ロシアのウクライナ侵攻で、ロシアの物価は二桁の急騰が続いている。経済発展省が発表の統計では、7月1日時点のインフレ率は前年比16.19%で、前週の16.22%から伸びは若干の鈍化になった。だが相変わらず、市民生活は大きく圧迫されている。
ロシアは、過去の戦争時に経験した自給自足の生活に戻っており、庭で小動物を飼える法律も施行されている。ロシア市民は、ウクライナ市民と被害のレベルは桁違いだが、窮屈な生活を強いられている。
米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(7月26日付)は、「ロシア人は菜園で自給、制裁下のインフレ対策」と題する記事を掲載した。
クセニヤ・アブラモワさん(43)と母親は毎週末、白いふわふわの毛に覆われた大型犬のサモエドと6匹の猫を車に乗せ、サンクトペテルブルクから5時間かけて家族の庭をいじりにやってくる。そこで年内分の果物や野菜、ナッツを栽培するつもりだ。
(1)「多くのロシア人同様、アブラモワさんも、ウクライナ侵攻後の制裁措置による高インフレや食料供給途絶の可能性に対応しようとしている。「何もかもがばかばかしいほど高い。大惨事だ。だから夜明けから夕暮れまで庭を耕している」と話す。ロシア人の家庭では、夏は緑豊かな田舎の別荘で過ごすのが恒例だ。今年は、食料価格の高騰を相殺するために庭いじりをする人が増えている。6月の食料価格は前年同月比19.1%上昇した。同48%上昇した砂糖や28%上昇したパスタなど、一部の商品の価格はさらに上昇している」
スーパーの棚からは、輸入品がほとんど消え、その後を国産品が占めている。質は落ちても、棚が空になることはないようだ。最低限の生活は営まれている。その裏には、ロシア市民の大半が持っている田舎の家で、野菜作りで自給自足体制を取っているので、少しは生活の足しになっているという。
(2)「米ウィリアムズ大学の社会学者オルガ・シェフチェンコ氏は、「ロシア市民、特に古い世代の人たちは、長年さまざまな激動の連続を生き抜いてきており、自らのリソースを頼りに苦難を乗り切れることに、一定のプライドを持っている」と話す。「人々は生存が懸かったときには個人的な努力という、自己防衛のための『繭』に引きこもるものだ」とシェフチェンコ氏は話す。今それが再び起こっているのだとすれば、「政権が内外の観測者に印象付けようとしている力強い愛国心」とは対照的だ」
ロシア市民は、自己防衛で日々の生活に必要な野菜づくりで保存食を蓄えている。
(3)「ロシア世論・市場調査センターが今年行った調査によると、ロシア人の半数近くが別荘か庭地を所有している。また、夏休みに別荘や庭地で過ごす予定だと答えた人は39%と、昨年より5%増えた。ほとんどの人が、その土地で食料を育てるのに使用していると答えた。写真家のアブラモワさんは、今年に入って収入が半減したと話す。そこで、エストニアとの国境に近いプスコフ近郊の人里離れた場所にある2.5エーカー(約1万200平方メートル)の家族の土地で、母親と一緒に農作業をしている」
ロシア文学では、大地が大きなテーマだ。ロシア人の半数近くが、別荘か庭地を所有しており、黙々と野菜づくりしているという。あの広大なロシア領であるからできる芸当だろう。
(4)「アブラモワさんは、春に温室の換気・かんがいシステムに投資し、果樹園のチェリー、リンゴ、プラム、ナシの木を保護するために殺虫剤を散布した。自慢は40本の木が植えられたナッツ園だ。今季の収穫物で既に漬物やイチゴジャムを作っている。スグリの実やサワーチェリーが熟したら、ウオッカで漬け込むつもりだ。アブラモワさんは重労働が好きなわけではないが、庭いじりは生活の他の部分で増すストレスに対処するのに役立っていると話す。「植物は育つし、植物にとっては世間で起こっていることなど関係ない」という」
庭いじりでストレスを解消しているという。漬物やイチゴジャムを作っている光景は、戦争の影を感じさせないものだが、一方ではウクライナ市民が犠牲になっている。ロシアの田園的風景とウクライナの地獄絵は、この世のものとは思えないチグハグな光景である。
(5)「ソ連時代、政府は都市住民に庭地や「ダーチャ」と呼ばれる夏の別荘を割り当てた。米アリゾナ大学のジェーン・ザビスカ准教授(社会学)によると、国家経済では十分な果物や野菜を生産できなかったため、政府は国民に庭でそれらを栽培するよう奨励した。「経済的な自給自足のためだけでなく、コントロール感や安心感を得るためでもあった」とザビスカ氏は述べた。政府当局は庭造りや農業を奨励している。ウラジーミル・プーチン大統領は最近、農場に関する行政規則を緩和し、庭地で個人が使用するニワトリやウサギの飼育を認める法律に署名した」
プーチン氏は、個人が庭地でニワトリやウサギの飼育を認める法律を施行させた。肉まで自給自足体制である。



