勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2022年07月

    あじさいのたまご
       


    韓国政治を観察していると、もはや救いがない感じを受ける。与野党が揃って低俗は争いを繰り広げているからだ。与野党ともに、支持率を上げるべき党代表に若手を起用し、選挙が終わると「用済み」とばかりに放り出し、内紛を起している。

     

    与党では、30代の青年が代表に就任し、大統領選と地方選挙を勝ち抜いた。だが、事実関係は不明であるが、「性接待」とかいう韓国特有の騒ぎを起している。与党は、この代表を「6ヶ月間職務停止」とした。拙いのは、尹大統領が与党院内代表へ、「与党代表が職務停止で好都合」という主旨のメールを送り、それをメディアに報じられたことだ。

     

    これは、大統領として絶対にやってはいけないことだ。自らの大統領選で協力してくれた党代表に対して、「使い捨て」の印象を与えるからだ。こうしたことも手伝い、尹大統領支持率は底なしの下落である。

     


    『中央日報』(7月29日付)は、「尹大統領の支持率28%、就任後初めて20%に墜落」と題する記事を掲載した。

     

    尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の支持率が就任後初めて20%台になった。韓国ギャラップが7月26~28日全国の18歳以上の男女1000人対象にした世論調査を実施した結果、尹錫悦大統領の支持率は先週より3%ポイント下落した28%となった。韓国ギャラップの世論調査上、尹大統領の支持率が20%台に落ちたのは就任後初めてだ。職務遂行をうまくやっていないという回答は前週より2%ポイント上がった62%だった。

     

    (1)「否定評価の理由は、人事問題が21%で最も高かった。また、経験・資質不足/無能さ(8%)、経済・民生注力(8%)、独断的/一方的(8%)、疎通不足(6%)という理由が後に続いた。今回の否定評価には最近論議を呼んだ警察局新設(4%)と与党内部葛藤/権性東(クォン・ソンドン)院内代表職務代行のSMS(ショートメッセージサービス)露出(3%)などが追加された」



    不人気である最大の理由は、人事問題だ。閣僚に、検察時代の同僚や部下を大量に採用した。「気心の知れた人物」を任命したことが非難の的である。ともかく、就任2ヶ月余で雑音が絶えない。一つには毎日行なう、即席記者会見で揚げ足を取られている。十分に考えた後で行なう「定例会見」という形式でない。毎日、情報発信しているから、感情的で矛楯したことも言っている。そこを突かれるのだ。いったい、これからどうなるのか。先行きが思いやられる状況になっている。

     

    『中央日報』(7月21日付)は、「尹大統領の突破口は何か」と題する記コラムを掲載した。筆者は、同紙のシン・ヨンホChiefエディターである。

     

    支持率を上げるためには何よりも優先すべきことがある。基本に戻り、野党と対話をして妥協することだ。尹大統領は何度か議会尊重の意思を表した。5月の国会演説で「チャーチルとアトリーのパートナーシップがいつよりも必要だ」と述べた時は期待が大きかった(政敵のチャーチルとアトリーは第2次世界大戦で戦時危機連立内閣を樹立した)。

     


    (2)「大統領選挙直後に、朴炳錫(パク・ビョンソク)元国会議長に会って「議会主義を常に尊重する」とも話した。しかしまだに野党とまともに対話するのを見たことがない。実際、少数与党では大統領は何もできない。少数与党でスタートした金大中(キム・デジュン)大統領は就任演説で野党に向けて「切実に望む。あらゆることを相談する。1年だけでも助けてほしい」と頭を下げた。「何をするにも国会の協力が必要」ということを常に念頭に置いていた。なぜそうか。金大中大統領だけではない。金泳三(キム・ヨンサム)大統領も、盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領も妥協がいつも基本だった。尹大統領もそうしなければいけない」

     

    尹大統領は、まだ野党代表と会談していない。ここは、野党に協力を申入れる度量の大きさを見せるべきだ。金大中・金泳三・盧武鉉の各大統領も野党に頭を下げている。国会の円滑な運営には欠かせない。

     


    (3)「政治は妥協であり、それが協治だ。望むものを得ようとすれば相手が望むものを与えなければいけない。マックス・ウェーバーの論理のように、主張ばかりすれば信念政治にすぎず、妥協を通じて望むところに進むのが責任政治だ。実際、現在の与野党をみると協治は可能だろうかという考えになる。与党の立場では野党の激しい攻勢と非難が耐え難いかもしれない。それでも野党のせいばかりにしてはいけない。それは無能ということだ。国会空転の被害は国民に向かう。国民のために野党に頭を下げる大統領なら支持率は低下しないだろう」

     

    文政権は、主張ばかりしてすべての政策で失敗した。一切の妥協を拒否したのだ。この失敗例を見れば、尹大統領も妥協を通じた政治をしなければならない。それが、国民のためになることを肝に銘じるべきである。

     


    (4)「野党の元老の柳寅泰(ユ・インテ)元議員は最近、筆者に「大統領が役割をし、国会が与えるものを与えて受けるものを受ければ支持率は上昇するはずだが…」と話したが、この言葉が耳から離れない。不可能に見えても大統領が努力する姿を見せれば、その響きは大きいはずだ。手を差し出しても野党が背を向ければ、それは国民が評価する。検察総長は行政を、大統領は政治をする席だ。政治は対話と妥協だ

    尹大統領は、元検察総長である。妥協は不必要な職務であった。現在は、妥協によって問題解決を図らなければならない政治が職務である。この区分けができなければ、「第二の文在寅」となろう。

     

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    韓国大法院(最高裁)は、旧徴用工賠償問題で早ければ8~9月ごろ、日本企業の差し押さえ資産現金化へ最終決定を下すと見られている。これが現実になれば、日本政府が予告するように「取り返しのつかない」事態となる。韓国政府は、日本政府の強硬姿勢を承知しているので、何とかこの事態を回避したいと必死である。

     

    『聯合ニュース』(7月29日付)は、「韓国政府、徴用問題で最高裁に意見書提出 解決へ外交努力」と題する記事を掲載した。

     

    韓国大法院(最高裁)が徴用問題を巡り被害者への賠償を命じた三菱重工業の韓国内資産の売却(現金化)手続きが進むなか、外交部が大法院に同問題の解決策を模索するため外交努力を傾けていることを説明する意見書を提出したことが29日、分かった。

     


    (1)「法曹界の関係者によると、外交部は26日に徴用訴訟の原告である梁錦徳(ヤン・グムドク)さんと金性珠(キム・ソンジュ)さんへの損害賠償を拒む三菱重工の商標権や特許権の現金化について審理している大法院に対し意見書を提出した。外交部の当局者はこれに関して、大法院の民事訴訟規則に従って意見書を提出したことを認めたうえで「韓国政府は韓日両国の共通の利益に合致する合理的な解決策を模索するため対日外交を続けており、被害者への賠償問題の解決策を探る官民協議会を通じて原告の意見を聴くなど多角的な外交努力を傾けている」と説明した」

     

    文政権が解決しなかった徴用工訴訟問題は、ユン政権にとって日韓外交修復の試金石になっている。差し押さえされた日本企業の商標権や特許権の現金化は、絶対にあってはならない問題である。日本政府は、韓国政府へ仮に執行したならば、「破滅的結果」を招くと警告している。

     


    (2)「大法院の民事訴訟規則とは、国家機関や地方自治体が公益に関連した事項に関し、大法院に裁判に関する意見書を提出することを認める条項。外交部が徴用訴訟を巡り大法院に意見書を提出したのは、2016年以来となる。大法院が日本企業に賠償を命じた訴訟のうち、梁錦徳さんと金性珠さんへの賠償に向けた現金化の手続きが最も早く進んでいるとされる。ただ2人の支援団体と代理人は官民協議会に参加しておらず、三菱側の謝罪と賠償のほかに解決策はないと主張している」

     

    日本は、日韓基本条約(1965年)で解決済みとしている。日本による無償3億ドル提供の中に、旧徴用工賠償金は含まれているという立場だ。大法院は、無償3億ドルの名目が「協力金」であり、「賠償金」でないという三百代言的な言辞を弄した。文政権の意向を100%受入れたものだ。

     


    (3)「日本側は、自国企業の資産の現金化を両国関係の「レッドライン(越えてはならない一線)」と見なし、韓国側に解決を求めているため外交部は困難な立場に置かれている。関係者の間では、早ければ8~9月ごろに日本企業の資産の現金化に対する大法院の最終決定が下されるとの見方が出ている。外交部が意見書を提出したのは、現金化が迫っていることを踏まえ、外交的に問題を解決するための努力をしている点を強調したものとみられる」

     

    韓国政府は、大法院へ意見書を提出し、現金化への法執行をしないように申入れた。大法院もこの意見書を無視はできない筈だ。

     


    『中央日報』(7月25日付)は、「韓国外交部長官、強制徴用の具体的解決策提示が韓日首脳会談の前提条件と確認」と題する記事を掲載した。

     

    外交部の朴振(パク・チン)長官が韓日首脳会談と関連し、韓日強制徴用問題に対する具体的な解決策提示が会談の前提条件だと確認した。

    (4)「朴長官は25日の国会対政府質問で、「強制徴用に対する具体的解決策提示が韓日首脳会談の前提条件ではないのか」という与党「国民の力」のユン・サンヒョン議員の質問に対し、「そうだ。今回(日本の林芳正外相と)会って強制徴用問題と関連して、被害者が高齢化しており、現金化が差し迫っているためこの問題について、緊張感を持って早い時期に解決できるよう最善の努力を尽くしたい。日本もこれに誠意を持って呼応する措置をしてほしいと促した」と答えた」

     

    具体的には、文政権時代に当時の文喜相(ムン・ヒサン)国会議長が提案した「1+1+α」案が再び浮上している。朴長官は、「われわれがさまざまな方策を検討する過程で参考にできる内容」と話している。文喜相案は、日韓両国企業の自発的参加で作られた基金で被害者に慰謝料を支給するようにするもの。基金には、両国企業だけでなく国民が参加するようにするという内容であった。

     

    文喜相案は、韓国の旧徴用工遺族も受入れる100万人もの嘆願書が出ていた。文大統領(当時)が、メンツの問題で受入れなかった経緯がある。



     

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    米国下院は、徹底的な中国包囲網の一環として、半導体保護法を成立させた。520億ドル(約6兆9900億円)の補助金・奨励金を盛り込んだ国内半導体業界支援法案を可決したもの。すでに、上院でも可決している。米国はまた、「チップ4」(日米台韓)構想を立てている。韓国が、8月末までに参加の意思を表明すればスタートする段取りだ。

     

    『ブルームバーグ』(7月29日付)は、「米半導体法案が下院通過大統領署名経て成立ー520億ドル規模」と題する記事を掲載した。

     

    米下院は28日、520億ドル(約6兆9900億円)の補助金・奨励金を盛り込んだ国内半導体業界支援法案を可決した。バイデン大統領の署名を経て成立する。同法案が最初に議会に提出されてから1年以上を経て、バイデン政権の取り組みが成功を収めた。ペロシ下院議長は採決前に声明を発表し、「この法律は米国の家庭と経済にとって大きな勝利だ」とした上で「成立すれば、わが国の半導体生産が強化され、国内製造業を再活性化するとともに賃金水準の高い10万人近い雇用が創出される」と指摘した。

     


    (1)「上下両院の長い交渉の末にまとまった今回の半導体関連法案は、米産業基盤を再活性化するとともに、将来的な海外のサプライチェーン混乱を巡る国家安全保障上の利益を向上させる狙いがある。現在、最先端の半導体製品の大部分が海外で生産されている。法案には半導体業界への助成に加え、研究開発や職業訓練、第5世代(5G)技術向けの資金も盛り込まれている」

     

    米国は、「チップ4」の核になる国として、最先端の半導体製品(システム半導体)の生産を増やす体制を構築する。もともと、米国は半導体の母国である。それが、グローバル経済の波に乗って生産費の安い国での生産に切り変えた。だが、安全保障が最大の要件になってきた現在、米国での生産を増やして中国を寄せ付けない体制づくりが喫緊の課題になっている。皮肉にも、中国の軍事的台頭がグローバル経済を破綻させたのだ。

     


    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(7月28日付)は、「半導体の補助金と関税、中国依存を減らすため」と題する記事を掲載した。

     

    半導体生産や、その他無数の製品の生産を中国に移転させることは、経済的に効率性が高いかもしれないが、マイナス面もある。中国がその依存状態を、将来起きる米国やその同盟国との紛争に利用しようとする可能性がある。ロシアが現在、ロシア産ガスに依存する欧州の状況を利用し、ウクライナ支援を妨げようとしているのと同じ構図だ。

     

    (2)「ここ数年の出来事は、サプライチェーンに対する脅威に新たな関心を呼び覚ました。新型コロナウイルスの大流行によって半導体が急激に不足し、自動車生産に混乱が生じている。医療品や日用品の輸出を制限する国々も出てきた。地政学が多くの場合、それを後押ししている。米国は中国企業に対して先端技術の販売を制限したほか、ウクライナへの軍事侵攻を受け、同盟国とともにロシアへのマイクロチップや航空部品など主要製品の販売を禁止した。ロシアは同じやり方で報復し、欧州に供給してきた天然ガスを制限している。将来、台湾をめぐり何らかの紛争が起きれば、台湾に支援の手を差し伸べようとする国から中国が重要物資を引き揚げる可能性があることは想像に難くない」

     


    半導体は、戦略物資である。武器弾薬に半導体が利用されているからだ。ウクライナ侵攻で、ロシアのロケット弾で不発が多く、標的を外していると指摘されている。これは最先端半導体がないためだ。米国がウクライナへ提供したロケット弾は、精密誘導装置が付けられている。最先端半導体の威力だ。100発100中とされる。

     

    (3)「欧州連合(EU)も半導体支援を強化する中、補助金戦争と供給過剰が発生する可能性が高まっている。これに対し、米国とEUは協調していくと語っている。欧州委員会で競争政策を担当するマルグレーテ・ベステアー委員は今年行ったインタビューで「われわれは補助金競争を避けることに共通の利益がある」と述べた。欧米双方にとって半導体の自給自足は「立ち入るべきでない場所」だと同氏は言う。存在しない資金と人材を必要とするからだ。「それゆえ進むべき唯一の道は、EUと米国が協力し、恐らく他のパートナーも巻き込むことだ」と指摘する」

     

    EUは、台湾の半導体企業を誘致すべく努力している。EUが、脱中国の傾向を強くしている裏には、台湾の半導体企業と密接な関係を構築する目的が込められている。

     


    (4)「この法案の最大の欠陥は、中国依存を減らす効果が薄いことだ。ロボット工学や人工知能(AI)といった最先端分野に注意を向けることで、磁気共鳴画像装置(MRI)に使われる造影剤やネオジム磁石といった、ありふれた重要製品を中国が支配している事実が目立たなくなる。米国とその同盟国はデータセンターで用いるような高度な半導体を独占しているとはいえ、中国は自動車など多くの産業に不可欠なローエンド(低性能)半導体で市場シェアを拡大している。中国は利益を度外視できる一方、欧米企業はそれができず、価格が高い部品供給業者に発注を多様化する動機がないのだから、この状況は続くだろう」

     

    中国は、世界中から中古のロウエンド(低級品)半導体製造装置を買い集めている。先端半導体生産が、米国の制裁で困難になっているからだ。中国は今後、このロウエンド半導体の量産化を急ぐと見られる。

     

    (5)「そこに関税は一つの動機をもたらす。トランプ氏が2018年に大半の中国製品に輸入関税を課したのは、主に米国の貿易赤字を減らすためだが、もう一つの目的は、米国企業が「そうした製品をどこで製造するか、他の選択肢を検討せざるを得ない」ようにするためだった」

     

    トランプ氏の対中関税政策は当初、大変な批判に曝されたが、中国のように自由貿易ルールを踏みにじる国家には必要という認識に変わった。グローバル経済が、逆に中国に悪用されるという現実感を共有する事態に変わったのだ。移ろいやすい世界である。中国は、自由世界から貿易面でも警戒される対象国になっている。

     

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    中国の習国家主席は7月28日、バイデン米大統領と電話会談を行い、台湾を巡り警告を発した。ペロシ米下院議長が台湾訪問を計画しており、米中の間で緊張が高まっている。ワシントンの中国大使館の発表によると、会談は2時間以上に及び、ロシアのウクライナ侵攻や世界経済など幅広い議題を巡り率直な話し合いが行われた。習氏とバイデン氏は、互いに米中の協調を呼びかけたという。

     

    米『CNN』(7月29日付)は、「米中首脳が電話会談、台湾巡り「火遊びするな」と習氏がけん制」と題する記事を掲載した。

     

    米中間の緊張が高まる中、バイデン米大統領と中国の習近平(シーチンピン)国家主席は28日、電話会談を行い、台湾問題について長時間にわたり意見を交わした。

    米当局は台湾をめぐって中国の動きがより切迫したものになることを恐れているが、一方でペロシ米下院議長の台湾訪問の可能性が浮上したことで中国が警告を発する事態となっている。バイデン政権が対立に発展するのを防ぐための協調的努力をする中で、台湾問題は最も議論された内容の一つとなった。

     


    (1)「両首脳は2時間17分に及ぶ電話会談で台湾問題について話し合った。中国の国営通信によると、習氏はバイデン氏に「世論に反してはならない、火遊びをすればやけどをする。米国側がこのことを明確に理解することを望む」と述べたという。ホワイトハウスは電話会談の内容をそれほど明確には説明しておらず、「台湾について、バイデン大統領は米国の方針は不変で、現状変更や台湾海峡の平和と安定を損なう一方的な取り組みには強く反対することを強調した」と述べた。ある米政権高官は、台湾問題の議論は「直接的で実直な」ものだったと説明した。ただ、習氏の警告については重要視せず、「火遊び」のリスクを警告することは中国首脳によくあることだと述べた

     

    中国は、威嚇が重要な武器である。今回も、その武器を使ってきた感じだ。米国も、強い調子で中国へ向かい合っているので、中国はそのイライラもあるに違いない。

     


    (2)「両首脳の電話会談は5回目で、昨年2月以来だ。会談に先立ち、米当局は台湾をめぐる緊張から経済競争、ウクライナでの戦争まで、さまざまな話題が浮上する可能性があると述べていた。しかし、中国との関係が実質的に改善されることへの期待は薄かった。バイデン氏の複数の側近は、習氏との個人的なつながりを維持することで、対立につながるような誤算を避けられることを望んでいる。米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報担当調整官は今週、「バイデン大統領はたとえ考えに大きな相違があるかもしれない国々とでも意思疎通を図ることを信条としており、これはそうした種の会談だ」と述べた」

     

    バイデン氏は、習氏と会談したからと言って直ぐに状況に変化が起こるとは思っていないという。異なる意見の持ち主と対話する。これが、「バイデン流外交」である。

     


    (3)「バイデン氏と習氏の電話会談の計画は、ペロシ氏の台北訪問をめぐる騒動より早く、数週間前から話し合われていた。現在の緊張の中心にあるのは、台湾や南シナ海などの地域でエスカレートしつつある中国の攻撃性だ。米当局は意思疎通のラインが開かれていなければ誤解が意図しない紛争に飛び火することを恐れている。その中には、ペロシ氏が訪台する場合に中国がどのように対応するかも含まれる」

     

    米中で当面する問題の一つは、米下院議長ペロシ氏の訪台計画である。今回の米中の会談後に発表された文書には、ペロシ氏に関する記述はない。意見が一致しなかった証拠である。

     

    (4)「米政府高官は先週から密かに、訪台が潜在的に抱えるリスクについてペロシ氏を説得している。オースティン国防長官は27日、ペロシ氏に「治安情勢の評価」を提供すると伝えたと述べた。ペロシ氏は訪台計画について何も発表しておらず、最終決定もまだだ。同氏は「訪問について話すことはない。私にとって危険なことだ」と同日語った。しかし、大統領継承順位第3位の人物が訪台を検討しているという非公式な情報でさえ、米国トップクラスの高官の訪問を台湾との外交関係の証と見なす中国は激しく反応した」

     

    ペロシ氏は、大統領継承順位第3位の人物である。中国の反応が、激しなる理由である。米国政府は、訪台について賛成も反対もしないとしている。だが、できれば取り止めて欲しいところが本音であろう。

     


    (5)「中国国防省の報道官は、26日にペロシ氏訪台の報道についての質疑応答で、「米国が独自の道を歩むと主張するなら、中国軍は決して傍観することはなく、あらゆる外部勢力の干渉や分離主義者の『台湾独立』計画を阻止するため、必ず強力な行動を取り、国家主権と領土保全を断固として守る」と、述べた。ホワイトハウスは、こうしたコメントは「不必要」で「役に立たない」とし、「完全に不必要な方法で」緊張をエスカレートさせるだけだと述べた」

     

    ペロシ氏は、8月のアジア歴訪で日本やインドネシア、シンガポールなどを訪問する予定である。ホワイトハウスは、ペロシ氏の判断だとして訪台計画について公式の見解を表明していない。ただ、国防総省当局者は非公式にペロシ氏とスタッフに不快感を示している。『ブルームバーグ』(7月29日付)が報じた。

     

    ペロシ氏は、中国が反対したので「訪台計画」を取り止めたというのも、大きな問題になりそうだ。訪台すれば、中国が猛反発する。最近の人民開放軍は、「暴走」傾向を強めている。それだけに、何が起こるかを予測するのは難しい。米軍が、戦闘機を同行させるとの報道もある。

     

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    中国共産党は28日、中央政治局会議を開き、2022年下半期の経済運営方針を決めた。最大の注目点は、年初の経済成長率目標「5.5%前後」について言及するか、であった。結果は、経済成長率について触れず、ゼロコロナ政策を堅持するとした。

     

    ゼロコロナ政策を堅持すれば、「5.5%前後」の成長は不可能である。二者択一の問題なのだ。こうして、「5.5%前後」の成長目標は、事実上の放棄となったのであろう。

     

    習氏は6月、コロナ感染を徹底的に抑え込む「ゼロコロナ」政策を堅持する方針を示すとともに、「一時的に経済発展に多少の影響があったとしても」人民の生命や健康を損ねるようなことがあってはならないと述べていた。中央政治局会議は、この習氏の方針にそのまま従う形である。

     


    『ロイター』(7月28日付)は、「中国政治局会議『最良の経済成果へ最大限努力』ゼロコロナ堅持」と題する記事を掲載した。

     

    中国国営メディアは28日、中国共産党中央政治局会議を受けて、合理的な範囲での経済運営を継続し、経済にとって最良の結果を実現するために最大限努力すると伝えた。

     

    (1)「年間の経済成長目標の達成を訴えてきたこれまでの姿勢とは一線を画した。新華社通信は2022年後半に「雇用と物価を安定させ、経済活動を合理的な範囲内に維持し、可能な限り最良の結果を出すよう努力する」べきだと伝えた。中国は今年、上海市のロックダウン(都市封鎖)など、大規模な新型コロナウイルス抑制策を取った結果、約5.5%の経済成長目標は困難との見方が強まっている。上半期の国内総生産は前年比2.5%増にとどまった」

     

    今年下半期について、「経済活動を合理的な範囲内に維持し、可能な限り最良の結果を出すよう努力する」としている。これは、李首相発言でもすでに明らかにされていた。上半期のGDPは前年比2.5%増に止まっている。これにも関わらず「5.5%前後」に拘れば、下半期の成長率を8%に押上げなければならないのだ。

     

    インフラ投資も財源が枯渇している。頼みの土地販売収入は、上期に前年比31%減になっている。とてもインフラ投資を増やせる状況にない。結局、「可能な限り最良の結果」という当たり障りのない結論になったのであろう。

     


    『日本経済新聞 電子版』(7月28日付)によれば、
    「未完成住宅の購入者が抗議のため住宅ローンの返済を拒否する問題は、「地方政府の責任で、円滑に新築住宅が引き渡されるようにする」と説明している。極めて無責任というほかない。

     

    この問題の発端は、習氏の「共同富裕論」から始まったことだ。出生率を高めるには、高い住宅費の正常化が必要とした。その一環として、不動産開発企業の財務ルール3条件を提示し、これにパスしない企業への融資にブレーキがかかったのである。こうして、銀行融資が滞り始め、住宅建設工事を中断するケースが激増した。住宅の購入予約者が、抗議のため住宅ローンの返済を拒否する問題へと発展している。

     

    この事態を放置すると、銀行に多額の不良債権が発生し、金融不安に発展しかねなくなっている。この重大問題を、財政赤字の地方政府に委ねることは、危機感が乏しいと言うほかない。住宅バブル崩壊の恐ろしさを、十分に理解していないのだろう。

     

     

     

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