ロシアは、西側諸国にエネルギー販売で「外濠」を埋められつつある。ドイツが、天然ガスで「脱ロシア」を進めており、10月の予定貯蔵量は1ヶ月繰り上がって9月に達成できる見込みとドイツ経済省が発表した。G7が進めているロシア産原油の上限価格引下げは、米国がインドへも話を持込んでおり、「建設的な話合い」であったという。
こうして、ロシア産エネルギー輸入ボイコットの準備は順調に進んでいる。こういう西側の動きを睨み、ロシア中央銀行は来年の原油輸出価格について慎重になっている。
ロシア財務省は、1バレル=60ドルの原油価格と日量950万バレルの石油生産量を政府系ファンド収入へ繰り入れことを提案した。しかし、中央銀行のアナリストは、「原油価格と生産量の基準が高すぎるようだ」と指摘し、難色を示している。ウクライナ侵攻以前の財政規則では、1バレル=40ドルが基準となっていた。『ブルームバーグ』(8月29日付)が報じた。
『ブルームバーグ』(8月29日付)は、「ドイツのガス貯蔵率、10月の目標を来月に前倒し達成へー経済省」と題する記事を掲載した。
ドイツ経済省は28日、ロシアからの主要パイプラインを経由した天然ガス供給は不透明だが、ガス貯蔵施設の貯蔵率は予定を上回るペースで上昇していると指摘し、10月に85%という目標を9月初めには達成するとの見方を示した。
(1)「ハーベック経済相は電子メールで配布した声明で、ロシア産ガス輸入を終わらせる取り組みは「かなり」順調だとした。浮体式天然ガスターミナル設置作業は計画通り進んでいる上、オランダとベルギーからの供給は増加する見通しで、フランスもドイツにガスを供給する意向だと説明。「非常に厳しい状況にあり、膨大な貯蔵はなお確実に必要だが、国家として備えている」と語った」
ハーベック経済相の声明が出る前に、電気やガスなど社会インフラを管轄する独連邦ネットワーク庁のミュラー長官が8月17日、やや悲観的な見通しを発表していた。それによると、ドイツのガス貯蔵率が11月までに目標の95%を達成できるとしても、ロシアが供給を全て止めてしまえば、暖房・電力・鉱工業需要の約2カ月半分にしかならないだろうと指摘。現在の貯蔵率は77%で、予定より2週間早く貯蔵が進んでいると付け加えた。経済省は、こういう「暗いニュアンス」の発表を打ち消して、明るさを強調したもの。
(2)「ロシアが主要パイプライン「ノルドストリーム」を通じた供給を大幅に絞ったことでガス価格が上昇し、数十年で最悪の欧州エネルギー危機が深刻化する中で、ドイツの連立政権は10月までに85%、11月までに95%のガス貯蔵率を求めている。ロシア国営天然ガス会社ガスプロムは8月、ノルドストリーム経由の欧州へのガス供給を31日から3日間停止すると発表した。ただハーベック経済相は、ドイツはそれまでに10月の目標をほぼ達成しているだろうとの見解を示した」
ロシアは、8月31日から3日間ノルドストリーム経由の欧州へのガス供給を停止する。ドイツはその前に、10月目標の貯蔵率を達成できるとしている。ロシアの「脅迫」に屈しないという姿勢を鮮明にした。
主要7カ国(G7)は、ロシア産原油輸入について欧州連合(EU)が海上輸送されるロシア産原油への禁輸措置を発動する12月5日までに、価格上限制のメカニズムを導入したい考えである。これは、米国が主体になって取り組んでいる。
『ロイター』(8月26日付)は、「米、ロシア産原油価格の上限案巡り印と建設的協議ー財務副長官」と題する記事を掲載した。
インドを訪問中のアデエモ米財務副長官は26日、ロシア産原油の価格に上限を設ける案について、インド政府高官らと「非常に建設的な協議」を行ったと明らかにした。
(3)「アデエモ氏は、ニューデリーで開かれた記者会見で、上限設定はロシアがウクライナ侵攻に使用できる石油収入を抑えるとともに、世界的に手頃な価格で原油供給を十分に確保することを目的としていると述べた。「12月5日に世界にとって利用可能なロシア産原油が減少し、価格上昇につながることを非常に懸念している」と述べた。上限が設定されれば、ロシア産原油の購入と輸送に引き続き欧米のサービスを使うことが可能になるとした」
G7は、12月の石油需要期入りに当り、ロシア産原油価格の引下げを図る計画である。上限価格制を敷いて徐々に引下げて行く狙いだ。G7は、この上限制を推進するが、インドへも呼び掛けている。インドが、これに賛同すれば海上保険サービスを付与するとしている。欧州は、世界の海上保険で圧倒的支配権を持っている。原油輸送に海上保険が付かないと、海外港湾への入港が拒否されるリスクを抱える。こうして、ロシア産原油の輸出を阻止する構えだ。