勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2022年04月

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    上海は、国際金融都市の座を目指してきたが、コロナによるロックダウンで、外国ビジネスマンが音を上げている。金融都市には、何ものにも束縛されない「自由」が不可欠。現実には、すでに1ヶ月もの拘束生活が続き、「不自由」な環境に追い込まれている。「グッドバイ上海」という外国人ビジネスマンが出始めているのだ。

     

    『ブルームバーグ』(4月26日付)は、「上海『金融センター』の将来に疑問符ー外国人も権威主義の影響免れず」と題する記事を掲載した。

     

    上海の金融街では不気味な静けさが数週間にわたり続いている。普段なら30万人が働く陸家嘴の通りには誰もいないが、高層ビルの一角ではトレーダーや銀行員が家族から離れた環境で仕事を続けている。世界が新型コロナウイルスとの共生に動く中で、中国は徹底的にコロナを抑え込む「ゼロコロナ」戦略を堅持。このため、上海の住民は自宅や職場に閉じ込められたままだ。

     


    (1)「中国は数十年をかけ上海を繁栄と開放性の象徴とし、有能な人材を世界中から呼び込んできたが、人口約2600万人を抱える上海の金融センターは今、窮状に陥っている。中国に派遣された外国人の4分の1が住む上海が、商業の中心地であり続けることに疑いの余地はほとんどないが、悪化したイメージの修復にどれくらいの時間を要するのかは定かではない」

     

    上海は、中国へ派遣された外国人の25%が住むという。その上海で1ヶ月ものロックダウンである。自由を完全に奪われた生活が、これだけ長期に続けば誰でも嫌になって当然だ。

     

    (2)「上海の米商業会議所がロックダウン初期時に会員を対象に実施した調査では、技能を持つ外国人スタッフを引き付けたり引き留めたりすることをコロナ対策が妨げているとの回答が81%に上った。その3分の1余りが「大きな」もしくは「重大」な影響を受けていると答えた。同会議所プレジデントのエリック・チェン氏は、「今回の危機まで、上海は中国の他の場所と比べてビジネスに魅力的な場所として良好な評判を確立していた」と説明した上で、「今は明らかに市政府にとって大きな試練だ。どうやって以前の上海を取り戻すのか」と語った」

     

    中国は、外国人の高技能者を集める上で、今回のロックダウンが大きな障害になる筈だ。権威主義国家の素顔を嫌というほど認識させられたからだ。これまで自由に生きてきた外国人には、耐えられない環境であろう。

     

    (3)「ゴールドマン・サックス・グループクレディ・スイス・グループなどの外国銀行は、合弁事業における外資規制撤廃を機に、中国で人員を2、3倍に増やす計画をしている。だが、混乱をもたらしている上海のロックダウンは、比較的裕福な住民でさえ権威主義体制の影響を免れ得ないことをあらためて示している。上海に住むドイツ生まれのイベントプランナー、ラルフさんは隔離センターへの報告義務に反発。そうした指示に抵抗した会話を録音し、ソーシャルメディアに投稿した上で、できるだけ早期の出国を目指して準備している。当局の言い分を「信頼できず、もはや真に受けることさえできない」と話した」

     

    中国の金融開放政策によって、外国銀行のスタッフは今後、2~3倍に増える見通しであった。だが、今回のロックダウンに遭遇して、増員どころか早期に出国したいという急変ぶりである。

     


    (4)「JPモルガン・チェースとクレディ・スイスでは今月、中国証券部門のトップが交代。中国の資本市場を揺るがす突然の規制変更とコロナ対策の渡航制限で、事業環境がますます厳しくなる中で辞めた2人の在任期間はいずれも短かった。上海のロックダウン前でさえ、外国人社員には家族を伴い中国を離れる兆しがあった。英国商業会議所のジュリアン・フィッシャー副会頭が引用した封鎖前実施の調査は、中国全土のほとんどのインターナショナルスクールが教師の4~6割を失い、次年度の入学者数が25%減ったことを示している」

     

    外資の中国証券部門のトップでさえ、在任期間わずかで辞めている。中国全土のインターナショナルスクールの次年度入学者数は、25%も減っているのだ。教師にいたっては4~6割が辞めている。中国は、もはや自由な国で育ってきた人間にとって異質の国家になっている。

     


    (5)「今回のロックダウンを経験した銀行員のジャスパーさん(35)は名字を明かさないことを条件に、5年前に香港から上海に移ったが今は上海を去ることを考えていると打ち明けてくれた。「住民に十分な食料を確保することすらできない上海が、どうして国際金融センターになることができるのか」というのが彼の疑問だ」

     

    下線部分は、中国政府にとって痛いところを突かれている。ロックダウンは、人権無視の国家であるからできることである。権威主義国家は、民主主義国家と併存できにくい現実を示している。

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    ロシアは、世界の武器輸出で米国に次ぎ2位である。だが、部品からの一貫生産ではない。多くの部品を西側諸国からの輸入に頼ってきた。その肝心の西側諸国からの経済制裁で、軍需部品生産に影響が出るのだ。国内使用の武器生産だけでなく、武器輸出も困難になれば、これまでロシアを支持してきた中国、インドを初めとする多くの新興国が、輸入先を変更しなければならなくなろう。

     

    ウクライナ戦争がもたらしたロシアの兵器生産における変化は、目に見えないところで国際情勢を激変させる要因になろうとしている。「風が吹けば桶屋が儲ける」で、予想外の展開になろう。

     


    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(4月26日付)は、「ロシアの兵器生産に暗雲 補充・輸出に影響も」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアは今回のウクライナ侵攻で大量の兵器を導入し、かなりの部分を失った。これに西側の厳しい経済制裁も重なり、新規兵器システムから既存武器の予備部品に至るまであらゆるものを生産する能力が損なわれ、向こう数年にロシアの軍事力と兵器輸出は深刻な打撃を受けるとみられている。

     

    (1)「短期決戦との当初想定に反して、ウクライナ侵攻は9週目に突入しており、ロシアはこれまで最新鋭の装備も含め、兵器の大部分を展開している。ロシアは近年、戦車を年間およそ250台、軍用機150機を生産していた。米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)のシニアアドバイザー、マーク・カンチアン氏が分析した。これに基づくと、ウクライナ軍はここ2カ月に、少なくとも2年分の生産台数に相当するロシア戦車を破壊したことになる」

     

    ロシアは、ウクライナ侵攻2ヶ月間で被った戦車の損失が、2年分の生産台数に当る500台に達している。

     

    (2)「米国は、ロシアが当初ウクライナ侵攻に振り向けた兵力の4分の1を失ったとみている。米国防総省のある高官は先週、詳細を明かすことなく、こうした見方を明らかにした。ただ、ウクライナに侵攻するロシア軍は、膨大な在庫から再補給を受けるため、兵器の損失が目先の戦況に影響を与える可能性は低い。ロシアは数万台の軍用陸上車を保有しているとされる。だが、大半は保全や修復が必要で、多くは実戦配備されることなく、単に予備部品として使用されている可能性があるとロシア軍の専門家はみている」

     

    ロシア軍は、厖大な武器の在庫を抱えている。多くは実戦配備されることなく、部品供給用に補完されていると見られる。

     

    (3)「仮に戦争が何カ月も長引けば、ロシア軍が保有する装備の消費・破壊に加え、西側の金融制裁や輸出規制によって、より高性能な装備を兵士らに提供することは一段と難しくなるとの指摘が出ている。ロシアの防衛請負業者についても、政府と輸出先の双方の需要を十分に満たせない、あるいは最新兵器の研究・開発(R&D)への投資が不足することがあり得る。西側の当局者やアナリストはこう話している」

     

    問題は、経済制裁で国内の武器製造が困難になるだけでなく、武器輸出が抑制されることである。今回のウクライナ侵攻で、多くの新興国が「ロシア非難」の声を出さなかったのは、ロシアからの武器輸入が理由である。ロシアが、事前にその旨を警告していたのだ。だが、肝心の武器輸入が困難になって「脱ロシア」となれば、状況は大きく変わる。

     

    (4)「ロシアは、旧ソ連時代から生産システムを全面的に現代化しておらず、今では制裁対象となった外国製の設備や工作機械、電子製品やベアリングといった精密部品になお大きく頼っているためだ。またロシアの軍産セクターは旧ソ連時代からかなり規模が縮小しており、第2次世界大戦のような生産急増への対応はかなりハードルが高い。ウェンディー・シャーマン米国務副長官は21日、ブリュッセルで「われわれの制裁がロシアの軍産複合体を後退させており、早期に戻る見込みはない」との見方を示した

     

    ロシアの軍需産業は、西側諸国からの輸入部品に依存してきた。それが、経済制裁を受ければ状況が一変する。下線部分のような事態を招くのである。

     

    (5)「業界が生産に関して真の正念場を迎えるのは数カ月後か来年になるだろう」。スウェーデン国防研究所の上級軍事アナリスト、トマス・マルムロフ氏はこう指摘する。ちょうど制裁対象である部品の在庫が尽き、大半の軍装備に搭載されている外国製半導体が不足してくる時期に当たるという。兵器製造の問題が輸出に打撃を与えれば、すでに異例の制裁で痛みが広がっているロシア経済がさらに弱体化しかねない。ロシアは武器輸出で米国に次ぐ世界第2位だ。ロシア経済を支配する天然資源を除けば、輸出品の上位に入る。ロシアは世界45カ国余りに武器を輸出しており、2016年以降、世界の武器売却の約2割を占めている」

     

    下線部の指摘は重要である。ロシア軍需産業は、部品不足で生産が音を上げるのは、1年以内である。ウクライナ戦争は、武器弾薬の供給面から見て越年は困難のようだ。

     


    (6)「武器在庫の取り崩し以外にも、戦場における兵器の実績が輸出を下押しする恐れもある。ランド研究所の上級防衛アナリスト、スコット・ボストン氏は、西側が提供したドローン(小型無人機)や重火器、携行式ミサイルを駆使して、ウクライナ軍がロシアの軍装備を大規模に破壊したことで、ロシア製兵器の評価を落とすことになったと話す。「戦場のあらゆる場所でロシアの兵器が爆破される様子が伝われば、この軍装備は大したことはないかもしれないとの見方が出てくる」

     

    ウクライナ戦争で伝えられるロシア製戦車の無惨な映像は、ロシア製武器への信頼を損ねる危険性がある。

     


    (7)「予備部品を巡っては、ロシア軍にまた別の問題をもたらす可能性がある。戦闘を伴わない軍事作戦であっても、装備品の消耗は激しいためだ。旧ソ連の産業は、軍靴から戦闘機まで完成品の生産目標を達成することを優先し、製品に対するサービスは後回しにしてきた。ロシア工場の勤務者によると、ソ連崩壊後のロシア防衛産業も、若干の改善にとどまるという。部品の補給が難しいとなれば、インドやベトナム、エジプトといった主要顧客への武器輸出にも影響を与えかねない。「ロシア製兵器の大口顧客の間で部品確保への不安が広がれば、自国での兵器開発にかじを切るか(中略)調達先を乗り換えるかもしれない」とパラチニ氏は話した。

     

    武器弾薬は、日常の演習でも消耗は激しいもの。その部品の補給が滞れば、満足な演習も不可能になる。それは、輸出用の武器についても同じことだ。中国、インド、ベトナム、エジプトなどの主要輸入国も、新たな悩みに直面する。

     

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    ロシアが、2月24日に始めたウクライナ侵攻は、すでに2ヶ月が経った。解決の目途は全く立たず、逆にどこまで拡大するのか。世界は、おびただしい犠牲者の増加におののくだけである。現状では、ロシア軍を具体的に支援する国は現れないが、ウクライナ軍には武器弾薬の支援が強化されている。形の上では、ロシアが不利な状況である。結末は、どのようになるのか。プーチン氏以外には、誰も予測できないが、3つのシナリオ考えられるという。

     

    『日本経済新聞 電子版』(4月25日付)は、「プーチン政権『苦境悪化は不可避』ウクライナ侵攻2カ月」と題する記事を掲載した。筆者は、同紙の編集委員、高坂哲郎氏である。

     

    ロシアによるウクライナ侵攻の開始から2カ月が経過し、ロシア軍はウクライナの東部と南部で攻勢に出つつある。ウクライナのゼレンスキー政権は徹底抗戦の構えで、米欧なども同国支援を続ける構えだ。攻防戦の今後を予測すると、いかなる結果になってもロシアが開戦前より弱体化することが必至であることがみえてくる。

     


    (1)「第一のシナリオ。ロシア軍は、ウクライナ北部での作戦継続を断念した後、生き残った兵士を新たな部隊に再編成するとともに増援部隊も追加し、東部地域で攻勢に出つつある。東部は平原地帯で、ロシア軍はここで戦車や火砲を大量に投入してウクライナ軍を圧倒したい考えとみられる。攻防の最大の焦点は、米欧の軍事支援が十分間に合うかどうかだ。間に合わなければ、ロシア軍は南部でも攻勢を強め、モルドバ東部の親ロシア派が「沿ドニエストル共和国」を自称する地域につながる回廊を形成しそうだ」

     

    ウクライナ東部は平原地帯である。ロシア軍は、戦車や火砲を大量に投入してウクライナ軍を圧倒する戦術である。ウクライナ軍へ武器弾薬の増援が遅れれば、ロシア軍が有利な戦いになろう。

     


    (2)「その場合、プーチン大統領は「国外のロシア系住民の救済という作戦目的を達成した」として勝利を宣言しそうだ。英国のジョンソン首相は、戦争が来年末まで長引けば「ロシアが勝利する可能性はある」と語った。米欧の「支援疲れ」を懸念しているとみられる。その場合でもロシアは、大きくみると「戦闘には勝ったが、戦争には負けた状態」に陥る。ロシア支配地域とそれ以外のウクライナ領の間には新たな「鉄のカーテン」がひかれる形となり、対ロ制裁は固定化される。世界は再び東西に分断され、ロシア経済はソ連崩壊直後の1990年代のような大低迷期に突入しそうだ」

     

    ロシア軍が、ウクライナ東部で勝利を収めた場合、ロシア支配地域はウクライナ領と遮断される。この場合、ロシア制裁は固定化されてしまい、ロシア経済の混乱状態が継続する。

     


    (3)「第二のシナリオ。米欧の軍事支援が円滑に進み、ウクライナ軍が北部戦線と同様にロシア軍部隊を精密誘導兵器で効率的に撃破すると同時に、新たに供与される155ミリりゅう弾砲など重火器面でもロシア軍に対抗する展開を想定する。ロシア軍は攻勢に出ようとしているが、北部などでの苦戦を経験した兵士の士気は高いとは言えず、増援部隊にもそうした苦境は伝わっているとみられる。補給に陰りが出れば、ロシア軍首脳がもくろむ大規模攻勢をかけられるかは流動的となる」

     

    第一のシナリオと異なり、ウクライナ軍への支援が順調に進み、ロシア軍を圧倒するケースである。

     

    (4)「米欧のウクライナへの軍事支援の中身は質量ともに強まっている。「今後本格化するウクライナ軍の反撃で、ロシアはいずれ本国にまで押し戻されるかもしれない」と、シナリオAとは正反対の予測を語る元自衛隊情報系幹部もいる。確かに、破格な規模の武器供与をみていると、どうやら米欧は「プーチンが勝手に始めた戦争なのだから、これを奇貨としてこの際徹底的にロシア軍をたたき、当面は欧州方面で脅威にならない水準まで弱体化させてしまいたい」と考え始めたようにもみえる」

     

    NATO加盟国は、結束してウクライナ支援に立ち上がっている。下線部のように劣勢になったロシア軍を追詰める戦術も予想される。

     

    (5)「そうした展開になると、ウクライナが平和を回復する一方、ロシアの国内情勢は不安定化していく。「ウクライナ侵攻」から「ロシア不安定化」に事態が転化するわけだ。この展開に向かう必須要素は、米欧の支援が迅速かつ強力に進むこと、ロシア軍の本国撤退を「その時点でのロシアの指導者」が許容するかどうかの2点となる」

     

    ウクライナ優勢で情勢が逆転すれば、ロシアが国内的に苦境に立たされる。ロシア国内で,停戦の動きが出ないとも限らない状況も考えられる。

     

    (6)「第三のシナリオ。東部や南部での戦闘が膠着状態に陥ったり、ウクライナ軍が明らかに優勢になったりする場合、ロシア軍が化学兵器や核兵器といった大量破壊兵器の使用に踏み切る恐れがある。ロシア軍は伝統的に、戦術核兵器を「通常爆弾のちょっとした延長線上の兵器」程度にしか認識しておらず、プーチン大統領も過去にたびたび核使用の可能性に言及している。東部のどこかにウクライナ軍部隊が集結した場合、そこにロシア軍が戦術核攻撃をしかける危険がある。マリウポリの巨大製鉄所の地下には、なおウクライナ軍部隊や市民が隠れ、抵抗を続けている。世界の目が東部や南部での戦局に移る隙を突く形で、ロシア軍が製鉄所の完全制圧へ化学兵器を使う恐れもある」

     

    このシナリオでは、苦境に立たされるロシア軍が、化学兵器や核兵器を使って退勢挽回を図る事態だ。これは、ロシアにとっても悲劇的結末が待っている。

     


    (7)「ロシア軍による大量破壊兵器使用で起こりうるのは、第一に、ウクライナや米欧が衝撃を受けて混乱し、ロシアが一方的に勝利を宣言する展開だ。もうひとつは米欧の軍事支援が一段と手厚くなり、一部の国が公然と軍事行動に出たり、ウクライナ以外の場所でロシア軍対米欧諸国軍の戦いが始まったりする可能性だ」

     

    ロシア軍による大量破壊兵器使用されれば、そこで、ウクライナ戦争が終わる保証がないことだ。事態は、さらに悪化する危険性が出てくる。これを、どのようにして防ぐかだ。第三のシナリオになったなら、ロシア国民も安閑としていられなくなろう。その深刻さを早く、認識すべきだ。戦争を止めなければ危険である。

     

    あじさいのたまご
       

    上海市の都市封鎖は、解決の目途が立たない中で、北京市へコロナ拡大の気配を見せている。北京の新規感染者は、感染が広がって4日間で計70人となった。市民の間でロックダウン(都市封鎖)への懸念が広がっている。スーパーでは、野菜などの生鮮食品やカップ麺などの保存食品が、相次ぎ品薄状態になっているという。

     

    北京市中心部に位置する朝陽区は25日、住民や区内への通勤者全員を対象としたPCR検査を始めた。週内に3回の検査を義務づけている。こうした状況で、上海株価と人民元相場は25日、急落した。人民元が対ドルで約1年ぶりの安値(1ドル=6.55元)を付けたほか、上海総合指数が急落し心理的節目の3000を下回った。

     


    習近平氏にとっては、緊急事態発生である。今秋の党大会で、国家主席3期目を目指している。それだけに、何ごとも起こらずスムーズにことが運ぶ平穏な環境がベストだった。皮肉にも、逆の動きが強まっている。原因をたぐっていくと、すべて習氏の強引な政策決定に行き着くのである。

     

    『日本経済新聞 電子版』(4月25日付)は、「中国の封鎖拡大警戒、人民元1年ぶり安値 上海株急落」と題する記事を掲載した。

     

    中国で都市封鎖(ロックダウン)が上海市以外にも拡大しかねないとの懸念が広がり、市場の不安が高まっている。25日は人民元が対ドルで約1年ぶりの安値を付けたほか、上海総合指数が急落し心理的節目の3000を下回った。上海株の終値は約110カ月ぶりの安値水準だった。「ゼロコロナ」政策による物流の寸断などで経済や供給網(サプライチェーン)が一段の打撃を受けるリスクが意識されている。

     


    (1)「
    25日の上海外国為替市場で、人民元は対ドルで5営業日連続下落した。日中の取引時間で一時1ドル=.5579元と昨年4月以来約1年ぶりの安値を付けた。4月中旬以来、中国の長期金利の指標となる10年物国債の利回りは同米国債を下回ることが増えており、利回り面の優位性が消えていた。足元では都市封鎖の拡大懸念が広がる。

     

    人民元相場(25日21時40分:日本時間)は、1ドル6.55元である。日中の急落相場は,一時的な現象でなかったことを示している。中国経済の見通しが最近、急速に悪化していることが背景にある。

     


    (2)「北京市政府は24日、感染者が多い一部の区でPCR検査などの防疫体制を強化すると発表した。16日から移動制限を課す江蘇省蘇州市などでも都市封鎖懸念がくすぶり、各地のスーパーマーケットでは食料や日用品を買い込む市民が目立つ。上海市では3月28日に東部から都市封鎖が始まって1カ月近くが経過するが、全面解除はなお見通せず、経済や社会の安定に深刻な影響が出ている」

     

    北京市でもコロナ感染に警戒感を強めている。上海市のロックダウンでは、市民が食糧不足に陥って、苦情が殺到している。北京でも、その二の舞いにならないかと恐れられている。

     

    (3)「習近平指導部は「堅持こそが勝利」とのスローガンを唱え、「ゼロコロナ」政策の徹底を訴える。都市封鎖が上海市以外の都市に広がれば、中国経済の減速は必至だ。工場の操業停止や物流の寸断で供給網が混乱しかねず、「輸出が急速に落ち込むリスクが存在する」(平安証券の魏偉氏)。これまで人民元相場を押し上げる要因になってきた輸出企業の人民元買い需要がしぼむ可能性が浮上している。UBSは、「コロナで中国経済が試練に直面している」として6月の人民元対ドルレートの見通しを1ドル=.40元から同6.55元に引き下げた」

     

    先進国が、パンデミック下にあったときは、市民は在宅を強いられたので「モノへの需要」が急増し、中国の輸出も増加した。現在は、ウイズコロナで外出が可能になり「サービスへの需要」に転換している。こうして、中国の輸出が急減する一方、世界的なインフレによって輸入物価が高騰し、純輸出(輸出-輸入)が急減している。もはや、人民元高を支える条件は消えたのだ。

     

    (4)「上海株式市場では25日、上海総合指数が前週末比5%安の2928と急落し、2020年6月以来の安値水準となった。1日の下落率としては湖北省武漢市で感染が拡大した20年2月以来の大きさだ。25日は人民元の急落や封鎖拡大懸念を受けて、幅広い銘柄が売られ、769銘柄が制限値幅の下限(ストップ安水準)まで売られた。証券監督管理委員会は21日、主要な機関投資家を集め、「株式投資の割合を増加させる」ことなどを求めたが、今のところ効果は限られている」

     

    株価急落は、総合的な「中国評価」の低下でもある。習近平氏によって、突然の政策転換が行なわれ、見通しがつかなくなっていることが原因である。具体的に言えば、次の点だ。ウクライナへ侵攻したロシア支援、コロナ感染の拡大、諸々の規制強化など3点が、中国の未来展望を遮っている。習氏は、そのことに気づかす「裸の王様」になっている。

     

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    トルコが、ロシアに対してウクライナとの和平交渉へ真剣に立ち向かうように圧力をかけている。具体的には、ロシ軍用機によるトルコの空域通過を禁止したもの。ロシア軍機は、シリアに向かう際、どうしてもトルコ空域を通過しなければならない。トルコは、その弱点を突いて、ロシアに対してウクライナとの和平交渉に真剣に取り組むように促す目的である。

     

    英『フィナンシャル・タイムズ』(4月24日付)によれば、プーチン大統領は黒海艦隊旗艦『モスクワ』が撃沈されたことから、ウクライナとの和平交渉を放棄したと、されている。トルコは、こういう情報に危機感を持って和平交渉を促していると見られる。

     

    トルコ政府は24日、エルドアン大統領とウクライナのゼレンスキー大統領が電話会談したと発表した。エルドアン氏はウクライナ情勢を憂慮するとともに、停戦交渉を支援するとの意向をゼレンスキー氏に伝えた。ロシアのウクライナ侵攻では、両国と良好な関係にあるトルコが交渉を仲介。3月末にはトルコ・イスタンブールで停戦交渉が行われたが、その後、ウクライナ首都キーウ(キエフ)近郊ブチャで多数の民間人虐殺が見つかるなどし、交渉への機運がしぼんでいる。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(4月24日付)は、「ロシア軍機の通過拒むトルコ、ウクライナと和平迫る」と題する記事を掲載した。

     

    トルコがシリアへ向かうロシア軍によるトルコ空域の使用を禁止した。トルコ政府がロシアとウクライナの和平交渉を復活させようとするなか、プーチン大統領への圧力を強めるのが狙いだ。

     


    (1)「トルコのチャブシオール外相は、ロシアの軍用機は今後、シリアへ向かう途中でトルコを経由できないと述べた。ロシア政府はシリアでアサド政権を支える重要な役割を担ってきた。トルコ国営放送によると、チャブシオール氏は訪問先のウルグアイで記者団に「ロシアの軍用機だけでなく軍人をシリアへ運ぶ民間機に対してもトルコ領空を閉鎖した」と語った。トルコはウクライナでの戦争が始まった直後に黒海から地中海へ向かう外国軍艦の通航を制限しており、今回の空路封鎖はロシアにとってシリア国内での後方支援をさらに複雑にするとアナリストらは語る」

     

    トルコが、ロシア軍機の空域通過を拒否したので、シリア支援に支障を来たす。ロシアにとっては困った事態だ。ロシアが、「利用可能な空路補給ルート」は、今やイラン、イラク経由だけになったと指摘されている。

     


    (2)「トルコは、ロシア発着の商用機について今後も領空通過を認め、自国経済にとってのロシア人観光客の重要性を踏まえてロシア機に対する領空閉鎖で欧州連合(EU)に追随することを拒んだ。チャブシオール氏は、トルコのエルドアン大統領がプーチン氏に閉鎖の決定を伝え、両首脳は対話を継続していると語った。この問題に詳しい人物3人によると、ウクライナでロシアの新たな攻撃が始まって以来、トルコ政府はシリア入りするロシア軍による空域使用の許可を徐々に縮小してきた。だが、完全に領空を閉鎖し、それを公表する決定は重大な対応強化となる」

     

    トルコのエルドアン大統領は、なかなかの「曲者」である。大国を手玉にとって外交を行なうという大胆さを見せている。プーチン氏を「手なずける」戦術であるが、どうなるか。プーチン氏は、何らかの回答を迫られている。

     


    (3)「
    米フィラデルフィアにある外交政策研究所で中東部門を率いるアーロン・スタイン氏は、米国やその他の国が、トルコに対しシリアを支援するロシア政府への影響力を行使し、プーチン氏に対する圧力を強めるよう要請してきたと話す。「トルコ政府が話に乗るまで多少時間がかかったが、ほぼ2カ月でトルコ政府はウクライナ問題を巡ってロシア政府にシリアに絡めて圧力をかける新たな措置を講じた」と同氏は語った」

     

    このトルコによるロシアへの圧力は、米国などの諸国が依頼していたものという。

     

    (4)「プーチン氏が、第2次世界大戦以来最大の軍事攻撃に乗り出して以来、トルコは微妙な綱渡りを演じようとしてきた。大半の欧州諸国は戦争が始まった後すぐにロシア機に対して自国領空を閉鎖したが、トルコはむしろ仲介役になろうとした。また、トルコは欧米諸国の制裁に加わることには抵抗したものの、ウクライナ軍に武装ドローン(小型無人機)を供給している」

     

    トルコは、何かにつけてウクライナ側に立っている。ウクライナでの戦争が始まった直後に、黒海から地中海へ向かう外国軍艦の通航を制限した。ロシア軍艦もこの通航制限によって制約を受けている。ウクライナ軍に武装ドローンも供給している。この武装ドローン製造企業(民間)は、エルドアン大統領の女婿とされている。ロシアは、トルコに武装ドローンの供給停止を求めたが、「民間企業の活動に関与しない」との理由で拒否している。

     


    (5)「トルコが、いくつかの広い地域を実質的に支配し、大規模な軍事プレゼンスを持つシリアに関してロシアに圧力をかける政府の決定は、エルドアン氏とプーチン氏の複雑な関係を浮き彫りにする。両首脳は近年、親密な個人的関係を築いたが、シリアやリビア、カフカス地域の係争地ナゴルノカラバフの戦場では繰り返し、互いに対立する側に立ってきた。トルコ政府はウクライナとロシアの和平交渉を仲介しようとした。両国の交渉担当者は3月、4月とトルコでハイレベル会合を2度開いたが、ロシア部隊がウクライナの民間人に残虐行為を働いたとされたことで交渉は進まなかった」

     

    トルコが、ロシアへシリア関連で圧力をかけたのは「和平交渉にもっと真剣に臨むよう」ロシアに強いる狙いだと指摘しされている。これが、ロシアへの圧力となって和平交渉は始まるであろうか。

     

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