勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2022年02月

    a0001_000088_m
       

    文大統領は、この上ない不名誉な理由で科学学会から批判されている。「研究の自由」を奪ったというもの。進歩派に属する文政権が、学問の生命線である研究の自由を圧迫したとすれば、一大事である。リベラル派であるべき韓国進歩派が、実態は専制派であったのだ。

     

    『WOW!KOREA』(2月25日付)は、「科学技術界・学会など1250人が『尹錫悦候補支持宣言』 文政権の5年間 科学技術が崩壊」と題する記事を掲載した。

     

    韓国では、科学技術界と学会・政府出捐(しゅつえん)研究機関長経験者など1250人が25日、野党第一党“国民の力”のユン・ソギョル(尹錫悦)次期大統領選候補への支持を公式に宣言した。

     


    (1)「彼らはこの日、国会疎通館で記者会見を開き「ユン候補が検事総長在職当時、強い権力に屈服することなく脱原発の不義に立ち向かって憲法と法治を守ろうとした」とし「科学技術中心の国政運営と国民疎通をこれまで強調してきたユン候補こそ、大韓民国を再設計する適任者だ」と伝えた。この日の記者会見には、テ・ボムソク元国立ハンギョン(韓京)大学総長、ノ・ソッキュン元ヨンナム(嶺南)大学総長、チョン・ヨンオク メディアコンテンツ学術連合会長、ハ・ジェジュ元韓国原子力研究院長をはじめとした7人が、1250人の科学技術関係者を代表して支持宣言文を発表した」

     

    政治と無縁に見える研究者が、文政権による科学政策の矛楯に反対して、最大野党ユン候補の支持声明を発表した。1250人もの人々が起ちあがった理由は、文政権の脱原発が科学的合理性を無視して一方的に推進されたことへの大きな反発だ。福島原発事故の被害を過大に取り上げ、政治的反対に利用したもの。そこには、「学問の自由」を抹殺する強権さを見せつけてもいた。

     


    韓国原子力学会が、福島原発事故の被害を科学的に究明すると、市民団体は学会発表の席に乗り込み謝罪させるという「暴力的行為」を繰り広げた。そのバックに、文政権が控えており、暴力的行為を排除することもなかった。文政権は、反原発市民団体を唆してきたのである。

     

    (2)「彼らは宣言文を通して「ムン・ジェイン(文在寅)政権の5年間、科学技術は無惨に崩壊し、科学技術人たちは苦痛の時間を過ごした」とし「専門性が徹底して無視されたコード人事が国政運営を左右し、政治が科学者たちの上に君臨した」と批判した。つづけて、「科学技術さえ積弊の審判に遭い、出捐機関・科学技術部(省)の関連機関の長たちは任期を全うできず続々と交代した」とし、「法と制度を踏みにじった脱原発・カーボンニュートラル(炭素中立)計画・国民統制手段に転落したK政治防疫、さらには韓国型発射体『ヌリ号』の開発に献身的であった科学者たちさえも大統領の『看板』とし使われるなど、科学技術人たちの血のにじんだ成果は政権の成果に利用された」と付け加えた」



    このパラグラフで指摘されている点は、文政権の侵した深刻な学問研究への圧力である。文氏は、科学研究を政治的に利用するという「介入」を行なってきたのだ。これは、進歩派政権の継続を可能にさせるべく、科学を政治の誇大宣伝に利用しようとしたことにほかならない。文氏は、何ごとも「針小棒大」に取り上げる人物である。

     

    (3)「また、「ユン候補が提示した自由で創意的な研究環境づくり・デジタル融合経済推進の未来ビジョン・効率的デジタルプラットフォーム政府などの公約は、未来の大韓民国が備えるべき最も合理的な政府の構想だ」とし「ユン候補の当選と次期政権の成功的政策推進のため、積極的に協力していく」と明らかにした。“国民の力”のキム・ヨンシク議員は「きょうのこの支持宣言に参加した方々は、わが国を代表する科学技術界の碩学および最高の知性たちだ」とし「この方々がユン候補を公式に支持することを、非常に意義深く思う」と語った。つづけて、「国民の力は大韓民国の未来のために科学技術を国政運営の中心に立て、崩壊した科学技術人たちの誇りを回復し、国民との疎通もまた強化していく」と強調した」

     

    ユン氏は、あらゆる点で文政権から政治迫害を受けた身である。身分保障されている検察総長ポストにも関わらず、文政権は強引に辞任させようと猛烈な圧力をかけ、ついに辞任させたのである。文大統領は、自らの権力を使って司法である検察トップを屈服させたもの。酷い政権である。これこそ、文政権の欺瞞性である。

    a0001_001078_m
       

    2月24日未明に始まったロシアの、ウクライナ侵攻作戦はロシア軍優位の下で進んでいる。ソ連軍は、首都キエフまで至近距離に迫っている。ロシアの陸上兵力は、全体で約85万人に対し、ウクライナ兵力は4分の1以下の約20万人に過ぎない。ウクライナの劣勢は明らかだ。ウクライナのゼレンスキー大統領は25日、これ以上の犠牲を出さないためにもプーチン氏との交渉を希望すると語った。

     

    ウクライナ大統領府のポドリャク顧問は25日、ロイターに対しウクライナは平和を望んでおり、北大西洋条約機構(NATO)に関して中立な立場などについてロシアと対話する用意があると述べた。

     


    一方、中国の習近平国家主席は25日、ロシアのプーチン大統領と電話会談し、ウクライナ危機について、ロシアがウクライナと対話を通じて解決を目指すことを支持すると述べた。プーチン大統領は、ウクライナとハイレベル協議を開催する意向があると述べたもの。中国国営テレビが伝えた。

     

    こうして、ロシアのウクライナ侵攻2日目で双方が、交渉のテーブルに着く可能性が出て来た。これ以上の犠牲者を出さないためにも、早急な「対話」実現が待たれる。プーチン氏は、最終的にウクライナへ何を要求するのか。

     


    『毎日新聞 電子版』(2月25日付)は、「ロシアの狙いは『斬首作戦』か、徹底抗戦のウクライナ 支援求める」と題する記事を掲載した。

     

    ウクライナに侵攻したロシアは3方向から進撃し、一部部隊がウクライナの首都キエフに侵攻を始めた。作戦の狙いはどこにあるのか。ロシア軍によるウクライナへの侵攻が始まった24日、米国防総省高官は、ロシアのプーチン大統領の目的について「ウクライナの現政権を排除し、独自の統治方法を導入することだ」と分析。キエフを制圧し、政権トップをすげかえる「斬首作戦」を進めているとの見方を示した。

     

    (1)「プーチン氏は24日の演説で、作戦の目的を「ウクライナの非武装化」と説明。ペスコフ露大統領報道官も同日、「これはウクライナが最近、外国のおかげで増強してきた軍事的な潜在力を中和することだ」と記者団に語り、「この目的は達成されるだろう」と述べた。さらにプーチン氏はウクライナ政権の「脱ナチズム化」にも言及。2014年の親露派政権崩壊後にウクライナに成立した政権を「ナチスト」と呼んでおり、ゼレンスキー政権を武力で崩壊させることを狙っているとみられる」

     


    ロシアは、ウクライナに傀儡政権をつくる目的である。選挙で選ばれた政権でなければ正統性を持ち得ない。そういう常識も分らないのであれば、ウクライナ問題は簡単に片付かないであろう。ロシアにとって、新たな難題を抱え込むことになる。

     

    (2)「米国防総省も、ロシア軍の最終目標をキエフの制圧とみている。キエフはベラルーシとの国境から約100キロしか離れておらず、24日にはキエフ郊外の空港周辺にロシア軍の空挺(くうてい)部隊が到着。25日も激しい戦闘を続け、キエフへの侵攻を始めた。一方、ウクライナ軍は各地で激しい抵抗を繰り広げている。ザルジヌイ総司令官は24日、「ロシア軍の電撃戦は失敗した」と侵攻を食い止めていることを強調。ゼレンスキー大統領も初日の戦況を「膠着(こうちゃく)状態」と表現した」

     

    ロシア軍は、キエフまで20キロと迫っている。ウクライナが、交渉のテーブルに着く気持ちに傾いたと見られる。

     


    (3)「ただ、ウクライナ軍がどこまでロシア軍の進撃を食い止められるかは未知数だ。ウクライナは近年、米欧から軍事援助を受けてきたが、供与された武器は歩兵の携帯型の対戦車砲や対空ミサイルなどが中心。近代化され、航空戦力も豊富なロシア軍が戦力で勝っているのは明らかだ。ゼレンスキー氏は25日、「我々は孤独の中で国を守っている。強力な戦力を持つ世界(の国々)は遠くから見守っているだけだ」と国際社会に制裁にとどまらない支援を呼びかけた。一方で「我々は自分たちの土地で自らの正義のために戦っている。我々の意志をくじくことはできない」と述べ、徹底抗戦する意志も改めて表明した」

     

    ゼレンスキー氏は、徹底抗戦の姿勢を見せながらも「交渉」という余地も残している。

     


    (4)「米政府高官は、「第二次世界大戦以来、このような形の国家対国家の戦争を見たことがない。我々の予想している展開になれば、多くの血が流れる。今後、欧州の安全保障に長期間の重大な影響を与えるだろう」と語った」

     

    キエフの市街戦になれば、ロシア軍は長期間の戦いと相当の犠牲者を覚悟しなければならない。ウクライナが、交渉の意思がある以上、ロシアがそれに応じるのは「渡りに船」である。

    a0960_008567_m
       


    韓国は、ロシア軍のウクライナ侵攻に対する経済制裁について混迷している。ロシアへの抗議声明を出したものの、具体的制裁案がないのだ。韓国はかつて、朝鮮戦争で北朝鮮からの侵略を受け、国連軍の支援を受けた国である。その韓国が、ロシアを恐れて西側諸国と共同歩調を取って独自制裁できないのだ。

     

    『中央日報』(2月25日付)は、「『国際社会の制裁に参加』と言いながら対露『独自制裁』では線ひいた韓国政府」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアのウクライナ侵攻が現実化した中で韓国政府が24日、国際社会の制裁に参加すると明らかにした。だが、その一方で独自制裁はしないと線を引く自己矛盾的な立場を見せた。青瓦台(チョンワデ、大統領府)はこの日午後、文在寅(ムン・ジェイン)大統領がウクライナ事態に関連した徐薫(ソ・フン)国家安保室長の報告を受けて「国際社会の責任ある一員として経済制裁を含む国際社会の取り組みに支持を送り、これに参加していく」と述べたと伝えた。だが、外交部当局者は直後に記者団と会い、「一部国家の場合は金融制裁を含む(対ロシア)独自制裁を考慮しているが、我々はこれを考慮していない」と説明した。

     


    (1)「ロシアに対する非軍事的対応としては制裁を科すことが最も強力な方案だ。ロシアが常任理事国として拒否権を行使する国連安全保障理事会は動くことができないので、各国が独自制裁に出るのが事実上唯一の方法だ。国際社会の制裁に参加するとしながらも独自制裁はしないという政府の立場は辻褄が合わないとの指摘があるのはこのためだ。これについて外交部当局者は「韓国は国際経済上の地位もあり、積極的に制裁に参加するというメッセージを出すことだけでも大きな意味がある」と話した。「政府が参加する制裁措置に対しては関連部署で検討をしている。また、このような制裁措置によって経済と韓国企業に発生しうる問題と被害を最小化する方法もあわせて模索し、必要な支援をしていくという立場」としながらだ」。

     

    下線部のように、韓国外交部には誠意の一片も感じられない「口先外交」そのものである。朝鮮戦争で、共産主義の蹂躙を受けた韓国政府が、取るべき態度であるまい。

     


    (2)「2014年クリミア半島事態とは違い、今回のウクライナ事態は直接的な軍事力を動員した一方的な現象変更の試みであり、事実上の「戦争」に該当する。青瓦台国家安保会議(NSC)常任委員会もこの日午後の会議の後、「ロシアが国連憲章をはじめとする国際法に違反した」と明らかにした。その一方で独自制裁とは努めて距離を置こうとする韓国政府の態度を巡り、米国とロシアという二兎を追おうとして、かえって政府が強調してきた「国際社会の責任ある一員」とは異なる姿に映りかねないとの憂慮も出ている。また、いくら内容の側面では米国が主導する制裁を忠実に履行するのが狙いだとしても、独自制裁の発表という形式を選んで自ら拘束力を付与することとは対米メッセージという次元において、その重みに違いが生じざるを得ない」

     

    韓国は、朝鮮李朝末期の外交も「日本・中国・ロシア」の三ヶ国に別れて統一できなかった。今回も「二股外交」を行なおうとしている。朝鮮民族の哀しいまでの「強者依存症」が出ている。民族特性と言えばそれまでだが、土壇場までソロバンを弾いている。正義はないのだ。

     


    (3)「実際、リンダ・トーマス=グリーンフィールド国連駐在米国大使は23日(現地時間)、国連総会の演説でロシアのウクライナ侵攻への対応に関連して「折衷案はない」と強調した。「(ロシアとウクライナの)双方に緊張を解くよう求めることは、ロシアを黙認することにすぎない」としたからだ。ウクライナの主権と領土保全を支持しながら、ロシアに対する独自制裁までしないという韓国の立場には、痛烈な指摘と聞こえる部分だ。ウクライナの首都キエフがミサイル攻撃を受けているにもかかわらず、韓国政府が相変らず現状況を「全面戦争」と規定しないことに対しても批判が提起されている」

     

    下線部は、直接的には中国を批判している。中国は、ロシアとウクライナの双方に深い関係を持つ。そうならば、和解仲介に出ても良さそうだが出ないで、「洞が峠」を決め込んでいる。双方に「いい顔」をしようという狙いだ。韓国も、この線を狙っているのだろう。

     

    (4)「韓国外交部は、ロシア侵攻直前のこの日午前、資料を通じて制裁参加の意向を明らかにしながらも前提条件としてロシアの「全面戦争」敢行に言及した。だが、今まさにロシアが全面戦争に着手したというのに、政府は状況規定自体を避けた。外交部当局者は、「全面戦争がどのような状況であるかに対して必ずしも定義する必要はないと考える」とし、「全面戦争状況になれば国際社会とともに制裁措置に参加するという意向を明らかにしたことが重要だ」と話した。「制裁参加の条件で全面戦争に言及しながら、なぜ現状況が全面戦争かどうか判断を下さないのか」という質問に、「ウラジーミル・プーチン大統領の特別軍事作戦決定発表に続く一連の状況は『武力侵攻』が発生した状況とみている」と述べるにとどまった」

     

    韓国の本心は、対ロ制裁をしないで「口先メッセージ」に止めようとしている。米国は、こういうずる賢い韓国外交を見て、どのように判断するだろうか。韓国は、中国の台湾侵攻の際も同様の姿勢であろう。米国は、この韓国と同盟を結んでいる。相手を間違えた感じが強いのだ。 

     

    a0001_000268_m
       

    韓国は、米韓軍事同盟を結びながら「二股外交」を平然と行なっている。ロシアによるウクライナへの軍事圧力にも無関心を通してきた。だが、ロシアはついに軍事侵攻に及んで、これまでの「無関心」を脱し、西側の経済制裁に加わることになった。それも、「嫌々ながら」という姿勢である。

     

    文政権が、経済制裁に慎重な姿勢であった理由は、ロシアから経済問題で不利益を被ることを警戒してきたと説明されている。だが、これは「言い訳」に過ぎない。西側諸国は、自国への跳ね返りがあっても覚悟の上での制裁参加である。韓国は、「親中ロ」という外交路線を堅持しているので、これが壁になっていたことに違いない。

     


    『中央日報』(2月24日付)は、「米国の要求が強硬だったか、半日で『対露制裁の可能性もある』と立場変えた韓国外交部」と題する記事を掲載した。

     

    新北方政策などを理由に米国主導の対ロシア制裁に参加することは困難としていた文在寅(ムン・ジェイン)政府が半日で、「ロシアが全面戦争を敢行した場合、韓国も制裁に参加せざるを得ない」と立場を変えた。ただし、明確に「制裁をする」というよりは、避けられないことを強調することに傍点を打った。

     

    (1)「韓国外交部は24日午前11時22分、出入記者団に携帯メールを送り、「国際社会の度重なる警告にもかかわらず、ロシアが何らかの形で全面戦争を敢行した場合、韓国政府としても輸出統制など制裁に賛同せざるを得ないことは明確にする」と立場を表明した。予告になかった公示だった。わずか半日前の22日(現地時間)、外交部当局者は、フランス・パリの駐在特派員と会い、韓国政府が独自制裁を加える可能性を問われると、ロシアが新北方政策の核心国家のため「現実的に難しいと思う」とし、「制裁に参加しても経済的被害を最小化しなければならないが、容易ではない」と述べた。事実上、制裁に参加できないという立場だった」

     


    韓国は、ウクライナが不法な侵攻を受けることへの同情よりも、ロシアからの経済的利益を手放したくないという、極めてエゴ丸出しの姿勢である。それが22日の外交部の公式態度であった。EU諸国に聞かれたら顔から火が出るほど恥ずかしい姿勢であったのだ。韓国は、全てが経済的利益追求である。日韓関係がこじれているのも、韓国の「賠償金」欲しさに起因することを改めて思い起こさせる。韓国は、金、金である。

     

    (2)「このような立場からの変更は結局、米国の強い要求のためと見られる。ホワイトハウス高官は22日(現地時間)、制裁について「我々は欧州連合(EU)、英国、カナダ、日本、オーストラリアなど同盟国およびパートナーと協議し、一日足らずで最初の制裁を発表した」と説明した。外信はシンガポールと台湾も制裁に参加すると報じた。米国の主要同盟国の韓国だけが抜けていた。同盟及び友邦との連合戦線の形成が、米国が構想する「対露スクラム」の核心だが、安保同盟の韓国の不在は亀裂と認識されざるを得ない状況だった。特に米国が韓国政府に代理制裁賛同関連協議を要請したのは、ここ数日間のことではないという。制裁構想初期から協議してきたということだ」

    ロシアが、軍事行動に踏み切っている以上、西側諸国がこれに制裁を加えて、ブレーキを掛けさせるのは当然の権利である。韓国は、この権利行使へ「嫌々ながらの参加意思表明」である。文政権をここまで優柔不断な姿勢にさせているのは、「親中ロ」という外交姿勢がもたらしているに違いない。

     


    (3)「しかし、政府は消極的立場で一貫していた。22日、ウクライナ事態と関連した公式の立場を表明し、「ウクライナの緊張が高まっている状況について深刻な懸念を表明する」(外交部報道官の声明)と言うに留めた。「ウクライナの状況」を懸念しただけで、国連憲章違反と見なすことのできるロシアの軍事的措置については糾弾や遺憾の表明さえしなかった。外交部当局者は、制裁への賛同に関する相次ぐ質問にも「協議中」という答えばかりオウムのように繰り返した。翌日、米国がこれをロシアの「侵攻」と規定した後、再び立場を問い合わせたが、外交部は「既存の立場と変わりない」とした」

     

    韓国のこういう煮え切らない態度は、米同盟国として疑問符のつくものである。文政権が、残り任期3ヶ月足らずで見せたこういう「洞が峠」的姿勢は、今後の外交史で語り草になろう。決断できない文在寅を象徴している。


    日本に対して高姿勢を貫いた文氏は、思想信条が「反日米」であるから悩むことはなかった。自らの信条に従って暴走できたのでる。だが、文氏の「親中ロ」心情からいって、ロシアへの経済制裁は「断腸の思い」なのだ。文氏は個人的な心情に囚われ、まともな外交ができない人間である。 

     

    a0960_008707_m
       

    中国が、年金原資の確保対策で懸案の定年延長1年に踏み切る。と言っても全国一律ではない。江蘇省で3月からの実施である。

     

    日本では、定年延長について歓迎ムードである。現役として働くことが生きがいであるからだ。中国では、定年延長で年金受給が遅れて「損する」という認識である。若者も反対である。就職難が解決しないという理由だ。就職難の中国だけに、早く就職したいという気持ちが強くなるのだ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(2月24日付)は、「中国、3月から定年延長 第1弾は江蘇省 少子高齢対策」と題する記事を掲載した。

     

    中国で3月、定年退職の年齢引き上げが始まる。第1弾として沿岸部の江蘇省が着手する。本人の申請が前提で、延長期間は最短で1年だ。働き手を増やし社会保障負担を抑える狙いだが、市民には「年金の受け取り開始が遅れるだけだ」との反発も多い。当局は本人の意向を重視する形で、懸念を払拭したい考えだ。

     


    (1)「中国の退職年齢は国務院(政府)の法規で、原則として男性が60歳、女性幹部が55歳、女性従業員が50歳と決まっている。江蘇省は国務院の法規変更に先立ち、独自に定年退職の延長制度を設ける。江蘇省は上海市に隣接し、古くから製造業などが発展した地域だ。2020年末時点の人口は8477万人で、中国全体の6%を占める。江蘇省政府の通知によると、基礎年金の受給額は同省都市部の平均月給や本人の待遇、社会保険料の納付期間で決まる。定年退職の時期を引き延ばせば、勤務年数とともに納付期間も長くなり、退職後に月々受け取れる年金が増える公算が大きい」

     

    強権政治の中国が、不思議にも定年延長だけは手を焼いている。国民が、「銭計算」になるとシビアになり、鋭い政府追及姿勢が予測される結果であろう。「平均寿命延長」に見合った、定年延長というほど神経を使っている。

     


    「定年延長で年金が貰えなくなるから損」という認識が不思議である。給料の方が年金額より上であろうから、働いた分は得になるはずだ。だが、何も働かずに年金を受給する方が幸せなのだ。中国人の勤労観は、日本人と全く異なっている。

     

    (2)「年齢の引き上げは一律でない。定年退職の延期は本人の申請と勤め先の同意が前提だ。勤務延長の期間が1年以上であることを条件に、個人の判断に委ねる。退職年齢引き上げへの反発が少なくないためだ。中高年層では「保険料の支払期間が延びるだけで、年金の受取総額が減る」との懸念が消えない。祖父母が共働きの夫婦にかわって孫の面倒をみる現代中国の子育てスタイルも、定年退職の延長議論を難しくしている。江蘇省は退職年齢に到達した働き手の自主判断を尊重することで、制度導入のハードルを引き下げた格好だ」

     

    祖父母は、定年後に孫の世話が待っている。だから、定年を延長されると孫の面倒が見られなくなるので反対、という人もいる。そういう人は、定年を延長しなくてもいいであろう。そこは、個人の選択である。中国は、家族のつながりが深く、孫を保育園に入れるという習慣が一般化していないのか。核家族という概念とほど遠いようだ。

     

    (3)「定年退職を遅らせる人がどのくらい申し出てくるのか予測が難しい。働き手の確保や社会保障負担の抑制といった効果も想定ほどには高まらない可能性がある。中国も急速に人口の少子高齢化が進み、働き手の減少傾向が続く。21年末時点の年齢層別人口を10年前と比べると、16~59歳は5%減ったが、60歳以上は45%増えた」

     

    中国は、21年から超高齢社会へ移行している。22年からは、人口減社会である。「過剰人口」と言われた中国が、急速に「人口縮小」状態へ移行する。人口老大国へ変貌するのだ。

     


    (4)「22年には中国版「団塊世代」の大量退職が始まる。多数の餓死者を出した大躍進政策後の1962年から出生数が大幅に増えたためだ。中国人力資源・社会保障省の予測では、2021~25年の退職者が4000万人を超える一方、生産年齢人口は3500万人減る。中国政府は25年までの5カ年計画で「法定の退職年齢を徐々に引き上げる」との方針を掲げている。江蘇省のほかの地域でも、市民の懸念に配慮した制度設計によって、定年延長が広がる可能性はある。中国政府が、全国規模で定年延長への理解が深まったと判断できた段階で、法規で定めた退職年齢を引き上げるとの見方もある」

     

    2021~25年の退職者が、合計4000万人を超える。年間平均で800万人も増える計算だ。生産年齢人口は3500万人減る。年間平均で700万人の減少。働き手が減って退職者が増える。これだけ、年金財源は減っていく計算になる。政府が、定年延長に躍起となる背景がよく分かる。だが、共産党無謬論が災いして、「年金財源危機」を大ぴらに叫べない弱みもあるのだろう。

     

    このページのトップヘ