勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2022年04月

    a0960_008532_m
       

    天罰を受けたと言うべきか。はたまた、無知と言うべきか。ロシア軍は1986年、あの世紀の爆発事故を起したチェルノブイリ発電所付近で塹壕を掘り、多くの兵士が放射能を被爆し撤退のやむなきに至った。

     

    塹壕を掘ったのは、発電所から10キロメートルほど離れた「赤い森」である。ここは、立ち入り制限区域内に位置しており、事故による放射性物質を含む煙やちりが雲となり、大量の放射性物質がこの地域に降り注ぎ、マツの木々は枯死した場所だ。

     

    事故後の汚染除去作業で、赤い森にあるマツの木々の大部分が伐採されて埋められた。ここが、「赤い森」である。その上を砂で厚く覆いマツの若木が植林された。伐採された木々は、放射性物質による汚染がひどかった。他の場所に移動させることは、危険を伴うためにその場に埋めざるを得なかったのである。

     


    木々は、朽ちるにつれて放射性物質が地下水に達することが懸念されてきた。こうして、近くの住民は「赤い森」の周辺の汚染された地区から避難したのである。ロシア軍は選りに選って、この危険地帯で塹壕を掘ったのだ。地下の放射能が、ロシア兵を襲ったのは当然である。ロシア軍の上官が、こうした事実を知らなかったとは迂闊であった。

     

    米『CNN』(4月1日付)は、「ロシア軍、チェルノブイリ原発から撤退 ウクライナ原子力企業が発表」と題する記事を掲載した。

     

    ウクライナの原子力発電所を監督する国営企業、エネルゴアトムは31日、ロシア軍がチェルノブイリ原発と周辺施設から撤退したと明らかにした。エネルゴアトムはテレグラムで発表した声明で、「チェルノブイリ原発と立ち入り禁止区域内の他の施設を奪取した占領者」が2列の隊列でウクライナとベラルーシの国境に向かったことが確認されたと述べた。

     


    (1)「チェルノブイリ原発では1986年4月26日に原子炉4号機で爆発が発生し、直後に30人が死亡。その後、大勢の人が放射線症状のため亡くなった。同原発と周辺地域は今年2月下旬、ウクライナでの戦争の最初の週にロシア軍の手に落ちていた。エネルゴアトムによると、ロシア軍は3月31日、同原発から撤退してウクライナ側の人員に管理を委ねる意向を明らかにした。エネルゴアトムはまた、ロシア国家親衛隊とロシア国営原子力企業ロスアトムの代理人、およびチェルノブイリ原発のシフト管理者が署名したとされる正式書簡の写しも投稿した」

     

    被爆したロシア軍兵士には気の毒だが、侵略されたウクライナ国民は命を落としている。命があるだけでも、ロシア軍兵士は感謝すべきかも知れない。

     


    (2)「テレグラムに投稿されたエネルゴアトムの声明によると、同原発にはまだ少数のロシア人が残っている。エネルゴアトムはさらに、「ロシア人が立ち入り区域内で最も汚染された『赤い森』に要塞(ようさい)や塹壕(ざんごう)を築いていたとの情報も確認された」「従って、占領者が大量の放射線を浴び、病気の最初の兆候にパニックになったのは驚きではない。それは非常にすぐ表れた。その結果、軍内部で暴動のようなものが発生した」などとしている」

     

    ロシア軍兵士は、大量の放射能を浴びているという。軍内部で暴動のようなものが発生したとされるが、身体の不調に気付いた結果、そこが「赤い森」であることを認識し、騒ぎに発展したのであろう。噴火口でキャンプをしていたような話である。

     


    (3)「CNNは現時点でこれらの主張を検証できていない。米国防総省高官は31日、記者団に対し、米国もロシア軍がチェルノブイリやキエフ北郊と北西郊から撤退するのを目撃していると明らかにした」

     

    米軍は常時、軍事衛星でロシア軍の動きを監視している。それによって、チェルノブイリやキエフ北郊からの撤退が確認されたのであろう。英国メディアによれば、バス7台分に及ぶロシア兵が隣国ベラルーシのゴメリにある放射線専門医療センターに搬送されたと報じられた。 

     

     

     

    a1400_000577_m
       

    これまで海外の避難民受入れに消極的であった日本政府が、ウクライナ避難民を積極的に受入る方針へ転換する。国民世論の強い支持に動かされた形だ。政府は、林芳正外相、中谷元・首相補佐官らを4月1日夜からポーランドに政府専用機で派遣し、現地で避難民の受け入れ状況を視察することになった。政府は、帰国時に避難民を移送する計画を検討している。

     

    避難民受入れは、人口減に悩む日本にとって将来、定住して貰えれば労働力不足を補う機会にもなる。潜在的成長率押し上げのきっかけになるという期待だ。日本社会の「純血主義」への変革の助けになる機会でもあろう。

     


    米国は最大10万人のウクライナ避難民を受け入れる方針だ。バイデン政権の高官が3月24日に明らかにした。さまざまな法的手段を活用して入国を認めるという。同高官によれば、こうした避難民の一部は難民として受け入れるが、臨時入国や非移民ビザの申請も認める。米国到着の具体的な時期については明示しなかったが、今後数年にわたって入国する可能性があると示唆した。ウクライナではこれまでに1000万人超が家を追われ、340万人余りが国外に避難。このうちの約200万人はポーランドに逃れた。

     

    『ブルームバーグ』(4月1日付)は、「ウクライナ避難民受け入れで異例対応、政府専用機で移送や生活支援も」と題する記事を掲載した。

     

    ウクライナ避難民の受け入れで日本政府が異例の積極姿勢を示しており、政府専用機による移送や入国後の生活支援も検討している。世論の後押しもあり、支援団体からは消極的だった難民政策の転換につながるよう期待する声が上がっている。

     


    (1)「岸田文雄首相は、日本での受け入れを希望する避難民の渡航費支援を検討するほか、入国後は受け入れ先との調整、日本語教育、就労・就学、定住の支援を行う考えを示している。林芳正外相、中谷元・首相補佐官らを4月1日夜からポーランドに政府専用機で派遣し、現地で避難民の受け入れ状況を視察する。共同通信によると、政府は帰国時に避難民を移送する計画を検討している」

     

    日本政府は、外相や首相補佐官を今夜、ポーランドへ派遣する。帰国時には、避難民を移送する計画を検討しているという。実現すれば、素晴らしい人道的な行為となろう。

     


    (2)「
    避難民受け入れを岸田首相が表明した32日から29日までに325人が日本に入国した。日本の難民認定数は2020年で約4000人の申請に対し47人で、認定しなかったが人道的な配慮を理由に在留を認めた外国人とあわせてもわずか91人。13万人を認めた英国などと比べて極めて低い水準にとどまっていた。一国に対する特別な措置はミャンマーやアフガニスタンに対しても行われてきたが、難民支援協会の新島彩子氏は、ウクライナ避難民の受け入れを巡る政府の対応は「今までにない異例な迅速さ」だと語る」

     

    日本が、今回のウクライナ避難民受入れへ舵を切った以上、他国の避難民も同様に遇せねばならない義務を負うはずだ。

     


    (3)「新島氏は、今回の特徴として地方自治体や民間企業、個人にも支援の輪が拡大していると指摘する。パン・パシフィック・インターナショナルホールディングスが100世帯の避難民を受け入れると発表。ファーストリテイリングは1000万ドルの寄付と衣服20万点の提供を行う。東京都も都営住宅を提供する。日本経済新聞3月25~27日に実施した世論調査によると、ウクライナからの避難民を受け入れる方針に「賛成だ」と回答した人が90%で、「反対だ」の4%に大差をつけた」

     

    世論調査で、90%が避難民受入へ賛成している。これまでの各種世論調査で、これだけの高い「賛成」率はなかった。

     


    (4)「難民を教育面で支援しているパスウェイズ・ジャパンの折居徳正代表理事は、「政府は難民受け入れ、難民認定について世論が支持していない、とずっと言っていたが、政府自らが違うということを今回証明した」と指摘。日本にとって「非常に大きな出来事だ」と述べ、今後は自治体や企業の支援と避難民を円滑に結び付け、「経験として蓄積していくことが重要」と指摘する」

     

    日本社会は、外国人受入れに対して「鎖国意識」であった。それが、大きく「開国意識」へ変わったとも言えよう。貴重な転機である。

     


    (5)「今回の経験を踏まえ、難民受け入れを進めれば経済効果もあるとの見方もある。第一生命経済研究所の永浜利広首席エコノミストの試算では、10万人の外国人材受け入れで潜在GDP(国内総生産)は0.1%増加する。永浜氏によると、ウクライナ避難民の受け入れ人数は少ないため、「マクロ的な影響は限定的」だが、今後政府が数十万人と難民を多く受け入れることになれば、経済的な「影響は出てくる」という」

     

    経済の話を持ち出すと、「計算尽くか」と非難されがちだがそうではない。日本にもプラスになる。「情けは人のためならず」である。我が身にも良いことがあるのだ。10万人の避難民が、仮に定住してくれれば潜在成長率を0.1%引き上げる。

     


    (6)「ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎経済調査部長は、ウクライナ避難民の受け入れは大国ロシアが独立国に侵攻するという非常事態に対応した極めて特殊な例であり、国際協調をアピールする意味合いが強いとの見方を示す。世界各地の地域紛争で出てくる難民を受け入れる話とは次元が違うとして、「政府の姿勢が変わったという訳では全くない」と述べた」

     

    日本政府が、避難民についてウクライナ人だけを特別待遇するのでなく、他国の人々にも同様に門戸開放をしなければならない。これは、その通りである。

    a0960_008527_m
       

    ウクライナ大統領は、ロシアに対して「言葉だけでは信じられない」と手厳しい姿勢を続けている。ただ、先の停戦交渉によって、おぼろげながら将来のウクライナの姿が浮かび上がってきた。

     

    ロシアは、この侵略戦争で経済的に大きなダメージを受けている。欧州復興開発銀行(EBRD)によると、停戦が近く実現すれば今年のロシア経済はマイナス10%成長、23年はゼロ成長と見込んでいる。欧米から資本と技術の流入が遮断される影響は今後、長引くと予想している。ウクライナ経済は、今年がマイナス20%成長と大きく落込むものの、来年は急回復を見込んでいる。

     

    このように、停戦を前提にした経済予測ができるようになってきた。だが、停戦が実現するまでにはいくつかの問題が横たわっている。

     


    米『CNN』(3月31日付)は、「ロシアとウクライナの交渉、停戦への道筋示すも行く手には地雷原」と題する記事を掲載した。

     

    3月29日、イスタンブールで行われたロシアとウクライナの代表団による会合では政治的ムードはかなり改善され、おぞましい壊滅的戦争の全面的解決の輪郭が、おぼろげながらも見え始めた。会合では、クリミアおよびドンバス地方の今後の在り方やウクライナの中立的立場、安全保障の確約による保護、現在キエフ北部で展開しているロシア軍の大幅な撤退の他、プーチン大統領とゼレンスキー大統領の首脳会談の可能性についても話し合われた。

     

    (1)「ウクライナ側はロシアが2014年に併合したクリミアの地位について、今後の課題とすることに合意した。クリミア併合に関してはウクライナも欧米諸国もこれまで承認していなかったが、ポドリャク大統領府顧問は今後の展望として、「この領域の地位に関しては、15年間かけて二国間協議で話し合うことに双方が同意した」と述べた。「これとは別に、二国間協議が行われる15年間は軍事的敵対行為を行わないことについても話し合った」とも報道陣に語った。これにより、もっとも対立を深める争点のひとつが、とりあえず棚上げされる形となる」

     

    ロシアが一方的に併合したクリミアの地位については、両国が今後15年間かけて協議する。その間の軍事的敵対行為を行なわない点も合意した。これは、ウクライナ側の主張が通ったものだろう。

     

    (2)「歩み寄りの中でも直近のものとして、チェルニヒウと首都キエフに対する攻撃を大幅に縮小するとロシアが宣言したことが挙げられる。北部ウクライナのチェルニヒウはこの3週間ロシア軍に包囲され、甚大な被害を被っていた。とくに重大なのは、ウクライナ側の提案が十分に調整されており、「大統領に提示することができる。我々も今後適切な返答を提示する」とメジンスキー氏が発言したことだ。「合意交渉が迅速に行われ、妥協が見出せるのであれば、和平合意の可能性もより近づくだろう」と同氏は述べた――2月末の最初の交渉以来、ロシア当局者の考えとしてはもっとも前向きな発言だ」

     

    北部ウクライナのチェルニヒウは、この3週間ロシア軍に包囲されて、甚大な被害を被っていた。ウクライナ側は、この攻撃を縮小するように求めている。次回の停戦交渉で回答が出れば、和平合意の可能性に近づくとしている。

     

     

    (3)「これまでロシア当局者は、大統領本人が直接協議の場につく前にさらなる交渉が必要だとして、プーチン大統領の交渉参加を一切退けていた。だが今やロシア国営通信社のRIAノーボスチは――ロシア代表団の発言として――両国外相による和平協議と並行し、プーチン大統領とゼレンスキー大統領による首脳会談もありうると報じた。交渉の仲介にあたったトルコのチャブシュオール外相は「一刻も早い停戦実現に向けた最優先事項は、恒久的な政治的解決への道筋を築くことだ」とし、想定されるシナリオについて語った」

     

    ロシア側は、両国首脳会談について拒否してきたが、軟化姿勢を見せている。その前に,外相会談をすることになった。

     


    (4)「ウクライナにとって、安全保障の確約はつねに紛争解決の要だった。だが次第にゼレンスキー大統領も政府当局者も歩み寄りの姿勢を見せ、憲法で謳(うた)われているNATO加盟はウクライナの権利――むしろ義務――というこれまでの主張を譲歩している。そこへきて今、非常に異なる提案が持ち上がっている。会合の後、ウクライナ交渉団の1人ダビッド・アラカミア氏はウクライナのTVに対し、「我々は全ての保証国が署名する国際協定を策定し、批准することを強く主張する」と発言した」

     

    ウクライナ側が、NATO加盟を断念する代わりに、安全保障の国際協定を要求している。

     

    (5)「ウクライナ当局者によれば、この協定は保証当事国の議会で批准されなくてはならない。またウクライナは、保証国にロシアも含む国連安全保障理事会の常任理事国を加えたい考えだ。安全保障の確約は非常に具体的なものになるだろう、とアラカミア氏は述べた。ウクライナに対して侵攻や軍事作戦が行われた場合には「3日以内に協議を行わなければならない」。「その後、保証国には我々の支援が義務付けられる。軍事支援、兵力、武器、飛行禁止区域――我々が今非常に必要としながらも、手に入れることができずにいるもの全てだ」。ウクライナが現在目指しているものは、保護下での――かつ恒久的な――中立性と言えるだろう」

     

    国際協定は議会批准が必要であること。保証国には、ロシアも含む国連安全保障理事会の常任理事国を加えたい考えである。これによって、恒久的な中立性を保障させる意向だ。

     


    (6)「別の交渉団のメンバー、オレクサンドル・チャリー氏は次のように語った。「ウクライナの安全保障再建に向けて、あらゆる手段を講じることが主要条件だ。我々にとって根幹的要件であるこれら主要事項を確立できるなら、ウクライナは事実上、永世中立という形で非同盟国、非核国としての地位を固める立場を取るだろう」。さらにチャリー氏はこうも続けた。「(我々は)領地内に他国の軍事基地や他国の軍隊を配備しない。軍事的、政治的同盟は締結しない。国内での軍事演習は、保証国の同意のもとでのみ行う」。プーチン大統領がこれまでずっと要求の中核に据えてきたのもこの点である」

     

    ウクライナは永世中立という形で、非同盟国・非核国としての地位を確立する。この点は、プーチン氏の要求にもあう。

     


    (7)「ウクライナはNATO加盟という野望を断念する代わりに、EUへの早期加盟を目指すことがさらに明確になった――これに関しても、ウクライナは保証国の後押しを望んでいる。
    ウクライナ国民の間でも広く支持されているEU加盟の可能性が見えてくれば、ウクライナ政府が公約に掲げてきた安全保障を伴う中立性も、国民投票で全面的に承認されることになるだろう」

     

    ウクライナは、NATO加盟を諦める。だが、EUへの早期加盟を実現する。これが実現の方向であれば、安全保障を伴う中立性も国民から承認される可能性が見えてくるであろう。

     

     

     

     

    a0960_004876_m
       

    ロシアは、経済制裁によって欧州への原油輸出が先細りになってきた。このマイナス分を埋めるべくインドへ接近している。3月31日には、ロシア外相が訪印したので、この問題が議論されると見られる。

     

    インドは、対中国への安全保障のため「クアッド」(日米豪印)に参加している。西側諸国が一致してロシア制裁を行なっている中で、インドがロシアを救済するような取引を行なうのは批判を呼んでいる。インドは、国連における「ロシア非難決議」で棄権した。

     


    『ブルームバーグ』(3月31日付)は、「ロシア、インド向けに原油の大幅な値引き販売を提案-関係者」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアは国産原油を大きく値引きしインドに直接販売することを提案している。事情に詳しい関係者が明らかにした。

     

    (1)「ウクライナに侵攻したロシアに対し国際社会が制裁を強める中で、ロシアはインドによる原油購入を促そうと、ウラル原油を侵攻前の価格と比べ1バレル当たり最大35ドル安く提供しようとしている。極秘に交渉が行われているとして関係者が匿名を条件に語った。ウクライナで戦争が始まってから、原油価格の指標である北海ブレントは10ドルほど値上がりしており、ロシアが提示する値引きは現行水準からみると極めて大きなものとなる見込み。原油の売買交渉は政府間で行われていると関係者は説明した」

     


    インドは、ロシアからの武器輸入でトップになっている。国連決議で「ロシア非難」に参加しなかった理由として、この武器輸入が上げられている。インドは,ここでロシアへ恩を売れば、武器輸入でメリットがあると期待しているのであろう。

     

    (2)「国際的な圧力や制裁を無視し、ロシア産原油への購入を増やそうとしている国は少ないが、アジア2位の石油輸入国であるインドは原油調達でロシアに傾斜。二国間の直接売買は、ロシアのロスネフチと石油精製でアジア最大手のインド石油が関与する見通し」

     

    インドは、西側諸国が結束してロシアへ圧力をかけている中で、大幅なディスカウントで原油を輸入しようとしている。一種の「火事場泥棒」のようなものだ。インドの品格を傷つける行為である。

     


    『ブルームバーグ』(3月30日付)は、「
    ロシア、インドにSWIFTに代わる決済手段の利用提案-関係者」と題する記事を掲載した。

     

    インド政府はロシアとの2国間決済について、国際銀行間通信協会(SWIFT)国際決済ネットワークに代わりロシア中央銀行が開発したシステムを利用するよう同国側から提案を受け、それを検討している。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。

     

    (3)「インドは、厳しい国際的制裁を受けるロシアから原油や武器を引き続き購入したい意向。ロシア側の提案には、メッセージシステムSPFSを利用するルピーとルーブル建ての決済が含まれるという。最終的な決定は下されておらず、ロシアのラブロフ外相が3月31日から2日間の日程でインドを訪れる際にこの問題が議題に上る可能性がある。ロシア中銀の当局者が詳細を詰めるため来週インドを訪問する公算が大きいとも、この関係者は述べた」

     

    ロシアとインドは、SWIFTを逃れロシアのメッセージシステムSPFSを利用するという。このシステムは、SWIFTから取引情報を得ている筈だから、無傷で「スルー」は無理であろう。米国が、インドを制裁するよりもロシアを制裁する形で、何らかの行動に出ると見られる。

     

    『ブルームバーグ』(3月31日付)は、米国と豪州、インドを批判-対ロ制裁を骨抜きにする提案検討で」と題する記事を掲載した。

     

    米国とオーストラリアは、対ロシア制裁の骨抜きにする同国案を検討しているとしてインドを批判した。日米豪印4カ国の枠組み「クアッド」の溝の深まりが浮き彫りになった。ロシアのラブロフ外相は31日にインドのニューデリーに到着する。

     


    (4)「ブルームバーグはインドが国際銀行間通信協会(SWIFT)国際決済ネットワークに代わり、ロシア中央銀行が開発したシステムを利用するよう同国側から提案を受け、それを検討していると、事情に詳しい関係者を引用して伝えていた。レモンド米商務長官は30日、ワシントンで記者団に、「今こそ歴史の正しい側に立って米国および他の多数の国々と連帯するとともに、ウクライナ国民と共に自由と民主主義、主権のために立ち上がり、プーチン大統領の侵略への資金供給や後押し、支援を控えるべきだ」と語った。同長官はインドとロシアの協議の報道について「極めて遺憾」とした上で、詳細は見ていないと説明した」

     

    インドには、インドの事情があるとしても、自由陣営の一員で中国と鋭く対立している現在、自国の利益だけ考慮した行動は控えるべきだ。

     


    (5)「オーストラリアのテハン貿易・観光・投資相は記者ブリーフィングで、「第2次世界大戦以降、われわれが堅持してきたルールに基づくアプローチを守るため」、民主主義諸国が協調することが重要だと述べた」

     

    インドが、ロシア産原油を直接取引するならば、米国も見逃す訳にはいくまい。ロシア制裁という形を取るのだろう。

     

    a0960_006624_m
       

    ロシアは,最大の武器輸出国である。そのロシアが、ウクライナ戦争で武器不足に悩んでいる。西側諸国が、結束してウクライナへ武器を供与しているので、ロシアは劣勢に立たされる結果となった。そこで、中国へ武器提供を依頼しているというのだ。

     

    英紙『フィナンシャル・タイムズ』(3月30日付)は、「ロシア、中国に兵器供給を要請の観測 中国は否定」と題する記事を掲載した。

     

    フィナンシャル・タイムズ(F T)が3月に報じたように、ロシアはウクライナへの侵攻を続けるために、中国に軍事支援を要請した。米国が同盟国と共有した機密情報によると、ロシアは地対空ミサイル、ドローン、機密情報関連機器、装甲車や軍用車などの物資供与を求めたという。

     


    (1)「武器取引の専門家によると、ロシアが支援要請をウクライナ侵攻後にしたとすれば、ロシアの物資要請リストはロシア軍が基本的な支援を必要とする切実な状況下にあることを示唆しているという。スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(S I P R I)の武器取引の専門家、シーモン・ウェゼマン氏は「トラックはロシアが大量に生産しているものだ。それを要請しなければならないとしたら、ロシア軍がいかに厳しい状態に置かれているかが分かる」と話す。中ロ両政府は、ロシアがウクライナ侵攻で中国に軍事装備の援助を求めたことを否定している」

     

    ロシアが支援要請している中に、トラックが入っている。トラックは、ロシアが大量に生産している。それが不足しているとすれば、経済制裁で部品が不足して量産化できないのであろう。そのほか、地対空ミサイル、ドローン、機密情報関連機器の供与を要請しているという。強気のロシアが停戦交渉に乗出した背景には、武器・装備の不足が深刻化してきたことを反映している。こうなると、長期の戦争は不可能である。停戦は間近いとも見られる。

     


    (2)「中国が今回ロシアに軍事兵器で支援すれば、中国とロシアの長年にわたる防衛機器の取引での役割が逆転したことを意味し、すでに幅広い領域で起きている中ロ両国間の勢力図の変化を浮き彫りにすると専門家らは指摘する。1950年から2021年までの武器取引を追跡するS I P R Iの兵器貿易に関するデータによると、ロシアから中国へ多数の武器輸出の記録が見られるが、中国からロシアへの輸出記録は皆無だ」

     

    過去、中国がロシアへ武器を輸出した記録はないという。それが今回、逆転して中国製に依存せざるを得なくなった。ウクライナ戦争で、相当量の武器弾薬を消耗したのであろいう。

     


    (3)「豪シドニーにあるニューサウスウェールズ大学の中ロ安全保障関係の専門家、アレクサンダー・コロレフ氏は、中国が今回、ロシアからの武器支援の要請に応えるならば、軍事支援として初めて武器を供給することになるが、中国が「通常の軍事技術協力の一環として」ロシアに武器を供給するのは初めてではないと説明する。ロシア専門家の中には、中国軍が軍艦など高度な技術を持つ軍事装備を大量に購入し、製造業も強いため、中国はロシアより武器を生産するのに適した環境にあると指摘する声も聞かれる」

     

    中国は、製造業を強化しているのでロシアよりも武器製造に適した環境になっている。

     


    (4)「もっとも防衛専門家の多くは、ロシア政府が中国に武器供給で依存度を高めることを容認しないだろうとみる。「ロシアは兵器の自給自足に力を入れており、中国を対等に扱うことに抵抗する文化のようなものがある」とS I P R Iのウェゼマン氏は説明する。その上で「ロシアはプライドを克服する必要がある」と述べた」。

     

    ロシアは、高いプライドを持っている。そのロシアが、中国へ武器の供与を依頼する。かなりの苦境に立たされている結果であろう。


    (5)「専門家らは、ウクライナ侵攻でロシア軍の偵察力の弱さが露呈したことから、中国がロシアに迅速に供与できる有益なものは商用ドローンではないかとみている。ウェゼマン氏は「米国や欧州では何百という単位ですでに使われている玩具店で買えるような小型の超短距離ドローンは、間近に見ることができるため役に立つだろう」と説明する。ロシア軍が運用する中国製ドローンがウクライナで「遅かれ早かれ」発見されることになるだろうとウェゼマン氏は予想する。「いずれドローン1機が落ちてくることになるから、隠すことはできない。この場合隠し通せるのは中国政府が関与していることだ。これらは輸出許可を必要としない商業製品だからだ」と指摘する」

     

    中国は、商業用ドローンを提供するのでないかと見られる。これならば、中国政府が関与したことにならないからだ。中国は、抜け道を用意している。

     

     

    このページのトップヘ