勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2022年02月

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    文政権とは真逆の発言が飛び出した。韓国野党「国民の党」大統領選候補、安哲秀(アン・チョルス)氏が1月28日、ソウルでの記者会見で、中国の軍事的挑発に対して断固として対応すること。日本との関係について「内政を外交に利用しない」と述べ、日韓共同宣言をもとに未来志向的な協力関係を築く考えを示した。文政権5年間で、「反日発言」に慣されてきた日本としては、「本当か」と問い返したい感じである。

     

    『大紀元』(1月31日付)は、「韓国大統領選野党候補、対中強硬姿勢示す 日本とは関係改善の意向」と題する記事を掲載した。

     

    安氏は、韓国プレスセンターで開かれたソウル外信記者クラブ懇談会で、対中外交に対する「レッドライン」を制度化し、中国の軍事的な挑発行為に「迅速かつ原則をもって対応」すると話した。

     


    (1)「2017年、文在寅政権が国内に米軍の「サード(高高度防衛ミサイルシステム、THAAD)」を設置したことで中国が強く反発。報復的に訪韓旅行停止や韓国製品のボイコット運動が起こり、韓国は経済的な損失を被った。この後、慎重姿勢を取る文政権は対中路線三原則(1.韓国にTHAADを追加配備しない、2.米国のミサイル防衛網に入らない、3.日米と軍事同盟を構築しない)を定めた。安氏はこれを「非合理的であるだけでなく、韓国の尊厳と自主性を害する非常に誤った政策」だと批判した。また、中国が強硬措置に出た場合に「経済的な損失が出ても甘んじなければならない」と身構える必要があることを強調した」

     

    ようやく、気骨ある発言を聞くことができた。私が、「韓国かくあるべし」と主張してきた線と同じである。文政権は、自衛権という国家固有の権利を中国に差し出す屈辱的な行動をしてきた。つまり、次のような「三不政策」である。

    1)韓国にTHAADを追加配備しない

    2)米国のミサイル防衛網に入らない

    3)日米と軍事同盟を構築しない

     

    文政権は、こうした国家固有の権利を中国に委ねるという、あってはならない行動をとった。これが、どれだけ韓国の「国格」を下げたか。以後、中国は韓国へ二股外交を迫り「脅迫」し続けている。

     

    (2)「安氏は同日、韓国国内の反日感情を外交的に利用してきた既存の政治勢力を批判した。歴史問題と日韓共同宣言に触れ、関係改善を図る考えを示した。安氏は、現政権で日韓関係が悪化したことについて「韓国外交の最大の問題点は国内政治で利益を得るために、外交を活用した点」と指摘。今までの政権について「執権勢力が政治的に小さな利益を得る代わりに、国際的な信頼を失い、国益を損なわせた」と述べた。加えて「絶対に国内政治のために(外交を)利用しない」と強調した」

     

    反日外交も酷かった。文氏は反日を煽って、国内保守派に「親日派」のレッテルを貼り排除しようとしたのである。これにより、進歩派政権を継続させようという狙いを込めていた。まさしく、外交を内政に利用しようとした。

     

    (3)「日本との関係改善について安氏は、「ツートラックアプローチ」により未来志向的な協力関係と歴史問題を分離することを述べた。1998年に日韓首脳によって採択された「21世紀の新しい日韓パートナーシップ共同宣言(小渕ー金大中宣言)」に基づき、歴史認識と経済協力を重視するとした。元徴用工(旧朝鮮半島出身労働者)訴訟について安氏は、日本企業の資産を現金化する手続きを「執行保留すべき」だと主張。一連の課題については日本との対話を重視する姿勢を示した」

     

    日本との融和策をここまで発言することは、勇気が要ることであろう。大統領候補として、一票でも支持を得たい候補者心理からすれば、目先の利益を離れ「反日風土」の韓国に一石を投じたい思いであろう。有権者に、このような主張を聞き入れられる見通しがあったのだろうか。

     

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    現代自動車は2012年、中国市場で第3位のシェアを得ていた時代がある。それが、21年には12位へと大きく後退した。トヨタとホンダは、順調にシェア・アップに成功。昨年、トヨタは3位、ホンダが4位と健闘している。

     

    何が、日韓自動車の明暗を分けたのか。中古車価格の違いが、理由になっている。ソナタ(現代自)の車齢3年の価格は、新車の50%。トヨタカムリは78%、ホンダアコードは75%である。これだけの差があれば、中国の消費者は、日本車を選んで当然であろう。

     

    『朝鮮日報』(1月31日付)は、「中国自動車市場、THAAD以降12位に沈んだ現代自 尖閣紛争があっても3位のトヨタ」と題する記事を掲載した。

     

    昨年、中国で現代・起亜自動車の販売台数は53万台で、シェアは2.7%にとどまった。2009年に中国市場全体で2位にまで躍進した現代自は昨年、12位まで後退した。現代自グループが滑り落ちる間、日本のトヨタはフォルクスワーゲン、ゼネラル・モーターズ(GM)に次ぐ3位に浮上した。16年の4.5%(7位)だったシェアが昨年には約2倍の8.4%まで上昇した。同じ期間にホンダもシェアが5.4%から7.8%に伸び、4位に入った。

     

    (1)「中国人の反日感情は植民地支配など歴史的問題で反韓感情よりも根深いとされている。日本の自動車メーカーは12年、尖閣諸島(中国名・釣魚島)を巡る領有権争いで韓国に対する「THAAD報復」と似た政治的報復を受けた。しかし、その後の中国市場で現代自がどんどん押される一方、日本車が進撃できたのがなぜか。専門家は「THAAD問題だけでなく、結局は製品の競争力と戦略で負けたのだ」と分析した」

     


    中国車は過去、価格が安いだけと認識されていたが、今や性能を向上させ、コストパフォーマンスを備えたと評価されるようになった。所得水準が上昇して急成長した中国のスポーツタイプ多目的車(SUV)市場では、中国の現地メーカーが先行して新車を投入するなど、積極的に対応している。現代自は、こういう面で立遅れた。それに、「日独車」は高級車というイメージが出来上がっているが、現代自にはこういうイメージから脱落しており、国産車と正面から競争せざるを得ないと悩みを抱えている。

     

    (2)「中古車価格が安いことも、消費者が現代自にそっぽを向く理由だ。ソナタの車齢3年の中古車は価格が新車の50%だが、トヨタカムリは78%、ホンダアコードは75%だ。現代自に精通した関係者は「中国で現代車は発売から半年が過ぎると値引き販売されるという認識が固まっている」と話した。また、現代自が当初掌握していた中低価格車の市場は中国の現地ブランドに食われている。現地ブランド首位の吉利汽車は「帝豪」という準中型セダンをエラントラ(現代自)よりも500万ウォン以上安い1310万~1670万ウォンで販売している。帝豪は洗練されたデザインと高級感ある内装、中国人が常用する地図アプリを搭載し、準中型セダンのトップ10入りを果たした」

     

    現代車は、韓国の部品メーカーと一緒に中国へ進出した関係もあり、部品コストが現地企業より約3割も割高になっているという。これが、価格戦略にブレーキとなっている。さらに、中古車価格が日本車に比べて4分の1も安いことがマイナス要因になっている。

     


    (3)「韓国部品メーカーは、現代自だけに依存したので競争力が低下し、現代自の部品調達コストもトヨタやホンダなど競合各社より割高になった。竜仁大中国経営研究所長を務める朴勝賛(パク・スンチャン)教授は、「現代自は後から現地部品メーカーからの調達を増やしたが、現地部品メーカーは中国メーカーへの納品価格より30%割高で供給したと聞いている。現代自は中国メーカーほど安く車を作ることができなかった」と指摘した。中国経済金融研究所の全炳瑞(チョン・ビョンソ)所長は、「現代自は中国の1人当たり国民総生産(GDP)が5000~6000ドル水準だった当時は順調だった。しかし、1万ドル(19年)を超えた時代に対応する新たな戦略がなかった」と分析し」

     

    下線部は手厳しい批判である。2012年当時の中国市場感覚で、車づくりをしてきた欠陥を突かれた感じだ。現代車は、中国を撤退しインドネシアでEV(電気自動車)専門工場を築こうとしている。インドネシアは、日本車のメッカである。そこで、日本車との直接的な競合を避け、EVに特化して生残りを図ろうとしている。

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