ロシアの侵略戦争は、自軍兵士からも疑問を持たれている。上官からの命令を拒否する例が出ていると英国情報機関が伝えている。戦場には、ロシア兵士の遺体が放置され、その異臭がウクライナの人々を悩ませている。ウクライナのゼレンスキー大統領が語った。
『ロイター』(3月31日付)は、「ウクライナ内の一部ロシア兵、士気低下で命令拒否もー英情報機関」と題する記事を掲載した。
英情報機関である政府通信本部(GCHQ)のフレミング長官は30日、ウクライナにいる一部のロシア兵が命令を拒否し、自らの装備を破壊したほか、誤って自軍の航空機を撃墜したことを示す新たな情報が得られたと明らかにした。
(1)「オーストラリア国立大学(キャンベラ)で行われた講演録によると、フレミング氏は、ロシアのプーチン大統領がかつて強大だったロシア軍の能力を「大きく見誤った」ほか、ウクライナ国民の抵抗と制裁を発動した西側諸国の決意も過小評価していると指摘。新しい情報を基に、ロシア兵士の士気が低く、装備が不十分である証拠があるとしたほか、「プーチンのアドバイザーは彼に真実を伝えることを恐れていると思われる」と語った。
ロイターはGCHQの分析内容を独自に確認することはできなかった」
プーチン氏は独裁者である。これが、正しい情報が伝わらない理由である。前線の兵士は、装備や食糧が不足しており、凍傷に罹る者も増えている。ウクライナの農家で食糧を乞う例まで出ており、まさに「敗残兵」そのものだ。中には、出動命令を忌避すべく自分の足を撃つ者まで現れている。徴兵された若者には、理解できない戦争であるからだ。こういう悲惨な情報は、プーチン氏の耳には届いていない。
(2)「ロシアは、西側諸国がロシアに対して事実上の経済戦争を宣言したため、今後は欧州から離れ東に目を向け、中国とパートナーシップを構築すると表明している。フレミング氏は「しかし、あまりに緊密な連携は両国にとってリスクがある」と指摘。「ロシアは、長期的には中国が軍事的にも経済的にもますます強くなることを理解している」とし、
両国の利益の一部が対立する可能性があると述べた」
ロシアは、経済制裁のために中国へ接近している。だが、ロシアの本心は「本家意識」である。世界で最初に共産党革命を起したのがロシアであるからだ。それゆえ、中国へは微妙な「優越感」が存在する。プーチン氏が「大ロシア帝国」再建を夢見ている以上、中国の下に立つことに反発する筈である。中ロ関係には、その密接化で越すに越せない「溝」があるのだ。
『ロイター』(3月31日付)は、「プーチン氏に戦況の誤情報か、側近『イエスマン』が真実報告恐れ」と題する記事を掲載した。
米ホワイトハウスや欧州当局者は30日、ロシアのプーチン大統領がウクライナ侵攻の戦況や欧米の制裁措置による経済へのダメージを巡り、側近から誤った情報を伝えられている可能性があるという情報を明らかにした。
(3)「ホワイトハウスのベディングフィールド報道官は「プーチン大統領が軍に惑わされたと感じ、軍指導部との摩擦につながっているという情報を入手している」とし、「プーチン大統領の側近は真実を伝えるのを恐れており、ロシア軍の侵攻がいかにうまくいっていないか、欧米の制裁措置でロシア経済がいかに打撃を受けているかについて、誤った情報を伝えられているとわれわれは確信している」と語った。この情報が「ロシアの戦略的な誤り」を示しているとも述べた」
独裁者の下で生き残る者は、イエスマンだけになる。これは,あらゆる組織の共通点である。日本の大蔵省(財務省)では、「悪い情報ほど早く報告しろ」というのが慣わしという話を大蔵省高官から聞いた。かつての「鉄壁の大蔵省」には、こういう掟があったのだ。
ロシアは、独裁体制ゆえに組織は極めて脆弱になっている。民主主義体制の強みは、これと逆である。結論が出るまで議論が沸騰するが、結論が出ればそれに従う。議論の過程で、問題点が認識されるので解決も早いのだ。
(4)「米高官は、米政府による情報の共有がプーチン大統領の戦略を複雑にする可能性があると指摘。「この情報が有益となる可能性がある。プーチン大統領は誰を信頼すべきか考え直す可能性がある」と述べた。欧州の上級外交官は、米国の分析は欧州の見解と一致しているとし、「プーチン大統領は実際の状況よりも事が順調に進んでいると考えていたようだ。この問題は『イエスマン』に囲まれ、長テーブルの端に座っていることに起因しているのだろう」という見方を示した」
プーチン氏は長いテーブルを挟んで、国防省長官と参謀総長の二人と座っている写真が話題を呼んだ。これは、プーチン氏が二人と対話するのでなく命令している構図である。独裁者と僕の姿である。
(5)「欧州外交筋によると、ウクライナ侵攻前、ロシアの徴集兵は軍事演習に参加すると伝えられると同時に任務を拡大する文書への署名を義務付けられたという。外交筋は、現時点でロシア軍の反乱を助長するような兆候は見られないとしつつも、状況は「予測不可能」とした」