勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2022年07月

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    中国の不動産市場は、完全に人気離散に陥っている。物件の値下がりが続いているので、消費者は様子見に徹しているにちがいない。専門家は、再び住宅価格が値上りに転じない限り、市場人気は高まらないというが、その可能性はゼロだろう。不動産バブル崩壊の意味を理解すれば、短期の市況回復はあり得ないことだ。

     

    『ブルームバーグ』(7月28日付)は、「中国不動産危機さらに深刻化か-恒大急落予想的中のUBSラム氏」と題する記事を掲載した。

     

    中国の不動産開発大手、中国恒大集団の昨年の株価急落を正しく予測したUBSグループのアナリストが同セクターのさらなる混乱に警鐘を鳴らしている。業界再編が続く中で民間の不動産開発業者の経営破綻が増える可能性があるという。

     


    (1)「UBSの中国・香港担当不動産調査責任者、ジョン・ラム氏はこれまでのところ政府の政策では住宅購入者の信頼回復という根本的な課題を解決できていないと指摘。開発業者のデフォルト(債務不履行)が相次ぎ、不動産需要が低迷している状況を受け、政府が「開発業者ではなくセクターを救済する」と同氏は考えている。ラム氏は今週のインタビューで、「不動産セクターは生き残るだろうが、民間開発業者の一部は将来的に消滅する可能性がある」と発言。より健全なバランスシートを考慮すれば国有企業の方が安全な投資先と見なされるとして、プレーヤーの入れ替えは「国有の開発業者が市場シェアを拡大できる」という意味だと語った」

     

    中国の不動産開発業界は、かねてから最終的に国有企業だけが生き残るだろうと指摘されて来た。ここでも、同じ見方が示されている。国有企業は、国有銀行が「メインバンク」であり、資金繰りに問題がないからだ。

     


    (2)「ラム氏は2021年1月、恒大の投資判断を「売り」とし、目標株価を61%引き下げた。その後、恒大の株価は90%余り下落し、今年3月には一時
    売買停止となっていた。ラム氏は、「住宅購入者の信頼を取り戻すためには、政府はリスクリワードを改善する必要がある。つまりある程度の不動産価格上昇を容認すべきだ。そうなれば市場に強いシグナルを送ることになるだろう」と述べた」

     

    ラム氏は、昨年1月の時点で中国恒大の株価暴落を予測していたという。財務内容の悪化が、その決め手になっていたのであろう。さらに、同社の財務内容がそこまで悪化するほど、住宅市場の飽和化に気付いていいたはずだ。その根拠として、人口動態の悪化を見ていたのであろう。

     

    下線部は、無理な前提である。ラム氏が、恒大の株価暴落を予想し、見事に的中させた条件が現在、少しでも改善しているか。答えは、「ノー」でああろう。とすれば、消費者に住宅価格が値上りするという期待を持たせることはできまい。ここでは、住宅を投機対象として取り上げている。だから、バブルが起こったのである。実需は、人口動態からみて満たされているか、それに近い状況であろう。

     


    『ブルームバーグ』(7月28日付)は、「中国が最大20兆円の不動産融資目指す 未完成物件完成に向け-報道」と題する記事を掲載した。

     

    中国政府は工事が止まっている不動産開発事業を巡り、銀行による最大1兆元(約20兆円)相当の貸し出しを通じ完了を支援することを目指していると、協議に関与している複数の関係者を引用して英紙『フィナンシャル・タイムズ』(FT)が報じた。

     

    (3)「同紙によると、中国人民銀行(中央銀行)はまず、政府系の商業銀行に年1.75%程度の低金利で約2000億元相当の融資を提供する見通しだ。中国当局はこれをテコに最大5倍となる計約1兆元を調達するよう銀行に期待しているとFTは報道。だが、ディストレスト(注:破産状態)下にある不動産プロジェクトに関して、銀行側がリターンを得るのは難しく、人民銀が目指す規模の資金集めは難航するのではないかと、銀行の経営幹部やアナリストらは警鐘を鳴らしているという」

     

    金融機関は、慈善事業をしているのではない。貸付けた資金が、確実に利息と共に返済される見通しが付かない限り、融資には応じないはずだ。こういう金融常識論から言っても、銀行が1兆元(約20兆円)の融資をするか疑問としている。中国不動産業界は、完全に見放された状態にある。この現実を知れば、中国経済の先行きを暗く見るのは致し方ない。

     

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    中国は、スリランカ指導者を籠絡し返済不能を知りながら、無駄な4車線高速道路や1500人収容の大会議場を建設させた。総事業費31億ドルをかけた港湾建設も、借金の担保に中国へ99年間貸与という形で取り上げられた。中国が、あくどく途上国を食い荒らす現状が報道された。

     

    英紙『フィナンシャル・タイムズ』(7月28日付)は、「債務危機のスリランカ、無用の大会議場建設に批判」と題する記事を掲載した。

     

    スリランカの新大統領が直面する試練の厳しさは、南部ハンバントタへ通じる道路を走ればわかる。

     


    (1)「熱帯雨林の中を進んだ先にあるのは、1500人収容の大会議場や3万5000席を備えたクリケット競技場、巨大な「国際」空港。どれももぬけの殻で、熱暑の中で朽ちている。コロンボの南西約160キロメートルに位置するハンバントタでは、地元の商工会議所ティラル・ナドゥガラ会頭によると、ハンバントタのクリケット競技場は11年の開場以来、わずか27試合が実施されただけだが、「会議場はそれよりさらにひどい。競技場は少なくとも試合に使うことができる。会議場は結婚式やコンサートに使えるが、地元の人たちは使用料を払えない」という」

     

    スリランカは、中国の口車に乗せられ、借金によって無駄な高速道路や大会議場を作らされた。騙す方も騙す方だが、騙された方も問題である。中国の言うことが本当かどうか見抜けなかったのだ。もっとも、中国からたっぷりと「袖の下」が渡っている筈。これが、中国の常套手段である。

     

    中国がスリランカを騙したのは、インドへの軍事対抗上、スリランカに港湾をつくらせ、後から担保で抑える目的であった。中国は、一銭も出さずにスリランカの港湾を99年間の租借で手に入れたのだ。酷いことをするものである。

     


    (2)「31億ドル(約4200億円)の総事業費をかけた港も、このインフラ整備の一部分だった。中国からの資金提供で整備されたが、大きな赤字が出てスリランカ政府は債務の返済に行き詰まり、2017年に運営権を中国側に譲り渡した。使われていない4車線の高速道路で結ばれたこのインフラは、スリランカを支配していたラジャパクサ一族による資金の無駄遣いの最たるものと批判されている。人口60万人にすぎない地元に大盤振る舞いをするために、一族は海外から巨額の借り入れをした」

     

    中国の「一帯一路」は、こういう「下心」によって取捨選択されている。中国に狙われた国は、不幸というほかない。専制国家の指導者が、中国の賄賂攻勢によって屈しており、「債務の罠」にはめられている。

     

    (3)「残された借金と膨れ上がる維持費は、ウィクラマシンハ新大統領が直面する問題を映し出している。新大統領は国際通貨基金(IMF)の支援を取り付けて500億ドル超の対外債務を再編すべく、痛みを伴う改革に取りかかろうとしている。マヒンダ氏の弟のゴタバヤ・ラジャパクサ前大統領は7月、物価上昇と燃料不足、通貨の急落に対する抗議デモが高まるなかで国外に脱出した後に辞任した」

     

    IMFから500億ドルの融資を受けるべく、交渉が始まっている。前大統領は、抗議デモで国外へ逃亡した。

     

    (4)「スリランカの債務をめぐる協議は、アジアとアフリカの新興国に巨額の融資をしてきた中国が、他の債権者とどのように協調するかを占う試金石として注目される。アジアとアフリカの新興国は、物価の高騰やウクライナ紛争のあおりを受けて支払いの負担がましている。スリランカ国内の混乱を受け、協議は何週間も延期されている。専門家は、国民におよそ不人気なウィクラマシンハ氏は社会秩序の回復を優先すべきだと指摘する。だが先週、同氏がデモ隊の排除に軍を動員したことで、最大都市コロンボでさらなるデモが起きている」

     

    スリランカ最大の債権者は、中国である。スリランカをここまで混乱させた張本人だが、債務整理には極めて非協力である。中国は絶対に元利金の一部免除には応じないことで有名だ。返済期間を延長して回収するのが原則である。これは、借入金を又貸ししている結果である。金利も商業銀行並という高さである。

     


    (5)「スリランカ中央銀行のウィーラシンハ総裁は、政府は一刻も早く「租税に関する施策、支出削減と国営企業の再編に関する施策」を断行すべきだとする。だが、ウィーラシンハ氏はFTの取材に対し、例えば赤字の国営電力会社の改革は電気料金が上がることを意味するとくぎを刺した。「困難であることは認識しているが、実施しなければならない。このような政策すべての影響を受ける貧しい弱者を守るのは、政府の責任だ」と同氏は言う。専門家は、年末までにスリランカ国民の約半数が貧困層に陥るとみている。最近まで上位中所得国に分類されていた人口2200万人の島国にとって、驚くべき退行だ

     

    スリランカは、中国の「債務の罠」にはめられなければ、上位中所得国であった。それが、ここまで酷い境遇に沈んだのだ。

     


    (6)「中銀は7月、年率55%に達するインフレを抑え込むために常設貸出金利を1%引き上げて15.%とした。ウィーラシンハ氏は、政府は必要のない公共投資をやめ、外貨を燃料の輸入代金に充てられるようにテレビや自動車、携帯電話などの輸入を止めるべきだと語った。痛みを伴う改革はIMFから30億ドルの支援を得るための前提条件となる」

     

    インフレは、年率55%である。IMFから融資を受ける以上、無駄な投資や必需品でない輸入を止めて、国際収支の均衡化を目指す。

     

    (7)「IMFの支援を受けられれば、世界銀行とアジア開発銀行(ADB)による40億ドルの支援にもつながる。だが、スリランカは深刻な危機の中で石油とガスの輸入をすぐに再開できるよう、2国間援助の主要供与国である中国、インド、日本から最大15億ドルのつなぎ融資を取り付けようともしている。「IMFの支援が始まるまでの向こう34カ月間、それでしのげるはずだ」とウィーラシンハ氏は見通しを示した」

     

    IMFは、融資資金が中国返済に回らぬように監視する必要がある。中国は、そういう抜け道を用意しているからだ。現に、パキスタンではそういう、ずる賢いことが発覚している。

     

     

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    FRB(米連邦準備理事会)が27日、通常の3倍となる0.75%の利上げを決めた。新金利は2.25~2.50%となる。韓国はどう対応するか。これまでは、米国に追随して利上げしてドル流出抑制策に出て来た。米韓の金利差は、0.75ポイントに開いた。

     

    韓国が追随利上げに走れば、これまでの利上げで追込まれている「借金投資族」がさらに苦境に立つ。韓国は、借金族に「優しい」国である。自己責任を問うことなく、国が徳政令を出して救済するのだ。子供の借金を親が救済する構図である。こういう、他国にない政策は、韓国が「宗族社会」の遺制を残している結果であろう。未だに、意識の近代化ができずにさ迷っている感じである。

     


    『中央日報』(7月28日付)は、「借金投資族の傷」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のアン・ヒョソン金融チーム記者である。

     

    この2年間騒がしかった流動性パーティーが終わった。残ったのは頭が割れるような二日酔いだけだ。資産価格に含まれていたバブルが消え、借金をして投資していた人たちが悲鳴を上げることになるという心配があちこちで聞こえる。

     

    (1)「今年初めだけでも、彼らはうらやましさとねたみの対象だった。低金利で銀行から金を借りられる高信用者はあらゆる手段で資金をかき集めて家を買った。昨年の国内の住宅(付属土地含む)相場を合わせた住宅時価総額は6534兆1876億ウォンで、1年ぶりに14.1%(808兆4488億ウォン)増えた。金を借りて家を買った人たちとそうでない人たちの資産格差はさらに広がった」

     

    文政権の住宅政策失敗が、住宅暴騰を生んだ原因である。20回以上の不動産対策を行なっても、価格高騰を抑えられなかったのだ。こういう現実に翻弄されて、「借金投資族」が登場した。

     

    (2)「家を買うことができなかった青年らは、一攫千金を狙って暗号資産投資に出た。価格変動が激しい暗号資産に蛾のように集まった彼らのスローガンは「漢江(ハンガン)ビューのマンションを買うか、漢江に飛び込むか」だった。株式と暗号資産への投資で数十億ウォンを稼いで会社を辞めたという武勇談に夜も寝られない人も多かった。わずか数カ月で状況が変わった。各国の中央銀行が緊縮に出て暗号資産などの資産価格が下落した。金利が上がり負債償還負担も大きく膨らんだ。いまや借金して投資した人たちを社会が抱きかかえなければならない対象になった

     

    国が、借金投資に失敗した人たちを救済するならば、これからも「借金投資族」は増えるであろう。自己責任による失敗収拾が、政府によって軽減されることを想定できれば、今後とも「借金投資族」の種は残っていくはずである。徳政令は、永遠に続くであろう。

     

    (3)「韓国地方税研究院は20日に出した報告書で、「低金利時期に住宅を買った20~30代に固定金利転換と財産税繰り延べなど積極的な政策を通じて20~30代への支援を拡大すべき」と提案した。金融委員会も「青年・庶民の投資失敗などが長期間社会的なレッテルにならないようにすべき」として利子減免などの支援策を出した。金周顕(キム・ジュヒョン)金融委員長は最初から彼らに対し「暖かい気持ちで理解し助けようとする心を持たなければならない」と話した」

     

    このパラグラフは、何とも「優しい」韓国政治の現状が浮かび上がる。だが、こういう扱いは決して美談ではない。禍根を残すだけである。

     

    (4)「モラルハザードに対する批判が高まると、「借金投資族のための対策ではない」と火消しに出たが、議論は鎮まっていない。もちろん尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の言葉のように政府が先制的に対応せずに金融分野へと不良が広がり、多くの青年や自営業者が信用不良者に転落する場合、社会的費用はもっと大きくなりかねない」

     

    日本人の私さえ、これまで「借金投資族」への警告を再三にわたり掲載してきた。韓国では当時、そういう警告はなかったのだ。韓国社会全体が浮かれていたことは疑いない。

     


    (5)「ひとつ抜けているものがある。金委員長は18日、「最近金利が上昇し、株価、暗号資産、マンション価格がみんな下がった。多くの人が損害をこうむり心の傷を受けた」と話した。借金投資族が資産価格下落で受けた傷と高騰する住宅価格を見てかんしゃくを起こした無住宅者、儲けるチャンスを逃し剥奪感に苦しめられた青年の傷のうちどちらが深いだろうか。政府は負債棒引き政策が、誠実に働いただれかに傷になりかねない点を分からなければならない」

    極端なことを言えば、韓国は法律で「徳政令」を出さないと決めるべきだ。各政権が、すべて徳政令を出してきたのだ。こういう「甘えの構造」が反日となって、いつまでも「謝罪と賠償」請求をする根因であろう。

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    習近平氏が、国家主席3選への意欲を表明した。「次の5年間が重要」という発言である。近く開催される予定の「北戴河」での長老会議を控えて、先制パンチを放ったと報じられている。習氏はこれまで、あの手この手の「搦め手」を使って、国家主席2期限りの規定を変えてまでこのポストに執着してきた。

     

    次の5年間は、中国経済が大きく下降する局面である。米中対立が、のっぴきならぬものになるであろう。台湾侵攻をちらつかせながら、緊張関係は高めるであろう。疲弊するロシア経済への支援も必要になる。次の5年間は、「魔の時期」に遭遇するリスクが膨らむと見るのだ。

     


    『日本経済新聞 電子版』(7月27日付)は、「習近平氏、3期目入りに意欲表明『次の5年極めて重要』」と題する記事を掲載した。

     

    中国共産党は27日まで2日間の日程で、最高指導部や地方のトップらが集まる党の重要会合を北京で開いた。習近平(シー・ジンピン)総書記は党幹部の人事を決める今年秋の党大会後の5年間が中国の将来にとって「極めて重要になる」と強調した。党トップとして異例の3期目入りに意欲を表明した。

     

    (1)「中国国営の新華社が27日伝えた。習氏はこの会合で「これからの5年間は社会主義現代化国家の全面的な建設に向けてスタートする重要な時期に当たる」と指摘。「この5年間の発展をうまくやることが(中国建国から100年目に当たる2049年までに達成するとした)第2の百年の奮闘目標を実現する上で、極めて重要になる」と述べた」

     


    習氏の指摘するように、「次の5年間」は中国経済史において最も重要な局面になる筈だ。人口減が現実のものとなり、労働人口不足の中で不動産バブル崩壊がもたらす後遺症をどのように克服するのか。もはや、インフラ投資もその神通力を失っている。過剰債務を抱えて、にっちもさっちもいかないのだ。

     

    インターネット関連産業は、高生産性部門であるが規制している。雇用不安を抱えながら、雇用吸収力の大きい産業をがんじがらめに縛り上げる不可解なことを始めている。戦争に備えて製造業へ、一段の高いウエイトをかけることが目的だ。米中戦争を視野に入れた危険な行動にちがいない。これで、確実に「中所得国のワナ」問題が浮かび上がる。所得面で、先進国へ脱皮できないままに終わることである。「第二のロシア化」である。


    (2)「秋の党大会で続投に向けた体制固めを進める習氏だが、このタイミングで「次の5年」にくり返し言及したのは党幹部らに忠誠を促す狙いがあったとみられる。習氏は自身が進めた反腐敗運動に触れ「根気よく綱紀粛正を続ける」とも話した。習氏続投への抵抗や反発には容赦しない構えを見せた。習氏は新型コロナウイルス対策を巡って「経済発展とコロナの予防・コントロールを一体的に管理し、世界で最も良い成果を収めた」と発言。党大会に向けて「実績」を誇示した。習氏は大きく変わる国際情勢などを念頭に「リスク」と「挑戦」にそれぞれ6回ずつ言及。危機感を強調し、党内の結束を促した」

     

    習氏は、今後5年間で経済面の落込みが明らかになるとともに、深刻な失業問題を発生させるであろう。国内の不満分子を鎮めるには、台湾侵攻によって関心を外に向けさせることだ。最近は、「衰退国のワナ」という言葉が関心を集めている。覇権挑戦国が経済余力のある段階で、戦争を仕掛けるというもの。中国が、経済衰退に焦って一か八かで台湾侵攻へ踏み出すリスクを指している。そうなると、今後5年間がその最も危険な時期に当るのだ。

     

    (3)「中国では8月ごろから河北省で「北戴河会議」が始まる見通しだ。避暑地の北戴河に長老や党幹部らが集まり、党の重要人事を話し合う重要な場となる。習氏には一家言を持つ長老らの機先を制する思惑もあったとみられる。

     

    習氏が、国家主席在任中は開戦へのリスクが最も高くなると見られる。人民解放軍を掌握しているが、それだけに自己保身で開戦に踏み切り、解放軍の「ガス抜き」を行なう危険性があるのだ。東条英機が青年将校に引きずられ、米国との開戦を防げなかった同じ構図が浮かぶ。東条は、開戦拒否の目的で勅命を受けたはずだが、血気に盛る青年将校を抑えられなかったのだ。習氏にも、同様のリスクを感じるのである。

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    世界戦略で右往左往

    圧倒的な「チップ4」

    新政権は積極姿勢へ
    協調し新分野を育成

     

    韓国半導体は、メモリーと非メモリー(システム半導体)を合計すると世界2位だが、メモリー分野では56.9%のシェア(2020年)を占めている。むろん、世界一の「強国」である。だが、先端分野の非メモリーでは、たったの2.9%のシェア(同)に過ぎない。恥ずかしくて、とても「半導体強国」とは言えないのだ。

     

    なぜ、このようなアンバランスな発展をしたのか。それは、韓国半導体の歴史にある。日本の半導体技術者が毎週、土日の休日を使ってソウルへ行き「アルバイト指導」した結果だ。サムスンは、こういう違法な形で日本の半導体技術を窃取した。これは、私がサムスン創業者の李秉喆(イ・ビョンチョル、1910~87年)から、日本の私的会合で直接聞いた話である。間違いはない。

     


    一回の出張料は、1ヶ月の月給に匹敵したという。月に4回サムスンへ出向けば、一ヶ月で実に4ヶ月分の月給に匹敵するアルバイト収入が、「無税」で日本の技術者の懐に入った勘定である。日本の給料を含めれば、1ヶ月で5ヶ月分の収入になった。札束で頬をひっぱたかれた形だった。

     

    日本の技術者の懐は大いに潤ったが、日本の半導体産業は後にメモリー分野で韓国に圧倒されることになった。ただ、日本の技術者は非メモリーの技術を教えることはなかった。こうして、韓国は、先端半導体であるシステム半導体を自力で開発せざるを得ず、その結果が世界シェア3%に止まっている背景だ。

     

    韓国半導体は、歪な形で発展してきただけに、「半導体神話」などと仰々しく言えるはずはない。現実に、非メモリーでは台湾企業に大きく出遅れている。97.1%は台湾企業の世界シェア(2020年)だ。メモリー分野でも、中国が「ロウエンド」(低級品)分野のシェア向上を狙って、巨額投資を行なっている。世界中から中古の「ロウエンド」半導体製造装置を買い集めているのだ。韓国は将来、メモリー分野で競合しかねないだけに、安閑としていられないだろう。

     


    世界戦略で右往左往

    サムスンは、労せずして半導体技術を手に入れたが、今後の世界戦略はそのような簡単なものではない。米中対立が鮮明になる中で、韓国の半導体を自陣営に引入れる綱引きが行なわれている。米国が「チップ4」(日本・韓国・台湾・米国)構想を打ち出しているからだ。韓国は、これまで中国が最大の輸出先であることから、中国の呼びかけをむげに無視もできず心は千々に乱れている。だが、米韓という軍事同盟の建前から、米国の要請を断るわけにいかないのだ。

     

    中国は、こういう韓国の迷いを突いている。

     

    中国外交部の趙立堅報道官は7月19日、米国が韓国に「チップ4」を提案したことについて、「半導体産業は高度にグローバル化し、各国が分業して協力し、半導体技術の持続的な進歩をともに追求した」と答えた。同時に、「米国は一貫して自由貿易原則を標ぼうしつつも、国の力を乱用して科学技術と経済貿易問題を政治化・道具化・武器化して『脅迫外交』を繰り返している」と辛辣に批判した。

     


    だが、半導体は戦略物資である。安全保障に重大な関わりを持つことから言えば、自由貿易の原則に縛られないことも事実だ。WTO(世界貿易機関)の係争において、安全保障による自由貿易ルールの規制は認められている。安全保障が、一国経済にとって最重要テーマになっていることを示唆するのだ。

     

    中国の主張を敷衍すれば、ロシアのウクライナ侵攻は許されないことになる筈だ。いかなる理由によろうとも、他国侵略は国連精神に反する。中国は、そういう普遍的ルールをないがしろにするロシアを支持している。原則を尊重しない中国が、安全保障を無視する主張を行なっても、受入れられる筈はない。

     

    中国は、「チップ4」から排除されることを恐れている。中国が、半導体の後進国である以上、なんとかして韓国を繋ぎ止めておきたい。そのために、前述のような「半導体産業は高度にグローバル化し、持続的な進歩をともに追求した」とあたかも、中国が半導体技術の発展へ貢献したかのごとき口吻である。現実は逆であって、技術窃取など「ただ乗り」してきたに過ぎないのだ。

     


    ここで、世界の半導体金額シェア(2020年)を見ておきたい。

     

        半導体全体  メモリー半導体
    米国   50.8%   28.6%

    韓国   18.4%   56.9%

    日本    9.2%    8.7%

    欧州    9.2%    0.8%

    台湾    6.9%    4.2%

    中国    4.8%    0.7%

    出所:OMDIA2021

     

    圧倒的な「チップ4」

    上記のシェアを見れば、「チップ4」が圧倒的なシェアであることが分る。中国の付け入る余地はないように見える。韓国も、中国シェアの低さから見て、「韓国の敵でない」という判断であろう。だが、中国は上述のように「ロウエンド」メモリー半導体の生産に特化する動きを見せている。この分野で、世界の生産基地を狙っている節が窺えるのだ。(つづく)

     

    次の記事もご参考に。


    2022-07-07

    メルマガ375号 韓国「半導体不況」襲来、外貨準備高4ヶ月連続減が示唆する「経済危機」

    2022-07-25

    メルマガ380号 「危ない!」中国主席3選、軍需経済化へ 衰退は確実 台湾侵攻でトドメ

     

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