習近平氏が最近、ワクチン接種したという「古いニュース」が発表された。誰でも、今頃になってなぜ、と訝ったはずだ。これは、国産ワクチンの接種を忌避している高齢者へ、ワクチン接種を奨める意味であった。
中国の「ゼロコロナ」は、防疫体制の遅れを世界へ宣伝しているようなものである。優秀なワクチンがない結果、ロックダウンして感染を防ぐしかないのだ。中国製ワクチンは、70種類以上の副作用が知られているほか、白血病で亡くなるケースも稀でない。こうして、高齢者がワクチン接種を忌避しているのだ。「ゼロコロナ」の裏には、テコでも動かない高齢者のワクチン不信感が存在する。
米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(7月26日付)は、「中国『ゼロコロナ』ワクチン接種の足かせに」と題する記事を掲載した。
中国では高齢者や重症化リスクの高い人々の間で新型コロナワクチンの接種が進んでいないため、集団検査とロックダウン(都市封鎖)の悪循環を断ち切ることができず、世界第2位の経済大国の足かせとなっている。
(1)「中国政府はここ数カ月でワクチン接種率を押し上げようと取り組んできた。だが、数千万人におよぶ60歳以上の国民は依然として未接種で、さらに多くの国民が流行中のオミクロン変異株の亜種から身を守るために必要なブースター接種(追加接種)を受けていない。中国当局は、最高指導部メンバーたちが接種したワクチンが国産であると発表し、ワクチンの深刻な副作用を巡る根拠のないうわさを否定することで、高齢者を中心に広がるワクチンへの懐疑的な見方やためらいを克服しようとしている」
中国製ワクチンが効かないことは周知のこと。噂話の好きな中国人が、この種の話には敏感に反応している。中国国民は、政府の発言を信用しないことで有名だ。昔から、「上に政策あれば、下に対策あり」の国である。必ず、逃げ道を探す国民である。
(2)「中国政府が23日発表したデータによると、7月22日時点で人口14億人のほぼ90%が少なくとも2回目接種を完了済みだ。60歳以上の高齢者も同様の割合で1回目接種を完了しているが、これは裏を返せば、2700万人以上が依然として未接種であることを示唆している。ブースター接種率ははるかに低く、人口の約57%、60歳以上では67%にすぎない。中国政府のデータによると、新型コロナ感染症による重症化や死亡のリスクが最も高い80歳以上の人々の25%以上がワクチン未接種であるほか、60%以上がブースター接種を受けていない」
下線部は、中国製ワクチンの効果が低いことと合わせて、時間が経てば経つほどワクチン効果はゼロ同然になっていく現実がある。この哀しい事実が、ゼロコロナを必要としている。「水みたい」と批判されてきた中国性ワクチンが、こういう事態を招いたと言える。
(3)「この数字は、中国の新型コロナ対策における重大な弱点を示している。中国は従来の技術で開発した国産ワクチンに依存しており、専門家によれば、重症化や死亡を十分に防ぐには少なくとも3回の接種が必要だ。ワクチン接種率の低さはまた、厳格なロックダウンと集団検査によって感染拡大を封じ込める「動態(ダイナミック)ゼロコロナ」戦略からの移行を阻む要因にもなっている。上海では今年前半、2カ月にわたり大規模なロックダウンが実施された」
効かないワクチンが、接種率を引下げている。これによって、やむを得ず「ゼロコロナ」に進まざるを得なくさせている。中国政府は、効かないワクチンの現実を知っている筈だ。
(4)「ワクチン接種のペースもここ数カ月で低下している。中国政府のデータによると、1日あたりの接種回数は2022年1月上旬の800万回余りをピークに減少しており、6月には100万回を大きく下回った。中国ではワクチンを巡る過去の不祥事に加え、高齢接種者を対象とする国産ワクチンの安全性と有効性に関するデータが不足しているため、国民の間で接種忌避が根強い。公式のワクチン接種ガイドラインは、発作が起こる慢性疾患患者について注意喚起している」
下線部は、小児用ワクチンで大掛かりな不正事件を指している。製薬メーカーと保健所が組んで、検査で落ちたワクチンを出荷させて死者を出した事件だ。「金のためなら何でもやる」中国社会の悪しき伝統が、現在のような危機克服時に足を引っ張っている。
(5)「習近平国家主席のゼロコロナ政策が、比較的成功を収めていることも、接種促進の妨げになっている。一般の中国人の多くは感染リスクが低いことを理由にワクチン接種の必要性を感じなくなっているためだ。新型コロナ感染急拡大の波が他国を襲う中、中国は国家の誇りとしてゼロコロナ政策を掲げてきた。香港大学公衆衛生学院で疫学部門を率いるベン・カウリング教授は、「中国本土の高齢者がワクチン接種に消極的な主因の一つは、新型コロナのリスクが低いと考えられていることだ」とし、「ダイナミック・ゼロコロナ戦略を実施中の場所でワクチン接種の義務化が正当化されるとは思えない」と指摘する。「この場合、まれに発生する副作用のほうが、ワクチン接種で期待される利点より重視される可能性が高いだろう」
下線部は、中国の現状を見事に言い当てている。効かないワクチンどころか副作用もある。運悪ければ、白血病に罹る危険性もあるのだ。これでは、進んでワクチン接種を受ける気持ちにはなるまい。すべては、習近平氏が欧米製ワクチンを承認しない狭量さの招いた悲劇である。