米下院議長ペロシ氏の訪台計画が報道されて以来、中国は猛烈な反発をしている。ペロシ氏は、副大統領に次ぐ大統領職継承の位置にあるので、中国が訪台計画を阻止する動きを見せたと見られる。
先の米中首脳電話会談で、この問題が議論された模様だが詳細は伏せられている。習氏が、「火遊びすれば身を滅ぼす」と警告したと中国側が明らかにした。何らかの強硬手段を取るという意味だ。『人民日報』系の環球時報の胡錫進前編集長は31日までに、ペロシ米下院議長について、中国軍による台湾入りへの妨害に効果がなければ、搭乗機を「撃ち落とせ」と英語でツイートした。その後削除されたが、中国側の過激ぶりを示している。
ペロシ氏は29日、アジア歴訪に向けて米国を出発したと伝えられている。米軍は、万一の事態に備えて戦闘機が警戒しており、米空母が台湾付近で警戒体制に入っているという。
『大紀元』(7月31日付)は、「ペロシ氏訪台計画、米軍が護衛 中共の反発は「空脅し」、元米政府高官」と題する記事を掲載した。
米国のナンシー・ペロシ下院議長の台湾訪問計画を巡って、米中間で緊張が高まっている。中国側の「強硬手段」も辞さない構えに対し、米軍は議長が搭乗する航空機に護衛をつける方針だ。元米政府高官は、中国共産党が中身のない空脅しを続ければ自身の地位を低下させるだけだと指摘した。
(1)「複数の米国メディアは29日、ペロシ氏率いる議員団がアジアへの外遊に出発したと報じた。台湾への訪問も取りざたされているが、公式発表はまだない。中国共産党が台湾海峡での緊張感を高めていることもあり、ペロシ氏の台湾訪問をめぐっては米国政府内で意見の衝突が見られた。米軍側の懸念から、バイデン大統領はペロシ氏の台湾訪問を支持する姿勢を示さなかった。これに対し、ペロシ氏はバイデン氏の発言に戸惑いを見せた。米国の議員や専門家はバイデン氏の対応について、行政府の長である大統領が立法府の一員の行動に口出しすることは過剰な干渉であるとして、眉をひそめた」
ペロシ氏は下院議長である。立法府のトップである以上、米国憲法の「三権分立」から見ても、行政府トップのバイデン大統領が干渉がましい発言をすべきでない。米国内では、こういう見方がされている。
(2)「ペロシ氏の訪問計画で緊張が高まるなか、バイデン大統領と中国の習近平国家主席は28日、電話会談を行った。双方の公式発表によれば、台湾問題では意見の対立が際立った。バイデン氏は米国の台湾政策に変更はなく、現状変更や安定を損ねる動きに強い反対を伝えた。いっぽう習氏は「外部勢力の干渉に断固反対」「火遊びすればその身を焦がす」と述べ、ペロシ氏が訪台すれば対抗措置を辞さない構えを示した」
米中首脳の電話会談では、ペロシ氏の訪台問題が扱われて意見対立が見られた。これを予想したバイデン氏は、テレビ会議を電話会議に変えるように提案した。互いに表情を見ながらのやり取りでは、本音を言えないと考えたのかも知れない。バイデン氏も思いきった発言をしたのだろう。
(3)「米政府は、ペロシ氏は台湾の安全保障に関わる基本的な軍事情報をある程度把握していることを明らかにした。米国防総省のジョン・カービー報道官は、「ペロシ議長が海外を訪問する際に、我々はいつも目的地に関する分析や地政学的実情を伝えている」と述べた。そして「ペロシ氏の外遊にはいつも安全保障上の問題がつきまとう。国防総省が目的地や滞在期間、脅威の度合いに応じて対応することもある」と指摘した」
米国防総省は、ペロシ氏が下院議長であることから海外訪問に当って、常に警戒体制を取ってきたという。今回の訪台計画でも従来の慣例を守るだけのようだ。
(4)「中国軍が台湾付近での軍事攻撃を示唆するなか、米軍の統合参謀本部議長マーク・ミリー陸軍大将は、仮にペロシ氏が台湾を訪れるならば軍の護衛をつけると述べた。「(台湾)訪問が安全かつ安全に行われるよう、必要なことを実行する」と強調した。ブルームバーグなど複数のメディアは、米国第7艦隊が27日、シンガポールでの寄港を終えたロナルド・レーガン空母打撃群は南シナ海を航行していると報じた。ペロシ氏の訪台計画に関連しているとの見方もある」
米軍の統合参謀本部議長マーク・ミリー陸軍大将は、ペロシ氏の訪台計画で護衛を付けると表明している。米国第7艦隊が南シナ海を航行しており、その任務に就いている模様だ。
(5)「元米国務次官補(東アジア・太平洋担当)のデイビッド・スティルウェル氏は、大紀元の姉妹メディアである新唐人テレビ(NTDTV)の取材に対し、「中国軍の反応を歴史的に見たとき、とくに台湾が関係する場合、彼らの態度は控えめだった」と分析した。「その一方で我々は公然と自らを棚に上げている。内部の議論は内部で行われる必要がある」と指摘した」
このパラグラフは、米国内でペロシ氏の訪台計画を大袈裟に取り上げていると苦言を呈している。「内部の議論は内部で行われる必要がある」というもの。事務的な問題と言いたげである。
(6)「スティルウェル氏によれば、台湾、アメリカ、そしてペロシ氏に対する中国共産党のさまざまな脅威はほとんど取るに足らず、好戦的で空虚な脅しは中国の国際的地位をますます低下させている。中国共産党政権の不誠実さからも、中国は主要国としての自覚を持っていないのではないかと感じるという。その上で、大国でありながら実際の行動を伴わない空脅しをしていると認知されれば、実際に抑止力が必要となる場面で発揮できなくなると分析している。28日の米中電話会談の中で中国の習近平主席が「アメリカは火遊びをしている」と発言したことについて、スティルウェル氏は、中国を恐れる必要はないとしている。こうした脅しは米国が弱腰になることを狙ったものにすぎないと語った」
ペロシ氏の訪台を巡る中国側の発言が、好戦的で空虚な脅しであり、中国の国際的地位をますます低下させると指摘している。米台関係が、すでに密接不可分の関係になっている以上、中国が脅しを掛ければ掛けるほど、自らの無力ぶりを示すだけというのだ。中国は、米国の弱腰を狙っているに過ぎないとしている。