKハイニックスの盧鐘元(ノ・ジョンウォン)社長は、「今年のDRAM需要成長率は10%後半と予想している」とし、「当社のDRAM出荷量も市場水準になるだろう」と述べた。続いて「NAND型フラッシュメモリー市場の需要成長率は30%と予想する」とし「SKハイニックスは昨年に続いて今年も市場増加率を上回る出荷量の増加が見込まれる」と話した」
ハイニックスも、サムスンと同様にさらなる市況高騰を見込んでいる。
(3)「だが、変動要因は少なくない。何よりもグローバル経済の不確実性が高まっている。実際、サムスンのハン・ジンマン副社長は「部品供給イシュー緩和速度、コロナ変異株の持続など需要側に変動リスクが持続的に存在するだけに、現在としては年間成長ガイダンスを提供するのが難しい点を了解してほしい」と述べた。IBK投資証券のキム・ウンホ研究員も「今年のDRAM業況は予想より複雑に流れるとみている」とし「1~3月期の価格下落が予想より低いと予想されるが、これは4-6月期以降の価格の流れにマイナスの変数になるかもしれない」と述べた」
今年1~3月期に半導体価格の軟弱地合い予想も出てきた。それが、4~6月以降の市況にはっきり現れる懸念も指摘されている。強気一点張りでないことに注目すべきであろう。その点を総括的に指摘しているのが、次の記事である。
英誌『エコノミスト』(1月29日号)は、「半導体、危うい国ぐるみ増産」と題する記事を掲載した。
(4)「米調査会社ICインサイツの推計では、世界半導体業界全体の21年の設備投資額は前年比34%増で、17年以来の大きな伸びとなった。この投資の急増ぶりは、過去1年にわたり半導体不足に苦しんできた顧客企業にとって歓迎すべき知らせだ。だが、半導体業界にとっては、これは過去に何度も繰り返されてきたおなじみのパターンにすぎない。1月26日にはインテルが、翌日にはサムスンが業績を発表し、いずれも大幅に売上高を伸ばした。売上高拡大が生産能力の拡大を後押ししているが、半導体工場の建設には2年以上かかり、完成を待つ間に需要が減ってしまうことがある。そのため、こうした好況が一気に消え去ることも少なくない」
世界半導体業界全体の21年の設備投資額は、前年比34%増である。17年以来の大きな伸びとなったことは、今後の過剰生産を予告している。半導体増設完了は23年以降になるが、完成を待たずに需要低下のケースを想定する必要があろう。
(5)「半導体事業は1950年代の草創期から、過剰投資と過少投資を何度も繰り返してきたと英調査会社フューチャー・ホライゾンズのアナリスト、マルコム・ペン氏は指摘する。過去を参考にするなら、現在は供給過剰に向かっていることになる。問題は、いつ過剰に陥るのか、だ。多くのアナリストは、スマートフォンに対する需要は、特に世界最大のスマホ市場である中国を中心に近く落ち着き始めるとみている。新型コロナウイルス感染拡大によるロックダウン(都市封鎖)に伴い需要が急拡大したパソコンの販売にも陰りが見えてきたようだ、と米調査会社ガートナーのアラン・プリーストリー氏は指摘する」
現状は、半導体の過剰生産過程にある。スマホ需要は落ち着きを見せ始めた。パソコンの販売にも陰りが見えてきたようだ。
(6)「米金融大手モルガン・スタンレーの調査では、半導体を購入する企業の55%が半導体の供給不足という理由も手伝って二重発注していることが判明、このことが需要をさらに拡大させている。インフレ率が上昇し、近々金利が引き上げられると経済成長にブレーキがかかる恐れがあり、その場合、半導体需要にも影響は及ぶ。ペン氏は、今年下半期か23年の早い段階に半導体のサイクルは供給過剰に転じるとみる」
半導体購入企業の55%が、二重発注しているという。半導体需給が緩和の兆候を見せれば、二重発注は取消される。その時期は、今年下半期か来年早々と見られるという。韓国半導体2社は昨年、過去最高利益を上げた。今年以降、その継続は不可能と見られる。