韓国次期政権は4月24日、日本政府との政策協議団を派遣した。日韓関係改善へ向けて動き出したもの。28日まで5日間の滞日予定である。岸田首相への親書を携えており、大統領就任式へ招待するという。
政策協議団は訪日中、岸田首相に続き、安倍晋三元首相、菅義偉前首相を相次いで表敬訪問する予定だ。また十倉雅和経団連会長と武田良太日韓議員連盟幹事長、泉健太立憲民主党代表ら政財界主要人物と幅広く面談する。林芳正外相とは25日に夕食をともにする。
『中央日報』(4月25日付)は、「『韓日の誤解を解こう』、韓国次期大統領 就任式に岸田首相招待」と題する記事を掲載した。
韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)次期大統領が冷え込んだ韓日関係に突破口を見出すために日本の岸田文雄首相を大統領就任式に招待するカードを出した。就任式の出席を名分として2年以上断絶していた韓日首脳間の疎通チャネルを復元しようということだ。
(1)「韓日政策協議代表団は、5月10日大統領就任式の招待内容を記した尹氏の親書を岸田首相に手渡す予定だ。代表団の団長である鄭鎭碩(チョン・ジンソク)国会副議長は、「最悪の状態で放置されてきた韓日関係を改善して正常化することが我々の国益に符合するという認識を尹氏は持っている」とし、「韓日間の密度ある対話を始めたい」と明らかにした。続いて岸田首相の大統領就任式の出席について「通常、各国首脳の出席はその国が決める」としつつも「最終決定事項はまだ受け取っていないが、世界各国のどの首脳も出席意志を送って下されば最善の礼節を守って迎える準備をしている」と答えた」
日本の首相が韓国大統領就任式へ出席するとなれば、2008年2月李明博(イ・ミョンバク)元大統領就任式に福田康夫首相が出席して以来、14年ぶりとなる。
(2)「大統領職引き継ぎ委員会は岸田首相が就任式に出席する場合、2年以上中断されていた韓日首脳間の疎通が復活されるとみている。通常、新しい大統領は就任式に出席した各国首脳と会談して祝賀使節団に面会する「就任式外交」を行う。朴槿恵(パク・クネ)前大統領の場合、2013年2月25日に韓印首脳会談に続いて麻生太郎当時日本副首相と面会した。翌日には韓加、韓豪首脳会談に臨んだ」
韓国次期政権は、対日関係で文政権との違いを強く打ち出したいところだ。米韓関係の緊密化には、日韓関係改善がポイントになっている。米国は、日米韓三ヶ国の連携強化がインド太平洋戦略の重要な結節点になると見ているからだ。
『ブルームバーグ』(4月24日付)は、「文政権下で冷え切った日韓関係、尹大統領就任で高まる改善期待」と題する記事を掲載した。
ここ数年悪化の一途をたどっていた日韓関係に転機が訪れそうだ。韓国の尹錫悦次期大統領は日本に歩み寄る姿勢を見せている。
(3)「韓国の代表団が24日から5日間の日程で日本を訪問する。5月10日に大統領に就任予定の尹氏は、文在寅政権下で悪化した日韓関係の修復に意欲を示している。尹氏はすでに米国に代表団を派遣しており、中国にも就任前に送る予定だ。共に米国の同盟国である日韓の関係改善は、バイデン政権にとっても歓迎すべき展開となる公算が大きい。米国は、中国と北朝鮮が突きつける安全保障上の脅威に対抗し、中国の干渉を受けることなく半導体など主要製品のサプライチェーンを確保するために日韓に協力を求めている」
経済が、安全保障と重要な絡みを持つ現在、日韓は半導体などの主要製品の供給面で大きな役割を担っている。米国は、日韓関係の改善を強く期待しているが、従来のように日本へ圧力をかけることを避けている。日韓関係悪化の理由が、韓国側にあることを熟知しているからだ。韓国の姿勢が改まるのをじっと待っていたのである。
(4)「保守系最大野党「国民の力」の尹氏は外交でタカ派姿勢を取る意向を示しており、これは岸田文雄政権が取り組む安全保障上の優先課題とも一部合致するだろう。地域での脅威が高まる中、ロシアのウクライナ侵攻は日韓両国に米国への依存を再認識させており、新政権の誕生は日韓関係正常化への機会をもたらす可能性がある。明知大学校のシン・ユル教授(政治学)は、韓国の安全保障には米国が不可欠であり、日本との関係修復も必要だと尹氏は認識していると指摘。「問題は歴史認識と安全保障のどちらを優先するかだ。選挙戦での公約と当選後の行動を踏まえると、尹氏は後者を優先する可能性が高い」と述べた」
韓国の安全保障には、米国のほかに日本の協力が不可欠である。韓国次期政権は、こういう認識に立っている。文政権は、米韓関係を大事にするが、日本は「主敵」という信じ難い姿勢であった。その意味で、韓国次期政権は対日関係のスタンスが大きく変わる。
(5)「もっとも、親日的と受け止めたられた過去2人の保守系大統領は国民から批判され、支持率の低下や政策の停滞を招いており、関係改善が円滑に進むかどうかは見通しにくい。歴代大統領の中でも支持率が低く、議会の過半数を革新系が占める中で就任する尹氏にはいかなる失敗も許されない」
韓国の最新世論調査では、日本への認識が変わってきた。親日ではないが、日本の存在を必要とするという変化である。この流れが、次期政権の登場によってどこまで深まるかだ。