勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2022年06月

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    中国は、南太平洋島嶼国へ布石を打つつもりで動いていたが、島嶼国側の拒否で不発に終わった。これに刺激された日米英豪NZ(ニュージーランド)の5ヶ国は、島嶼国側へ共同支援体制を組むことを決定した。米ホワイトハウスが25日発表した。

     

    中国はこれまでも「弱小国」への支援名目で過剰融資し、「債務の罠」にかける悪質な例が複数表面化している。南太平洋島嶼国でも、このようなリスクの発生が懸念されることから、日米英豪NZが先手を打って長期安定的な支援体制を組む。

     

    米国家安全保障会議(NSC)のカート・キャンベル・インド太平洋調整官は23日、閣僚など高官レベルの太平洋島嶼国訪問が増えることに期待を示した。キャンベル氏は、米シンクタンク、戦略国際問題研究所のイベントで講演し、米国はこの地域で外交施設や域内諸国との接触を増やす必要があると指摘した。「閣僚級など、より多くの高官が太平洋地域を訪問することになるだろう」と述べ、当地に足を運ぶ外交上の重要性を強調した。キャンベル氏は、中国には言及せず「われわれは太平洋地域に関して主権が重要と捉えている。主権を損なったり疑問視したりするような構想は懸念される」と述べた。

     

    『産経新聞』(6月26日付)は、「太平洋関与へ5カ国連携 日米豪などグループ設立」と題する記事を掲載した。

    米国、日本、オーストラリア、ニュージーランドと英国は24日、太平洋地域への関与強化に向けた協力枠組み「青い太平洋におけるパートナー(PBP)」を立ち上げた。米ホワイトハウスが発表した。太平洋の島嶼(とうしょ)国などを民主主義の5カ国が連携して支援。中国への対抗を念頭に、ルールに基づく自由で開かれた地域秩序を後押しする。

     

    (1)「5カ国はPBPを通じ、気候変動や海洋安全保障など地域各国が抱える課題の解決に協力し、外交的な関与を強化する。中国が南太平洋のソロモン諸島と協定を結ぶなど、海洋進出を強めており、地域諸国が過度に中国に傾斜するのを防ぐ狙いもある。ホワイトハウスは声明で「太平洋地域の繁栄と強靭(きょうじん)性、安全を支え続ける」と表明し、5カ国の協力強化の重要性を強調した。

     


    日米英豪NZの5ヶ国が、「青い太平洋におけるパートナー」を立上げて、太平洋島嶼国への恒常的な支援を行ない、中国の介入する余地をなくす。中国は、南太平洋のソロモン諸島と協定を結んだ。ただ、ソロモン諸島は島嶼国全体との協議に委ねる姿勢を見せている。島嶼国全体が、承認しない限り発効しないという立場を取っているのだ。

     

    (2)「米政府によると、5カ国の高官が23、24両日、米ワシントンで太平洋諸国の代表団と会合を開いた。会合にはフランス、欧州連合(EU)もオブザーバー参加した。会合を受けて24日に立ち上げたPBPについて「包摂的で非公式なメカニズム」と位置付けた。 PBPは「地域主義や主権、透明性、説明責任」を重視するとした。会合では運輸や海洋保護、保健衛生、教育分野も議論した

     

    南太平洋島嶼国の立場に立った支援体制を組む。運輸や海洋保護、保健衛生、教育分野など身近な問題の悩み解決に当る。

     


    (3)「米国の太平洋関与をめぐっては、国家安全保障会議(NSC)のキャンベル・インド太平洋調整官が23日の講演で、多国間で開放的な「太平洋の地域主義」を支えると表明していた。バイデン米大統領が5月下旬に訪日した際には、日米豪印4カ国の協力枠組み「クアッド」の首脳会合が開かれ、違法漁業を取り締まる新たな仕組みの発足で合意した。中国漁船による乱獲が一部で問題視されていた」

     

    中国は、支援する側の利益を先行させるのでなく、中国の権益を拡大するという旧式のタイプである。極端な秘密主義で契約内容の公開を厳禁しており、相手国の利益を奪取するという狙いが最初から明白になっている。植民地収奪スタイルだ。いまどき、こういうスタイルが通用すると考えているところが恐ろしい国である。

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    韓国文政権は、寝た子を起すに等しい外交惨事を引き起し、解決もできずに退任した。日韓慰安婦合意問題である。文氏の前政権へダメージを与えるという「私憤」が招いた事件である。こういう出鱈目なことが起こったのは、韓国政治の未熟性を示しており、日本としては許しがたい気持ちになって当然であろう。

     

    韓国では、政権が進歩派(民族主義)から保守派(リベラル)へ移った。新たな視点で、この難問に取り組まざるを得まい。一義的に、韓国国内の問題であるのだ。これが実現すれば、日韓関係も解決の方向へ動き出すであろう。

     


    『朝鮮日報』(6月26日付)は、「韓日慰安婦合意は本当に『屈辱』だったか」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のイム・ミンヒョク記者である。

     

    来週のNATO(北大西洋条約機構)首脳会議の舞台から、韓日関係の突破口を探るための外交的努力が始まる。展望は明るいだけではない。「未来志向」の意思は十分でも、現実的な過去史の壁はあまりにも高いからだ。強制徴用と共に過去史問題の一つの軸となっている慰安婦問題に関連して、最近公開された「外交部(省に相当)-尹美香(ユン・ミヒャン)面談」文書は、数年にわたって傾けられた努力が一瞬で水泡に帰する過程の一断面を見せてくれる。同じミスを繰り返さないためにも、何があったのか振り返ってみる必要がある。

     

    (1)「慰安婦問題で韓国政府が、数十年にわたり日本政府に要求してきた核心は、「謝罪と責任認定、それに伴う賠償」だった。その水準についてはいろいろな意見があったが、最も重要なのは被害者が受け入れるかどうかだった。2015年の韓日慰安婦合意の交渉を行った当局者は、ばかではない。彼らは、合意後に被害者が反対したら自分たちが「売国奴」として追われるであろうことを誰よりもよく理解していた。だから合意前に10回以上も被害者側と接触し、意見交換を行ったのだ。当時、正義連の代表だった尹美香氏は「私を(被害者側の)窓口にしてほしい」と言ったという」

     

    慰安婦問題の真相は不明である。自主的に慰安婦になった人たちが圧倒的であるからだ。韓国が、日本追及手段にこれを利用したこと。米国も真相を知らないで「人権問題」として一括りにしたことなど、日韓慰安婦合意の裏には日本の不満が鬱積していた。日本は、それにも関わらず「政治解決」したものである。韓国は、こういう日本側の事情を無視して居丈高になったので、日本が反発して泥沼に陥ったのだ。

     

    (2)「韓国外交部の文書によると、合意発表前日に交渉団は尹氏に「安倍首相の直接謝罪・反省表明」「日本政府の予算10億円拠出」など、中心的な骨子を事前に伝えた。そのいずれも、被害者の「恨」(ハン。晴らせない無念の思い)を100%解くことはできないが、「日本政府の予算拠出+首相の謝罪」は日本の責任を明らかにするもので、その意味は小さくなかった。尹氏も前向きな反応を示したといわれている。交渉家らは「被害者の同意を得た」と考えただろう」

     

    文在寅氏は、「日本は加害者、韓国は被害者」という立場を一貫させた。だから、韓国が無理な要求を出しても、日本はすべて飲むべきという一方的な姿勢であった。文氏は、弁護士出身である以上、係争事件の落としどころを知っている筈である。そのブレーキまで外して、日本へ対抗した。愚かな「弁護士」であった。

     


    (3)「ところが尹氏は、韓国側の措置、すなわち「日本大使館前少女像問題の解決の努力」「国際社会での非難・批判の自粛」「最終的・不可逆的解決の確認」と言う部分は聞かなかったという点を問題にしている。「政府が屈辱合意を隠した」と非難した。この部分は確かめてみるべきだ。少女像や国際社会での批判は、それ自体が目的ではない。責任認定、反省に背を向ける日本を圧迫するための手段だった」

     

    尹美香氏は、慰安婦問題で金儲けを企んでいた。現在、寄付金横領で裁判中の身であることが証明している。尹氏は、日韓慰安婦合意でこの問題が落着すると以後、募金活動ができなくなるので、文在寅氏へ協力して破棄へ持込んだのが真相だ。要するに、文氏と尹氏による「共謀事件」である。

     


    (4)「納得できるだけの謝罪と反省を得られたなら、ことさら国際法的論争を引き起こしながら外国公館前に少女像を置いておく必要はない。少女像を撤去するのでもなく、別の意味ある空間へ移そうというものだった。また、謝罪・賠償を受けたら韓国が国際社会で日本をののしる理由もなくなる。こうなれば、自然と最終的・不可逆的に問題は解決する。もし日本が合意を守らず、とんでもないことを言い出したら、そのときはまた少女像、国際社会での批判を動員すればいい。これをもって、合意自体に「屈辱」のレッテルを張るのは正しいことか」

     

    日韓慰安婦合意によって、すべての紛議を終わらせる。それが、政治的決着の意味である。韓国は、この意味するところを実行せず、少女像を日本大使館正面に置くだけでなく、世界中にばらまくことを止めなかった。いかにも朝鮮民族らしい振る舞いと言うほかない。恥を世界に吹聴して歩くからだ。朝鮮時代の夫婦喧嘩は、わざわざ外でやるという話を聞いた。少女像の海外配置はこの類いである。

     


    (5)「責任認定、賠償の部分に問題があるのなら、尹氏は事前説明を聞いた際に被害者と共有し、「絶対駄目」とブレーキをかけるべきだった。だが慰安婦被害者の李容洙(イ・ヨンス)ハルモニ(おばあさん)などは、「尹美香は合意の内容を知らせてくれなかった」と語った。合意の発表後、世論では少女像ばかりを浮き彫りにし、「尻尾が胴を振り回す」格好になった」

     

    民事事件において一件落着後は、一切これに触れないという条項がある。少女像は、明文化していなくても、合意後は自粛するのが韓国政府に義務であろう。それを放棄した。

     

    (6)「一度もつれた結び目は、余計に絡む。文在寅(ムン・ジェイン)政権は慰安婦合意を、前政権を攻撃する手段として活用し、外交部は前後の脈絡をきちんと知っていながら「大変な欠陥」があったとして、事実上合意を破棄した。そのせいで、加害者である日本が「韓国は国家間合意も守らない」と大声を上げる状況になると、文在寅大統領は後になって「両国間の公式合意であることは間違いない」と言った。慰安婦合意が「粥でも飯でもない」中途半端な状態になってから5年間、被害者のための措置は一歩も前に進まなかった。その間に、35人いた生存者のうち24人が世を去った」

     

    旧慰安婦とされた人々の大半は、日本の提供した10億円の中から資金が渡されている。それにも関わらず、韓国で別の慰謝料請求裁判の原告になった者まで表われた。韓国地裁は、この事実を指摘して、「一度受領した者に請求権はない」と諭される始末だ。名誉回復が目的でなく、金儲けが絡んでいる。

     

    (7)「ただでさえ難題の韓日問題に、国内政治、陣営の論理、世論の追い立てが絡むと、このような悲劇が起きる。尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権が反面教師にすべき理由がここにある」

     

    尹政権は、こういう文政権の不始末をどのようにして解決するのか。旧徴用工問題も同じだ。文氏は、民衆を煽っておきながら解決もしないで退任した。無責任な大統領であった。

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    EU(欧州連合)は、ウクライナとモルドヴァの両国を「加盟候補国」と承認した。EU加盟国27カ国が全会一致で決めた。今後は、国内の制度改革が実効を挙げたか、その実績評価によって、正式な加盟国になる。これによって、経済的なメリットを受ける。EU域内では、モノやサービス、ヒトが自由に移動できる。ウクライナ国民も、EU市民になれば域内のどこにでも住み、働くことができるからだ。現状から見ると、夢のような環境が生まれる。

     

    こうした経済的メリットもさることながら、「EUに加盟することで、ウクライナはロシア世界の一部ではなく、欧州の独立主権国家という地位を確立できるだろう」という指摘がある。バルト三国(エストニア・リトアニア・ラトビア)が、「一寸の虫にも三分の魂」で自由を叫び、ロシアから独立した血の叫びを想起すべきだろう。人間には、自由が不可欠である。ウクライナ国民は、それを勝ち取ろうとしているのだ。

     


    英国『BBC』(6月23日付)は、「ウクライナがEU加盟候補国へ『何が変わる』ロシアの反応は?」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「ゼレンスキー大統領は、今年2月にロシアの侵攻が始まった5日後に、EU加盟を申請した。ウクライナ側は即時の加盟を求めているが、その手続きには数年かかる可能性もある。EUに加盟すれば財政的な利点があるだろう。しかし、ブリュッセルのシンクタンク「欧州政策研究センター」のザック・パイキン博士は、ウクライナの動機は経済的なものではないと指摘する。「EUに加盟することで、ウクライナはロシア世界の一部ではなく、欧州の独立主権国家という地位を確立できるだろう」と、パイキン博士は述べた」

     

    ウクライナのEU加盟への目的は、欧州の一員になってロシアと縁を切りたいことだという。ウクライナ人の親類縁者はロシアに一杯いるが、もはや価値観が異なる以上、絶縁したいのだ。ウクライナ正教は、すでにロシア正教から独立した存在である。信仰が異なる以上、ロシアの支配を受けたくないという独立精神が旺盛なのだ。

     


    (2)「欧州委員会は、
    申請した国が加盟候補にふさわしいかどうかを判断する。安定した民主主義政府があるかどうか、人権が尊重されているか、自由市場経済が存在しているかどうかなどが基準となる。この手続きの後、欧州委が申請国を加盟候補に推奨すると、次は全加盟国の承認が必要となる。全加盟国が承認し、正式な加盟候補となった国は、数年をかけてEU法や規制を国内法に適用していく。このプロセスが終わって初めて、加盟候補国は加盟条約に署名することができる。この条約も、全加盟国が批准する必要がある」

     

    欧州は、カソリックかプロテスタントである。宗教改革や科学革命を経験している文化圏だ。それだけに、正教の古い慣行に染まっている国では、汚職などがはびこっている。EUは、それを糺さないと正式加盟国として受入れない。

     


    (3)「ブルガリアやルーマニア、クロアチアといった直近の加盟国は、一連の手続きに10~12年を費やした。アルバニアと北マケドニア、モンテネグロ、セルビアは正式な加盟候補国となって数年がたっているが、手続きは滞っている。トルコも1999年に加盟候補国となったものの、人権侵害への懸念があることから、加盟交渉は中断したままだ。ウクライナの隣国のモルドヴァも、ウクライナと同じ日に加盟候補国に認められた。ジョージアも同時期に申請したが、いくつかの改革が必要と判断された」

     

    ブルガリアやルーマニアの宗教は正教である。クロアチアはカトリックが8割である。一連の手続きに10~12年も費やしている。ウクライナは、こういう国々と比べてどこまで短縮できるかだ。ウクライナ侵攻という多大の犠牲を被っても、新しい国造りを目指す熱意が、期間を短縮させることを期待したい。

     

    (4)「ウクライナは、EU加盟申請への準備としてすでに、数々の国内法や規制をEU基準に変更している。欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、ウクライナは「良い仕事をしている」と述べた一方で、加盟に向けてはさらに「重要な改革」が必要だと指摘した。これには、法の統治の強化、人権状況の改善、オリガルヒ(新興財閥)の権力縮小、汚職対策などが挙げられている。欧州政策研究センターのパイキン博士はさらに、「ウクライナは一人前の市場経済を構築する必要がある。旧ソ連国には難しい課題だ」と指摘した。また、大きな批判を浴びている司法体系の整備も、課題の一つだという」

     

    ウクライナが、EUの加盟国になるには下線部のような改善が課されている。オリガルヒの権力はかなり縮小されている。ウクライナ侵攻撃退で、自費で戦費を提供している例もあるという。

     


    (5)「EU加盟から15年がたった
    ルーマニアでは国民総所得が3に、ブルガリアでは2に拡大した。EUは欧州構造投資基金(ESIF)を通じ、両国に数百億ユーロを投入している。こうした資金は、新しい道路や港の建設などに充てられ、経済開発を支援している。2014~2020年に、ブルガリアは112億ユーロを、ルーマニアは350億ユーロを受け取っている。一方で、各国の腐敗・汚職に取り組む非政府組織トランスペアレンシー・インターナショナルは、こうした資金の多くが汚職によって失われていると指摘する」

     

    EUが、汚職に厳しい目を向けているのは、EUからの補助金が汚職で消えているからだ。EUが、新加盟国のハードルを高くしているの裏には、こういう事情があるのだ。

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    韓国の文前政権は、検察制度をヤリ玉に上げて骨抜きにしてしまった。検察が、政治家の犯罪を捜査しにくい状況に持込んだのである。韓国検察が、捜査と起訴の両権力を持つことを恐れたのだ。実は、韓国の検察制度は日本から導入したもの。さらに遡れば、明治新政府がフランス検察制度を採用したという歴史である。韓国検察制度の淵源は、フランスまで行き着き、韓国の政治家だけに特別厳しいものでない。文氏は、自らが捜査対象になることを回避すべく、検察制度をメチャクチャにした。

     

    韓国新大統領、尹錫悦(ユン・ソンニョル)氏は検察育ちである。それだけに、日本へ親しみを持っていると言われる。これが、どのように日韓関係打開に役立つのか関心が集まる。

     


    『日本経済新聞 電子版』(6月25日付)は、「『検事・尹錫悦』の日韓関係」と題する記事を掲載した。

     

    韓国の尹錫悦大統領の執務机には〝The buck stops here!(責任は私が取る)〟と書かれた木製のプレートが置かれている。米国のトルーマン元大統領が好んだ言葉だ。5月に訪韓したバイデン大統領が尹氏に贈った。

     

    (1)「5月の就任から1カ月半がたち、尹氏はプレートの言葉通りに強力なリーダーシップを意識している。反対を気にせず、わずか2カ月で大統領府を青瓦台から国防省庁舎に移転させたのは最たる例だ。国防省は混乱に包まれながらも、命令通り突貫工事で期日に間に合わせた。政権の人事では野党やメディアから「検察共和国」と皮肉られるほど、自分がよく知る検事や官僚を多く起用した。信頼できる人物を要の場所に据え、自らの指示を各組織に行き渡らせる狙いのようだ」

     

    進歩派メディア『ハンギョレ新聞』は連日、尹政権批判を繰り広げている。大統領夫人まで批判が及んでいるのだ。夫人が私人資格で、大統領経験者の夫人を訪問の際、友人を同伴したと取り上げ騒ぎ立てるぐ始末だ。私人の資格で訪問している以上、許されると思うのだが、夫人も「公人」として批判する。保守派が大統領になって、「癪だ」ということらしい。韓国政治の後進性を如実に示している。

     


    (2)「強力なトップダウンの統治スタイルは、「長年身を置いた韓国検察の特捜部で培われた」との見方がある。浮上した疑惑から事件の構図を描き、時には強引にも映る捜査手法もいとわないのが特捜部だ。検察総長の時は、検察改革に踏み入った文在寅(ムン・ジェイン)政権の疑惑捜査を指揮し、真っ向から対峙した。「韓日関係はうまくいく」と断言する尹氏の日本観も、特捜検事という経歴と無縁ではない。日韓の検察当局が深めてきた交流の歴史が背景にある。尹氏は5月10日の就任式に、日本から一人の検事を招待した。青森地検で三席検事を務めている小池忠太氏だ。ソウルの日本大使館で1等書記官として勤務していた頃、検察幹部だった尹氏と何度も焼酎の杯を交わした」

     

    検察総長を務めた人物である。リーダーシップは申し分ないであろう。性格的には、田中角栄に似ているようだ。友情を大事にするタイプだ。青森地検の検事は、韓国大使館へ出向中に意気投合して、「兄弟」のような付き合いだったと韓国メディアが紹介している。

     

    (3)「韓国の元検事によると、「韓国の特捜部は東京地検特捜部をベンチマークにしてきた」のだという。東京地検が政界の疑獄に切り込んだロッキード事件やリクルート事件は、韓国の検事にも刺激を与えた。別の元特捜検事は「検察内と韓国社会一般の対日観はやや異なる。検事が『日本通』であることは、決して否定的な意味を持っていない」と話す」

     

    日韓の検察制度が同じ系譜である以上、交流は盛んであるに違いない。韓国検察は、日本に対して先入観を持っていない。文在寅氏とは、大きな違いだ。

     


    (4)「尹氏が、検事出身ながら外交と安全保障への理解と関心が深いという点で、周囲の評は一致する。外国首脳との会談に陪席した政府高官は、自然体で誰とでも打ち解ける尹氏を見て「大統領の社交的で明るい性格は、周辺国外交に大きく寄与するはずだ」と期待を込める。一方で日本との関係は大統領の意思とトップダウンだけでは突破できないほど複雑にこじれてしまった。韓国の裁判所が日本側の責任を問い、賠償命令を下した元徴用工や慰安婦の問題を解決するには、法律が必要だ」

     

    文氏は、根っからの「反日」であった。尹氏がそうでないとすれば、話の理解度は早いはずである。日韓関係は、これ以上の悪化はないのだから、時間をかけて行けば、日本の納得する回答を持ってくるであろう。

     

    (5)「韓国側は民間交流の再開を先行し、(日韓関係の)改善の雰囲気を醸成したいと考えている。岸田文雄首相と尹氏は、スペインで今月末に開く北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に参加する。日韓首脳会談の開催を巡っては双方に温度差がある。韓国側は意欲的だが、参院選の投開票を控えた日本は、懸案の解決策が見えないため慎重だ」

     

    文氏によって、日本の韓国嫌いは激増した。この状況が改善されるには、どれだけの時間がかかるのか。予測は難しい。

     

     

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    北京で6月23日、オンライン形式で開催された第14回BRICS(ブラジル・ロシア・インド・中国・南アフリカ)首脳会議では、世界を驚かすようなことも起こらなかった。元々、BRICSには特別の意味もなく2001年、新興国の経済発展が目覚ましいというだけの視点で注目されたものだ。

     

    当初、米金融大手ゴールドマン・サックスのエコノミストであった、ジム・オニール氏が「BRICs」と命名したものである。ブラジル・ロシア・インド・中国の急成長に関心が集まった結果だ。その後、中国などが南アフリカを加えて「BRICS」になったという経緯である。

     

    世界の主要メディアはなぜ、今回のBRICS首脳会議を無視したのか。それは、BRICS自体が、一枚岩でないことだろう。中国とインドは反目し合う関係である。インドとロシは、武器供給関係で結ばれているが、インドが武器輸入で「脱ロシア」の動きを見せているのだ。インドはすでに、米・英・欧・イスラエルと武器共同開発へ取り組んでいる。こうなると、BRICSの有力メンバーのインドは、BRICSそのものへの関心が薄れても致し方ない。

     

    中国が、BRICS首脳会議終了後に発表した共同文書は格別、目新しいことは書かれていないが、最後に次のような件(くだり)がある。

     

    「BRICS拡大のプロセスを推進し、志を同じくするパートナーが早期にBRICSというファミリーに加わることができるようにし、BRICS協力に新たな活力をもたらし、BRICSの代表性と影響力を高めるべきだ」(『人民網』6月24日付)

     

    これは、BRICSを「ファミリー」と称していることと、「参加メンバーを増やしたい」と呼びかけていることだ。当初の狙いでは、「BRICSを米欧への対抗軸にする」とされていたが、共同文書ではすっかりトーンダウンしている。これは、インドの強い意向を反映したと見られる。インドは、BRICSをそのような「戦闘的グループ」と位置づけていないのだ。BRICSで中国の腹の内を見抜く機会と捉えているのだろう。

     


    ここで、BRICs命名者のオニール氏の見解を紹介したい。

     

    『日本経済新聞 電子版』(2021年11月10日付)は、「BRICs20年 広がる分断 ジム・オニール氏」と題する記事を掲載した。

     

    2001年11月、私が米金融大手ゴールドマン・サックスのエコノミストとして「BRICs(ブラジル・ロシア・インド・中国)」という言葉をリポートで初めて使ってから、20年が経過した。リポート発表の意図は、有望な新興4カ国の単なる経済予測ではなかった。米欧や日本の先進国と新興国の勢力が拮抗する結果、世界は中国などを取り込んだ新しい経済・政治の枠組みをつくる必要に迫られるだろうというメッセージを打ち出したかった。

     

    BRICsの成長を個別に振り返ると、過去20年の中国は私の予測をはるかに上回り、インドはおおむね予想通りだった。対照的にロシアとブラジルの経済の前半10年は良かったが、後半10年は失望的な結果に終わった。しかし、過去20年の世界経済をみれば、新興国の台頭と地位の向上は揺るぎない事実だ。

     


    (1)「中国・インドとロシア・ブラジルの違いは何か。一言で説明するなら、ロシアとブラジルはエネルギーや鉱物資源に恵まれているため、他の産業を育てる策が後手に回った。「資源の呪い」といわれる現象だ。中国とインドにも問題はある。両国とも産業構造はそれなりに多様だが、過去の成長は人口の増加によるところが大きい。人口の急増はいつまでも続かない。特に中国は人口動態の点で厳しい局面に入った。いままでのように高成長で人びとの不満を抑えるやり方は通用しない。特に21年の中国経済は、かなりの急ブレーキがかかると予想している。いずれ中国が米国の経済規模を抜き、世界最大の経済大国になるという予想がある。いまも可能性はあると思うが、もはや確信は抱けない」

     

    BRICs4ヶ国は、2つのグループに分けられる。

    1)ロシアとブラジルは、エネルギーや鉱物資源に依存したモノカルチャー経済の弊害に陥った。

    2)中国とインドは、人口増に支えられた経済成長である。これも限界点に達する。

     

    要するに、BRICs4ヶ国は、互いに「脛に傷を持った」身である。「中所得国のワナ」という共通の落し穴が待っている経済であることだ。ロシアは、今回のウクライナ侵攻で、永遠の発展途上国を運命づけられる。中国は、今年から人口減社会である。世界で「中ロ枢軸」に区分けされた結果、欧米から「技術遮断」されるリスクが高まっている。インドは、「クアッド」(日米豪印)のグループ入りして、技術面での支援を受けられるので発展の可能性は残された。

     


    (2)「BRICsや他の新興国が今後の20年、30年を展望した場合、構造改革を進めることが欠かせない。資源や人口に頼った成長は、持続可能ではない。貿易の拡大や産業の育成が必要だ。新興国の存在が世界に投げかけているものは、経済成長の問題ばかりではない。資本主義や民主主義のあり方についても、新興国の視点が欠かせない。BRICsリポートが初めて世に出た01年は、中国が世界貿易機関(WTO)への加盟を果たした年でもある。当時の先進国の自由主義者は、中国も経済成長とともに米欧流の民主主義に接近してくると楽観していた。私たちはいま、中国への考えがいかに根拠に乏しいものだったか痛感している」

     

    西側諸国は、中国がWTOへ加盟する際に抱いた期待(民主主義国への発展)が打ち砕かれた。それどころか、ロシアと一体化して米国覇権への挑戦という、思いも寄らなかった方向へ突っ走っている。BRICsの中では唯一、インドがこれからどう発展して行くか見守る段階である。インドは唯一、漁夫の利を得るであろう。

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