中国の不動産市場は、完全に人気離散に陥っている。物件の値下がりが続いているので、消費者は様子見に徹しているにちがいない。専門家は、再び住宅価格が値上りに転じない限り、市場人気は高まらないというが、その可能性はゼロだろう。不動産バブル崩壊の意味を理解すれば、短期の市況回復はあり得ないことだ。
『ブルームバーグ』(7月28日付)は、「中国不動産危機さらに深刻化か-恒大急落予想的中のUBSラム氏」と題する記事を掲載した。
中国の不動産開発大手、中国恒大集団の昨年の株価急落を正しく予測したUBSグループのアナリストが同セクターのさらなる混乱に警鐘を鳴らしている。業界再編が続く中で民間の不動産開発業者の経営破綻が増える可能性があるという。
(1)「UBSの中国・香港担当不動産調査責任者、ジョン・ラム氏はこれまでのところ政府の政策では住宅購入者の信頼回復という根本的な課題を解決できていないと指摘。開発業者のデフォルト(債務不履行)が相次ぎ、不動産需要が低迷している状況を受け、政府が「開発業者ではなくセクターを救済する」と同氏は考えている。ラム氏は今週のインタビューで、「不動産セクターは生き残るだろうが、民間開発業者の一部は将来的に消滅する可能性がある」と発言。より健全なバランスシートを考慮すれば国有企業の方が安全な投資先と見なされるとして、プレーヤーの入れ替えは「国有の開発業者が市場シェアを拡大できる」という意味だと語った」
中国の不動産開発業界は、かねてから最終的に国有企業だけが生き残るだろうと指摘されて来た。ここでも、同じ見方が示されている。国有企業は、国有銀行が「メインバンク」であり、資金繰りに問題がないからだ。
(2)「ラム氏は2021年1月、恒大の投資判断を「売り」とし、目標株価を61%引き下げた。その後、恒大の株価は90%余り下落し、今年3月には一時売買停止となっていた。ラム氏は、「住宅購入者の信頼を取り戻すためには、政府はリスクリワードを改善する必要がある。つまりある程度の不動産価格上昇を容認すべきだ。そうなれば市場に強いシグナルを送ることになるだろう」と述べた」
ラム氏は、昨年1月の時点で中国恒大の株価暴落を予測していたという。財務内容の悪化が、その決め手になっていたのであろう。さらに、同社の財務内容がそこまで悪化するほど、住宅市場の飽和化に気付いていいたはずだ。その根拠として、人口動態の悪化を見ていたのであろう。
下線部は、無理な前提である。ラム氏が、恒大の株価暴落を予想し、見事に的中させた条件が現在、少しでも改善しているか。答えは、「ノー」でああろう。とすれば、消費者に住宅価格が値上りするという期待を持たせることはできまい。ここでは、住宅を投機対象として取り上げている。だから、バブルが起こったのである。実需は、人口動態からみて満たされているか、それに近い状況であろう。
『ブルームバーグ』(7月28日付)は、「中国が最大20兆円の不動産融資目指す 未完成物件完成に向け-報道」と題する記事を掲載した。
中国政府は工事が止まっている不動産開発事業を巡り、銀行による最大1兆元(約20兆円)相当の貸し出しを通じ完了を支援することを目指していると、協議に関与している複数の関係者を引用して英紙『フィナンシャル・タイムズ』(FT)が報じた。
(3)「同紙によると、中国人民銀行(中央銀行)はまず、政府系の商業銀行に年1.75%程度の低金利で約2000億元相当の融資を提供する見通しだ。中国当局はこれをテコに最大5倍となる計約1兆元を調達するよう銀行に期待しているとFTは報道。だが、ディストレスト(注:破産状態)下にある不動産プロジェクトに関して、銀行側がリターンを得るのは難しく、人民銀が目指す規模の資金集めは難航するのではないかと、銀行の経営幹部やアナリストらは警鐘を鳴らしているという」
金融機関は、慈善事業をしているのではない。貸付けた資金が、確実に利息と共に返済される見通しが付かない限り、融資には応じないはずだ。こういう金融常識論から言っても、銀行が1兆元(約20兆円)の融資をするか疑問としている。中国不動産業界は、完全に見放された状態にある。この現実を知れば、中国経済の先行きを暗く見るのは致し方ない。





