天罰を受けたと言うべきか。はたまた、無知と言うべきか。ロシア軍は1986年、あの世紀の爆発事故を起したチェルノブイリ発電所付近で塹壕を掘り、多くの兵士が放射能を被爆し撤退のやむなきに至った。
塹壕を掘ったのは、発電所から10キロメートルほど離れた「赤い森」である。ここは、立ち入り制限区域内に位置しており、事故による放射性物質を含む煙やちりが雲となり、大量の放射性物質がこの地域に降り注ぎ、マツの木々は枯死した場所だ。
事故後の汚染除去作業で、赤い森にあるマツの木々の大部分が伐採されて埋められた。ここが、「赤い森」である。その上を砂で厚く覆いマツの若木が植林された。伐採された木々は、放射性物質による汚染がひどかった。他の場所に移動させることは、危険を伴うためにその場に埋めざるを得なかったのである。
木々は、朽ちるにつれて放射性物質が地下水に達することが懸念されてきた。こうして、近くの住民は「赤い森」の周辺の汚染された地区から避難したのである。ロシア軍は選りに選って、この危険地帯で塹壕を掘ったのだ。地下の放射能が、ロシア兵を襲ったのは当然である。ロシア軍の上官が、こうした事実を知らなかったとは迂闊であった。
米『CNN』(4月1日付)は、「ロシア軍、チェルノブイリ原発から撤退 ウクライナ原子力企業が発表」と題する記事を掲載した。
ウクライナの原子力発電所を監督する国営企業、エネルゴアトムは31日、ロシア軍がチェルノブイリ原発と周辺施設から撤退したと明らかにした。エネルゴアトムはテレグラムで発表した声明で、「チェルノブイリ原発と立ち入り禁止区域内の他の施設を奪取した占領者」が2列の隊列でウクライナとベラルーシの国境に向かったことが確認されたと述べた。
(1)「チェルノブイリ原発では1986年4月26日に原子炉4号機で爆発が発生し、直後に30人が死亡。その後、大勢の人が放射線症状のため亡くなった。同原発と周辺地域は今年2月下旬、ウクライナでの戦争の最初の週にロシア軍の手に落ちていた。エネルゴアトムによると、ロシア軍は3月31日、同原発から撤退してウクライナ側の人員に管理を委ねる意向を明らかにした。エネルゴアトムはまた、ロシア国家親衛隊とロシア国営原子力企業ロスアトムの代理人、およびチェルノブイリ原発のシフト管理者が署名したとされる正式書簡の写しも投稿した」
被爆したロシア軍兵士には気の毒だが、侵略されたウクライナ国民は命を落としている。命があるだけでも、ロシア軍兵士は感謝すべきかも知れない。
(2)「テレグラムに投稿されたエネルゴアトムの声明によると、同原発にはまだ少数のロシア人が残っている。エネルゴアトムはさらに、「ロシア人が立ち入り区域内で最も汚染された『赤い森』に要塞(ようさい)や塹壕(ざんごう)を築いていたとの情報も確認された」「従って、占領者が大量の放射線を浴び、病気の最初の兆候にパニックになったのは驚きではない。それは非常にすぐ表れた。その結果、軍内部で暴動のようなものが発生した」などとしている」
ロシア軍兵士は、大量の放射能を浴びているという。軍内部で暴動のようなものが発生したとされるが、身体の不調に気付いた結果、そこが「赤い森」であることを認識し、騒ぎに発展したのであろう。噴火口でキャンプをしていたような話である。
(3)「CNNは現時点でこれらの主張を検証できていない。米国防総省高官は31日、記者団に対し、米国もロシア軍がチェルノブイリやキエフ北郊と北西郊から撤退するのを目撃していると明らかにした」
米軍は常時、軍事衛星でロシア軍の動きを監視している。それによって、チェルノブイリやキエフ北郊からの撤退が確認されたのであろう。英国メディアによれば、バス7台分に及ぶロシア兵が隣国ベラルーシのゴメリにある放射線専門医療センターに搬送されたと報じられた。