勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2022年07月

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    米下院議長ペロシ氏の訪台計画が報道されて以来、中国は猛烈な反発をしている。ペロシ氏は、副大統領に次ぐ大統領職継承の位置にあるので、中国が訪台計画を阻止する動きを見せたと見られる。

     

    先の米中首脳電話会談で、この問題が議論された模様だが詳細は伏せられている。習氏が、「火遊びすれば身を滅ぼす」と警告したと中国側が明らかにした。何らかの強硬手段を取るという意味だ。『人民日報』系の環球時報の胡錫進前編集長は31日までに、ペロシ米下院議長について、中国軍による台湾入りへの妨害に効果がなければ、搭乗機を「撃ち落とせ」と英語でツイートした。その後削除されたが、中国側の過激ぶりを示している。

     


    ペロシ氏は29日、アジア歴訪に向けて米国を出発したと伝えられている。米軍は、万一の事態に備えて戦闘機が警戒しており、米空母が台湾付近で警戒体制に入っているという。

     

    『大紀元』(7月31日付)は、「ペロシ氏訪台計画、米軍が護衛 中共の反発は「空脅し」、元米政府高官」と題する記事を掲載した。

     

    米国のナンシー・ペロシ下院議長の台湾訪問計画を巡って、米中間で緊張が高まっている。中国側の「強硬手段」も辞さない構えに対し、米軍は議長が搭乗する航空機に護衛をつける方針だ。元米政府高官は、中国共産党が中身のない空脅しを続ければ自身の地位を低下させるだけだと指摘した。

     


    (1)「複数の米国メディアは29日、ペロシ氏率いる議員団がアジアへの外遊に出発したと報じた。台湾への訪問も取りざたされているが、公式発表はまだない。中国共産党が台湾海峡での緊張感を高めていることもあり、ペロシ氏の台湾訪問をめぐっては米国政府内で意見の衝突が見られた。米軍側の懸念から、バイデン大統領はペロシ氏の台湾訪問を支持する姿勢を示さなかった。これに対し、ペロシ氏はバイデン氏の発言に戸惑いを見せた。米国の議員や専門家はバイデン氏の対応について、行政府の長である大統領が立法府の一員の行動に口出しすることは過剰な干渉であるとして、眉をひそめた

     

    ペロシ氏は下院議長である。立法府のトップである以上、米国憲法の「三権分立」から見ても、行政府トップのバイデン大統領が干渉がましい発言をすべきでない。米国内では、こういう見方がされている。

     


    (2)「ペロシ氏の訪問計画で緊張が高まるなか、バイデン大統領と中国の習近平国家主席は28日、電話会談を行った。双方の公式発表によれば、台湾問題では意見の対立が際立った。バイデン氏は米国の台湾政策に変更はなく、現状変更や安定を損ねる動きに強い反対を伝えた。いっぽう習氏は「外部勢力の干渉に断固反対」「火遊びすればその身を焦がす」と述べ、ペロシ氏が訪台すれば対抗措置を辞さない構えを示した」

     

    米中首脳の電話会談では、ペロシ氏の訪台問題が扱われて意見対立が見られた。これを予想したバイデン氏は、テレビ会議を電話会議に変えるように提案した。互いに表情を見ながらのやり取りでは、本音を言えないと考えたのかも知れない。バイデン氏も思いきった発言をしたのだろう。

     


    (3)「米政府は、ペロシ氏は台湾の安全保障に関わる基本的な軍事情報をある程度把握していることを明らかにした。米国防総省のジョン・カービー報道官は、「ペロシ議長が海外を訪問する際に、我々はいつも目的地に関する分析や地政学的実情を伝えている」と述べた。そして「ペロシ氏の外遊にはいつも安全保障上の問題がつきまとう。国防総省が目的地や滞在期間、脅威の度合いに応じて対応することもある」と指摘した」

     

    米国防総省は、ペロシ氏が下院議長であることから海外訪問に当って、常に警戒体制を取ってきたという。今回の訪台計画でも従来の慣例を守るだけのようだ。

     


    (4)「中国軍が台湾付近での軍事攻撃を示唆するなか、米軍の統合参謀本部議長マーク・ミリー陸軍大将は、仮にペロシ氏が台湾を訪れるならば軍の護衛をつけると述べた。「(台湾)訪問が安全かつ安全に行われるよう、必要なことを実行する」と強調した。ブルームバーグなど複数のメディアは、米国第7艦隊が27日、シンガポールでの寄港を終えたロナルド・レーガン空母打撃群は南シナ海を航行していると報じた。ペロシ氏の訪台計画に関連しているとの見方もある」

     

    米軍の統合参謀本部議長マーク・ミリー陸軍大将は、ペロシ氏の訪台計画で護衛を付けると表明している。米国第7艦隊が南シナ海を航行しており、その任務に就いている模様だ。

     

    (5)「元米国務次官補(東アジア・太平洋担当)のデイビッド・スティルウェル氏は、大紀元の姉妹メディアである新唐人テレビ(NTDTV)の取材に対し、「中国軍の反応を歴史的に見たとき、とくに台湾が関係する場合、彼らの態度は控えめだった」と分析した。「その一方で我々は公然と自らを棚に上げている。内部の議論は内部で行われる必要がある」と指摘した」

     

    このパラグラフは、米国内でペロシ氏の訪台計画を大袈裟に取り上げていると苦言を呈している。「内部の議論は内部で行われる必要がある」というもの。事務的な問題と言いたげである。

     

    (6)「スティルウェル氏によれば、台湾、アメリカ、そしてペロシ氏に対する中国共産党のさまざまな脅威はほとんど取るに足らず、好戦的で空虚な脅しは中国の国際的地位をますます低下させている。中国共産党政権の不誠実さからも、中国は主要国としての自覚を持っていないのではないかと感じるという。その上で、大国でありながら実際の行動を伴わない空脅しをしていると認知されれば、実際に抑止力が必要となる場面で発揮できなくなると分析している。28日の米中電話会談の中で中国の習近平主席が「アメリカは火遊びをしている」と発言したことについて、スティルウェル氏は、中国を恐れる必要はないとしている。こうした脅しは米国が弱腰になることを狙ったものにすぎないと語った」

     

    ペロシ氏の訪台を巡る中国側の発言が、好戦的で空虚な脅しであり、中国の国際的地位をますます低下させると指摘している。米台関係が、すでに密接不可分の関係になっている以上、中国が脅しを掛ければ掛けるほど、自らの無力ぶりを示すだけというのだ。中国は、米国の弱腰を狙っているに過ぎないとしている。

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    中国は、人口増が経済成長を支えてきたが、その「黄金の腕」が消滅した。昨年の出生数は、1062万人で、前年より138万人減と建国以来の最低記録を更新した。学術機関「上海社会科学院」の研究チームは、「2021年以降、中国の人口は毎年1.%の割合で減少するだろう」と予測している。習近平氏の世界覇権の夢に水をかけられた感じだ。

     

    『大紀元』(7月30日付)は、「中国昨年の出生数、建国以来の低水準 複数の省で4割減」と題する記事を掲載した。

     

    中国国家衛生健康委員会のこのほどの発表によると、中国の昨年の出生数は1062万人と1949年の建国以来、最低水準となった。前年比で138万人減少した。31省のうち29省で昨年の出生数が激減しているという。出生数が50万人を超えたのは広東、河南、山東、四川、河北、安徽の6省のみ、ほかの省で数十年ぶりの低水準に落ち込んでいる。

     


    (1)「出生数が最も高かったのは広東省(118万3100人)で、同省は4年連続でトップの座を維持している。これに対し、安徽省の出生数は4年連続で下落し、2017年に比べ昨年は47.6%も減少している。17年と比べると、昨年の出生数は山東省で57.%減。湖南省で47.%減、江西省で40.%減と激減している。中国メディア「第一財経」23日付は、この出生数の減少傾向を「断崖式の下落」と表現した。出生数減少の原因について、広東省人口発展研究院の院長で、人口専門家でもある董玉整氏は、「出産適齢期の女性の数の減少のほか、晩婚化や結婚費用の高騰、パンデミック」などを挙げた。

     

    21年の出生数は4年前と比べて、安徽省、湖南省、江西省など、いずれも4割以上の激減ぶりである。身震いするほどである。

     


    (2)「中国当局は少子化に歯止めをかけるため、1組の夫婦に3人目の出産を認める方針を打ち出したが、出生数の改善に繋がらなかった。過去の中国の好景気は主に、人口に対する労働力が豊富な「人口ボーナス」によって大きく支えられてきたが、これが消えつつある今、ベトナム、バングラデシュ、インドなど豊富な労働力を有する国が、中国に取って代わろうとしていると台湾メディア「自由時報」は指摘した。現在、製造業における中国の労働コストはすでにベトナムの2倍以上に跳ね上がっているという」

     

    昨年から、3人目の出産を認める方針に変わったが、その効果はなさそうである。「子供は一人」という「一人っ子政策」が、完全に定着している結果である。家計が、高い住居費に翻弄されており、もはや2人以上の子供を持てる経済的な余裕を失っている。不動産バブルが生んだ、必然的な結末だ。換言すれば、軍事費を捻出すべく利用してきた不動産バブルが、中国の寿命を縮めたとも言える。

     

    (3)「学術機関「上海社会科学院」の研究チームは、「2021年以降、中国の人口は毎年1.1%の割合で減少するだろう」と予測した。国際連合が今月公表した「世界人口予測」によると、「23年にもインドが中国を抜いて、世界でもっとも人口の多い国になる」としている」

     

    上海社会科学院は、2021年以降の人口が毎年1.%の割合で減少すると予測している。中国人口は21年で、約14億4850万人であるから、1593万人が減少する計算だ。雪崩を打って減っていく感じだ。凄い時代がきたものである。驚愕という言葉しか浮かばない。

     

    中国陜西省西安の西安交通大学の研究チームは昨年10月、中国の45年後人口が半減し、これまでの予測よりも減少速度は早い可能性があると指摘していた。

     


    『大紀元』(21年10月6日付)は、「研究『45年後、中国の人口は半減』 想以上に早く減少」と題する記事を掲載した。

     

    『サウス・チャイナ・モーニングポスト』9月30日付によると、西安交通大学(西安交大)の研究チームは、合計特殊出生率を1.3と前提すれば、45年後に人口は半減するという。

     

    (4)「これまでの多くの研究は、中国の人口はゆるやかに減少するとの見方を示していた。国連は2019年の「世界人口展望報告書」で、中国の人口は2065年時点で13億人を維持すると推測した。米ワシントン大学の保健指標評価研究所(IHME)の研究では、2100年までに半減すると試算した。今回、中国の人口推移を推計した西安交大・人口発展研究所の姜全保(きょう・ぜんほ)教授は、既存の研究では中国人口減少のスピードがかなり過小評価されていたと指摘した。さらに、研究チームは、合計特殊出生率が1.0人になる場合、29年後に人口半減すると予想した」

     

    これまでの中国に関する人口予測では、緩やかな人口減になると見てきた。それが。2020年の合計特殊出生率が「1.3」であったことから、人口減が急速に進むと見ている。合計特殊出生率が1.0人になる場合、29年後に人口半減すると想像もできない事態へ突入する。「米中冷戦」などと言って、米国へ対抗する経済的な余力を完全に失うことになろう。

     


    (5)「
    中国当局が2020年に発表した国勢調査は、初めてデジタル機器を用いて収集されており、これまでの調査のなかで最も実際の人口動態に近いものとみられている。この調査によると、中国の人口における子どもの割合は17%で、60歳以上の割合は18%だった。中国で、若者よりも高齢者の数が多いのは初めて。不動産価格の高騰、出産や介護サービスの不足などで出生につながる環境は整わず、出生率は引き続き低下するとの見込みだ」

     

    不動産バブルが、子どもを生む経済的なゆとりを奪っている。不動産バブルによって、中国は仮の成長を遂げたが、人口減という重い代償を払わされている。取り返しの付かないことになった。すべて、習近平氏の判断が誤っていた結果である。その習氏が、国家主席3期目を目指す。中国の将来は決まったようなものだ。

     

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    韓国は、形の上で市場経済国であるが、国家への構造的な甘えを抱える異質性を持っている。あらゆる分野で、国家が経済の担い手になるのが当然、という古い考えに支配されているのだ。OECD(経済協力開発機構)で、韓国は最大の公共機関数を擁しており、今でも民営化論は御法度な国である。その点で、社会主義国に似通った性格を持つ。

     

    文前政権は、この甘え主義を最大に生かして、公共機関での人員採用や給与引上げなど「膨張政策」を恣に行なった。自らの支持層を職員として採用し、給与も大幅に引上げたのだ。この結果、厖大な赤字を出しているが、「民営化論」は絶対に言い出せない社会的な雰囲気を醸し出している。進歩派(民族主義)が、民営化論に対して「新自由主義」と訳の分らない非難をして、「無慈悲な政権」というレッテルを貼るのだ。韓国の異質性が浮かび上がっている。

     


    韓国では350の公共機関の正規職の数が、昨年末時点で40万人を超えた。過去5年間で10万人以上も増えた。文在寅政権の「非正規職の正規職化」政策に従ったものである。公共機関の正規職4人に1人は、文在寅政権で正規職に転換したか、新規採用されたことを意味するほどの膨張ぶりである。

     

    この結果、人件費負担も増大した。公共機関の総人件費は、文政権が発足前の16年に22兆9000ウォンだった。それが、20年には32%もの増加ぶりである。こうして、公共機関の負債も急増している。2018年に503兆7000億ウォンが、20年には44%増である。韓国財政は、見えない部分で「腐食」が進んでいる。

     

    公共機関経営は、最悪事態を迎えているが、「民営化」という声はどこからも聞えない。ユン政権も人員減は、「自然減」で行なうとしている。そして、「民営化」とは無縁とわざわざ断わり入れているのだ。

     


    『東亞日報』(7月30日付)は、「
    来年から公共機関定員削減、今年下半期の経常費も10%以上削減へ」と題する記事を掲載した。

     

    23年から、公共機関の定員を減らし、今年下半期(7~12月)の経常経費と業務推進費を10%以上削減する。宿泊施設の運営など、民間と競合する業務は減らし、不要な海外事業やゴルフ場・コンドミニアム会員権などは売却しなければならない。

     

    (1)「秋慶鎬(チュ・ギョンホ)経済副首相兼企画財政部長官は29日、政府ソウル庁舎で開かれた公共機関の運営委員会でこのような内容の「新政府の公共機関の革新をめぐるガイドライン」を議決した。秋副総理は同日の会議で、「公共部門が率先して腰紐を締めて骨を削る強力な革新を推進しなければならない」とし、「新政府では、公共機関の非効率と放漫な経営をこれ以上容認しない」と明らかにした」

     

    市場経済国では、民営化できる分野は民営化するのが原則である。日本もすべて民営化した。旧国鉄は、JRになって経営は大いに安定している。韓国で民営化できないのは、労組が巨大権力をにぎっている結果だ。労組が、既得権益を失うことに抵抗して、社会の変化を阻んでいるのである。

     


    (2)「政府は350の公共機関に、△組織・人材、△予算、△機能、△資産、△福利厚生の5分野にわたって革新計画を策定後、来月末まで提出することを指示した。このため、公共機関は来年から原則的に定員を減らさなければならない。過度な幹部職の割合を減らし、「副頭取」「部門長」「本部長」等、似たような業務の職位も統廃合しなければならない。ただ、新規採用が減るという懸念に対して、企画財政部の崔象大(チェ・サンデ)第2次官は、「定員を縮小しても、人為的な調整よりは退職や離職、自然減少などで段階的に縮小し、新規採用に及ぼす影響を最小化する」と説明した」

     

    下線のような名目の管理職をつくって、手当を支給させている。マネジメントの簡易化は、世界の流れであるが、韓国はこれに抵抗している。それだけ、「権威主義」が未だにはびこっている証拠だ。儒教社会の形式主義は、簡単に修正不可能なのだ。

     


    (3)「これに加え、公共機関は今年下半期の管理費と出張費などの主要経常経費と業務推進費を10%以上ずつ減らさなければならない。来年は、経常経費は今年より3%以上、業務推進費は10%以上削減することにした。不要なゴルフ場の会員権などの重要でない資産は売却し、過度な事務室の面積も減らさなければならない。民間が遂行できる宿泊施設の運営や知識財産の評価などの業務は、縮小しなければならない。ただ、この過程で民営化の推進計画はないと、企画財政部は明らかにした」

    韓国は、昨年から人口減社会へ突入している。急速な出生率低下によって、いずれ日本以上の超高齢社会へ移行する。こうした、人口動態的に分りきったことを理解せず、儒教倫理に振り回されている。他国のことながら、「目を覚ませ」と言いたいのだ。


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    米国では、子ども達の学校教育で正しい金融教育が行なわれている。日本でも実施される。韓国では、若者が欲に目が眩んで「一攫千金」の夢で大きな失敗に見舞われているのだ。文政権下での住宅バブルが引き起こした「マネー狂騒曲」に巻き込まれたものである。

     

    昨年のうつ病患者のうち、20代が127%増、30代が67%増になった。原因の多くが、コインや株式投資の失敗という。文在寅氏は、大統領退任後は登山したり、菜園で野菜作りして引退生活を満喫している。20~30代は、住宅バブルで深刻な事態に落込み、もがいているのだ。文氏は、反日よりも若者へ正しい金融教育をしておくべきであった。

     


    『韓国経済新聞』(7月30日付)は、「借金の罠にかかった韓国MZ世代、初めて経験する株式・コイン暴落相場 20代のうつ病127%増」と題する記事を掲載した。

     

    借金の罠にはまったMZ世代(1980年-2000年代初め生まれ)が苦しんでいる。MZ世代の負債が増えている理由は、株式や仮想通貨に投資していたところ、高金利と暴落相場で雪だるま式に損失が膨らんだからだ。金利上昇で償還すべき元利金は増えるが、株式とコインの価格急落で資産が急減し、返済のためにさらに高金利の資金を借りるという悪循環に入っている。

    (1)「統計庁によると、昨年基準で20~39歳の世帯主の平均負債は9986万ウォンと(約998万円)、869万ウォン(約87万円)増えた。特に30代の世帯主は全年齢帯において唯一、2020年比で負債が10%以上増えた。限界を越える負債を抱える青年も増えている。韓国銀行(韓銀)によると、20代・30代の負債者の9%は限界を超過していることが分かった。総負債元利金返済比率(DSR)が45.9%を超え、正常な生活を制約するケースだ。全年齢帯ではこの数値が6.3%だが、20代・30代ははるかに高い」

     


    20~30代の負債者の9%は、支払い能力を超えている。支払い能力とは、DSR(可処分所得に対する元利金比率)が45.9%を超えた状況を指す。そういう苦境に落込んだ若者が、負債者の9%を超えているというもの。まさに、進退に窮した状況である。この切羽詰まった若者をどうするかだ。徳政令が出てきた背景はここにある。

     

    (2)「今年に入って投資損失と利子負担が急増している点を考慮すると、20代・30代の負債はさらに増えたと推定される。それだけ個人再生手続きを申請する20代・30代も増えた。今年1~5月の20代の個人再生手続き申請者数は計1万5584人。月平均3116人で、前年上半期(2954人)を上回る。全体年齢帯で20代・30代が占める比率も2020年の42.2%から2021年には45.1%に増加した。統計庁によると、昨年基準で20代の資産に対する負債の比率は40%以上である半面、60代以上は20%にもならない。若者が無理な借金をしているということだ」

     

    個人破産(個人再生手続き申請者数)において20代・30代が占める比率は、2020年の42.2%から2021年に45.1%へ増加している。驚くのは、20代・30代の個人破産が全体の半分近くいることだ。青春時代を受験競争で消耗し、社会の実際知識を何も身に付けていなかった結果であろう。義務教育で、正しい金融知識が必要な理由だ。

     


    (3)「投資の失敗は、心理的な打撃につながる。会社員キム・ソンジンさん(31)は負債が7000万ウォンに増え、最近、人生を放棄したいという考えになり、精神科の相談を受けている。今年に入って株式に投資した元金5000万ウォンは半減した。これを挽回しようと第2金融圏、第3金融圏からも融資を受けた。月給は借金の返済に流れるため、無力感はさらに強まる」

     

    投機という信用取引に手を出すから、身を破滅させるような事態を招くのだ。そうではなく堅実な投資の場合、自分の貯蓄の範囲で行なえば損を出しても処理可能である。こういう、投資の「イロハ」を知らずに、大金をつぎ込んで身動きできなくなっている。

     

    日本では、こういう類いの話を聞くことは珍しい。日本と韓国の国民性の違いであろう。韓国では、政権が変わるごとに徳政令を実施している。韓国人は本来、身のほどを弁えない博打好きなのだ。

     


    (4)「健康保険審査評価院は、昨年のうつ病患者数は93万3481人で、2017年より35.1%増えたと明らかにした。中でも20代が127%増、30代が67%増になった。他の年齢層に比べて患者数も多く、増加率も高い。もちろん経済的要因がすべてのうつ病の原因ではないが、専門家は少なからず影響を及ぼしたで診断する。議政府(ウィジョンブ)聖母病院のイ・ヘグク精神科専門医は、「2017年以降、ビットコインや株式投資失敗によるうつ病で病院を訪れる20代・30代が増えている」と話した」

     

    個人破産の20~30代は、半分近くを占めている。うつ病患者数も、20~30代の増加率が最も高くなっている。こういう事実を把握すれば、国家として抜本的な対策を打つべきだ。具体的には、金融教育の早期実施である。将来の犠牲者を出さないためにも、教育の場で先ず手を打つべきである。

     

     

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    日米両政府は29日、外務・経済担当閣僚会合(経済版2プラス2)を開いた。ロシアのウクライナ侵攻に伴う混乱や中国に対抗することが狙いだ。萩生田光一経産相は、日米が次世代半導体の共同研究センターを新設することで合意したと発表。これに強く刺激されたのが韓国である。

     

    韓国は、米国から「チップ4」(日米台韓)への参加を求められている。回答期限8月末まで。8割方、参加へ気持ちは固まったが、中国の報復を恐れて未だ最終的な決断を先延ばしにしている。だが、ロウエンド(低級品)半導体では、いずれ中国の国産化が進む。韓国からの輸出はそれだけ減る運命だ。韓国は、先を読んで動くべき時期である。

     


    『朝鮮日報』(7月30日付)は、「米国の『半導体同盟』に積極的な日本と台湾、時機を逃せば韓国は危機に陥る」と題する社説を掲載した。

     

    米国が量子コンピュータなどに使用される最先端の次世代半導体の大量生産に向けた共同研究パートナーに日本を選択した。これを受け日本は年内に次世代半導体開発センターを立ち上げ、今後10年間に1兆円を投資し製造ラインを構築する計画だという。日本の複数のメディアが一斉に報じた。29日に開催された米日経済政策協議会で合意したこのプロジェクトには米国立半導体技術センター(NSTC)も参加する予定だという。

     

    (1)「米国は、自国を中心とする半導体サプライチェーン構築に向け韓国、日本、台湾にいわゆる「チップ4」と呼ばれる半導体同盟を呼びかけたが、その中で日本と最初にパートナーシップを結んだのだ。米国中心の半導体サプライチェーン再構築に協力的な日本に対し、米国が先端技術協力でこれに応えたのだ。日本は40年前に米国の圧力で半導体の主導権を韓国などに奪われたが、今度は「チップ4」を半導体産業復活のまたとないチャンスと考え積極的に参加する動きを示している。チップ4に加入する意向を示した台湾も米国の半導体工場に追加で投資を行うと同時に、日本にも半導体工場や研究開発センターを設置するなど米国、日本との三角協力体制構築に向け意欲的に動いている」


    日本は年末までに新たな研究機関「次世代半導体製造技術開発センター(仮称)」を立ち上げる。産業技術総合研究所や理化学研究所、東大などと協力して拠点を整えるのだ。米国のNSTCの設備や人材を活用して開発に取り組む。日米が研究するのは幅が2ナノ(ナノは10億分の1)メートル相当の半導体だ。スマートフォンなどに使う10ナノ未満の半導体の生産能力は現在、台湾が世界シェアの9割を占めている。こうなると、韓国は脅威に感じて当然だ。

     

    (2)「韓国は、サムスン電子が米国にファウンドリー工場を追加で建設し、SKハイニックスが半導体の研究・開発に向けた共同投資を約束するなど、企業単位では積極的に取り組んでいる。ところが、韓国政府次元では中国の反発を意識し現時点でチップ4への参加表明を行っていない。その間にメモリー分野で世界トップの韓国半導体の技術面での優位を脅かすニュースが相次いで飛び込んできた。米国のマイクロン社が、世界で初めて232層NANDメモリーの大量生産に成功し、中国の半導体メーカーSMICが7ナノ半導体工程を完成したというニュースも報じられた」

     

    韓国の半導体は、日本技術の窃取に始まっている。それだけにメモリー半導体では強いが、非メモリー半導体(システム半導体)は弱点である。この部分をいかに補強するかが問われている。いくら、中国を振り向いても解決策は見つかるはずがない。

     


    (3)「米国は、半導体の開発・設計分野で圧倒的な技術力を持ち、これによって今なお世界の半導体産業で主導権を握っている。台湾はファウンドリー(半導体受託生産)分野で世界一位、日本は半導体の素材や製造設備の分野で世界トップの競争力を持つ。韓国はこれらの国々と協力せずしては半導体産業の未来を描くことはできない。韓国にとって弱点の半導体設計、システム半導体などの分野は米国と協力して競争力を高め、汎用メモリー半導体は日本との提携を検討することも可能だ

     

    下線部は、韓国半導体の弱点を言い当てている。「チップ4」に参加して、この弱点を補強しなければ、韓国経済の未来はないのだ。

     


    (4)「韓国政府は、メーカーと深く連携し国として半導体戦略を取りまとめねばならない。半導体輸出先の60%を占める中国(香港を含む)の報復を受けないよう、さまざまなルートを通じて中国と共存する落としどころを見いだすことも政府が取り組むべき課題だ。慎重を期すべきだが、あまりに右顧左眄して時を逃す愚を犯してはならない」

     

    半導体輸出では、中国向が香港を含めて60%も占めている。だが、中国のロウエンド半導体の国産化が進めば、この輸出は減る運命である。こういう先行きを見通せば、「チップ4」で新たな出発をする時期だろう。


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