勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2022年06月

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    日韓関係の漂流は、いったんこじれた外交関係の回復がいかに難しいかを示す典型例である。韓国で、日韓関係をぶち壊したのは進歩派の文政権である。すでに、保守派の尹政権に代わったと言っても、懸案事項が解決しない限り話合いのテーブルには着けないのだ。

     

    NATO(北大西洋条約機構)首脳会議が、今月29~30日にスペインで開催される。日本、韓国、豪州、NZ(ニュージーランド)首脳も招待されている。韓国は、この機会を利用して日韓首脳会談を実現させたい意向だ。韓国側の報道によれば、日韓首脳が顔合わせする機会は3回あるという。そのうちの1回でも利用して会談したいとしている。

     

    日本側の報道では、「立ち話程度」という懇談形式を韓国側に伝えている。正式の両国の国旗を立てた「会談」ではない。

     

    『中央日報』(6月23日付)は、「NATO会議で3回会う韓日首脳、関係改善の契機に」と題する社説を掲載した。

     

    韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が29~30日にスペイン・マドリードで開かれる北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に韓国大統領として初めて出席する。尹大統領のNATO首脳会議出席は就任後初の海外訪問、初めての多国間首脳外交という点を越えて、国際秩序の激変期に韓国の外交地平を大きく拡大するという点で意味が大きい。

     

    (1)「金聖翰(キム・ソンハン)国家安保室長は、昨日のブリーフィングで「NATO同盟30カ国は自由民主主義・法治・人権など普遍的価値と規範を共有する伝統友好国で、彼らと価値連帯を強化していきたい」とした。「北核問題に対する韓国の立場を説明して参加国の支持を確保する」とし、特に「予測不可能な国際情勢の中におけるNATO同盟との包括的安保基盤構築」という意味を強調した」

     

    下線部が、韓国の本音であろう。予測不可能な国際情勢の変化に対応するには、安全保障の網(同盟)を広く張っておくことである。韓国が、このことに気付いたのだ。文政権であれば、参加しないだろう。

     


    (2)「ロシアのウクライナ侵攻以降、国際社会が民主自由陣営と中国・ロシアなど権威主義国家間の対立構図に固定化している現実で韓半島(朝鮮半島)安保のための選択という意味に聞こえる。韓国政府はこの際、NATO本部があるベルギー・ブリュッセルに在NATO代表部も新設すると話した。外交地平拡張の物的基盤を用意する時期適切な措置だ」

     

    韓国も、NATO代表部も新設することになった。日本は、安倍政権時代にNATO代表部を設置した。

     

    (3)「尹大統領のNATO首脳会議出席は、韓国がこれまで米・中の間で取ってきた「戦略的曖昧性」から抜け出す歩みと見ることができる。それでも、反中国基調ではないことは明確にしなければならない。安保室関係者も「招待を受けただけで(NATOの)集団防衛実践とは関係がない」「(ウクライナ戦争は)平和と自由に対する脅威だが、協力して対処することが反中というのは論理の飛躍」と説明した。その通りだ。命を捧げて自由を守ったおかげで今日の大韓民国がある。グローバル中枢国家として、その役割を堂々と果たす時が来た。ただし慎重に、精巧に取り組んでいかなければなければならない」

     

    韓国は、相変わらず中国の鼻息を覗っている。これで、独立国家と言えるだろうかという気配りである。精神的に、中国から独立していない証拠である。かつての宗主国を恐れているのだ。

     


    (4)「NATO会議で韓日首脳会談は、今のところ日程が決まっていないという。その代わり韓日米首脳会談と韓国・日本・オーストラリア・ニュージーランド4カ国首脳会談などで尹錫悦大統領と岸田文雄首相が3回顔を合わせる機会がある。韓国と日本の官民で両国関係を復元しなければならないだけに、これを機に関係復元の出口を開くことができればと願うばかりだ。日韓議員連盟の武田良太幹事長は一昨日の中央日報とのインタビューで韓国大法院(最高裁)の徴用者賠償判決などに関連し、韓国が解決アイディアを出して日本がこれを受けてボールを投げ、韓国がボールを投げ返すといういわゆる「キャッチボール」論を提起した」

     

    韓国はなぜ、これほど日韓関係復元に執心しているのか。経済情勢の悪化が最大の理由であろう。文氏は日本へ悪態をついたが、最後に頼りにしなければならないのは日本である。悪口雑言を吐いた側は忘れていても、言われた側は覚えているもの。外交的にも、感情にまかせた言動をしてならないのだ。韓国に、これをしっかりと記憶させなければならない。

     


    (5)「韓国と日本の官民で両国関係を復元しなければならないという雰囲気は熟した。ちょうどコロナ事態で閉じられた金浦(キンポ)-羽田の「空の道」も2年3カ月ぶりに開かれるという便りも入ってきた。2002年ワールドカップ(W杯)共同開催をベースに開かれた韓日人的交流の象徴的な路線だ。韓日懸案を議論する機構も検討中だという。透明に、そして落ち着いて世論を集めていきながら関係改善の突破口を探すことを希望する」

     

    民間の交流が、日韓関係改善の第一歩である。韓国は、二度と再び「感情外交」と「反日運動」をしないと心で決められるだろうか。それが、日本側へ伝わるまで時間もかかるだろう。

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    ウクライナ侵攻は、すでに4ヶ月を過ぎた。原油や穀物の価格高騰で国民生活が圧迫されている。フランスでは、総選挙で極右政党が第二党に踊り出るなど波乱含みである。これを受けて、6月26~28日にドイツで開催されるG7首脳会談では、ウクライナ支援で結束を固める方針を打ち出している。

     

    『中央日報』(6月24日付)は、「マクロンが真っ先に打撃、底なしのウクライナ支援で経済的圧迫を受ける欧州」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアのウクライナ侵攻によって勃発した戦争が4カ月目を迎えながら欧州が揺れている。これまでロシア報復を目標に単一隊列を誇っていたが、戦争発インフレで経済沈滞が深刻化し、戦争終息と休戦を要求する声が力を増している。

     


    (1)「イタリアでは、ウクライナ支援問題をめぐり連立内閣が崩壊する兆しまで見えている。政府与党である五つ星運動(M5S)の党首であり元首相であるジュゼッペ・コンテ氏は「武器支援は戦争を延長してむやみに犠牲を増やすだけ」としながら「対話・交渉を通した早急な終戦」を主張する。ウクライナ支援を主張するマリオ・ドラギ首相との衝突が続き、コンテ氏に反発した議員が離党して新党を結成すると21日(現地時間)、明らかにした。最近、欧州のシンクタンク「欧州外交問題評議会(ECFR)」の調査によると、フランス・ドイツ・ルーマニアなどで「戦争を最大限早期に終わらせなければならない」という回答(35%)が「ロシアを懲らしめなければならない」という回答(22%)を上回った」

     

    物価上昇が、市民によるウクライナ侵攻へのスタンスに影響を与え始めた。イタリアでは、連立政権に亀裂が入った。フランス・ドイツ・ルーマニアなどの世論調査では、戦争の早期解決派が増えている。



    (2)「何よりロシアに対するエネルギー制裁が西側にブーメランとして返ってきている。ドイツは23日、ロシアのガス供給が減少しながらガス非常供給計画を第2段階である「警報(Alarm)」に引き上げた。欧州連合(EU)は身を削る苦痛に耐えてロシア産の石炭・石油禁輸措置に出たが、かえってこれはガス・原油価格を暴騰させてロシアの残高を増やしている。さらにロシアが制裁の応戦として欧州に向かう天然ガスのパイプラインを閉めて黒海を通した食糧輸出を統制すると、各国の物価不安に広がっている」

     

    ドイツのハベック経済相は、天然ガス供給が増えない限り、12月までにガス不足に陥るとの予測を示した。一方、ショルツ首相は22日の議会演説で、G7首脳会談において「プーチン(ロシア大統領)の帝国主義との戦いだけでなく、飢餓、貧困、健康危機、気候変動との戦いでも世界の民主主義国が共にある」ことを示さなければならないと強調。西側が、南半球の途上国との連帯を示さなければ、ロシアや中国が恩恵を受けることになると警告した。

     


    (3)「経済協力開発機構(OECD)加盟38カ国の今年4月の消費者物価は9.2%上昇した。通貨危機時期だった1998年(9.3%)以降、最高値だ。食料品(11.5%)価格が最も大きく跳ね上がった。ユーロ圏の先月の消費者物価は8.1%、米国は8.6%高騰してすべて40年ぶりの最高値を記録した。いわゆる「プーチンフレーション(プーチン+インフレーション)」の襲撃だ」

     

    OECD38ヶ国の今年4月の消費者物価は、9.2%も上昇した。1998年以来の高騰である。台所への影響は深刻である。

     

    (4)「物価急騰の中で賃金引き上げを要求するデモにも火がついた。英国では鉄道労組が33年ぶりに最大規模のストライキに突入したことに続き、法曹・医療・教育分野の労働者までストライキに参加する兆しをみせている。フランス・スペイン・イタリア・ポルトガルでは航空関連労働者が来月ストライキを予告したほか、ベルギーは20日にブリュッセル空港保安要員のストライキですべての出発航空便が欠航となった。英国の鉄道ストに参加しているある男性は「闘わなければ家賃も暖房費も出すことができない」とし、切迫した心情を吐露した」

     

    物価高騰を背景にして、賃上げ要求も激しくなっている。英国では鉄道労組が、フランス・スペイン・イタリア・ポルトガルでは航空関連労働者が来月ストライキを予告している。



    (5)「これによる民心離反にフランス政府が真っ先にダメージを受けた。19日に開かれた総選挙で与党は過半議席の確保に失敗した。フランスの政府与党が過半を獲得できなかったのはこの20年で初めてだ。エマニュエル・マクロン大統領がガス・電気料金の上限ラインの設定などで支持層をつなぎとめようとしたが失敗した。選挙を控えた他の国々も神経を尖らせている。ドイツは10月、民心のマイルストーンと呼ばれるニーダーザクセンで州議会選挙を行う。イタリアは翌年6月の総選挙日程が決まった。米国は11月に中間選挙を控えている」

     

    フランスの総選挙では、極右政党が第二党の議席を占めた。イタリアは来年6月の総選挙日程が決まった。米国は11月に中間選挙を控えている。与党にとっては、物価高の影響が危惧されるところだ。

     


    (6)「ウクライナは切なくSOSを叫んでいる。19日、ドミトロ・クレバ外相は「米国と欧州同盟国はウクライナに迅速に適正な数字の高性能重火器を供給しなければならない」と強調した。また「西側は既存のロシア制裁はそのまま維持しつつも新たな制裁を賦課せよ」と要求した。
    西側が、大義名分と現実の間で選択の瞬間を迎えたと、海外報道は伝えている。侵略戦争、民間人虐殺など数多くの戦争の罪を犯した「ロシア報復」という名分は明らかだが、自国民の苦痛を無視したまま無制限にウクライナを支援できないためだ。西側はEU首脳会議と主要7カ国(G7)およびNATO(北大西洋条約機構)首脳会議などを相次いで開催しながら内部引き締めとあわせて代案探しに出た」

     

    ウクライナは、さらなる武器の供与を求める切実な声を上げている。西側は、これに応え民主主義の価値である大義を守らなければならない。一方、現実では物価高が襲っている。国民はその不満を我慢できない段階だ。難しい選択の局面にある。

     

     

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    中国が、主宰した23日のBRICS(中国、ロシア、インド、ブラジル、南アフリカ)オンライン首脳会議の共同発表は、なんら目新しいものもなかった。事前の情報では、BRICSを米欧との対抗軸に押し上げる「策略」を練っていると伝えられていたのだ。それが、拍子の抜けするような「常識的」内容に止まった背景は、「クアッド」(日米豪印)へ足を踏み入れているインドが、中ロの「策略」に賛成しなかったのであろう。

     

    『ブルームバーグ』情報ではインドが、中ロによるBRICSを米欧対抗軸に変質させることに反対すると漏らしていた。BRICS会議直前、中ロはそれぞれ米国とNATOを厳しく批判していた。激しい前哨戦であっただけに、BRICSでも同様の主張をしたはずだ。だが、インドは、この過激なラインに乗らなかったのだ。

     


    ロシアは、ウクライナ侵攻によって世界的に評価を急落させている。逆に米国の評価が上がっている。

     

    米国の世論調査機関「ピュー・リサーチ・センター」は、「2022グローバル・アティテュード・サーベイ」を6月22日に発表した。主要18カ国の成人を対象にした今回の調査で、米国とNATOに対しては友好的な評価を示した。だが、ロシアに対する評価はこれまでの最低を記録した。

     

    米国に対しては61%が「好感」を示した。ロシアに対しては、「好感」が10%で2020年から急激に下落。過去最低値を記録した。「非好感」の回答の割合は85%で、中でもポーランドのロシア非好感度は97%でもっとも高かった。

    ロシアに対する「好感」がこれほど低い状況では、中ロ以外のBRICSメンバーのインド、ブラジル、南アフリカもロシアの言分を認めて、米欧へ対抗する気持ちも失せたに違いない。

     


    『時事通信』(6月24日付)は、「ウクライナ危機で対話支持、BRICS首脳が『北京宣言』」と題する記事を掲載した。

     

    中国の習近平国家主席が主宰し、ロシアのプーチン大統領らが参加した新興5カ国(BRICS)のオンライン首脳会議は23日、ロシアとウクライナの対話を支持するとした「北京宣言」を採択した。ただロシアは侵攻したウクライナで攻勢を強めており、現時点で対話の実現は見通せない。

     

    (1)「中国外務省によると、宣言は「各国の主権や領土の一体性を尊重する」とし、「対話や協議を通じ国家間の不一致や紛争を解決すべきであり、危機の平和的解決に資する努力を支持する」と言及した。朝鮮半島情勢に関しては「完全非核化」に向けた北朝鮮など関係国の話し合いを後押しした」

     

    このパラグラフは、これまでの中国が表向きに「中立」を装った発言と寸分、変わらない内容だ。インドが、米欧に対抗するという過激な発言に賛成しなかった結果であろう。中国は、インドの外交戦略を完全に見誤っている。

     


    インド最大の敵は、中国である。国境線で繰返される武力紛争がそれを示している。インドが、好き好んで中国の片棒を担ぐはずがない。中国が、インドへ接近しているとすれば、外交的に米欧と対立して苦しい立場に立たされていることを示すものだ。

     

    「中ロ枢軸」は孤立している。厳密に言えば、習近平氏とプーチン氏の二人が、肝胆相照らす関係であり、国家は道連れにしているだけだ。この二人の寿命に限りがある。未来永劫にわたり、中ロが一体化している訳でない。巷間、言われているようにプーチン氏に健康不安があるとすれば、プーチン後ますます中ロの関係は不安定化しよう。

     

    次の記事もご参考に。

    2022-06-24

    中国、「墓穴」BRICS首脳会議、米欧との対抗軸に利用の構え「インドは反対意向」

     

     

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    米国は、40年ぶりの消費者物価上昇率になった。欧州もほぼ同じ傾向である。日本もその余波が押し寄せている。供給制限が、物価上昇の理由と見られがちである。だが、隠れた要因として海上運賃の高騰がある。中国のゼロコロナに伴う都市封鎖で、上海港は2ヶ月も船舶が動けなかった。また、過去のパンデミックで新造船の建造が遅れた要因も影響した。

     

    IMF(国際通貨基金)の試算では、世界物価上昇のうち、1.5ポイントが海上運賃値上りの影響という。この状態は、最長1年は続くとみられる。厳しい状況は、これからが本番と言えそうだ。

     


    『ロイター』(6月21日付)は、「貨物船不足で老朽船賃料まで高騰 世界的インフレ助長も」と題する記事を掲載した。

     

    新型コロナウイルス対策の厳しい規制措置に起因する世界貿易の混乱に新造貨物船不足が重なり、本来なら解体されるはずの老朽船の用船料(賃料)が記録的水準に達している。海上輸送コストの高止まりは、この先何年も世界的なインフレを助長する恐れがある。6月21日、新型コロナウイルス対策の厳しい規制措置に起因する世界貿易の混乱に新造貨物船不足が重なり、本来なら解体されるはずの老朽船の用船料(賃料)が記録的水準に達している。

     

    (1)「海運調査会社クラークソンズ・リサーチによると、世界のコンテナ輸送量は18年に5.6%、19年に4%伸びた後、パンデミックが起きた20年も2.9%増加した。しかしロックダウン(都市封鎖)期間中に消費財の需要が急拡大した上に、港湾で貨物処理が滞って想定より長く船舶が足止めされ、さらに新環境基準順守問題を巡る不透明感との兼ね合いなどから新造船の供給が鈍化した影響で、貨物船需給が引き締まり、用船料が高騰した。コンテナ輸送量は昨年も4.5%増加。これは主に老朽船を解体せず使用し続けたためだったが、用船料押し下げには至らなかった」

     

    世界のサプライセンターである中国が、ゼロコロナ政策によってロックダウンした影響が、広範囲に及んでいる。貨物船不足に加え、中国の港湾機能の停止が、海上運賃の高騰をもたらしている。

     


    (2)「ロイターが、過去半年で締結された定期用船契約30件を調べたところ、船主側は数十年に1度の強気市場を背景に期間を長く、しかも用船料を極めて高水準に設定していることが分かった。海上運賃情報プラットフォーム企業ゼネタの指数に基づくと、5月のコンテナ輸送コストの上昇率は30.1%と、長期輸送運賃の月間ベースで過去最高になった」

     

    船主側には、思いもよらぬ利益が転がり込んだ形だ。5月のコンテナ輸送コストの上昇率は30.1%にも上がった。

     

    (3)「国際通貨基金(IMF)は、昨年のコンテナ輸送コスト上昇は世界の物価を1.5%ポイント押し上げ、米国の物価上昇率に占めるウエートはおよそ25%だったと見積もっている。IMFのアジア太平洋部門シニアエコノミスト、ヤン・キャリエールスワロー氏は「海上輸送コストが物価動向に及ぼす影響は大きく幅広い。世界中の国に波及しつつある」と指摘。ロシアのウクライナ侵攻に伴う食料や原油の値上がりを消費者が実感するのは2カ月以内だが、海上輸送コスト上昇の影響が全面的に感じられるようになるのは最長で1年もかかると付け加えた」

     

    米国は、40年ぶりの物価上昇率8.5%(5月)に苦しんでいる。このうち、およそ25%分が海上運賃の高騰によるものという。米国は、生産機能の多くを海外へ移転したので、輸送コストの増加の影響を大きく受けている。

     

    (4)「中国では、新型コロナウイルス感染症の再拡大で港湾施設がまだうまく機能しておらず、造船会社は過去最高の新造貨物船を発注されているものの、大半は来年か2024年以降まで就役しない。国連貿易開発会議(UNCTAD)の物流問題責任者ヤン・ホフマン氏は、「高止まりしている海上輸送料は来年のかなりの時期まで消費者物価に上昇圧力を加え続けるだろう。輸送料はまだこの先何年も、コロナ禍前より高い状態になるのではないか」と述べた。2人の船舶ブローカーが提供したデータによると、現在カリフォルニア州と中国の間を航行している貨物船「ナビオス・スプリング」は1月に3年の定期用船契約が結ばれ、用船料は1日当たり6万ドルと2年前の同8250ドルのおよそ7倍になっている」

     

    カリフォルニア州と中国の間を航行する貨物船の定期用船契約は、1日当たり6万ドルと2年前のおよそ7倍に跳ね上がっている。

     


    (5)「主要企業の発注した巨大新造船の多くが、就役する来年ないし2年後には、貨物船需給ひっ迫局面は終わりを迎える可能性がある。世界海運協議会(WSC)のデータでは、昨年発注されたコンテナ船は計555隻、総額425億ドルと過去最高を更新。今年これまでにも208隻、総額184億ドルの注文が出ている」

     

    主要企業の発注した巨大新造船の多くは、就役する時期が来年ないし2年後にという。それまでは海上運賃の高騰の影が残る。

     

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    中国は、国内経済が危機的状況に落込んでいる。この国内矛楯を隠すべく、海外への強硬手段を取っている。中国軍が、日本周辺で威嚇行動を続けているのだ。独裁国家の常套手段であろう。

     

    防衛省統合幕僚監部は6月23日、中国軍のH6爆撃機3機が同日午後、沖縄本島と宮古島の間の海域を抜け、東シナ海と太平洋を往復したと発表した。航空自衛隊の戦闘機が緊急発進(スクランブル)して監視に当たった。日本周辺では今月、中国海軍艦艇が列島を周回するような航行や沖縄を通過し、太平洋へ移動するのが確認されている。

     


    こういう中国軍の行動は、日本への挑発行為である。日本の怒りと警戒心を高めるだけで、何のメリットもない無駄なことを行なっているのだ。理由は、中国国内向けだ。とりわけ、中国軍の士気を高めようとしているのだろう。日本への潜在的な恐怖心を克服させるための準備体操である。

     

    日本は、こういう中国軍の無意味な行動を見るに付け、「共同対処」によって中国軍の暴発抑止を考えるのは当然である。中国は自ら原因をつくりながら、日本がNATO(北大西洋条約機構)首脳会議へ招待されて出席することを非難している。御しがたい国である。

     


    韓国紙『wowkorea』(6月23日付)は、「日韓のNATO会議への参加『とても危険』北大西洋ではない=中国政府」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国外交部の汪文斌報道官は23日の定例会見で、韓国・日本・オーストラリア・ニュージーランドなどアジア太平洋諸国がNATO首脳会議へ参加することに関する質問に、「NATOは明らかに北大西洋軍事組織なのに、最近はむしろアジア・太平洋で威勢を振るっている」とし「ヨーロッパ対決の構図をアジア・太平洋に複製しようとする試みはとても危険だ」と指摘した」

     

    中国は、ロシアのウクライナ侵攻を非難しないどころか、NATOをヤリ玉に上げている。これは、間接的にロシア擁護に回っている証拠だ。NATOは、こういう中国の動きに警戒しており、世界規模で中国への対応を検討する段階になってきたことを意味する。当の中国には、こういう事実に対する認識がゼロである。国際感覚が鈍いのだ。

     

    中国からの直接脅威にさらされる、日本・韓国・オーストラリア・ニュージーランドが、NATO首脳会議へ招待され出席するのは、自然の動きである。

     


    (2)「同報道官は、「NATOはすでにヨーロッパを乱しており、アジア・太平洋および世界をこれ以上乱すべきではない」とし、「国家間の発展関係は世界の平和と安定に役立つべきで、第三者を狙ったり、第三者の利益を害してはならない」と強調した。続けて、「アジア・太平洋地域は北大西洋の地理的カテゴリーではない」とし、「アジア・太平洋地域の国家と国民は軍事集団を引きずり込んで分裂と対抗を扇動するいかなる言動にも決然と反対する」と明らかにした」

     

    NATOは、民主主義という価値観を守る軍事組織である。ロシアや中国は、この民主主義を破壊しようとしている以上、アジアの中国もまたロシアと同列にNATOの対象になる。中国が、民主主義を破壊する行動を見せなければ、NATOの警戒国になることもなかった。自ら招いたことでる。

     

    中国は目下、オンラインによる新興国五ヶ国「BRICS」の首脳会議を主宰している。習近平氏は、「一方的な制裁や制裁の乱用に反対する」と表明した。ウクライナ侵攻を受けた西側諸国による対ロシア制裁を念頭に置いた発言とみられる。

     

    習氏は、国連の体制に基づく真の多国籍国際システムを支持する必要があると強調。「冷戦思考を放棄し、対立を阻止する必要がある」とした上で、「主要新興国および途上国として、BRICSは自らの責任を果たしていかなければならない」と述べた。

     

    この習氏の発言は、ウクライナ侵攻という問題の発火点を無視した議論である。西側諸国が、理由もなくロシアへ経済制裁を科すわけもなく、因果関係を飛ばした主張をしているのだ。

     


    これには裏があると見なければならない。中国が、台湾侵攻すればロシアと同じ経済制裁を受けることを想定している。中国は、台湾侵攻しても経済制裁しないでくれという「シグナル」である。そんな虫の良い話が通るはずもない。ロシア同様の経済制裁を加えられるはずだ。

     

    中国は、ウクライナ侵攻から何か教訓を得たか。

     

    『日本経済新聞』(6月24日付)は、「ロシア、窮すれば核使用も ウクライナ危機 」と題するインタビュー記事を掲載した。アリソン米ハーバード大教授へのインタビューだ。アリソン氏は、国際政治の大家で、キューバ危機時の米政権の意思決定を論じた著書『決定の本質』で知られる。

     


    (3)「ウクライナでの戦争は、米国と中国の対立にも影響する。覇権国とその挑戦者として勢力を争う両国にとって戦争への最短の道筋は台湾問題だ。中国政府がウクライナから何を学んだかは分からないが、合理的な政策決定者がどう考えるかは推察できる。まずロシアの苦戦を見て、陸海空にまたがる軍事作戦は複雑で、相当な訓練が必要だと痛感したはずだ」

     

    ロシアのウクライナでの苦戦は、中国に対して台湾侵攻を慎重にさせると見ている。近代戦の経験ゼロの中国が、米軍に後押しされている台湾軍を攻めるには、さらなる戦略の練り直しが必要性を感じているであろう。

     


    (4)「ウクライナ軍が、ロシア黒海艦隊の旗艦「モスクワ」を撃沈したのを目の当たりにして、台湾の攻撃能力を再検証する必要も感じているだろう。
    米情報機関がロシアの軍事計画を詳細につかんでいたことも、自身は大丈夫かと中国に懸念を抱かせたはずだ。ロシアへの国際的な経済制裁にも警戒感を抱き、中国は軍事行動には慎重になるとみている」

     

    客観的に見れば、中国が台湾侵攻について慎重になると見られる。一方では、日本周辺で爆撃機や軍艦を徘徊させて、日本へ警戒心を高めさせる行動を取っている。中国は、自ら包囲網を縮めさせる「愚行」を演じているのだ。これは、冒頭に上げた国内矛楯の結果であるが、自滅的な振る舞いである。

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